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『コロンブスの電磁気学』の要旨(10) 直列接合のコイル

 

(敬愛するマイケル・ファラデー(10) 直列接合のコイル)

201133

宇佐美 保

 前報縦列接合がコイルの謎を解くに於いて、更に前の縦列接合がコンデンサの謎を解くに於いては、コンデンサ(フィルタ・タイプ)は、入力側伝送路並び出力側伝送路に「縦列接合された伝送路」であることを明らかにしたと同様に、コイルも「縦列接合された伝送路」であることを明らかにしました。

 

それに続く縦列接合以外のコンデンサ、コンデンサの場合も「縦列接合された伝送路」、以外に「直列接合された伝送路」もコンデンサとして動作する事を示しました。

 

 従いまして、本報に於いては、「直列接合された伝送路」もコイルとして動作する事を示したいと存じます。

 

但し、コンデンサの場合は、低特性インピーダンス伝送路、コイルの場合は高特性インピーダンス伝送路であることを解明して来ましたので、ここでも前文同様にフィーダー線(特性インピーダンス:300Ω)を直列接合する伝送路を用いました。

 

接続は次の「図:1」のように行いました。

 

そこで、前方同様に、特性インピーダンスの大きな伝送路として、その値が300オームである(リボン型)フィーダー線(アンテナの給電線:feeder)を「図:1」のように、入出力側伝送路としての同軸ケーブル(Z50オーム)に、縦列接合して、電源(パルスジェネレータ)から、電気信号を送り出し、以下の測定を行いました。

 

図:1

 

 

先ずは、パルスジェネレータから、50MHzのクロック信号(1ボルト)を1パルスこれらの伝送路系に送り出し、出力波形を縦列接合の場合と直列接合の場合を比較して測定し「測定結果:1」を得ました。

測定結果:1



 この結果から、直列接合の場合も縦列接合の場合同様なコイルとしての特性が得られている事が分かります。

そして、又、先のコンデンサの場合同様に、両者の場合とも電圧変化が段階的であることも、見てとれます。

更には、10メートル長の同軸ケーブルをセットする等して、50MHz1ボルト)の1パルスのクロック信号を流し、縦列接合の場合同様に入力伝送路側への逆流電流に関しても測定し、次の「測定結果:2」に掲げます。

測定結果:2



 この結果も、前の縦列接合の場合同様な結果が得られております。

(尚、「コイル入口部の電圧」は、そのままですと、入力信号と逆流信号の和が測定されますので、コイルを除去して、入力信号を測定し、この波形を、先の「入力信号と逆流信号の和」から差し引き、「コイル部での逆流信号」として求めました)

 

 何故このような結果が得られるのでしょうか?

それは、コンデンサの場合同様に考えられます。

コンデンサの原則(縦列接合されたコンデンサ)は、そのコンデンサ伝送路は低特性インピーダンスであり、末端がオープン状態です。

そして、この伝送路を同軸ケーブル(Z50Ω)等に直列接合すると、その接合されたケーブルの特性インピーダンスがコンデンサ伝送路のそれより格段に大きいので、コンデンサ伝送路から見た接続ケーブルでの反射係数(τc)は、当然プラスとなり、その接合部は

あたかもオープン端子同様な影響力を発揮します。

τc=(Z-Zc)/(Z+Zc)≫0  (式:1)

 

一方、コイル伝送路は高特性インピーダンスですから、同軸ケーブルとの接合点でのコイル伝送路側からの反射係数(τc)と同様に(式:2)のように表されますが、(ショート端としてのマイナス1とはなりませんが)マイナスとなります。

τc=(Z-Zc)/(Z+Zc)<0  (式:2)


従いまして、コンデンサの場合同様に、コイルの場合も縦列接合ではなく直列接合でもコイルとしての特性が発揮されると考えられます。

 

そこで、フィーダー線、同軸ケーブルの特性インピーダンスが各々、300Ω50Ωですから、τcは(式:2)から、マイナス0.714が求まり、逆に同軸ケーブルから見た反射係数(τ)は、τ-τcですから、プラス0.714となります。

 そして、それらの反射係数の下での反射の際には、電流が相手側に流れる割合は、

フィーダー線から同軸ケーブル:1-τc1.714

同軸ケーブルからフィーダー線:1-τ0.286

これらの背景を参考にしながら、今までのような入出力伝送路とコイル伝送路間での電流の流れ具合を次のようなイメージ図に収めました。

 

イメージ図:1 イメージ図:2 イメージ図:3

 

以下に示される反射現象に於いては、当然ながら、コイル伝送路の出入口部では、コイル伝送路を行き来する電流の示す電圧(合算値)と、入出力側の伝送路に検出される電流が示す電圧は、当然等しくなります。

 

「イメージ図:1

コイル伝送路へ到達した電流は、反射係数(τ0.714)の反射を受け、電源側に多大なプラス電流が戻って行き、コイル伝送路へ残りの(1-τ0.286)が侵入します。

 

「イメージ図:2

コイル伝送路出口部に到達した電流は、反射係数(τc:マイナス0.714)を受け、出力側の伝送路へは(1-τc1.714)分の電流が流れ出て、残りの大部分(τc:マイナス0.714分)はマイナス電流として入力側へ戻って行きます。

尚、出力電圧を分かり易くする為に、マイナス電流分が赤色のプラス電流を相殺した結果(絶対値の等しいプラス/マイナスの合算結果)を「白地」で表示しています。

 

「イメージ図:3

コイル伝送路入口部に逆流して来た電流は、反射係数(τc:マイナス0.714)を受け、入力側の伝送路へは(1-τc1.714)分の電流が流れ出て、残りの大部分(τc:マイナス0.714分)は、今度はプラス電流(図では茶色帯)として出力側へ向かって行きます。

この際、プラス電流は暖色系色の帯で示し、且つ、このイメージ図のように、それらのプラス電流を示す帯が下から順次積み上げられるように以下の場合(次のアニメーション)でも表示しました

また、入力伝送路側でも、分かり易くする為に、マイナス電流分が赤色のプラス電流を相殺した結果(絶対値の等しいプラス/マイナスの合算結果)を「白地」で表示しています。

 

このように、コイル伝送路の両端ではマイナス反射が繰り返され、出力側へはプラス電流が向かい、又、プラス電流を排出し、一方、入力側へはマイナス電流として戻り、且つ、入力伝送路へはマイナス電流を排出する事で、入力電流のコイル伝送路入口部での反射によるプラス電流を反射の回数が増えるとともに、段階的に次々と相殺して行きます。

 

これらのイメージ図を延長した、次のアニメーションをご覧ください。

 

アニメーション

 

 

 そして、入力信号が続いている限り、このアニメーションの最終段階に見られるような「定常状態(飽和状態)」に落ち着きます。


イメージ図:4 イメージ図:5


即ち、「イメージ図:4」に見ますように、入力が続く限り、入出力側での反射を繰り返し、各部の電圧が入力信号の電圧に等しい状態に落ち着きます 。

 

そして、このような定常的状態となっても「イメージ図:56」で明らかなように、コイル伝送路内では、電流の行き来は続いています。

 

又、「定常状態(飽和状態)」で、入力信号がオフ状態となりますと、入力伝送路へのプラスの反射電流はストップし、今までの、コンデンサや、縦列接合されたコイルの場合同様に、入出力側での電流値は、反射回数の少ない電流の影響分から、段階的に、変化して行き、次のような入力側への逆流電流、並び、出力側への出力電流の変化がイメージできます。

 

イメージ図:6

 

そして、このイメージ図が、先の「測定結果:12」と同等であることが分かります。

(特に、出力信号の立ち上がり立下り時の最初のステップの(同一)高さにご注目ください)

 

このように、直列接合と言う公知の接合方法でもコイル的機能を確認できることは、私が提唱し、ここまで色々とコンデンサ又、縦列接合伝送路のコイル等でその正当性を実証してきた「縦列接合」が従来のこれら「直列接合」、又、「並列接合」と肩を並べて存在すべき接続方法である事が分かります。

 

 更には、この「縦列接合」が、信号線/グランド線を同時進行する電気信号が、先に考察しました「縦列接合されたコンデンサ」、「縦列接合されたコイル」のように、信号線/グランド線の長さが異なってしまった場合の苦肉の方法として登場するのではなく一般的な接続方法である事を、くどいようですが次に確認いたします。

 

 それには、「図:2」のように「縦列型コイル」を信号線/グランド線の両方にセットするのです。

 

図:2

 

 このような状態では、電気信号は、信号線、又グ、ランド線とも各々に接続されたフィーダー線を伝わって(一寸遠回りですが)、順次導体部分を伝わって流れれば良いのですから、「縦列接合」は、無用な存在と考える方もございましょうが、実際はどうでしょうか?

そこで、電源(パルスジェネレータ)から、10MHz1ボルト)のクロック信号を1パルス流して、先ずは「コイル入口部」の入力側と出力側での電圧変化を測定しました。

更に参考の為に、1メートル長のフィーダー線を伝わる電気信号の速度も測定しました。

測定結果:3

この結果から、フィーダー線を伝わる電磁波速度が、4ナノ秒/メートルである事が分かります。

 

 従いまして、電気信号がコイル入口部の入力側から出力側までを、信号線/グランド線にセットされたフィーダー線(全長:20センチメートル=10cm×2)を伝わって流れる場合には、その所要時間は、0.8ナノ秒(=4ナノ秒/m×0.2m)要する事になります。

 しかし、最初のステップの開始は、ほぼ入力側の変化と共に瞬時に始まっています。

この事は、電気信号が、フィーダー線を順次伝わって(往復長が20センチメートル)伝達されたのではなく、2本のフィーダー線を出力伝送路とともに入力伝送路に縦列壕された伝送路と見做して流れて行ったことを示しています。

  更に、「測定結果:4」に入力側への逆流信号、フィーダー線(コイル)入口部、出力信号の電圧変化を示します。

測定結果:4

 この結果からも、「図:2」のように接続された伝送路がコイル特性を呈している事が分かります。

そして、これら2本の伝送路が接続されている接続方法が「縦列接合」であるのです。
従って、此処までの「クロストーク」、「コンデンサ」、「コイル」に関する「縦列接合」を用いての考察を思い出して頂けたら、”「縦列接合」とは、導体が機械的に接続されていない状態などで、仕方なく電流が流れる為の手段として用いられる接合方法”ではなく、”「並列接合」、「直列接合」と共に一般的な接合方法なのである”との認識を共有して頂けると存じます。

「電流は、導体を伝わる電荷の移動である」の従来説の呪縛から逃れ、「電流は、電磁波川の流れと導体堤防の相互作用」と認識する事で、「並列接合」、「直列接合」以上に根本的な接合方法であると認識出来るのです。

 この辺で、「縦列接合」の件は一時中断して、(もうお気づきと存じますが)次の≪『コロンブスの電磁気学』の要旨(11) 定常状態とは(1)
(敬愛するマイケル・ファラデー(
11))
≫に移りたいと存じます。


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