小泉純一郎氏とヒトラー
2004年5月9日
宇佐美 保
3月の終わりの、テレビ朝日の「たけしのTVタックル」で、経済アナリスト(?)の森永卓郎氏が、
「戦争は反対、悪い奴等が攻めてきても、何もしない」 |
と宣言していました。
大変立派だと思い、私は感銘を受けました。
この森永発言に対して、舛添要一議員は
“ヒトラーみたいな奴が攻めてきたらどうするのだ!” |
と喚き、評論家の三宅久之氏は
“敵に向かって、スッポンポンで、助かった国の歴史なんか無い!” |
と云ったように、実に品無く喚きました。
(あまり品が無いので、私は、直ぐチャンネルを回してしまいました。)
桝添氏は、ヒトラーの侵略を恐れますが、ヒトラーは最初からヒトラーではなかったのです。
最初はみすぼらしい画家(変人)だったのです。
そして、ヒトラーは、独力で「恐怖の独裁者」へとよじ登ったのではないのです。
「国民の支持」という妖怪が、ヒトラーを「恐怖の独裁者」へと押し上げてしまったのです。
この辺の事情を、週間金曜日(2004.3.12号)に中村敦夫議員が書かれた『ヒットラーもはじめは「ただの変人」だった』のコラムの一部を抜粋させて頂きます。
久し振りに、歯ごたえのある映画を見た。…… 映画の題は『アドルフの画集』である。アドルフとは、アドルフ・ヒットラーのことであり、彼が画家を目指していた若き日の物語だ。 第一次世界大戦の敗戦国となったドイツは、領土を割譲され、巨額の賠償金を課せられた。人々は、貧困と屈辱の日々を送っていた。 敗残兵となって帰国したヒットラー伍長は、軍に籍を置きながら、画家に転身することを夢見て絵を描き続けていた。…… …… ちょうどそのころ、軍隊の内部では、ユダヤ人排斥を唱える民族主義の政治グループが活動を拡げつつあった。 彼らは、あちこちで講演会やイベントを開催し、アジテーションをくり返していた。 ある日のこと、予定されていた弁士が病気で倒れ、代役が必要になった。軍隊の中でのヒットラーは、自己主張が強いだけのただの変人にすぎなかった。しかし、政治グループの幹部の一人が、ヒットラーの押しの強さに目をつけ、代役に起用する。 さしたる政治的主張もなかったヒットラーは、「とにかくユダヤ人の悪口を言え」と指導される。 ヒットラーは言われた通りに演説しているうちに、神がかり的な陶酔状態に陥る。終わってみれば、会場は万雷の拍手と興奮に包まれていた。 「これこそ、芸術が開花する至上の瞬間だ!」 と、他者に認められたことのないヒットラーは狂喜する。…… 歴史の転換期には、時として、ふさわしいリーダーが不在という現象が起きる。権力を狙う勢力は、そこヘピエロを送り込み、彼を操縦しょうとする。しかし、ピエロは物理的に力を持ってしまい、社会全体がとんでもない方向へ暴走する。ヒットラーのような、ただの見すぼらしい変人が、世界をおびやかす独裁者に成長する恐さが表現されている。 自民党も、森喜朗氏が首相になるほど人材が払底し、その後に空白ができた。そして、それまではただの変人だった男がすべり込み、無茶苦茶をやり出した。 |
ヒトラーの如き「恐怖の独裁者」を作り上げるのは、かつてのドイツ国民だけではないのです。
最近の類似例を、9・11事件以降、高支持率を得て、アフガニスタン、イラクを一方的に攻撃したブッシュ大統領に見ることが出来ます。
(幸い(?)ブッシュ氏は未だ「恐怖の独裁者」までには変質していません。
しかし、不幸にも、再度、米国内で、大量に人が殺されたら、変質してしまうかもしれません。)
どんなにみすぼらしい変人でも、一度「恐怖の独裁者」へ変質してしまったら、桝添氏の指摘のように、武力以外に彼を排除出来なくなる?
ですから、私達(世界中の誰も)は、自国から、ヒトラーの如き「恐怖の独裁者」を、愚かな「支持率」を用いて、排出しないように、日々心がけなくてはいけないのです。
従って、尚のこと、私達一人一人は、軍隊で事が解決するという思い込みを心の中から排除することを日頃から心懸けていなくてはならないのです。
この事こそが、桝添氏の
“ヒトラーみたいな奴が攻めてきたらどうするのだ!” |
への回答なのです。
それにしましても、中村議員のご指摘のように、小泉純一郎氏は、全くヒトラーに瓜二つではありませんか!?
小泉氏が、自民党総裁の椅子を亀井氏らと争った際の演説は、“ヒットラーは言われた通りに演説しているうちに、神がかり的な陶酔状態に陥る。終わってみれば、会場は万雷の拍手と興奮に包まれていた”との場面を彷彿とさせるものがありました。
中村氏の記述を付け加えると、“ピエロは物理的に力を持ってしまい”の力を与えるのは大衆なのです。
あまりにも愚かな「国民の支持率」なのです。
「国民の支持率」こそが、ヒトラーに途方もない力を与え、又、今の小泉純一郎氏に絶大な力を与えているのです。 |
そして、この「国民の支持率」には、確たる根拠がありますか?
拙文《小泉首相、改憲を支える世論と空き巣事件》にも書きましたが、世論を形成する今の日本人は何とも愚かではありませんか?
拙文《バカの壁と世論》に引用しました養老氏の御見解によりますと
「政治家は、人間は何処までバカかと読み切って仕事している……」 |
というのですから、国民は簡単に操られて「小泉支持の大合唱」をしている始末です。
拙文《自衛隊と軍隊 どっちが分かり易い?》にも書きましたが、かつて小泉氏は“小中学生にもわかりやすいように「自衛隊を軍隊」とする”旨を発言しました。
本当にこの人はバカでないか!と思いました。
自衛隊は、文字通り「自分達を守る存在」であって大変分かり易いと私は思います。
一方、軍隊は何なのですか?
「なんだか訳の判らない「大義」で、「民主主義を標榜する国」によって、最新の殺戮兵器を使用して、他国の一般市民の大量殺戮、拷問、虐待を行うように命令され、実行する集団」こそが「軍隊」なのですか? |
こんな軍隊の方が、小中学生にとって「自衛隊」よりも分かり易いというのですか!?
この度、イラクに復興支援に赴いた自衛隊の第1次イラク復興支援群長の番匠幸一郎群長は、
心構えとして『義理、人情、なにわ節』は万国共通の概念だ…… |
と指示したと、毎日新聞(2004年2月29日)にも載っていました。
自衛隊だからこそ、『義理、人情、なにわ節』が発揮出来るのではありませんか!?
軍隊となってしまっては、こんな事云っていられないでしょう。
(今回イラクで人質になられた高遠さん今井さん郡山さんらの世界も『義理、人情、なにわ節』だったのだと私は思います。)
米国人だって、日本人だって、(かつてヒトラーを支持したドイツ人だって)同じ人間です。
軍隊となったら、やることは何処の国でも同じです、それこそ万国共通です。
(悲しいことに、虐殺、虐待、拷問、何でも有りです)
『義理、人情、なにわ節』は万国共通の概念だと云っていられなくなるのです。
そして、世界最強の軍隊を持つ米国が、その軍隊を、万国共通手段を駆使して、どういう結果を勝ち得たのですか?
ベトナムで?アフガニスタンで?そして、又、イラクで?
みんな惨めなものではありませんか!?
なのに何故、今、日本が軍隊を持たなければならないのですか!?
可笑しいですよ!
冷戦が終了した今、軍拡を叫んでいるのは、軍事産業に癒着したブッシュ政権の米国だけではありませんか!?
そして、わが国の首相が、こんなブッシュ政権のポチと成り下がって良いのですか!?
そして、ポチの号令の下、「改憲」に踊っていて良いのですか!?
イラクで、今まだ、日本の評判が他国に比べて良いのは、日本が曲がりなりにも「平和憲法」を護ってきたからではありませんか!?
私は、「戦争は反対、悪い奴等が攻めてきても、何もしない」との森永卓郎氏発言を支持します。
では、自衛隊をどうする?
「張り子の虎的存在」で良いのでは?!
自衛隊に30年居られた作家の浅田次郎氏が『それでも私は戦争に反対します:平凡社発行』に次のように記述されています。
おまえも寒さには慣れているだろうが、イラクの夏はひどく暑いらしい。何でも暑さの世界記録は、バスラで観測されたそうだ。信じられるか、摂氏五八・八度だとよ。 あのな。ロートル小隊長の最後の命令を聞いてくれるか。 おまえ、撃たれても撃ち返すな。橋や学校をこしらえていて、もしゲリラが攻撃してきたら、銃を執らずにハンマーを握ったまま死んでくれ。 正当防衛も、緊急避難もくそくらえだ。他人を殺すくらいなら、自分が死んでこその人間じゃないか。 自衛隊は世界一猥褻な、世界一ぶざまで滑稽な軍隊だけれど、そんな俺たちには誰も気付かぬ矜りがある。それは、五十何年間も戦をせず、一人の戦死者も出さず、ひとつの戦果さえ挙げなかったという、輝かしい不戦の軍隊の誇りだ。 GHQと戦後日本政府がこしらえたおもちゃの兵隊が、実は人類の叡智の結晶ともいえる理想の軍人であることを、ブッシュにも、無能な政治家どもにもわからせてやれ。 いいか。俺は昔の戦で死んだ大勢の先輩たちと、ほんとうの日本国になりかわっておまえに命ずる。 やつらの望んだ半長靴を、人間の血で汚すな。われらが日章旗を、人間の血で穢すな。誰が何と言おうと、俺たちは人類史上例を見ない、栄光の戦わざる軍人である。 復唱せよ。 |
私は、この文章を読み涙が止まらなくなりました。
今も溢れてきます。
私は、小泉氏のアホな発言よりも、この浅田氏の文章こそを、小中学生の教科書に載せて頂きたいと存じます。
最近は、おかしな言葉「普通の国」が跋扈しています。
そして、この言葉を「日本も普通の国のように軍隊を持て」に結論付けています。
軍隊などと云う、国家的殺戮集団を持つことが普通の国ですか!?
異常な国ではありませんか!?
過去から決別出来ない国が軍隊を持っているだけではありませんか!?
そして、そのような国には、冒頭に掲げました評論家の三宅久之氏の“敵に向かって、スッポンポンで、助かった国の歴史なんか無い!”如き発言が飛び交っているのでしょう!
過去は過去です。
これから、日本も、世界も、どうするかが重要です。
それを世界に指し示しているのが、“GHQと戦後日本政府がこしらえたおもちゃの兵隊が、実は人類の叡智の結晶”との浅田氏の見解ではありませんか!
なのに、ヒトラー気取り(?)の小泉氏は、この「栄光の国のおもちゃの兵隊」を「いわゆる普通の国の本物の兵隊」としようとしているのです。
そしてわが国には、もう一つの「平和憲法」と云う人類の叡智の結晶があるではありませんか!
勿論、「絵に描いた餅」的存在(そして又、『義理、人情、なにわ節』的存在)かもしれませんが。
しかし、変人達は、この人類の叡智の結晶を捨て去ろうとしています。
何故?
変人達は、軍事同盟である、「日米安保条約」にそぐわないから等をほざきます。
だったら、人類の叡智の結晶である「平和憲法」を変えるのではなく、鬼子的存在の「日米安保条約」を米国に返上されたら良いではありませんか!?
この様に人類の叡智の結晶である「おもちゃの兵隊」や「絵に描いた餅」を捨て去ろうと企む、変人狂人を、一刻も早く権力の座から引きずり下ろさなくてはなりません。
ではどうやって?
それには、国民の圧倒的支持率という強力な武器を持つ相手ですから、その武器を取り上げなくてはなりません。
勿論、私は、小泉降ろしには民主党の力を借りるのが手っ取り早いと思った訳です。
そして、養老孟司氏のお教えの如くに大多数の国民は自らバカの壁を乗り越えようとしませんから、いくら理論的に説得しようともそれは徒労に終わってしまいます。
そこで、拙文《「年金」で「自己責任」を負わされる国民》にも書いたのですが、民主党に次のメールを打ったのです。
民主党は、最も簡単の、小泉流のワンフレーズで勝負すべきなのです。 「国民年金」「厚生年金」は役人と自民党に食い潰された、その証拠には「共済年金は」黒字経営だ! こんな自民党体制を打破しなければ「年金の明日はない!」と訴えるのが肝要なのです。 今の時点は、民主党案などは、暫くお蔵に入れておくべきです。 もっとバカを相手にしていることを意識すべきです。 |
でも、勿論、民主党からは何の音沙汰もありませんでした。
そして、菅氏は、自身の年金未払いまでが発覚したのに、未練がましく、“民主党の年金改革案を実現するのが自分の使命だ”と抜かしています。
どんな改革案を打ち立てても、それを食い潰す年金官僚、年金議員がいたら、又、同じ事です。
民主党は何を考えているのでしょうか?
でも、もしかしたら、
民主党議員の中にも、年金の不正が暴かれたら困る、年金官僚や自民党議員達と同じ穴の狢がいるのかしら |
と、私は、今の時点になって疑い始めているのです。
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