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株価が上がったと喜ぶ愚

200433

宇佐美

 

 200432日付けのasahi.comには次のような記述がありました。

 

日経平均、連日の昨年来高値更新 終値は90円高

 

2日の東京株式市場は、外国人投資家の大幅な買い越し基調から朝方に大きく値を上げた。いったんは前日の終値水準まで下げたが、取引終了間際にかけてまとまった買い注文が入り、日経平均株価は2日連続で昨年来の高値を更新した。

 東証1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)の終値は前日比9.15ポイント高い1116.75。日経平均は同90円39銭高い1万1361円51銭で取引を終えた。出来高は16億8000万株と連日の大商いとなった。

 欧米の外国人投資家が前日に続いて市場をリードした。市場では「個別の銘柄、業種ではなく、日本株全体の比率を高めようとしている」(外資系証券)という見方が広がっている。引き続き内需関連株が上昇。4大銀行株がそろって値を上げ、不動産株などに買い注文が集まった。

 

 私はこのような記事(この背景には、景気動向、政府の経済対策の成果を、「日経平均」や「TOPIX(東証株価指数)」が上昇することで良しとしている姿勢が存在している)を常に苦々しい思いで見ています。

 

 何故?誰が?「日経平均」や「TOPIX(東証株価指数)」が上昇することによって利益を得るのですか?

今朝の新聞を見ると、東証第一部の利回りは、1.07と出ています。

こんな低い利回りは、先のasahi.comの“TOPIX(東証株価指数)の終値は前日比9.15ポイント高い1116.75……”を見れば、1日か数日の株価の上昇下降の中に埋没してしまいます。

ですから、今まで拙文《株価音痴の政治家と田原総一朗氏》、《日本の株価は未だ高い》、《日本の株価は未だ高い(2》、《日本の株価は未だ高い(3》で、訴え続けてきましたように、日本の株価は高すぎるのです。

 

 そして、先の記事にありますように「欧米の外国人投資家が前日に続いて市場をリードし」株価の上下動を画策して、売買差益で荒稼ぎしたり、一般投資家に“株は利回りでなく、売買差益で儲けるのですよ”と声を掛け、売り買いを頻繁に行うことを勧めて、濡れ手で粟の手数料をがっぽりと証券会社などが儲けるのです。

 その結果、馬鹿を見るのは、私達一般投資家です。

その上、私達の大事な厚生年金の積立金を、天下り役人達がこんな株に投資して、大穴をあけてしまった体たらくです。

更に、政府は株価対策だと云って、この大事な年金積立金を株の買い支えに使用してしまう始末なのです。

 

 こんな状態ですから、金持ち投機家は、私達の投資金、年金積立金、ひいては税金を食い物にして生きている吸血鬼のような存在に見えます。
(「投機」は投資と異なり、「資本が生産の実を付けない資本主義のあだ花」であると私は認識しています。)

 

 222日のテレビ朝日の番組(サンデープロジェクト)で、キャノン第6代社長の御手洗富士夫氏(社長就任時(1995年)に、有利子負債が8400億円あったキャノンを、今や、4年連続最高益を更新して、電機業界トップに押し上げ、ビジネスウィーク誌で2002年そして2003年と「世界のベスト経営者」に選ばれた)は、次のように語っていました。

 

アメリカ赴任して最初の年、税務署員から“企業は利益を生まなければ何の意味もない。売掛金を全部回収して定期預金にして日本に引き揚げなさい”と云われた。

……

米国キャノンの1966年の決算では、売上高が300万ドルに対して、利益は6000ドル(0.2%)しかかなかった。

なにしろ、当時の定期預金の利率は5%ですから、定期預金の金利以上儲けなければ、わざわざビジネスする価値がないと云うことなのです。

 

 そこで、会社の目的を

1.      社員の生活の安定向上

2.      投資家への利益還元

3.      社会的責任

4.      自己資本の確保

と定め、投資家への利益還元に心がけている。

 

 しかし、御手洗社長が投資家への利益還元に心がけて「株の配当金」を増額して下さっても、株高の中に埋没してしまうのです。

 

 定期預金金利が御手洗氏の米国キャノンに於ける利益率0.2%以下である今の時代、儲けているのは誰ですか?

 この低金利で私達の預金を思う存分吸い上げ、国や公的機関をもカモにすべく、その多額な資金で株価や地価を思うように操り、「売買差益」で利益を貪る一部の金持ち達ではありませんか?

(本当に、今の世の中は、彼等にとっては申し分ない時代なのでしょう。)

 

 ですから御手洗社長が「投資家への利益還元」との原点回帰をされたように、株も「売買差益主義から、利回り重視主義」へと原点回帰すべきなのです。

 

 従って、少なくともマスコミは、株価上昇を歓迎する金持ちの提灯持ち的な報道は、絶対に慎むべきなのです。

 

 更に、政府公的機関は株価対策などしてはいけないのです。

更には、円高になると「為替差損で利益が無くなる」とトヨタの奥田経団連会長などは、為替の介入を政府に唆します。

しかし、円安の時には「利益が出すぎて困る、何とかしてくれ!」と奥田氏は政府に泣きつきましたか?

或いは、配当金をアップしようとか!?(今日現在トヨタの利回り0.92%)

おかしいではないですか?

 電気やガス会社などは、円高差益分として、雀の涙ほど(数十円/月でしたっけ)を私達の家計に返却してくれます。

 

 しかし、こんな事よりも、輸出会社と輸入会社とで、各社の予算編成時に外貨協定でも結んで、お互いの外貨(証文)を交換するようにでもしたらいかがでしょうか?

(円高、円安時の各々の損得は相反しているのですから、年間の為替の落ち着きどころを予算編成時に相談して決めたらいかがですか?)

 

 為替の件はともかくとして、株価に関しては、私達の投資が、個人年金として、又、公的年金として、株の利回りで十分の効果が期待出来る株価に下落するまではマスコミは沈黙し、いわゆる高官談話も廃止して、公的機関は(勿論、私達も)株に手を出すのを控えるべきと存じます。

 さすれば、カモのいなくなった株式市場で金持ち達は共食いを始め、その結果いつの日か株価が利回りが重視される価格へと下落、回帰してくることが期待出来るのでは?とはかない期待を抱いているのです。



(補足:2004317日)

 

本当に株価が上がったら世の中ハッピーになりますか?

私はそうは思いません。

一寸した例を考えてみましょう。

今の株価が1万円で、配当利回りが1%であるとします。

この株価が、(突然)3万円に値上がりしたとします。

となりますと、利回りは、0.33%へと下落してしまいます。

(とても悲しい事ではありませんか?)

 

 おいおい何を寝ぼけた事云ってるんだ!

値上がりしたんだから、売れば莫大な儲けだ!

 

 でも、そんな高い株売れますか?(しかも配当は殆ど期待出来ない!)

誰が買うのですか?

何を云うの!株は売買差益だよ!また、値上がりするんだよ!

 

 でも、株価が100円の値上がりした場合を考えてみましょう。

株価が1万円の時ならで、1%(=100円/1万円)の売買差益が出ます。

しかし、株価が3万円に上がっていたら、0.33%(=100円/3万円)にしかなりません。

同じ売買差益を出すには、300円の値動きが必要です。

値下がりでは損失ですから、当然値上がりを期待します。

 

 そして、いつの日か、株価は5万円にアップしてしまったとします。

(もう利回りは全く期待出来ませんから、頼りになるのは、売買差益だけです。)

今まで、1万円投資すれば儲けていた売買差益の利益を得る為に、5万円と今までの5倍も投資しなければならないのです。

そして、5倍の500円の値動きを期待しなければならないのです。

こんなにも投資効率の悪い株を誰が買うのですか?!

(そんな事云っても、「株価に見合う分だけ会社には土地などの資産があるから大丈夫」とバブル前は云われつつ、株価は上昇しました。

しかし、その会社が倒産すれば、そんな資産は、債権処理に回され株主へは廻ってこない事を私達は勉強したはずです。)

 結局、値上がりの最後は、誰も買い手が付かなくなって暴落するのです。

 

 ですから、「株価が上がったと喜ぶ愚」となってしまうのです。

そして、株の本道は配当利回りなのです。

配当利回りを無視した株への投資は、あくまでも投機なのです。

否!投機と云うより、賭博なのです。

(只、若干ながら経済情勢もある程度は考慮しますから、サイコロ、花札、バカラやポーカー賭博と云うより、血統馬体なども考慮観察する競馬に近い存在でしょう。)



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