『第22話』
渦電流も誤解の産物です(1)
2016年11月29日 宇佐美 保
「渦電流」に関しては、TDK社のホームページ「テクノマガジン」には、次の図が掲げられております。
http://www.tdk.co.jp/techmag/inductive/200803/index2.htm
又、電気メータの円板の回転は、この原理に基づいていると一般的に認識されています。
しかし、「図:1」に示します装置を組み立て次の様な実験を行いますと「渦電流は誤解の産物」であることははっきりと分かります。
但し、アクリル板、並び、銅箔の直径は共に10cm、厚さは各々、2mm&0.01mm、磁石(30mm角、厚さ:15mmのネオジウム磁石)と、銅板との間隔:約2mm、
回転モニター:光センサ(フォトインターラプター)に対して、「光遮蔽板」を図のように、アクリル板、並びに、磁石取付用板(磁石取り付け位置)に取り付け、この「光遮蔽板」が光センサ間を通過するごとに、アクリル板(銅板)、並びに、磁石取付用板(磁石)の位置を検出することが可能となります。
尚、銅円板の状態は、円板そのままの場合に加えて、「図:2」のように、銅円板部に、幅2mm程のスリットを入れ、4、8、16、32、64分割した場合に関し、観察、測定しました。
(但し、中心部は電気的にショート状態、円周部はオープン状態)
図:2 |
このような「図:1」の状態で、モーターを用いて、「磁石取り付け板」を回転しますと、そこに取り付けた磁石も当然その板と共に回転します。
そして、その上部にセットした「銅円板」は、自由に回転できる状態にセットしていますから、この磁石の回転に従って回転します。
これらの回転状況は、「図:1」に示した「回転モニター:光センサ(フォトインターラプター)」の結果から、次の「測定結果:1」として表示可能となります。
この測定結果に認められる磁石の回転数(突起部数:ピーク数)と銅板の回転数(ピーク数)を次の表にまとめてみます。
表:1 磁石と銅円板の分割数に伴う磁石の回転に引き摺られる銅円板の回転数の変化 |
||||||
銅円板の分割数 |
0 |
4 |
8 |
16 |
32 |
64 |
磁石の回転数 |
12 |
12 |
12 |
12 |
12 |
14 |
銅板の回転数 |
11 |
10 |
10 |
8 |
3 |
1 |
(参考値:外周部の幅:約cm) |
31(円周) |
8 |
4 |
2 |
1 |
0.5 |
この実験結果(「測定結果:1」&「表:1」)に見るように、銅円板にスリットを入れても、銅円板は磁石の回転に引き摺られて回転していることが分かります。
但し、その回転速度はスリットの数と共に減じています。
従って、この実験から「渦電流の解釈」に破綻が生じてくるのが分ります。何しろ、「表:1」の参考値に見るように、2、1、或いは、0.5cmの幅の銅板(扇形)に、3cm角の磁石で、「渦電流」を発生させるとは考えられません。
この件をより明確に確認する為、銅線が磁石の回転につれて回転する実験も行いました。
先の「図:1」に於ける、アクリル板の円板の代わりに、「図:3」のように、0.05mm程の紙を円板状に切り取り、更には、銅円板(スリット入りの銅円板)の代わりに、銅線(0.1mmφ)12本をこの紙の円板に粘着テープで貼り付け、これらを回転軸にセットして、磁石を回転しました。
この結果、銅線を張り付けた紙の円板は、磁石の回転に大きく遅れながらも、ゆっくりゆっくりと回転しました。
この結果から、銅(導体)円板でなく、導線(銅線)に対して磁石を回転させても、この導線は、磁石の回転に追随しながら回転することが分かります。
この銅線(0.1mmφ)に渦電流が生じたとはとても考えられません。
更なる詳細、又、「発電の新たな原理」に関しては、是非とも、拙著『コロンブスの電磁気学』(新増補改訂 カラー版 第1巻)、或いは、新『コロンブスの電磁気学(第2巻)』新たな発電原理をご購読いただけましたら幸いと存じます。
特に今回ここに掲載した件に関しては、『コロンブスの電磁気学』増補改訂版(第16章 渦電流の退場と直流発電の登場)を是非ご参照下さい。
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