第16話 |
コンデンサ理論も誤解の産物
2016年6月13日 宇佐美 保
マクスウェルによって、1865年導入された「変位電流」の概念は、長年コンデンサ理論を支え続けてきました。
その「変位電流」は、例えば「図:1」のように、信号線間に挿入されたコンデンサの直接的な電気的接続性が存在しない両電極間(完全にループになっていない回路)を流れる電流として信じ続けられてきたのです。
しかし、前の『第15話 コイルの理論も誤解されております』の「図:3」に対する「測定結果:2」をご覧頂ければ、コイル同様にコンデンサの従来理論は誤解の産物であることにお気づき頂けたと存じますが、もう少し実験データを積むことといたします。
そこで、今回測定に用いるコンデンサとして、銅箔(35μ厚さ、1cm幅)を粘着テープで張り合わせました。
そしてこのコンデンサを、「図:2」のようにセットして、電圧測定器(差動プローブ)を用いて、このコンデンサの入口部から、順次25cm、50cm、75cm、100cm(末端)の位置の電圧変化を測定します。
尚、電源からは、500MHzないしは10MHzの矩形波信号(1V/0V)を1パルス入力した場合での、「図:2」に示しました各々の位置での測定結果を、次の「測定結果:1&2」に掲げます。
先ず、500MHz(発信時間:1ナノ秒)の矩形波信号を電源から、同軸ケーブルへと出力した場合の「測定結果:1」から、その入力側の同軸ケーブルの信号線のみに接続され、且つ、出力側の同軸ケーブルの信号線のみに接続されたコンデンサ内を電流が、測定結果中に破線の矢印で示しましたように、1パルスの電流(発信時間:1ナノ秒)として、順次5ナノ秒強/1bの速度で末端へと進み、その後、又、同じ速度で、末端から、入口部へ戻っていることがはっきりと分かります。
(「図:1」に見ますように、入力、出力の両側の同軸ケーブルのグランド線は互いに直結された状態です)
更に、10MHz(発信時間:50ナノ秒)の矩形波信号の場合は、点線の矢印で示しましたように、500MHzの場合と同じ速度で移動する電流が段階的な電圧変化を生んでいます。
コンデンサ内の電流の流れが、500MHzの矩形波の場合と、10MHzの矩形波の場合では、前者は、1パルス分ごとに観測くされているのに、後者は段階的な変化と観測されている為、一見、両者の流れ方に相違があるように見えます。
しかし、ただ、10MHzの矩形波の場合では、その1パルスの発信時間が、50ナノ秒と長いので、入力部から末端へ進む電流と、末端から入力部へ戻る電流が同時に(重なって)観測される結果として、10MHzの矩形波の場合のコンデンサ内での電圧変化が段階的な形状で観測されただけの話で、両者のコンデンサ内の流れには、根本的な相違はないのです。
そして、従来の「変位電流説」では、コンデンサ内を流れる電流変化は、連続的な変化となってしまい、このようなコンデンサ内を流れる電流のパルス的変化、段階的変化を解釈し、説明することは、全く不可能です。
更には、先の『第15話 コイルの理論も誤解されております』に於ける「図:3」による「測定結果:2」に見ますように、コイルと同様に、コンデンサから、入力側、並び、出力側に等しく且つ符号が正反対の電流が流れることも説明が付きません。
このようにして、従来のコンデンサ理論が誤解の産物であったことが判明するのです。
では、コンデンサに対する新たな理論は何かとは後々お話したく存じますが、先ずは拙著「新『コロンブスの電磁気学』(第4巻) 新たなコンデンサとコイル理論」、或いは、「『コロンブスの電磁気学』(新装改訂カラー版 第1巻)」をご高覧頂きたく存じます。