『第23話』
渦電流も誤解の産物です(2)
2016年11月29日 宇佐美 保
前の『第22話』に於いて「渦電流」は、誤解の産物であり、先の『第12話 コイルでの発電は、コイルの断片、断片での発電の集積結果です』に於いて、“あくまでも、発電現象は、金属片(導体)と、その金属片(導体)に影響を与える磁石(磁界)の位置関係の変化によって発生するのです。”と記述しましたように、今回の銅円板に生じている発電現象も“コイルを形成する「導体(エナメル線)の1辺」」に対する「磁界変化」が誘発している”発電現象と全く同じ現象なのです。
ところが「渦電流」に対する誤解は、ノーベル賞物理学賞を授与されたファイマン氏のカルフォルニア理工科大学での講義を纏めた『ファイマン物理学V 宮島龍典訳:岩波書店発行』の214頁での、次の記述にも見ることとなります。
さて,回路を通る磁束は変化しないのに,emf(筆者注:発生電流)が0でないばあいをのべる.図17−2は磁場の存在する場所で固定軸のまわりに回転できる導体円板である. 一つの接点は回転軸にあり,もう一つは円板の縁をこすっている.検流計につないで回路をとじる.円板がまわっても,電流の存在する空間内の場所という意味の“回路”は変わらない.しかし円板内の“回路”の部分は動く物質の中にある.“回路”を貫く磁束は一定であるが,それでもemfが存在し,検流計のふれで検出できる.明らかに今の場合は動く円坂内のv×B力がemfをひき起こし,これは磁束の変化(筆者注:「電磁誘導の法則」)では説明できない。 |
何故ファイマン氏は、このように「ファラデーご自身の実験並びその考察を無視した」講義をなさるのでしょうか?
『ファラデー 電気実験(上) M.Faraday 著 監修者:田中豊助 (株)内田老鶴圃』を開いてみますと、ファラデーは、上掲の「図17-2」と同様な実験を行いつつも、次の実験も行っております。
即ち、「図:22&23」のように、「磁石」を固定して「銅板」を→方向に移動し、銅板に
既に述べた実験は,金属片(及びすべての導体物質についても同じであろう)が単一極(筆者注:磁石の一方の極)の前を通過しても,あるいは反対の両極間,あるいは鉄心または無鉄心電磁石の近くを通過しても、運動の方向に対して直角に金属を通って電流が流れること,そしてまたそのためアラゴーの実験(筆者注:ファイマン氏の図17-2の実験に相当)において電流が半径の方向に向うことの証明をも含んでいる。すなわちもしも1本の針金を磁極の近くで車の輻(や)のように動かすならば、電流はそれを通して一端から他端へと向けられる。したがってこのような射線が非常に多数集まって車輪を作り上げているとすれば,銅板におけると同様に、各射線にもそれが極の近くを通る度ごとに電流を発生させるであろう。もし射線の側面を相互に接触させてしまえば銅板ができ上り、その中の電流の方向も大体同じであろう。ただ,金属的に接触させられた粒子間に生ずる協力作用によって多少の変化があるだけである。 |
如何でしょうか?
実に理にかなったファラデーの考察ではありませんか?!
そこで、前の『第22話』に於ける「図:1」の「アクリル円板」と、それに貼りつけた「銅円板」に変えて、今回の「図:1」のように「銅の丸棒(2φ)」を銅の固定軸にハンダにて固定し、その銅の丸棒の両端と、それを固定している銅の丸棒から導線(各A、B、C)を接続し、それらをオシロスコープに導きました。
(先と同様に、磁石は、銅棒に向かう側(図では上側)をN極として、モーターで時計回りに回転させました)
この状況での発電状況(&磁石の回転状況)を、次の「測定結果:1」に掲げます。
この「測定結果:1」は、先に引用しました「ファラデーの実験(図:22の実験)」通りの発電現象を観測した結果であります。
(この実験を行った時点では、ファラデーの著作を知りませんでしたので、この実験結果に対して私自身は次のように考察しました)
この丸棒を扇型に押しつぶすと、「スリットを入れた円盤状の銅箔」(「図:3&4」)となりますから、此処で発生する電流も「渦電流でない」のです。
となれば、そのスリット数を4本から、3本、2本、1本として銅箔の扇をどんどん広げて行った状態を経由して、最終的にスリット数を0本に次々減じた場合の円状となった銅箔に発生する電流も「渦電流でない」のです。
そして、これらの事実から、先の銅板を用いての実験で発生する従来「渦電流」と呼称されていた電流も、一般的な電流と同じである事が分かるのです。
「渦電流」が誤解であり、“「発電現象と「ファラデーの法則」は無関係である!”更なる証拠として、
この「測定結果:2」は、『第10話 ファラデーの電磁誘導の法則は誤解です(1)』に於ける「写真:1」の「1本のクランク状の銅棒を磁石の前で回転させた場合」に発生する「発電現象」、更には、「ポリプロピレン(PP)の枠(各辺の寸法は、幅:2cm、長さ:4cm)にエナメル線を20回巻き付けたコイル」に発生する「発電現象」と、全く同質であることが直ぐにご理解頂けると存じます。
更なる詳細、又、「発電の新たな原理」に関しては、是非とも、拙著『コロンブスの電磁気学』(新増補改訂 カラー版 第1巻)、或いは、新『コロンブスの電磁気学(第2巻)』新たな発電原理をご購読いただけましたら幸いと存じます。