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電気は近接作用を無視した「フーリエ変換」

2016118日 宇佐美 保

 

 拙著新『コロンブスの電磁気学』シリーズ『第1巻 新たな電流理論』から、今回の表題と同一表題を有する「1 電気は近接作用を無視した「フーリエ変換」」を以下にコピーいたします。

 

 『コロンブスの電磁気学』(新増補改訂 カラー版 1巻)をお読み下さった方から

 “オシロスコープでトランスの入出力波形を日頃観察しておりますが、
矩形波をトランスに入力しても、
矩形波が何故出力されるのか疑問に思っていましたので、
電磁誘導が間違っていたということから、納得できました。”


 とのメールを頂きましたが、多くの方々は、トランスが矩形波信号でも動作することを測定結果で得ていても、「フーリエ変換」と言う数学的処理を用いる事で、“矩形波信号といえども、サイン波信号の集合体”と解釈し、注目もせずに、片付けていたのではないでしょうか?


 「フーリエ変換」に関しては、フリー百科事典「ウィキペディア」の記述、並びに、その変換例(矩形波フーリエ級数による近似。最初の4項まで)を引用させて頂きます。

フーリエ変換 

複雑な周期函数は

単純な波動の数学的な表現である正弦函数(sin)や余弦函数(cos)の和として表される 

 

 この「フーリエ変換」が、今も昔も持て囃されていると存じますが、この変換が可能なのは、「周期性を有する波形(複雑な周期函数)」の全容が判明した後に可能なわけです。

(即ち、電気の作用の結果論としての数式処理として使われる存在なのです)

 ところが、「フーリエ変換」と名のつく有名な数式処理によって、ファラデーの大発見である「電気は近接作用」が長年にわたって、不幸にも蔑ろにされて来たのだと、私は思っているのです。

(例えば、発電や、トランスなどの分野に於いて、又、電気理論の根本に於いて)

ここで、『ファラデー(実験科学の時代) 小山慶太著 講談社学術文庫』に記載されたドイツの文豪の「ゲーテの箴言」の一部を下記に引用させて頂きます。

 

  物理学のいくつかの分野においては数学的な理論や哲学的な理論のおかげで、認識は深化するどころか、かえって停滞させられてしまっているし、……

つまり自然研究をいかにして観察という単純きわまりない過程に依拠(いきょ)させてゆくか、観察をいかにして実験へ高めてゆくかそして最後にいかにして結論へと導いてゆくかということが問題なのである。      (「自然と象徴」冨山房は百科文庫)

 

 本著に於いては、この「ゲーテの箴言」を大事に受け止め、“論より証拠”をモットーとして、観察→実験→考察→結論の過程を繰り返してゆきたいと存じます。

 

 以上は、『第1巻 新たな電流理論』からのコピーですが、次に、上記の“観察→実験→考察→結論の過程を繰り返してゆきたいと存じます。”の実際例として、『第13話 トランスの理論も誤解です』をご覧ください。

 

 でも、その一部を以下にコピーいたします。

 

矩形波信号(1V/0V)を1パルス(1波形:恰も羊羹の一切れのような形状をした波形の信号)を同じトランスの1次側に入力して、先の「図:1」の状態で、「測定結果:1」を得たと同じように測定して、次の「測定結果:2」を得ます。

 

この際、矩形波信号の周波数(いわば、羊羹の長さ相当)を、0.1Hz10 Hz50 Hz250 Hz500 Hzと、 変化させました。

 

 

 このように、トランスの1次側に矩形波信号(直流の断続波)を入力しても、トランスの2次側に出力される件を、「フーリエ変換」を駆使される方々は、これらの矩形波もフーリエ変換によれば、サイン波の集合体であるから、それらサイン波それぞれがトランスを介して、「ファラデーの電磁誘導の方程式」に従って、2次コイル側へ出力されると宣われてこられたのです。

 

 しかし、更には、次もコピーしました。

前掲の「測定結果:2」を、時間軸の単位を同じ目盛(1目盛を500マイクロ秒)に統一して「測定結果:3」として、更に、それらの結果を重ね合わせて「測定結果:4」として、次に表示します。

 

 

 

この結果からご納得頂けますように、「羊羹」一切れを入力している際、トランスはその「羊羹」一切れがどのくらいの長さかは、全部入力されてから分かるのであって、「羊羹」が一切れ分全部トランスに入力されてから、トランスは2次側に出力するのではありません。
そして、『第6話 交流直流も同じ電気(電気は近接作用
』の目をつぶったままパンチを受けていると同様に、この際、トランスは、目をつぶったまま、羊羹を口に押し込まれている状態です。
従って、トランスの口は、その先のことなどわからず、どんどん押し込まれてくる
羊羹に対処するだけです。

 

そして、この場合で一番長い羊羹は、0.1Hz羊羹ですが、それより短い羊羹に対しては、その長さまでは、この一番長い羊羹と同じ対応をトランスは行っております。

即ち、トランスに入り込む羊羹が途切れた時点で、例えば“ああ、今の羊羹は、250Hzの長さの羊羹だったのだな”といった具合の対応をするだけなのです。

従って、トランスに入り込む羊羹が途切れ時点までは、トランスに入り込んでくる羊羹の長さを知りようがありませんから、トランスが「フーリエ変換」能力を有していても、その能力を振るいようがありません。

(勿論、トランスにも記憶力はありませんから、ただ、その時その時の対応をするだけで、トランスに入り込む羊羹が途切れ時点までは、どんな長さの羊羹に対してもトランスは同じ振る舞いをしているのです。

ここでの羊羹は、矩形波信号、ひいては、直流信号の意味であることを再掲いたします)

 

 従って、この例からもお解り頂けますように、「フーリエ変換」は“電気は近接作用”を無視しており、この変換に依存すると、電気に対する大きな誤解を生じます。

(この件は『第6巻 交流理論は砂上の楼閣』をご参照下さい)


 更に付け加えますと、『第10話、第19話、第20話』と
「ファラデーの電磁誘導の法則は誤解です」を掲げてきましたので、トランスの矩形波信号に対する動作を、その矩形波信号をわざわざ「フーリエ変換」を用いてサイン波等に変換することさえ無意味なのです。