改憲論者よ暫くはお静かに
2015年9月29日
宇佐美 保
憲法学者、元内閣法制局長官、元最高裁長官らが、「安全保障関連法案は違憲だ」との発言、又、多くの人々の国会等を取り巻く反対デモをも無視し、更には、8月19日の参議院・平和安全特別委員会に於いて、山本太郎議員により安保法案は、2012年の8月に公表された第三次アーミテージ・ナイレポートの完全コピーであることが暴露されても、“アーミテージ・ナイ隷属政権”は「戦争法案」を成立させたとしています。
このような暴挙を行う「隷属政権」(とても安倍政権と書く気がしません)が次に行うのは、「戦争法案」が違憲というなら、今の憲法を変えて合憲としようとする筈です。
この「隷属政権」の暴挙を阻止する際に、心配なことがあります。
それは、最近“「解釈改憲=大人の知恵」という欺瞞―九条国民投票で立憲主義をとりもどそう” との趣旨の単行本を出版したジャーナリストの今井一氏らの動きです。
そして、すぐさまこの今井氏に同調する法哲学者の井上達夫氏(東京大大学院教)の発言が、東京新聞に掲載されています。
これらの件、又、以下の記述も、拙文《自衛隊は軍隊でなく仮城です》、並び、《護憲も欺瞞と宣う法哲学者 》を御参照下さい。
今井氏のように、「大人の知恵」との表現では、その裏に大人の姑息的な場当たり的な……(私達、大人が日頃感じるやましさ)が、見え隠れし「姑息な知恵」と解釈されてしまいます。
本来は、日本国憲法の前文に掲げられた崇高な目的に向かって、私達、日々奮励努力すべきですが、直ぐにはその目的地(前文通りの域)までに到達できないので、現時点では、「大人の知恵」ではなく、お釈迦様のお知恵として、「自衛隊を仮城」として容認していると、解釈すべきと存じます。
(この件は拙文《戦争法賛成者の誤解》を御参照下さい)
なのに、今井氏のような良心的な改憲論者であっても、“ドイツだって、どこの国だって、憲法を何度も改定している、なのに何故、日本が会見できないのだ!”と息巻きます。
しかし待ってください。
他国の憲法は、平和憲法でしょうか?
日本国憲法が平和憲法である根幹としての第9条は下記の通りです。
1 | 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段と しては、永久にこれを放棄する。 |
2 | 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 |
このような憲法を他国が作れますか!?
他国でも作りたいと切望する方がどんなに多くても、多くの利害対立の結果、作ることは出来ないでしょう。
勿論、今の日本で、再度作り直そうとしても、絶対に不成功に終わるでしょう。
(「自民党憲法改正草案」では、“日本国憲法の三大原則の一つである平和主義を定めた規定であることから、基本的には変更しない”と言いつつも、平和憲法も骨抜き状態です)
何しろ、asahi.comには、次の記述を見てしまうのです。
「みっともない憲法、はっきり言って」安倍・自民総裁 ■安倍晋三・自民党総裁 日本国憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書いてある。つまり、自分たちの安全を世界に任せますよと言っている。そして「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」(と書いてある)。 自分たちが専制や隷従、圧迫と偏狭をなくそうと考えているわけではない。いじましいんですね。みっともない憲法ですよ、はっきり言って。それは、日本人が作ったんじゃないですからね。そんな憲法を持っている以上、外務省も、自分たちが発言するのを憲法上義務づけられていないんだから、国際社会に任せるんだから、精神がそうなってしまっているんですね。そこから変えていくっていうことが、私は大切だと思う。(ネット番組で) |
先に記述しましたように他国が作ろうとしても作れず、いわんや、日本国が独自で作ろうとしてもできない「奇跡の存在である」「平和憲法」を“日本人が作ったんじゃない”と悪し様に言いつつ、上掲のような「偏狭」な見解を披露する「いじましい」人物が我が国の首相の座に居座り続けて、“つまり、自分たちの安全を世界に任せますよと言っている。”と曲解していますが、私達の社会は、先ず、第一に、他人を信用することから始まります。
中学校へ通っている時「救世軍」の前を通ると、「救世軍」の方が“信じる者は救われる”と道行く人々に説いておりました。
(「救世軍」の方は、“キリストを信じよ”と説いていたのでしょうが、私は単に“他人を信じよ”と言われているように思っていましたし、今もそう思っております。
何しろ、私が“キリストを信じます”と言えば、キリストは“我を信じるなら、他人も信じなさい”と告げられるでしょうから)
赤ちゃんを連れて街に出るお母さんの横で、お父さんは、ポケットにピストルを隠し持っているでしょうか?
“銃が悪いから犯罪が発生するのではなく、人間が悪いから犯罪が発生する、悪いのは銃ではなく人間である”論がまかり通る国では、銃の携帯は不可欠かもしれませんが、そんな国のまねを日本がするのでしょうか!?
国民が銃を持つことが許され、銃による犯罪事故が絶えない米国と、銃の所持が禁止され銃犯罪が少ない日本と、世界の人々はどちらを選択するでしょうか!?
世界の人々は日本を手本にするでしょう。
そして軍隊を持たない日本を手本とするでしょう。
“自分たちが専制や隷従、圧迫と偏狭をなくそうと考えているわけではない。いじましいんですね。”と語るご本人が、日本国人には「専制」政治を行い、「アーミテージ・ナイレポート」に「隷従」しているのです。
そしてこのような発言をする人物は、中村哲氏(ペシャワール会現地代表:PMS(ピース・ジャパン・メディカル・サービス)総院長)の、ご活動(武器も使用せずに)をどのように考えておられるのでしょうか!?
(拙文《戦争法賛成者の誤解》も御参照下さい)
そして、この「偏狭」で「いじましい」人物は、憲法前文の次に掲げる大事な部分を隠しているのです。
日本国民は、……政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、…… われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、…… 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。 |
そして、驚くべきことに、このような人物の支持率が、40%もあるというのです。
こんな状況で、今井氏らが訴える国民投票を行えばどのような結果になりますか?
原発事故の後、原発反対の運動が沸き上がっても、今では、原発が再稼働されてしまう日本です。
「原発廃止法」が成立しましたでしょうか!?
更には、「アベ政治を許さない」の嵐の中に行われた山形市長選に関しては、次のようなWEBでの記述も見ます。
山形市長選は「安保法案」の是非が焦点の注目選挙。 安保法案賛成派、自公推薦の佐藤候補が、民主、共産、生活、社民推薦の「安保法案反対」の梅津候補を破り、当選。 勿論、純然たる不正選挙です。 国民の総意は「安保法案反対」。賛成派候補が当選するわけがない。 投票結果を改ざんし、賛成派候補の票を増やしている。 だが、偽票にすり替えれば、「同一筆跡」「コピー票」「印刷票」をRK独立党に追及されるのは、はじめからわかっている。そこで、今回、裏社会が採用した手口は、投票方法の変更。候補者の名前を書くのではなく、候補者名の上に備え付けの丸印のスタンプを押す方式に急きょ変更してきた…… |
「不正選挙」の有無は兎も角、と申しましても、“平成26年 東京都知事選挙に於ける舛添氏の得票が 平成24年の都知事選猪瀬氏の得票48%とピッタリ一致する”と指摘するサイトも存在します。
このような状況の中、今井氏が思い描く「国民投票」を実施すれば、実施する前から、結果はわかっております。
そして、先の拙文《自衛隊は軍隊でなく仮城です》に補足しましたように、「『イソップ寓話』の「橋の上の犬」」のように、「憲法の文字面」を整えようとするあまり、今、手にしている(口に銜えている)「大事な平和憲法」を失いたくないと私は強く願うのです。
私の、平和憲法への思いは、拙文《平和憲法は奇跡の憲法》等も御参照下さい。
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