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 第4話
電気は低いところから高いところへも流れます

2016511日 宇佐美 保

 雑誌Newton別冊「電力」(2012815日(株)ニュートンプレス発行)には(ここに引用させて頂くイラスト内で)“水は標高の高い場所から低い場所へ流れます。電圧と電流の関係も、これとよく似ています。電流は、電圧の高い場所から低い場所へ向かって流れるのです。”と紹介されています。

   

 

 おかしいではありませんか?!こんな現象が発生しないことは、先の乾電池と電球と「洗濯機のアース棒」を用いた実験から明らかで、又、「電気は2本の電線をプラスマイナス同時進行」の表題通りに電気が流れるのに、この雑誌Newtonのイラストでは「電気は一方通行」的に流れているのもおかしなことです。

 

そこで、この「雑誌Newton」での紹介記事を否定する為に、次のように、2つの電源(A電源と、B電源)を用いて簡単な実験を行い確認します。

このAB2つの電源を、長さ1メートルの電線(下図のの線)で結びます。

それから、A電源からは1ボルトの電気信号B電源からは、その半分の0.5ボルトの電気信号を電線に送り出します。

1ボルトの電気信号を「高電圧電気信号」を「0.5ボルトの電気信号」を低電圧電気信号と銘打ち、それらの信号を、各々1ナノ秒間だけ送り出します。

 

この状態(次の「図:1」)で、「0b地点(A信号出発点)」から、25センチメートルごと、「1b地点(B信号出発点)」までの各地点での電線に於ける電圧変化(電流の流れ具合)を「差動プローブ(私達が日頃使用するテスターの1種)」で測定しますと、その地点での電圧変化(電流の流れ具合)を測定できます。

 

 

 

  この図をもう少し分かり易く書き換え、「各観測地点での電圧変化の測定結果」を合わせて次の「図:2」に示します。

 

 

 

 

 各観測点での電圧測定結果」に書き加えました2つの波形は、「高電圧電気信号」と「低電圧電気信号」であり、中間点の観測波形は、両者の和であることは言うまでもありません。

 

  この「各観測点での電圧測定結果」から「低電圧電気信号」が観測中間点で「高電圧電気信号」にぶち当たっても、押し戻されることもなくそのまま、「高電圧を発したA電源」へと(出発してから約5ナノ秒後に)到達し、又、当然ながら、「高電圧電気信号」も観測中間点で「低電圧電気信号」にぶち当たった後も、「B電源」へと(出発してから約5ナノ秒後に)到達することが判明します。

今回の場合は、「B電源からの低電圧の電気信号」が「A電源」へ約5ナノ秒かけて到達する時点では、「A電源からの高電圧の信号」は不在状態ですが、次の実験では、各信号の発信時間を(5ナノ秒より長い時間である)10ナノ秒とします。

 

 

 

 

  尚、上の「各観測点での電圧測定結果」に於ける電圧波形は、「高電圧電気信号」と「低電圧電気信号」が重なり合っておりますので、その結果の中では、それらの電気信号の進行状態を下の左図のように書き込みましたが、実際の観測波形はそれらを合算した右図のようになります。

(注:今回の観測結果表示では、時間経過の1目盛が先の2倍の2ナノ秒となっております)

 今回の測定結果では、「0b地点(A信号出発点)」の電圧波形をご覧頂きますと、「A電源からの高電圧(A)の信号」へ、「B電源」から、前回同様に約5ナノ秒かけて「低電圧(B)の電気信号」が「高電圧(A)の信号」を発信中の「A電源」へと到達していることが分かります。

 

この結果からも、冒頭に掲げました従来の電気の常識に反して、電流は水の流れとは異なり、「低いところから高いところへと流れる」ことがはっきりと分かります

従って、今回の実験から、従来理論の一角が覆ります。

なのに、次のように、まことしやかな解説記事が横行しています。

  自家発電した電気を電力会社に売ったりする際に、電力会社から自宅などへ敷設されている既存の引っ込み線をそのまま用います。

この際、電力会社から送られている電気電圧より、若干高い電圧で電力会社側へと送り込みます

(この操作は、自宅側のパワーコンディショナによって、自動的にサイン波の同期を取りつつ行われます)

 この電圧調整の件に関して、“水が高いところから低いところへ流れると同様に電気も(電圧が)高いところから低いところへ流れる性質があるためです”


 今回の2つの実験から分かりますように、電力会社側の電圧に対して自宅側の電圧が高かろうが低かろうが電力会社側へ送電する事は可能なのです。

しかし、電力会社側が受ける(自宅から送電する)電気は、自宅側が受ける分と送り出す分の差分となりますので、自宅側の電圧が高くないと、その差分が得られなくなり、自宅側の電圧が低くマイナスの差分となっては、残念ながら、電力会社に売電するどころか買電している事になってしまうのです。

ですから、電力会社に「売電」する場合は、「売電」する側の電圧を高くし、「その差分」を電力会社に「売電」出来るだけの話です。

 

今回の実験も、先の「電気は2本の電線をプラスマイナス同時進行」に於ける実験同様に、電気に関する多大な業績を残された「電気の父」とも敬われるM.ファラデーが活躍された今から200年ほど前では、全く実験不可能な実験なのです。

しかし、現在の測定機器では、簡単に実験できるのに、このような実験を誰も行わずに、冒頭に掲げた虚説を科学啓蒙雑誌にさえ掲載するのです。

更には、小山慶太氏は、ファラデーの伝記である氏の著作『ファラデー(実験科学の時代) 講談社学術文庫』では、その副題を「実験科学の時代」と表示されたように、「実験」は科学に不可欠なのに“実験科学の時代で終わった”と錯覚しておられるのです。

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