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恩人菅さんに唾する東電メディア官僚そして民間事故調(5
(的確な指摘の菅さんブレーンと東電のミス?)

2012314

宇佐美 保

先の拙文≪菅直人氏は私達の恩人では≫(ベントに関しても、この拙文をご参照下さい)にも引用させて頂きましたが、毎日新聞(2011.4.4付け)の記事の一部を再掲させて頂きます。

 

 一方、官邸の緊急災害対策本部。当初、直接東電とやりとりするのではなく経済産業省の原子力安全・保安院を窓口にした。「原子炉は現状では大丈夫です」。保安院は東電の見立てを報告した

 

 しかし、事態の悪化に官邸は東電への不信を募らせる。菅首相は11日夕、公邸にいる伸子夫人に電話で「東工大の名簿をすぐに探してくれ」と頼んだ。信頼できる母校の学者に助言を求めるためだった

 

 11日午後8時30分、2号機の隔離時冷却系の機能が失われたことが判明する。電源車を送り込み、復旧しなければならない。「電源車は何台あるのか」「自衛隊で運べないのか」。首相執務室にホワイトボードが持ち込まれ、自ら指揮を執った。

 

 官邸は東電役員を呼びつけた。原子炉の圧力が上がってきたことを説明され、ベントを要請したしかし東電は動かない。マニュアルにはあるが、日本の原発で前例はない。放射性物質が一定程度、外部へまき散らされる可能性がある

 

 「一企業には重すぎる決断だ」。東電側からそんな声が官邸にも聞こえてきた。復旧し、冷却機能が安定すればベントの必要もなくなる。

 

 

 この菅さんの「信頼できる母校の学者に助言を求める」行為を多くの方々が非難されました。

でも、先の拙文≪恩人菅さんに唾する東電メディア官僚そして民間事故調(2≫に引用させて頂きました東京新聞(福島原発事故 たぐり寄せる記憶 2012.3.11)に於ける内閣審議官の下村健一氏の貴重な談話の一部を再掲させて頂きます。

 

1号機の爆発は、テレビをつけたらあの映像です。

「爆発しないって言ったじゃないですか!」って、菅さんが斑目さん(斑目春樹・原子力安全委員長)に言ったらこれは映画かって思うくらい頭を抱えて。人生で一番ショックなシーンでした。この人が日本の最高権威なのかと

 専門家は何を聞いても、ふにゃふにゃしか言わな菅さんから目をそらす。そんな中で唯一、明言していたのが「爆発は起きません」だったんです

 

 更に、文頭に引用させて頂いた「「原子炉は現状では大丈夫です」。保安院は東電の見立てを報告した。」に関連する原子力安全・保安院次長平岡 英治さん(56)の証言は次のようです。

(東京新聞2012.3.11

三月11日夜から十三日午前中まで、官邸にとどまりました。

 (初日に)2号機で冷却できない状態が続いたらどうなるか、というデータを見た。見なくてもだいたい想像がつきますが、数時間で燃料が(水面から)露出し、さらに数時間で燃料損傷する試算。官邸で共有され、大臣にも報告しました。

 (放射性物質の拡散状況を予測する)SPEEDIのデータは、ほとんど記憶にない。一部見たと思う。そこにいた全員、気象情報は頭に入っていて、当分海の方に吹いていると。(データには)新しい情報はなかった。だから覚えてない。

水素爆発は思いもしなかった。漏れた水素がどうなるかというのは、あまり考えたことがなかった。不勉強だったと思います。……

 

 謙虚に「水素爆発は思いもしなかった」と語るのは良いことですが、これが保安院の実力なのでしょう。

(そして、この彼の証言の続きは、先の拙文≪恩人菅さんに唾する東電メディア官僚そして民間事故調(1≫の文頭に引用させて頂いた「小森さん(明生 東電常務)に電話すると、「事態は緊迫していて、これ以上悪化するようなら、必要な人を残し退避させることも考えている」との東電擁護的証言なのです)

 

 では、菅さんご自身が応援を依頼した元内閣官房参与日比野靖氏の証言を、東京新聞(201232日)から引用させて頂きます。

 

北陸先端科学技術大学院副学長の日比野が、埼玉県入間市の自宅からタクシーで官邸に着いたのは、十二日午後九時前だった。専門は計算機工学だが、菅とは東京工業大在学中からの友人で、助言を求められていた

五階の首相執務室へ通された日比野に、菅は「保安院、東京電力と安全委員会の言うことがバラバラで、次に何が起こるのか、どう手を打てばいいのか具体的な提案が全く出てこない」と不満をあらわにする。

 地下にある非常用ディーゼル発電機が津波で水没してしまったことに、菅は「何てバカな設計をしてるんだ。

あいつらバカなんじゃないか」と憤り、「一緒に話を聞いてほしい」と求める。

 午後十時ごろ、保安院次長の平岡英治、東電原子力品質・安全部長の川俣普、安全委員長代理の久木田豊が菅の執務室で状況を説明する。1号機は既に原子炉を冷やすため海水注入を始めていた。

 菅は「なぜ2号機と3号機もベントと海水注入をしないんだ」と繰り返し問う。日比野も「なぜですか」と尋ねた

 川俣はベントについて「温度も圧力もできるだけ上がった後で抜いた方が効果がある」と話す。事故時の手順書通りだが、極めて深刻な状況の中、23号機のベントと海水注入は後手に回る

 「海水を注入すれば問題は片付くんですよね。なぜやらないんだろう」。三人が引き揚げた後で、日比野は菅に疑問を口にする。菅は「要するに廃炉にしたくないんじゃないのかな」と漏らした

 

 

 いかがですか?!

菅さんが「公邸にいる伸子夫人に電話で「東工大の名簿をすぐに探してくれ」と頼んだ」行為の正当性の一端がうかがえるのではありませんか!?

 

 

 同紙面から更に引用させて頂きます。

 

 官邸近くのホテルに泊まった日比野が十三日午前九時すぎ、首相執務室へ戻ると、緊迫した雰囲気が漂っている。早朝に3号機が冷却機能を失っていた。首相補佐官の細野豪志が緊張した面持ちで、炉心溶融の予測などを記したメモを次々と菅に届ける。

 「万事休す」。日比野はそう感じた。菅の案内で細野や経産相の海江田万里らが陣取る首相応接室に入る。騒然とした室内。海江田が天を仰ぎ、ぼうぜんと立っていた。

 菅は「もうこれは駄目だな」とつぶやき、再び執務室に戻る。間もなく「ベントができた」との報告が入る。ベントによって減圧すれば、海水を注入して冷やすことができる。日比野は「やったあ」と思わず拍手した。

 午前十一時すぎ、東芝社長の佐々木則夫が官邸に来る。前夜、日比野が「(福島第一を工事した)日立と東芝を呼んだ方がいい」と助言していた

 「23号機はどうなりますか」。菅が問うと、佐々木は1号機と同じく、水素爆発します」と即答。建屋から水素を逃がすために「水圧のジェットで壁を破る方法があります」と提案した

 東電は水圧で壁に穴を開けるウォータージェットを発注する。だが、3号機の爆発には間に合わなかった

 

 ここでも菅さんのご友人の日比野氏が「(福島第一を工事した)日立と東芝を呼んだ方がいい」との適切な助言をされておられます。

しかし、残念ながら東芝社長の佐々木則夫氏のご提案の実行が「3号機の爆発には間に合わなかった」のが残念なことでした。

 

 

 しかし、ここで一寸気になることがあります。

先の拙文≪水素爆発の責任は、菅首相ではなく東電≫、≪福島3号機はブローアウト・パネルで「爆轟」が防げた筈なのに≫を思い起こしてください。

 

そこで引用させて頂いた『週刊金曜日(2011.5.27号)』の記事を次に再掲させて頂きます。

 

福島原発でブローアウト・パネル機能せず

  五月上旬、東日本大震災で被災した東北電力女川原子力発電所(宮城県女川町)を訪れると、二号機と三号磯のタービン建屋の外壁に、鉄骨の足場が組まれていた。

……一方、三号機タービン建屋外壁の足場は、「地震の揺れで、タービン建屋の(圧力を調整する)ブローアウト・パネルが開いてしまった」ため、それを閉めた上で足場を組んでいるという。

 ブローアウト・パネルは、非常時に建屋内の圧力が高まった際、圧力を逃がすため自動的にパカッ″と開くのだが、今回は地震の揺れで開いてしまったそうだ。同様の設備は、タービン建屋のほか、原子炉建屋にも装備されている。……

 そこで、ブローアウト・パネルが福島第一原発にも装備されていれば水素爆発は避けられたのか、昭和の時代に作られた原発は古すぎて装備されていなかったのか、などを東京電力に確認した

 東京電力によると、第一原発一〜三号機のいずれにもブローアウト・パネルは付いていたものの、パネルが開くほど圧力が上昇しないまま水素が充満し、地震の揺れでもパネルは開かず、水素爆発にいたったという。ボタン一つで開くような仕組みもなかった。

 ……  明石昇二郎・ルポライター

 

 

 ここでの「東京電力によると、第一原発一〜三号機のいずれにもブローアウト・パネルは付いていたものの……」に私は不信感を抱くのです。

若し、「ブローアウト・パネルは付いていた」のなら、(福島第一を工事した)東芝社長の佐々木則夫氏は先ずこの「ブローアウト・パネル」の効果を説明していた筈です。

 

 この説明もなく「建屋から水素を逃がすために「水圧のジェットで壁を破る方法があります」と提案」というのは納得できません。
更に、先に引用さえて頂いた「水素爆発は思いもしなかった。漏れた水素がどうなるかというのは、あまり考えたことがなかった。不勉強だったと思います。」との「原子力安全・保安院次長平岡 英治さん(56)の証言」から判断しますと、「第一原発一〜三号機のいずれにもブローアウト・パネルは付いていた」との東電の釈明が空々しく響きます。

 

 

 いわんや東電の言い分が事実としても、先の拙文≪福島3号機はブローアウト・パネルで「爆轟」が防げた筈なのに≫に書きましたように、「せめて、地震で炉心内で制御棒を挿入する事態となった場合には、ブローアウト・パネルが開くようにしておくべきだったのでしょう」程度の対策は取っていて当然です。

 

(遅まきながら、(再稼働云々は別としても)せめて稼働中の原発にはこのような対策をとるべきと存じます)

 

 このような点を民間事故調は調査されたのでしょうか?

それにしましても、何故、菅さんの事をあれほどまでに非難されたのでしょうか?!

 更に≪恩人菅さんに唾する東電メディア官僚そして民間事故調(6≫に続けさせて頂きます。

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