第14話
トランスの理論も誤解です(交流編)
2016年6月12日 宇佐美 保
前の『第13話』の続きへ移る前に、『第6話 交流も直流も同じ電気(電気は近接作用)』を思い起こしてください。
何しろ「電気は近接作用」(本来は、全ての現象は近接作用で、「電気も近接作用」と書くべきと存じますが)ですから、そこに於ける「図:1」のように、目をつぶってパンチを受ける状態が、前の『第13話 トランスの理論も誤解です』に於いては、目をつぶったトランスの口に「羊羹」を押し込む状態となります。
従って、目をつぶったトランスの口に押し込む「羊羹」は、次の「図:1」のような「羊羹」であっても、「図:2」のように、(例えば)一口分ずつに細分化されていても、トランスの口は「図:1」状態の「羊羹」と同様に反応するでしょう。
(但し、電気の場合は、この「羊羹」の一切れは、非常に細かく、
量子的な大きさ(プランク定数:時間としては、プランク時間、距離(長さ)としては、プランク距離、・・・)までに細分化が可能でしょう。
又、
「図:2」&「図:4」では色分けされていますが、隣接信号の分離識別が容易になるように着色しました)
そして、交流としての「羊羹」をトランスの口に押し込む場合も、矩形波信号の場合同様に「図:4」状態で押し込んでも同じ結果となるでしょう。
この件を確認する為に、前の『第13話』に於いて用いたと同じトランスに、交流(1V/-1V)としてのサイン波(10Hzの場合と、50Hzの場合)を、1パルス入力して、『第13話』の「図:1」のようにして、そのトランスの入力部(1次側)との出力部(2次側)の電圧変化を、各々電圧測定器(差動プローブ)を用いて測定し、次の「測定結果:1」を得ました。
そして、この結果を見ますと、前の『第13話』の場合に、連続波としてのサイン波をトランスに入力したと同様に(今や、当然の結果として)「1次側と2次側の電圧波形」は「同位相」、そして、同形であり、先の矩形波(直流の断片)を流した場合と同様な結果です。
更には、今回の「測定結果:1」は、サイン波を1パルス入力しているのですから、そのサイン波の半パルス時(測定結果に挿入した青の点線部)、又、1パルス終了時点(赤の点線部)では、ゼロの筈ですが、青の点線部での電圧はマイナス、赤の点線部ではプラス電圧が観測されております。
サイン波の半パルス(プラス波形分)終了時(測定結果に挿入した青の点線部)のマイナス電圧波形の件は、前の『第13話』に於いて、「矩形波」を入力した場合の「測定結果:2」のプラスの矩形波入力後に観測されるマイナス電圧波形と等価であることは言うまでもありません。
一方、前『第13話』の「測定結果:2」で、「マイナスの矩形波」を入力していると、入力波終了後には、当然サイン波の1パルス終了時点(赤の点線部)でのプラス電圧波形の場合同様に、プラス電圧波形が観測されるでしょうから、直流にも交流にも同じようにトランスが対応していることは明らかです。
(追記)
トランスに関して、世の中を闊歩している従来説の代表的な例として、雑誌Newton別冊「電力」(2012年8月15日(株)ニュートンプレス発行)の中の「送電と変圧」の頁の一部を引用掲載させて頂きます。
この記述では、1次側のコイルを10巻、2次側のコイル2巻すると、電磁誘導(筆者注:「ファラデーの電磁誘導の法則)という現象によって50Hzの交流用トランスとして機能するかの如く紹介されています。
そこで、この雑誌の記述の通りの“1次側に10巻、2次側に2巻”のトランスを、「写真:1」のように、フェライト・コア(外径:13mm、内径:7.5mm、厚さ:5.4mm)に、0.5φのエナメル線を巻き付け作成しました。
写真:1 |
このトランスの1次側へ、50、500Hz、5、50、500KHzの交流(サイン波:1ボルト電圧)を入力し、2次側へは50Ωの抵抗をセットして、1次側、2次側の電圧変化を、電圧測定器(いつものように差動プローブ)を用いて測定し、次の「測定結果:2」を得ました。
この結果に見ます様に、“1次側に10巻、2次側に2巻”のトランスでは、50Hzでは、2次側出力は全く得られず(2mV)、1V入力した1次側の電圧は、(5mV)です。
雑誌Newtonの紹介に基づき、こんな実験を100ボルトの家庭用交流で実験したら、1次側もほぼ0ボルト状態、即ち、ショート状態ですから、配線から火が噴きだしたりしてとても危険です。
そして、今回はサイン波を入力しているのにトランスの1次側の波形を見れば、前の『第13話 トランスの理論も誤解です』に於ける、矩形波入力の場合同様に、その形状は大きく変形しております。
こんな記述を「雑誌Newton」が掲載しているのが、トランスへの一般認識なのでしょう。