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日本の株価は未だ高い(2

2003226

宇佐美 保

先週22日(土)の「パックイン・ジャーナル」(朝日ニュースター)にて、経済評論家と名乗る紺谷典子氏が“竹中大臣の失政で株価が暴落して、その不当に安くなった株価のために、相対的に配当利回りが上がり76%の株が沢山出てきた”旨を発言していたので、東洋経済発行の「(会社)四季報(2002123日データ)」に掲載されている高配当株上位100銘柄程度を順次インターネットで調査しました。

(結果の表は、文末の「補足:1」に掲載します)

 

調査判明した分は50銘柄の内、東京証券所扱いの銘柄は、12社しかなく、ジャスダック銘柄(設立からあまり時間がたっていない企業や、現在は赤字でも将来性のある企業の資金調達を後押しし、新たな成長企業を産み出す狙いで設立されている株式市場の銘柄)が殆んどであった。

 

又、東京証券所扱いの銘柄のうち、PERが約15倍以下の実力で、4%以上の配当をしている銘柄は、4銘柄しかなかった。

(「PER」=(株価)/(予想1株当たり利益)

なお、この「PER」の説明については、本文の最後に(補足として書き加えます))

他の8銘柄は、赤字なのに4%以上の配当をしたりしている。

調査した全銘柄を見ても、実力で4%以上の配当をしているのは18銘柄(青数字)、赤字とか高いPERなのに高配当をしている銘柄は21銘柄(赤数字)。

 これでは現在の株価が安すぎるとはとても判断出来ない。

移動平均株価(前述の資料「配当高利回りの調査」をご参照下さい)を見ても、いまの株価が異常に低過ぎるなどとはとても言えないし、現在の株価が従来より安い原因は、竹中大臣の失政とはとても言えない。

逆に、現在の株価の値下がり状況は、株価にとっては、本来あるべき価格に下がって行く望ましい傾向であると言える。

(この点は、「日本の株価は未だ高い:2002927日」にも述べたとおりです)

 次には、証券会社に出向いてみました。

そこには、「低金利時代だからこそ、配当利回りに注目した銘柄選択が、株式投資の魅力を倍増する」と言うパンフレットがおいてあり、次のグラフが掲げられておりました。

そのグラフには、5%以上の利回りが、4銘柄と認められました。

 そこで、カウンターに行き、“利回り5%以上の銘柄を教えてください” と依頼しましたら、パソコンを操作して下さって、次に表:1として掲げる「高配当利回り株(好業績・財務安定・割安)をプリントアウトして下さいました。

 

 しかし、この表には、5%以上の利回りの銘柄はありませんでした。

2.97%の北陸電力が最高の利回りでした。

なにしろ、私がインターネットで調べた高配当銘柄(そのうち東京証券所扱いで、赤字ではない銘柄)は、佐世保重工(6.02%)と、宮地建設(4.44%)だけで、この2つの銘柄とも、私の訪ねた証券会社は、客に進められる銘柄とは判断されていないのでしょう。

(失礼ながら、私も、食指が動きません)

:1 高配当利回り株(好業績・財務安定・割安)

ランク

銘柄

株価

配当/一株

PER(連結)

1

9505北陸電力

1682

  297

 168

2

9504中国電力

1815

  276

 140

3

5105東洋ゴム

260

  269

   86

4

1820西松建設

340

  265

 163

5

7981タカラスタン

492

  264

 197

6

6462リケン

287

  261

 90

7

7231トビー工業

204

  245

 119

8

8140リョーサン

1250

  240

 122

9

7232トキコ

347

  231

 109

10

9825アズウェル

456

  219

 182

11

1881日本鋪道

556

  216

 171

12

7223関東自

609

  214

   41

13

7437CアンドS

1500

  213

 112

14

8032紙パル商

330

  212

 189

15

1878大東建託

2360

  212

 131

16

8242阪急百

609

  205

 128

17

8132シナネン

445

  202

 120

18

8251パルコ

402

  199

 128

19

8276平和堂

1010

  198

 148

20

9946ミニストップ

1775

  197

 118

21

6206豊田工機

508

  197

 135

22

5101横浜ゴム

308

  195

 103

23

4403日本油脂

309

  194

 179

24

8266イズミヤ

518

  193

 188

25

4612日ペイント

318

  189

 146

26

8168ケーヨー

667

  187

 169

27

4078堺化学

322

  186

 138

28

8028ファミリM

2040

  186

 154

29

8217オークワ

1084

  185

 153

30

7221トヨタ車体

1194

  184

   54

31

4527ロート製薬

850

  177

 163

32

4613関ペイント

340

  177

 147

33

2264森永乳業

343

  175

 161

34

3002グンゼ

436

  172

 193

35

4634東洋インキ

349

  172

  179

36

8281ゼビオ

1721

  170

  169

37

9062日本通運

470

  170

  200

38

2871ニチレイ

356

  169

 188

39

9531東京瓦斯

362

  168

  175

40

7276小糸製作

483

  166

  121

41

9072日梱包

906

  166

   97

42

8154加賀電子

1513

  165

 133

43

4206アイカ工業

790

  165

  135

44

8270ユニー

977

  164

  139

45

8131ミツウロコ

611

  164

  154

 

 更には、インターネットを使い「時価総額ランキングベスト10」の銘柄を調べてみました。

その結果は、次の表:2に示します。

:2 時価総額ランキングベスト10の利回り

ランク

銘柄

株価

利回り

PER

(株価収益率)

ROE

(株主

資本利益率)

1

NTTドコモ

228,000

0.13

/A

-12.1

2

トヨタ

2,830

1.00

16.44

8.3

3

NTT

426,600

1.18

/A

1.67

4

ホンダ

4,230

0.66

11.36

10.46

5

ソニー

4,540

0.56

269.6

1.59

6

日産自動車

889

0.91

10.7

11.19

7

武田

4,380

1.37

16.57

16.03

8

キャノン

不明

不明

不明

不明

9

三菱東京FG

538,000

1.12

/A

/A

10

東電

2,300

2.35

15.26

9.47

 

 この表では、東電の2.35%が最高で、後は皆1%台かそれ以下です。

 こんなにも低配当なのに、何故紺谷氏は、“株価が、竹中大臣のお陰で下がってしまい、その為に、76%の高配当利回りの銘柄が市場には発生している。なのに、竹中氏が煽る不安感の為に、そんな株でも買われていない”旨を発言するのでしょうか?

 

 そして、こんな低配当である日本の株を誰が相手にするのですか?

そして、こんな日本の株が“竹中大臣が辞めれば、日本の株価は直ちに上がる” と何故紺谷氏は発言するのでしょうか?

 

 そして、紺谷氏は、今の日本の株安を竹中大臣にかぶせていますが、130日付けの日本経済新聞に載っている右にコピーして掲げた「日米の経済状態」を比較したグラフを見ても、現在の株安を竹中大臣に押し付けるにはあまりにも理不尽であると誰もが気が付く筈です。

そして、誰もが、「紺谷典子氏がインチキ経済評論家である」事に気が付く筈です。

 

(補足:1

銘柄

取引所

本日の

株価(円)

10年来の最高株価(円)

配当利回

(%)

最高の年月日

最高株価

佐世保重工

東京

75

93.05.24

622

6.02

日本ケンタッキー

東京

2,740

93.05.25

2980

4.3

リーバイス

ジャスダック

855

93.10.12

4500

5.88

明光商会

ジャスダック

912

96.09.11

5000

2.17

セザール

東京

54

94.03.17

2300

4.81

ヤマックス

ジャスダック

91

96.01.19

1210

5.38

ウッドフレ

ジャスダック

314、000

01.02.02

850、000

3.17

リベレステ

ジャスダック

44、000

01.05.23

2、300、000

6.82

ラオックス

東京

240

99.12.16

1,000

4.26

東邦建

ジャスダック

94.12.19

1,500

3.97

内海造船

東京

70

00.06.30

150

0.00

中央運輸

ジャスダック

187

96.06.05

1,490

5.65

日建工学

東京

93.10.06

1,130

4.90

山大

ジャスダック

90

95.02.20

1,180

3.23

プラマテル

ジャスダック

338

02.02.14

610

4.41

三信建設

ジャスダック

110

93.05.12

3,180

4.85

倉庫精練

大阪

93.05.13

1,170

0.00

久世

ジャスダック

300

01.11.02

960

5.08

ヤギコーポ

ジャスダック

93.10.13

4,100

4.92

中央物産

ジャスダック

175

94.11.07

1,530

4.47

平賀

ジャスダック

 

01.02.20

860

2.33

宮地建設

東京

140

93.05.24

1,150

4.44

ステップ

ジャスダック

921

96.01.23

3,340

4.43

ダイテック

ジャスダック

 

96.07.02

7,060

5.10

テノックス

ジャスダック

93.01.29

5,900

4.83

加藤製作所

東京

128

93.06.03

855

3.94

タカセ

ジャスダック

220

94.11.07

1,350

4.77

北陸ミサワ

ジャスダック

99.07.06

970

4.96

大隈エンジニアリング

名古屋

93.05.28

635

4.58

松本建工

ジャスダック

312

96.12.18

4,800

0.00

東栄リーファ

ジャスダック

 

93.10.01

1,340

4.48

大豊建設

東京

130

94.01.31

1,180

4.69

石光商事

ジャスダック

478

03.02.17

493

2.11

田中亜鉛鍍金

ジャスダック

117

97.02.27

585

4.17

住商メタ

ジャスダック

01.07.05

915

4.59

三幸

ジャスダック

01.11.05

570

4.85

DMS

ジャスダック

412

99.11.11

2,780

4.75

大成温調

ジャスダック

230

93.05.07

2,790

4.17

インボイス

ジャスダック

183,000

02.02.15

922、000

2.92

原弘産

大阪

243,000

01.10.15

325、000

3.04

エスイー

ジャスダック

99.07.12

1,610

4.55

大伸化学

ジャスダック

96.07.09

3,900

4.76

ビスケー

ジャスダック

440

97.07.03

2,700

8.54

白銅

ジャスダック

449

01.02.15

3,400

3.40

サンヨーハ

東京

471,000

02.07.23

501、000

4.18

アリサカ

ジャスダック

413

02.10.10

470

3.55

テイン

ジャスダック

780

02.04.24

926

3.05

東京都民銀行

東京

1,125

93.05.00

7,400

0.00

アグロカネ

東京

00.09.11

910

5.10

ジャスダック

483

96.07.05

1,360

4.14

 

銘柄

PER

(倍)

ROE

(%)

移動平均株価

5日

25日

75日

200日

佐世保重工

5.62

10.34

84

80

75

90

日本ケンタッキー

45.48

4.3

2735

2723

2725

2717

リーバイス

17.43

11.84

841

864

868

774

明光商会

33.84

1.68

920

895

814

815

セザール

/A

-58.87

54

45

40

60

ヤマックス

/A

2.98

93

92

88

103

ウッドフレ

43.17

3.83

314,400

328,252

282,107

312,040

リベレステ

3.80

8.45

44,060

42,984

46,173

63,948

ラオックス

/A

-3.44

235

218

196

237

東邦建

/A

-9.95

121

121

114

131

内海造船

/A

-29.37

68

63

54

55

中央運輸

19.14

1.32

205

200

188

210

日建工学

/A

-2.18

207

196

187

206

山大

/A

-8.66

89

89

79

83

プラマテル

8.62

/A

331

323

293

320

三信建設

39.62

0.46

106

109

100

119

倉庫精練

5.74

9.60

114

110

99

102

久世

4.85

/A

301

301

302

404

ヤギコーポ

23.47

1.41

313

303

293

310

中央物産

43.20

2.16

179

178

166

189

平賀

7.32

9.70

634

625

596

589

宮地建設

18.75

1.72

136

129

120

126

ステップ

6.50

9.59

915

927

883

880

ダイテック

11.16

4.89

993

973

956

1,016

テノックス

/A

-0.57

205

201

196

202

加藤製作所

73.83

0.35

130

123

104

122

タカセ

/A

-0.93

217

213

207

210

北陸ミサワ

7.26

6.24

261

260

261

270

大隈エンジニアリング

4.00

8.49

119

110

109

125

松本建工

/A

-10.16

311

299

289

279

東栄リーファ

5.36

13.06

335

321

297

306

大豊建設

20.60

1.71

135

135

122

129

石光商事

4.67

/A

481

458

/A

/A

田中亜鉛鍍金

/A

-10.39

121

115

108

139

住商メタ

8.53

7.80

380

405

381

446

三幸

6.66

6.43

404

394

396

444

DMS

7.66

6.13

416

407

398

444

大成温調

/A

-6.06

246

250

223

243

インボイス

13.70

/A

179,600

189,840

172,400

195,575

原弘産

8.01

/A

240,600

237,480

209,987

214,779

エスイー

21.03

2.48

330

333

303

300

大伸化学

11.55

4.79

422

416

390

374

ビスケー

818.36

0.84

562

630

665

704

白銅

12.31

6.42

453

424

378

512

サンヨーハ

5.13

/A

464,400

449,720

423,400

/A

アリサカ

4.48

/A

424

406

399

/A

テイン

8.86

/A

746

693

549

518

東京都民銀行

/A

-8.74

1,160

1,068

997

1,022

アグロカネ

64.08

0.39

396

393

404

462

13.03

5.04

483

481

443

463

 

 

(補足:2

PER」については、「日本の株価は未だ高い:2002927日」にも書きましたが、ここにその一部を、抜書きいたします。

文芸春秋2001年5月号に神谷秀樹氏(ロバーツ・ミタニLLC会長 フランス国立ボンゼジョセ大学客員教授)は「それでも日本の株価は高すぎる」の中で、“株価をはかる世界基準は、株価収益率(PER)で、PERの適正な値は、歴史的に見て15倍”と書かれています。

そこで、日経のホームページから、「PER」を調べますと、“……株価を予想1株当たり利益(予想最終利益を発行済み株式数で割ったもの)で割って算出……”と書かれています。

式で書きますと、「PER」=(株価)/(予想1株当たり利益)

この「PER」のままでは、何の意味かが分かりにくいのですが、「PER」の分母と分子を引っくり返して、1/「PER」を考えるのです。

即ち、1/「PER」=(予想1株当たり利益)/(株価)

を考えてみると直ぐ分かります。

この値から、該当する会社が、株主が株価に対して支払った金額に対して何%位の利益を上げてくれるのかが分かるのです。

そして、その利益の中から、会社は株主に配当金を払うのです。

従って、「PER」の妥当値が、15ということは、1/「PER」の妥当値が、1156.67

この中から配当金が支払われます。

(会社の状況によっては、この6.7%を株主配当にまわさずに一部を設備投資などに回したりするでしょう)

ですから、最大、6.67%の利回りとなります。

このような事から分かりますように、「PER」も実質的には、利回りを問題にしているともいえるのです。




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