幣原総理の平和への願い
2016年3月8日
宇佐美 保
「平和アレルギー」お方も居られましょうから、
先ずは先に拙文《ケネディ大統領の話し合いによる平和(3)》にも引用させて頂いた
アメリカン大学での有名な演説の一部を再掲いたします。
あまりにも無知がはびこり、真実が理解されていない。 世界で最も重要なテーマは「平和」です。 我々はどんな平和を求めているか? アメリカの兵器がもたらすアメリカ支配による平和ではありません。 墓場の平穏でもなければ、奴隷の安全でもないのです。 私が言いたいのは、「真の平和」 価値ある生活を実現する平和です。 戦争に絶望し、平和到来を願う思慮深い市民一人一人が、 先ず、平和に対する態度です。 多くの人が平和の実現は不可能だと考えています。 それは危険な敗者の考えです。 そこから導かれるのは、戦争は避けがたく、 しかし、人間が生み出した問題は、人間の手で解決できるのです。 |
このケネディの言葉をはっきりと頭に刻み込んで頂きつつ、
幣原喜重郎総理(当時)の平和への思いを
お読み頂きたく存じます。
“平和に対する態度です。
多くの人が平和の実現は不可能だと考えています。
それは危険な敗者の考えです。” |
『幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について - 平野三郎氏記』との
貴重な資料は、『みんなの知識 ちょっと便利帳』
をクリックすると、その全文を目にすることが出来ます。
その一部をここに抜粋掲載させて頂きます。
(抜粋といっても少し長いので、色付き文字部を拾い読みしてみて下さい。
はしがき
この資料は、元衆議院議員平野三郎氏が、故幣原喜重郎氏から聴取した、
……
昭和三十九年二月
憲法調査会事務局
第一部
私が幣原先生から憲法についてのお話を伺ったのは、昭和二十六年二月下旬である。
問 ……実は憲法のことですが、私には第九条の意味がよく分りません。
答 いや、そうではない。あれは一時的なものではなく、
問 そうしますと……軍隊のない丸裸のところへ敵が攻めてきたら、どうするという訳なのですか。
答 それは死中に活だよ。一口に言えばそういうことになる。……
たしかに今までの常識ではこれはおかしいことだ。
問 しかし日本だけがやめても仕様がないのではありませんか。
答 そうだ。世界中がやめなければ,ほんとうの平和は実現できない。
……僕は世界は結局一つにならなければならないと思う。
そういう世界は歴史上存在している。ローマ帝国などもそうであったが
要するに世界平和を可能にする姿は、
問 ……日本のような敗戦国がそんな偉そうなことを言ってみたところでどうにもならぬのではないですか。
答 ……君の言う通り、正にそうだ。しかし負けた日本だからこそ出来ることなのだ。
恐らく世界にはもう大戦争はあるまい。
……
そこで軍縮は可能か、どのようにして軍縮をするかということだが、
要するに軍縮は不可能である。……
一、二、三の掛声もろとも凡ての国が兵器を海に投ずるならば、忽ち軍縮は完成するだろう。
ここまで考えを進めてきた時に、第九条というものが思い浮かんだのである。
最初それは脳裏をかすめたひらめきのようなものだった。
……何のために戦争に反対し、何のために命を賭けて平和を守ろうとしてきたのか。
非武装宣言ということは、従来の観念からすれば全く狂気の沙汰である。
要するに世界は今一人の狂人を必要としているということである。
世界史の扉を開く狂人である。
その歴史的使命を日本が果たすのだ。
……僕は第九条によって日本民族は依然として神の民族だと思う。
……
この考えは僕だけではなかったが、国体に触れることだから、
そこで僕はマッカーサーに進言し、命令として出して貰うように決心したのだが、
元帥が躊躇した大きな理由は、アメリカの戦略に対する将来の考慮と、
日米親善は必ずしも軍事一体化ではない。
好むと好まざるにかかわらず、世界は一つの世界に向って進む外はない。 |
無刀流
米国人とは異なり、武器を持たない日本人
誠に日本的な「平和憲法」ではありませんか!
なのに「憲法調査会」に於ける改憲派諸氏の発言は聞くに堪えません。
例えば、早稲田大学教授の吉村正氏の発言は次のようです。
たとえ内容がいいものであっても、我が国が完全な独立を回復した今日、 我々の手で作り直すのは当然の要求だ。 |
幣原氏の”あれは一時的なものではなく、長い間僕が考えた末の最終的な結論” |
とのご発言内容をお読みになったのでしょうか!?
又、公職追放組である広瀬久忠参議院議員の発言を掲げます。
現行憲法の平和主義は非常に高い理想であるが、 それは理想倒れであって、実際の政治には合致しない。 |
更には、改憲派の潮田江次氏(政治学者)は次の発言です。
アメリカのハイスクールの作文だと申しましたが、 みっともない前文なので是非変えて頂きたい。 |
この件に関しては、一人で舞台を務める芸人の松元ヒロ氏は、「憲法くん」との演目中、
憲法の前文を、一字一句、声を上げて謳い上げ、人々に感動を与えてくれます。
何処が「みっともない前文」なのでしょうか!?
更には、
「私は日本国憲法。みなさんの理想だったじゃないですか。 理想をどんどん現実に合わせて引き下げちゃっていいんですか?」―。 |
(但し、このYou Tubeでは、ここの部分はカットされております)
と、舞台から訴えておられました。
高く掲げた理想に向かって日々努力するのが、私達の人生ではないのでしょうか!?
(もう一度、ケネディの演説を思い起こしてください)
ところが、改憲派の聞くに堪えない発言の中で、評論家の坂口志保氏のご発言は、実にご立派でした。
戦争と敗戦の責任を負う私たちが
私達はもう少し謙虚であっていい、
今になって戦争も敗戦の責任も自分たちにないようなことを言う。
そして、将来の世代の為に、憲法改正が自分たちの使命だと聞かされると、
そういう人たちが何故あの戦争を止めることが出来なかったのか? |
この坂口氏の問いかけに、改憲論者(公職追放組)は真摯に答えるべきです。
更に、今回憲法調査会の音声データを発見したジャーナリストの鈴木昭典さんの言葉は次のようです。
16歳の時、新聞で新憲法について知った。
当時の一面に、象徴天皇、主権在民、戦争放棄、いわゆる3原則が踊っていた。
当時の国民にとっては、すごい贈り物だし、励みにもなった。
(憲法調査会では)新しい時代が始まっているんだという感覚がほとんどない人がしゃべっている。 |
アベ氏は、この「幣原総理のご見解」などを御存じなのでしょうか?
御承知の上で、改憲を口にするとしたらアベ氏
(又、類は友を呼ぶの喩えのごとく、アベ氏の周辺に集まっている方々)は、
「軍産複合体」の操り人形と判断されて然るべきです。
私は、幣原総理の「平和憲法」は、「奇跡の憲法」と認識し、
拙文《平和憲法は奇跡の憲法》を掲げましたのでご参照頂けましたら幸いです。
(追記)
フリー百科事典ウィキペディアで「平野三郎」を検索しますと、
……思想家の内田樹は元女婿。
の文言を見ます。
だとしましたら、内田氏は、今でも多くのご見解を発信されておられるのですから、 |