第5話 |
現在の権威たちも“直流と交流を誤解しています”
2016年5月30日 宇佐美 保
先ずは、『物理学はこんなことも分からない 発行:株式会社PHP研究所 2011年2月1日』との本を書かれた川久保達之氏は、1992-94年に応用物理学会会長となったお方です。
その本で、元応用物理学会会長さんは、次のように記述しております。
中学生を相手にした講演会の席で,次のような質問を受けたことがあります。
「電流が,マイナスの電荷をもった電子の逆方向への流れだという話をいま伺いました。もしそうだとすると,東京から猪苗代の発電所(当時,首都圏の電力は福島県の猪苗代発電所から送られていた)まで電子が行くのに,いったいどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか」という質問です。いまから40年以上も前の話です。
そのときは,電力は50Hzの交流として送られているので,電子は送電線の中を行ったり来たり往復するだけで,遠くへ行かないのです」
と言って逃げてしまいました。赤面の至りです。そのとき以来,この質問はずっと気になっていました。
ところで,首都圏を走る電車はJRも私鉄も1500ボルト(X)の直流電源を使用しています。……1500ボルトの直流電圧はレールに対する架線の電位として与えられていて,電車がパンタグラフを通して電流を取り込み,電力を消費すると,その分の電流が架線に流れるわけです。……
さて,10両編成の電車が起動するときには3600キロワット(kW)の電力が必要だと聞いています。これを電圧の1500ボルトで割って電流に直すと,2400アンペア(A)になります。つまり,起動する電車の周辺の架線には,これだけの電流が流れるということです。そこで,この電流が電子の集まりだとすると,何個の電子がどのくらいの速さで動いていることになるのかという問題を考えてみましよう。……
という事で、銅の金属1cm3の中にある銅原子の数を求めたりして、自由電子の密度がn=8.4×1022/cm3,電子の電荷がe=1.6×10-19C(クーロン),架線の断面積が1cm2なので,電子の平均速度を1.8ミリメートル/秒(ミミズが這うより遅い速度)との計算結果を掲げておりますが、なんだか変です。
交流も「電子の流れ」であったら、この電子は、その電子の数を常に変化させて流れなければなりません。
それもプラスになったり、マイナスになったりするには、どうしたらよいのでしょうか!?
電力は50Hzの交流として送られているので,電子は送電線の中を行ったり来たり往復するだけで,遠くへ行かないのです」
と言って逃げてしまいました。赤面の至りです。 |
本当に「赤面の至り」と記述され当然の不合理な説明です。
“電子は送電線の中を行ったり来たり往復するだけ”と川久保氏が解釈している交流の場合は、発電所が送電を中止している状態からスイッチを入れたときには、どうなるのでしょうか?
電気は、川久保氏(現在の一般的理論)が信じている電子が動く速度(1.8ミリメートル/秒:)とのミミズが這うより遅い速度で、発電所から都会までノロノロと運ばれてくるのでしょうか!?
そこで次のような、つじつま合わせ的な見解を記述されております。
……仮に変電所が送電を中止している状態からスイッチを入れたときには架線とレールの間にかかる電圧が伝わっていく速さはどれだけかというと,それは電磁波が伝わる速さで,光速です。
川久保氏の説明は、(ご自身も納得されると存じますが)あまりにも不合理そのものです。
そこで、このような珍説(現在の電気の常識でもあります)を披露される川久保氏に拙著『コロンブスの電磁気学』をご参考にして頂きたいと、(出版社経由で)送付しましたが、いまだに「梨の礫」です。
更には、後藤尚久氏(拓殖大学工学部教授)は、「図:1-1&2」のような水の流れモデルを持ち出し、直流と交流の流れ方の相違を表現されています。
しかし、ここで紹介させて頂いた川久保氏も後藤氏も、『電気は近接作用』をしっかりとご理解されていたら、「直流」と「交流」との間に、電気的に本質面で根本的な相違がある等との認識を持つことはないのです。
そして、又、又、次回に紹介させて頂く誠に簡単な実験で、「直流」も「交流」も全く同じ電気で、その流れ方に相違がある筈がないことが分かります。
その結果(このお二方同様の)現在の電気理論が、誤解だらけであることが分かります。