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2011323

宇佐美 保

 長年続いた自民党政権が転覆して、何とか民主党政権が誕生したと思ったら、未だ未だよちよち歩きしかできないのに、自分の議員としての立場を、まるで銀の匙か金の匙かのように錯覚してしっかり握りしめようとするばかりに、何も手がつけられないような情けない状態(それでも、私は、自民党から変わって良かったと思っています)に対して、政治評論家マスコミは批判の嵐を吹きつけていました。

 

 まるで、彼らは、自民党政権からの機密費の横流れという甘い汁を奪われた腹いせのように私には思えて仕方ありませんでした。

(先の拙文≪三宅久之氏よ佐藤優氏を見習って下さい≫もご参照ください)

 

 

このような状況下で、私達は東日本大震災(それに伴う、巨大津波、原発事故)に見舞われました。

 

となりますと、彼らの矛先は、民主党政権の大被害への対処方法へと向かいました。

 

先ず、『週刊現代(2011.4.2号):菅直人、あんたという人は』に於ける次のような記述です。

 

 

 「テレビで原発が爆発した映像が流れているのに、官邸には1時問くらい連絡がなかった。いったいどうなっているんだ」

 「現場からの撤退などあり得ない! 覚悟を決めなさい。撤退した場合、東電は百パーセント潰れるぞ!

 菅直人首相は、福島原発を管理運営する東京電力本社に乗り込み、こう怒鳴り上げたという。東北関東(東日本)大震災が発生して5日日の315日早朝5時前後のことである。

 だが、ちょっと待て。放射線被害などの情報を小出しにする東電に対し、不満と批判が高まっているのは確か。だが、それを大声で紡弾している菅首相とその政府・官邸は、いったい何をしたというのか。

 自分では記者の質問に答えようともせず、言いたいことだけ言って立ち去る総理大臣。一見、話は立て板に水だが、実は官僚らの報告を垂れ流しているだけの官房長官。自分の担当分野にまるで無風で、まともに会見もできない大臣、副大臣たち……。

 現場を怒鳴りつけ、「気合が足りん」「死ぬまで働け!」と叱責するなど、どんなバカにもできる。

「東電の幹部も、現場の担当者も、ただでさえ混乱している。そこに総理大臣が乗り込んで怒鳴り散らせば、東電側はさらに浮き足立ち、パニックに陥る。現場を怒鳴りつけるなど、リーダーがもっともやつては、いけないことです。現場のバックアップが役目なのに、逆のことばかりする。最悪の総理大臣です」(危機管理コンサルタントの田中辰巳氏)……

 

 

 でも、この記述には何か抜けています。

前文の≪復興は平和の礎(東京電力、マスコミと検察)≫にも引用させて頂いた「テレビ朝日の番組『パックインジャーナル』」で、テレビ朝日の川村晃司氏は次のように発言しています。

 

きわめて私が驚いたのは、2回目の水素爆発が起きた14日の時に、それを受けて政府の側にも東京電力側は「全員退去させたい」という申し入れをした、それで菅総理がかなり激怒して、「退去なんてとんでもないんだ」と言う事で帰ってきて、 “東電のバカ野郎”と2回呟いたと、仲間から聞いた、それはその段階で何故東電は全員退去させたいと言ったのか!……

 

 

私は、川村氏の驚きに共鳴します。

ところが、山田厚史氏(AERAシニアライター)は、次のように、『週刊現代』の記事に類似した発言をされました。

 

 

東電社員は一般人だけから、退去するのは当然と言えば当然、命令するなら自衛隊

 

 

 しかし、私は、川村氏の“その段階で何故東電は全員退去させたいと言ったのか!”の思いを支持します。

あの段階で、一般人、自衛隊員の区別はないのではありませんか?

それに、原発事故現場に居られた東電関係者の方々は退去せずに復旧作業を続行したいと念じていた筈です。

 

 しかし、東京にいる東電上層部の方々は、現場の方々に致命的な危険が降りかかれば、(安全地帯にいつつも)“退去命令を出さなかったとの責任問題”が発生する事の別の怖れを感じた筈です。

ですから彼らは「退去命令」を出すでしょう。

(現場の方々がその「退去命令」に従わない事を願いつつ)

 

 その状況で、

菅直人首相が「現場からの撤退などあり得ない! 覚悟を決めなさい。撤退した場合、東電は百パーセント潰れるぞ!
東京電力本社に乗り込み、こう怒鳴り上げた事で、責任は全て菅首相が追う事になり、
(身の安心を両面から確保した)東電幹部は現場に作業続行を命じる事が出来たのではありませんか?!

 

 ですから、

菅氏は「全ての責任を自らに課して今回の対策に当たっている」


と私は解釈しているのに、マスコミの方々はどうなっているのでしょうか?!

(勿論、私とて、菅氏には不満な点は多々ありますが)

 

 

 更には、次の件ですが、未だ詳細な経緯が分からず新聞記事を読んでもよくわからない点が多々あります。

(しかし、分からない点が多々ありつつも新聞は海江田非難の声をあげています)

 

 先ずは、読売新聞(2011322日:経産相?東京消防庁に圧力発言…抗議で陳謝)の記事です

 

 海江田経済産業相は22日午前の閣議後の記者会見で、福島第一原子力発電所での東京消防庁の放水作業に関し、東京都が圧力的と反発する発言があったとして陳謝した。

 

 石原慎太郎都知事は21日、首相官邸に菅首相を訪ね、政府関係者が同庁に長時間の放水を求め、「速やかにやらなければ処分する」と圧力ととれる発言をしたとして、「絶対にそんなことを言わせないでくれ」と抗議した。石原氏によると、首相は「大変申し訳ない」と謝罪したという。都関係者は、この政府関係者は海江田氏だと指摘していた。

 

 海江田氏は22日の記者会見で、「私の発言で消防の方が不快な思いをされたのであれば、申し訳なく思う。おわび申し上げる」と述べた。自らの発言内容については「(放水作業が)進行中なので、事実関係を詳細に述べることは差し控える。私が現場と話したということではなく連絡員が(間に)入っている。かなり事実の混同がある」とするにとどめた。

 

 放水作業は、政府と東京電力の福島原発事故対策統合本部の要請で予定の7時間から13時間半に延長され、放水車の装置の異常を示す警告表示が出たという。

 

 

 私は、「政府関係者が同庁に長時間の放水を求め、「速やかにやらなければ処分する」と圧力ととれる発言をした」件を高く評価します。

この件は、先の菅首相の「東京電力本社に乗り込み……」と同じと存じます。

この「処分」発言で、海江田氏が消防庁上層部の代わりに全責任を負う決意を示したのだと存じます。

 

 何しろ、「プルサーマル発電」を行っている3号炉を「長時間の放水」によって、(命令系統が逸脱しても)早期に安定化を図る必要があった筈です。

 

 

 ところが次のような記事(産経新聞322日:政府から消防隊員に「処分」と恫喝 石原知事が首相に抗議)もあります。

 

 東京都の石原慎太郎知事は21日、首相官邸を訪ね、菅直人首相に対し、東京電力福島第1原子力発電所への東京消防庁の放水作業をめぐり、政府側から消防隊員に恫喝(どうかつ)まがいの発言があったと強く抗議した。

……

 石原氏は、首相に「みんな命がけで行い、許容以上の放射能を浴びた。そういう事情も知らずに、離れたところにいる指揮官か誰か知らないが、そんなばかなことを言うのがいたら戦(いくさ)にならない。絶対そんなこと言わさないでくれ」と注文、首相は「大変申し訳ない」と陳謝した。

 

 石原氏は記者団に「処分するという言葉が出て、隊員は皆、愕然(がくぜん)とした。(現場の)指揮官は、それが一番不本意だったと言っていた」と述べた。真相は不明だが、都関係者によると、「処分」と発言したのは海江田万里経済産業相だという。

 

 

 石原氏は“許容以上の放射能を浴びた”と語ったそうですが、私の記憶では「レスキュー隊員の許容度は30ミリシーベルトで、今回は最大に浴びた隊員で、27ミリシーベルト」と聞いた記憶があるのです。

(今その記事を探しても見つける事が出来ませんでした)

それに

戦(いくさ)にならない”と発言して、このような事態を「戦(いくさ)」に譬えるのは穏当ではありません。

 

 それに海外からは「50人のサムライ」(海外ですからサムライの表現を使用するのでしょうが)と讃えられている方々が、“処分するという言葉が出て、隊員は皆、愕然(がくぜん)とした。(現場の)指揮官は、それが一番不本意だったと言っていた”なんて本当でしょうか?

「佐藤総隊長も妻にメールで出動を伝えた。「日本の救世主になってください」が返事だった。」との事ですから、
処分するという言葉”の有無にかかわらず、彼らは誇りを持って遂行して下さったのだと存じます。

そして、「日本の救世主になってください」とのメールを受けて、立派に使命を達成して方々が、
処分するという言葉が出て、……それが一番不本意だった”と思っているとは私は信じたくありません。

 

 石原氏は、現場指揮官がうっかり漏らしてしまったかもしれない、
この言葉は、菅首相に伝えるだけに留めて、石原氏(隊員たち)の胸の中にしまい込むべきです。

それでこそ、世界中から、彼らが「50人のサムライ」と讃えられるのだと存じます。

 

石原氏は、先の「天罰発言」以降は蟄居していて然るべきです。

(なのに、何かとリカバリー・ショットを打とうとしている事が見え見えです。

石原氏の背丈は随分大きいようですが、人物としては小物(チンケ)に思えてなりません)

 

 

 更には、海江田氏の最優先事は、3号機冷却であったのでしょうから、彼は、なんとしても「3号機への長時間の放水」が不可欠と判断した筈です。

と申しますのは、冷却が急務とされる14号機の内、3号機のみが「プルサーマル発電」なのですから!

 

 プルサーマルに関して、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を見ますと次のように書かれています。

 

プルサーマルとは、プルトニウムで燃料を作り、従来の熱中性子炉で燃料の一部として使うことを言う。

……

プルサーマルではMOX燃料と呼ばれるウラン238とプルトニウムの混合酸化物(Mixed Oxide)を燃料として使用する。

……事故が発生した場合には従来の軽水炉よりプルトニウム・アメリシウム・キュリウムなどの超ウラン元素の放出量が多くなり、被ばく線量が大きくなると予測される

原子炉の運転や停止を行う制御棒やホウ酸の効きが低下する

……福島県知事(当時)の佐藤栄佐久が、発電所から距離のある地域を含めた県全体の観点や自身の戦略等から、地元の意向を別に強く反対してきた、といったことがある。……

 

2010(平成22年)

918 福島第1原発3号機のプルサーマル試験運転開始。

1026 福島第1原発3号機のプルサーマル営業運転開始

……

 

 そして、この「福島第1原発3号機のプルサーマル営業運転開始」に関連すると思われる「福島を使用済MOX燃料の墓場に仕向けた県議たち」のWEB(20100701日)を見ると、多くの自民党、公明党議員の名前を見る事になります。

 

 

 ここでも、自民党の暗い影が濃く映っています。

(自民党が蒔いた種は自民党が刈るべきでは!?)

だとしたら、自民党は党を挙げて、復興に全力を投入すべきと私は思うのですが、事実は逆なようです。

例えば、朝日新聞(2011319日:谷垣総裁、入閣応ぜず 危機管理内閣へ首相要請)では次のように書かれています。

 

    

菅直人首相は19日、自民党の谷垣禎一総裁に「副総理兼震災復興担当相」として入閣するよう電話で要請した。自民党トップを加えた「危機管理内閣」の発足で政権を安定させ、東日本大震災の対策を強める狙いがあった。だが自民党は緊急役員会で入閣要請を拒否することを決め、谷垣氏が首相に通告した。

 ……

 谷垣氏はこの後、自民党本部で緊急役員会を開いて対応を検討。出席者からは、入閣すれば自民党が反対してきた子ども手当法案など新年度予算関連法案の成立に協力せざるを得ず、菅政権の延命につながるとの意見が大勢を占め、入閣要請を拒否することを全会一致で決定した。一方、災害復興には与野党で設けた「各党・政府震災対策合同会議」などを通じて協力する方針も確認した。

 

 緊急役員会後、谷垣氏は首相に直接電話し、「我が党は震災復旧に関して手を緩めることも惜しむこともなく、引き続き閣外から全面協力する。今の時点では総理は現体制をいじる時ではなく、被災者の支援、原発の対応に全力を尽くすべきだ」と伝えた。

 

 

 なんとまあ!

「自民党……役員会……出席者からは、……
菅政権の延命につながるとの意見が大勢を占め

自民党の谷垣禎一総裁の入閣要請を拒否することを全会一致で決定した」

と言うのです。

 

 何故このような決定に対してマスコミは非難の声を上げないのでしょうか!?

勿論、現在の苦境の種をマスコミは自民党に協力して蒔いてきたのでしょうから、自民党を非難できないのかもしれません。

しかし、自民党共々協力して刈る覚悟、体制、行動を取って欲しいものです。

 

では、次の拙文≪復興は平和の礎(民主党とマスコミの続き)≫に移らせて頂きます。

 

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