新『コロンブスの電磁気学』(第5巻)
「新たなトランス理論」へのご案内
2015年8月23日 宇佐美 保
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『ファラデー 電気実験(上) M.Faraday著 監修者:田中豊助(株)内田老鶴圃』には、次の記述を見ます。
……電気の良導体をこの作用圏内においても,その中に何らの電流も誘起されないし,またこのような電流に相当する効果が少しも感知されないということは,はなはだ異様なことに思われた。
このような結果を考えること,すなわち通常の磁気から電気を得ようと期待することが,電流の感応効果の実験的研究に対して種々の場合に私を励ましたのであった。そして最近になって私は肯定的な結果にたどりつくことができた。……
しかし、『第3章』以降の実験考察から、“ファラデーが異様なこと思った”件は、ファラデー時代の電気測定機器が不十分であったことが主原因であって、実際には、“電気の良導体をこの作用圏内においたら”その良導体に電流が誘起されるのです。
従って、この引用文の後半の“通常の磁気から電気を得よう”との試みは、「マクスウェルの電磁波の予想」以前のファラデーには、「電磁波」の存在を知る由もなく、「磁気のみ」に注目したのでしょう。
それでも、ファラデーの当初の思いとは別の実用的な「トランス」の原型を生み出す「偉大な業績」に発展したのです。
(この“ファラデーの当初の思いとは別……”に関する件は、後の『第9章 ファラデー自身のトランスに関する実験』をご参照ください)
勿論、ここまで実験考察してきました通りに、「ファラデーの電磁誘導の法則」は誤解の産物ですから、トランスの原理も「ファラデーの電磁誘導の法則」とは当然無関係です。
私が、トランスに関して、学生時代から抱いていた疑問は“トランスのコイルを解けば、ショート状態の電線なのに、何故トランスから火が噴出さないのか?”でした。
事実、トランスに、周波数が0.1Hz(周期は10秒で、発信時間は5秒間)の矩形波(いわば直流)を入力すると、後の『第2章』の「測定結果:1」のコイル出入り口の電圧は、ゼロボルトとなっていますから、ショート状態です。
しかし、今回の実験での入力電圧は1ボルトでしたから、火は吹きませんでしたが、100ボルトだったら大変だったでしょう。
そこで、日頃使用しているトランスからは、火が噴出してくることはなく、トランスとして機能してくれるかの疑問を、本書にて解明して行きます。
本著をご高覧頂く前に、次の記述並び実験、計算結果にお目通しください。
トランス動作は直流(矩形波信号)が基本
異なる周波数の矩形波を1パルス(1V/0V)のみをトランスの1次側コイルへ入力した際の「測定結果」として、次の“同形の電圧波形が同時に得られる”のです。上から、0.1Hz、10Hz、50Hz、250Hz、500Hzの測定結果です。
1次側入口部電圧変化 (各 2V/目盛) |
2次側出力電圧変化 (各 1V/目盛) |
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更に、1パルスの10Hz(矩形波)の信号の全体(OFFとなる迄)が表示されるように、時間軸の単位を1目盛10ミリ秒に統一して、次の「測定結果」が得られます。
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この測定結果から、トランスの矩形波信号に対する動作は、直流入力による動作中のある時間に、その直流入力を停止してしまった事象と等価であることが分かります。
そして、この現象から、直流を停止したすぐ直後(無限に短い時間の後入力を再開すれば、直流入力を継続したこととなり、この動作は何度やっても同じ結果を生むでしょう。
従って、次のように、「グラフ:1」の短周期の矩形波の結果から、「グラフ:2」の長周期の矩形波信号(更には、「グラフ:3」のサイン波信号)を(計算ソフト『Excel』を用いて)合成することも可能です。
グラフ:1 1KHzの矩形波信号の出力 |
グラフ:2 40個合算した50Hzの出力波 |
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「グラフ:3」は、36個合算する際、基本電圧値(グラフ:1)に第1パルス目はsin10°、第2パルス目はsin20°、第3パルス目はsin30°……第36パルス目はsin360°と順次サイン値を乗じて計算を行いました。
グラフ:3 36個合算した 55.6Hzのサイン波 |
参考用の実測値 55.6Hzのサイン波出力 |
(参考の為に、「参考用の実測値」も合わせて掲げましたが、合算値との良い合致性が認められます)
では、本文から次の章を掲げましょう。
本著で解明してきた“トランスの根本原理は、縦列接続……”の論を、更に確たるものとする為、別冊『第3巻 縦列接続の登場』に於ける『第11章 補足:3 入力並び隣接伝送路の末端状態を変化させた場合』の実験結果等を以下に再掲いたします。
(何故、そのような実験結果になるかの考察等の詳細は、別冊『第3巻』を御参照下さい)
銅の丸棒(直径:5mm、長さ:1b)を4本用いて構成した「図:1」のような入力伝送路と、それに縦列接続する隣接伝送路に於いて、それら伝送路(Z=約50Ω)の末端状況を、入力伝送路末端部を、50Ω抵抗で整合終端処理した場合、ショート状態の場合、オープン状態の場合と変化させ、それに応じて各場合とも、隣接伝送路の末端処理を、各々、ショート状態、50Ω終端処理状態、オープン状態と変化させて、各々の場合に関して、電源(パルスジェネレータ)から、入力伝送路へ、250MHz(1V/0V)の1パルスの矩形波、並びに、75MHz(場合によっては、37.5MHz)の矩形波の連続波を入力し、隣接伝送路近端部の電圧変化を差動プローブで測定し、次の結果を得ました。
先ずは、入力伝送路末端を50Ω抵抗で整合終端処理した場合の「図:1」の測定結果です。
次は入力伝送路末端をショート状態とした場合の隣接伝送路での測定結果です。
最後は入力伝送路末端をオープン状態とした場合の隣接伝送路での測定結果です。
以上の測定結果から、入力伝送路側に入力された電流によって、縦列接続関係にある隣接伝送路の近端遠端双方へと入力電流と同形の電流が誘発される現象の存在と、更には、遠端へ向かった電流が入力並び隣接伝送路の遠端の状況に応じて、マイナス或はプラス電流として逆流して来たり、入力伝送路末端が終端処理されていない場合には、その入力伝送路に発生する逆流電流によって、入力伝送路の入力部で、隣接伝送路へと新たな電流を発生することとなります。
そして、これらの現象はここまで実験し考察してきた、縦列接続に起因する現象であり、本章で考察して来ました「隣接伝送路へのマイナス反射波の発生に関する考察」に相当する現象であるのです。
勿論、入力伝送路の末端状況によっては、(縦列接続の解消方法によっては)、「隣接伝送路へマイナス反射波ではなく、プラス波の発生も生じる」という事となります。
このような単純な、しかも、コイル同様に入力/隣接伝送路の末端がショート状態の場合も含めた伝送路構造の実験からも“トランスの根本原理は、縦列接続”が判明します。
目次
まえがき 1
第1章 トランス動作と「ファラデーの電磁誘導の法則」との矛盾 2
第2章 トランスは矩形波信号でも動作する 5
第3章 矩形波信号でトランスの動作状況を確認 6
第4章 トランスの動作は直流信号(矩形波信号)が基本 8
第5章 トランスの動作は直流信号(矩形波信号)が基本を計算ソフトで確認 10
第6章 単独コイルとトランスとの類似性 12
第7章 トランスと単独コイルの類似性の再確認 14
第8章 別トランスを用いての測定結果 17
第9章 トランスと連続波の関係 19
第10章 縦列接続された銅の丸棒伝送路での測定結果 22
第11章 一般電線を環状伝送路としての検討 24
第12章 一般電線をコイル状に 27
第12章 第1節 コイルの複数化効果 27
第12章 第2節 コア材の効果 29
第13章 ファラデー自身のトランスに関する実験 30
第14章 トランスに於けるコア材の役割 35
第14章 第1節 フェライトをトランスのコアに用いた場合 39
補足:差動プローブのプラス端子のみの測定 41
第14章 第2節 伝送路に対するフェライトの影響 42
第14章 第3節 パーマロイを用いての予備的な実験 44
第15章 トランスの入出力電圧とコイルの巻き数比の関係 47
第16章 トランスに対する一般的認識の一例 49
第17章 トランスの電力損失 50
第17章 第1節 トランス内部での損失 50
第17章 第2節 送電時の損失 50
第18章 直流用トランス 54
あとがき 55