目次へ戻る

 

小物だった渡辺恒雄氏

2004822

宇佐美

 

 週刊文春(2004.8.26号)『巨人軍渡辺王国の崩壊』には次のように書かれています。

 

 七月二十七日午後一時、東京・神田錦町の「読売巨人軍」球団事務所に三人の招かれざる男が現れ、こう言った。

「一場靖弘に対して金銭の授受があった。これはアマチェア精神に反し、特別背任にもなりかねない行為だ。問題ではないか」

 すべては、ここから始まった――

 813。球史に刻むべき独裁者退場の日は、あまりにも唐突に訪れた。九六年の就任以来、球界に君臨し権勢を振るい続けてきた渡辺恒雄・巨人軍オーナーが電撃辞任。合わせて、三山秀昭・球団代表、土井誠・球団社長、高山鋼市・球団副代表の解任も発表された。

 理由は、今秋ドラフトの目玉、明大・一場投手は計二百万円の裏金を手渡した

「不正スカウト行為」。だが乱暴を承知で言えば、こんなこと、球界では半ば「常識」とされている。「たかが部下」の更迭だけならまだしも、不正行為を知らなかったという渡辺オーナー自らが引責辞任するという不釣合いで不似合いな「潔さ」に、球界は騒然となった。……

 ……渡辺オーナー辞任の引き金を引いた「外部情報源」は……冒頭に紹介した三人の男たちこそが、真の「外部情報源」なのである。

 彼らの正体を明かそう。

 三人の姓名および肩書きは、平河内進氏(「義友連合会」会長)、田中雅一氏(「義友連合会」常任相談役)、若島和美氏(「正気塾」副長)。この二団体、いずれもれっきとした民族派団体である。

……

 彼らが巨人軍球団事務所に赴いた経緯と「会談」の詳細な内容を、田中氏と中尾征秀坪・正気塾塾長代行が、小誌に証言した。

きっかけは、渡辺オーナーの『たかが選手』発言でした。あまりにも選手やファンに対して無礼な発言だと感じ、何らかの抗議行動を起こさないといけないと考えたのです。そこで、徹底的な情報収集を行ないました。その結果、渡辺オーナーに反感を持ち、今の球団のあり方を憂う読売新聞関係者から、一場投手に関する話を含めた巨人のドラフトの実態に関する情報が得られたのです」(中尾氏)

……

 この情報を得てから約一週間後の七月二十七日、球団事務所の入っている神田のビルに、会長と若島副長と私の三人で行き、まずガードマンに名刺を渡して『規約のことやドラフトに関する考えをお聞きしたい』と伝えたところ、球団広報の人間に事務所内に通されました。二人の広報は慌てた様子で、とても対応しきれず、三十分ほど待たされた後、ようやく球団側と話をすることができました。……

 こちらは読売から何らかの返事がくるだろうと待っていたのですが、一週間経っても何の返事もない。

 そこで、八月四日、球団事務所と読売本社に、正気塾の街宣車で行ったのです。演説はせず、音楽のみを流したのですが、神田署から八人警察官が動員されてバリケードが張られ、音量測定器も用意されていた。かなり過敏な対応だと感じましたね」(中尾氏)

……

 つまり今回、渡辺オーナーは、自らが積極的に導入を図った逆指名(自由獲得枠)制度が生み落とした「裏金」の実態を、自らの「暴言」に憤った右翼団体に追及され、辞任を決意するに至ったというのである。

……

 街宣車「訪問」直後の六、七日頃には、すでに渡辺オーナーは腹を決めていた。静養先の軽井沢で渡辺氏と会話を交わした小池唯夫パ・リーグ会長が語る

「その日、私は家族でゴルフに行っていたんです。そしたら偶然、渡辺さんが息子さんと来ていて、『場所を変えて、少し二人で話をしようか』ということになった。話したのは二十分くらいでしたが、内容は一リーグ制のことも含め、今後の球界の話です。このとき、渡辺さんは『(オーナーを)もう辞める』と私に言ったんです。すでに、滝鼻氏を新オーナーにすることをはじめ、後任の人事についても具体的に話していました。……

 

 でも何か変ですよね!?

この記事の「球界では半ば「常識」とされている。「たかが部下」の更迭だけならまだしも、不正行為を知らなかったという渡辺オーナー自らが引責辞任するという不釣合いで不似合いな「潔さ」」との記述の如く、何か一場選手以外の問題が隠されているのでは?!と下種の私は勘ぐっていました。

 

 そして、週刊ポスト(2004.9.3号)の『渡辺巨人が怯えるもう一つの「裏ガネ爆弾」』、には、この週間文春と同様な記述の他に、次のような平河内進氏(「義友連合会」会長)の談話も掲載されていました

 

 平河内氏がさらにいった。

われわれが握っているのは、一場投手に関することだけではない。たとえば高橋由伸(98年ドラフト1位)。そして、阿部慎之助(01年ドラフト1位)。裏ガネ問題は根が深い。球団と読売新聞社の関係から考えれば、渡辺氏は巨人軍オーナーだけを辞任して済む問題ではないはず。読売新聞社の会長・主筆というトップに君臨している限り、我々は徽底的に抗議行動を続けますよ」――。

……

 

 この様な裏ガネ問題は、当然ながら以前から、口端には上っていたのです。

 

 毎日新聞(2004年8月14日)の記事には、前オリックス球団代表の井箟重慶(いのうしげよし)・関西国際大教授の談話が、次のように書かれています。

 

 こうした裏金疑惑は、プロアマの正常な関係を脅かすものとして、球界でも問題視する声があった。しかし、歴代コミッショナーも調査に乗り出すことを避けてきた。

 井箟前代表は「実行委員会や理事会で『ちゃんと調べるべきだ』と提案したがそのたびにコミッショナーやリーグの会長は『証拠がない』『警察権がない』とうやむやにしてきた」と証言する

 今回の不祥事が、球界のうみを出す契機になるかどうか。コミッショナー、連盟会長らの指導力が問われている。

……

 

 そして、この裏ガネ問題が特に巨人軍に関して囁かれ続けてきたのは、次の毎日新聞記事(同日付)でも合点が行きます。

 

 「球界の盟主」を自任する巨人は「プロ野球の繁栄は巨人が常に優勝争いすることで達成される」という考え方で戦力補強をしてきた。全試合がテレビ放映されることによる飛び抜けた人気と巨額の収入が、他球団にまねできない選手集めを支えた

……

 今回の不祥事は、01年導入の「自由獲得枠」制度のもとで起きた。ドラフトとは別枠で、各球団が高校生を除く2人まで、その球団を希望した選手を獲得できる。その「希望」を確実に得るために金銭が動いていた。

 こうした制度変更の中心となってきたのが、巨人と渡辺オーナーだった。渡辺オーナーは「FA制度が認められなければ、新リーグを結成する」などと非公式発言を重ねて影響力を行使、ドラフト制度の変更とFA制度導入を実現させた。

……

 

 この毎日新聞の記事は、読売に遠慮してか『「球界の盟主」を自任する巨人は「プロ野球の繁栄は巨人が常に優勝争いすることで達成される」という考え方で戦力補強をしてきた』

と綺麗事が書かれていますが、私には、「読売新聞の拡販は巨人が常に優勝争いすることで達成される」との強い信念で、渡辺恒雄氏は、プロ野球の諸制度を巨人有利となるようにねじ曲げにしてきたのだと、私は痛感していました。

 

 更に、先の週刊ポストは次のように糾弾しています。

 

 平河内氏の新たな指摘をふまえ、改めて読売新聞東京本社広報部に質した。

――今回のオーナーの辞任に右翼団体からの抗議行動があったのは事実か?

 「ご指摘の団体の活動と、オーナー辞任はまったく無関係です」

――滝鼻新オーナーはスカウト活動に絡む多額の金銭授受問題について「さかのぼって調べない」と言及したが、調査すべきではないか。なぜ調査しないのか?

 「問題となるようなケースの報告は受けておらず調査する必要はないと考えています」

……)

――本誌は高橋由選手、阿部選手にも、多額の裏ガネが渡ったという証言を得た。事実か?

 「ご指摘のような事実は聞いておりません」

……

 右翼団体の指摘を受けて慌てふためいたことなど忘れたかのごとく、疑惑をきれいに否定して見せただが、読売新聞社に求められているのは、自ら疑惑を解明しようとするジャーナリストとしての姿勢ではないのか。それをしたくないだけの責任回避のオーナー辞任なら、渡辺氏に「新聞人」の資格はない。この人の一言で、球団全体が右往左往してきたことこそが異常だったのだ。

 

 ところが、先の毎日新聞の記事には、次のように書かれています。

 

都内のホテルで午後4時から開かれた読売新聞グループ本社の記者会見で、オーナーに就任した滝鼻卓雄・読売新聞東京本社社長(65)は、球団の組織的な関与を認めて謝罪する一方、辞任した渡辺オーナーは関係していないと繰り返した。

 会見に1人で臨んだ滝鼻オーナーは問題の公表と社内処分について「自主的に公表すべきと最初に口にしたのもオーナーでございます」と、何度となく渡辺氏の意向を強調した。渡辺氏が会見に出るべきだとの質問も出たが「自ら公表して襟を正すこととしました」という本人のコメントを読み上げるにとどまった

……

 

 ◇渡辺オーナーのコメント(全文)

 このような不祥事を起こしたことは極めて遺憾であり、野球ファン、関係者の皆様に深くおわびします。多くの関係者がプロ野球をどう発展させるかを真剣に議論している重大な時期に、球界の将来をどうするかとは別の問題であるとはいえ、ルール違反を犯した責任は重く、球団幹部を厳しく処分するよう指示しました。自らの道義的な責任も痛感しており、読売巨人軍の取締役およびオーナーを辞任しました。プロ野球の神髄がフェアなスポーツマンシップに依拠していることを巨人軍は十分承知しており、自ら公表して襟を正すこととしました。今回の事態を深く反省し、野球ファンの皆様のご理解を得た上で、新たな決意をもって真しに野球の発展に力を注いでいく所存です。

……

 

この様に、渡辺氏は「プロ野球の神髄がフェアなスポーツマンシップに依拠していることを巨人軍は十分承知しており、自ら公表して襟を正すこととしました」とのコメントを発表しているなら、そして、「新聞人」真実を追究するであるなら、週刊ポストの糾弾する、「高橋由伸、そして、阿部慎之助の裏ガネ問題」を何故調査し公表しようとしないのですか?!

 そして、これらの記事を見て行くと、渡辺氏は「一場選手問題で辞職したのではなく、前述の「民族派団体」の次なる脅し(高橋、阿部両選手がらみ)から逃げたのだ!?」と勘ぐらざるを得ません。

 

そして、更に私は、もう一点付け加えたいのです。

不思議なことには、この毎日新聞の記事に見るように、「新聞人」である筈の渡辺氏は、事件並び辞職の経緯をマスコミに直接、自分の口で、説明していないのです。

 

 何故渡辺氏は自ら記者会見に臨まず、簡単なコメントだけ新オーナーに代読させたのでしょうか?

下種の私が勘ぐりますと、今まで散々、怒鳴り散らしていた新聞記者達から、今度は逆にその威張っていた自分が吊し上げられるのが、嫌だった?怖かった?そんな自分が惨めに思えた?

 

何れにしても、渡辺氏は「他人に厳しく、自分に甘い人物」の典型のようです。

悲しいことに、日本の社会では、大声を張り上げ、他人をどやしつける人間が、トップに君臨する傾向があるようです。

受託収賄罪などで公判中の元北海道沖縄開発庁長官、鈴木宗男氏のように)

 

 更には、渡辺氏辞職後のテレビ朝日の報道ステーションでは、読売新聞に同期で入社した政治評論家の塩田丸男氏は、次のように、渡辺氏を評価されていました。

 

 いつも怒鳴っている奴がいるんだよ。誰だっていうと渡辺なんだよ。

1年生のくせにだよ。新入社員で、あんなデカイ声でガンガン怒鳴って“なんだ馬鹿野郎”ってやっているから、一体あいつは何だろうと思っていた。

一番印象に強いのは、1年生のころね、“俺は絶対読売の社長になってみせる”って云ってたから……

 

 私は、塩田丸男氏の渡辺氏評価には共感出来ません。

 

 私の好きな人物評価は、宮沢賢治の作品『どんぐりと山猫』の「どんぐり達への山猫判決」です。

 

 それは、「頭のとがっているのが偉い!」「頭の丸いのが偉い!」「大きなことだ!」「押しっこの強いこと!」……と、己が一番偉いことを主張するどんぐり達に、どのどんぐりが偉いのかを決めかねた山猫は、一郎の助言を聞き入れ、次のように判決を下します。

 

「そんなら、こう言いわたしたらいいでしょう。この中で一番馬鹿で、メチャクチャで、まるでなっていないようなのが、一番偉いとね。ぼくお説教で聞いたんです。」

山猫は成る程という風に頷いて、それからいかにも気取って、繻子の着物の胸(えり)を開いて、黄色の陣羽織を一寸出して、ドングリどもに申し渡しました。

「よろしい。静かにしろ。申し渡しだ。この中で、一番偉くなくて、馬鹿で、メチャクチャで、てんでなっていなくて、頭の潰れたような奴が、一番偉いのだ。」

 ドングリは、シインとしてしまいました。それはそれはシインとして、堅まってしまいました。

 そこで山猫は、黒い繻子の服を脱いで、額の汗を拭いながら、一郎の手を取りました。

……山猫が言いました。

「どうもありがとうございました。

これほどのひどい裁判を、まるで一分半かたずけてくださいました。

どうかこれからわたしの裁判所の、名誉判事になって下さい。……

 

 私はこの山猫判決が大好きです。

ところが今もってこの山猫判決は、「出鱈目な判決」と誤解されています。

 

最近の例では、週刊文春(2004.6.17号)の『私の読書日記』にて、作家の池澤夏樹氏は、次のように書かれています。

 

 例えば「どんぐりと山猫」というよく知られた童話において、なぜやまねこはどんぐりたちの争いの仲裁を人間である一郎に頼まねばならなかったか?なぜ稚拙な「国語」で書いた葉書を送らねばならなかったか?政治的な役割を負わされた標準的な国語を用いるのは、先住民が弱い立場を自覚しているからである。山猫は一郎に権威を求め、一郎はその権威を利用してでたらめな審判を下す。その結果、彼らの友情は一回かぎりで終わる。

 

 この件は、拙文『どんぐりと山猫』にも記述しましたが多くの方々が、池澤氏同様の誤解をされています。

http://members.jcom.home.ne.jp/u3333/mk960920kenji-douwa-roudoku-3donguri.htm

アニメーション映画監督の宮崎駿氏も、朝日新聞編集委員の河合史夫氏も、大塚常樹氏も……

 

 この「一番偉くなくて、馬鹿で、メチャクチャで、てんでなっていなくて、頭の潰れたような奴が、一番偉いのだ」との山猫判決は、世のお歴々のご見解「出鱈目判決」ではないのです。

自分から進んで「一番偉くなくて、馬鹿で、メチャクチャで、……ような奴」と、公言出来る事、即ち、己の面子をかなぐり捨てる事が出来ることが「一番偉いのだ」との判決なのです。(より詳しくは先の拙文『どんぐりと山猫』を御参照下さい。)

 

 ところが、今まで威張り散らしてきた渡辺氏は自分の面子に拘り、見下してきた記者達に、吊し上げられるであろう惨めな記者会見を避けたと、下種の私は勘ぐるのです。

 

 若し、渡辺氏が記者会見に臨んでいたら、私は渡辺氏を見直し、自分の不明を認めたでしょう。

そして、渡辺氏は、私の及びもつかない方で,真にプロ野球の発展を考えてきたお方のだと尊敬の念を新たに抱いたことでしょう!

でも、残念ながら、そうではなさそうです。

 

 そして、世の中の偉い人の評価で不思議な点は、先の塩田氏の渡辺氏評にありましたように、「なんだ馬鹿野郎」と他人を平気で罵り、偉そうな顔をして、他人を簡単に寄せ付けない人物の評価が高い点です。

 

 私は、完全な人物などいないと信じているのです。

そして、私は、日々反省した人の長所を何とか取り入れたいと念じているのです。

(勿論、なかなか愚人の域から脱することは出来ません。)

 

 渡辺氏にても完全無欠ではないはずです。

でも、日頃から、あんなに怖い顔をして、「たかが選手」等の暴言を吐いていたら、渡辺氏に助言を呈する人はいないのでは?と思います。

そして、結局は独裁者としての判断しかできなくなるでしょう。

そして、この独裁者の最近の判断ミスは、(これは、噂ではありますが)プロ野球選手会の会長である古田選手をアテネ・オリンピックの選手枠から外した事でしょう。

 長嶋監督の助言をしっかり吸い上げる事が出来ていたら、古田選手の活躍により日本チームは、アテネ・オリンピックでより、確実に金メダルへの道を突き進むことが出来たでしょう。

 

 更に何よりも、古田選手をオリンピック選手として選出していたら、古田会長が留守の間に選手会は腰砕けとなり、渡辺氏の言いなりとなって次のような新聞記事(毎日新聞 2004年8月13日)はなかったかもしれません。

 

 オリックスと近鉄の合併で、プロ野球選手会が初めてスト権を確立した。スト権投票で賛成98%という数字は、合併に反対し続ける選手会の結束の強さを改めて示す結果となった。しかし、両球団の合併手続きは着々と進み、水面下では、来季からの1リーグ制移行をにらんだ「もう一つの合併」の動きも加速している。史上初のストが実施されるかどうか。プロ野球界はますます緊迫の度を深めている。

 

 私は、怖い顔をした人は嫌いです。

(「山猫判決」に合致された方が大好きです。)

 

 それから、「渡辺氏の辞職」と共に、“約束通りに、読売新聞を購読してくれ!”と、仕事熱心な読売新聞の各班員の方が、我が家を訪れました。

 

 私は、“渡辺氏が、読売新聞社を辞職したら、読売新聞を購読すると約束したのであって、巨人軍を辞職しただけでは、読売新聞が変わる訳ではないから、読売新聞は取らない!”とは一度云ったのですが、熱心な拡販員の方の勧めで、思い直しました。

 

 今回の一連の事件で、「渡辺氏の小物ぶり」が読売新聞社内部に浸透したでありましょうから、渡辺氏の影響力は暫時低減して行くとの期待を込めて、読売新聞の購読を快諾しました。

 

 

(補足)

 

 渡辺氏以外に気になった事がありました。

 

先ほどの週刊文春の「明大の別府隆彦総監督が、巨人軍の卑劣で身勝手な振る舞いを告発する」との記述です。

 

 別府総監督は一場投手を叱責。小切手の形で二百万円を立替えて、翌朝、青田編成部長に取りに来させた。「青田君は神妙な面持ちで一人でやってきました。私はルール違反だと知りながらそういうことを行なっていたことについて怒りました。『信頼関係を疑う』とね。『もう二度とウチに出入りしないでくれ』と伝え、小切手を渡しました。一場も同席させていましたが、彼も金を返したことでホッとしたんじゃないですか。

 青田君にも、『もし責任問題にするんならそちら側の問題で収めてくれ。こちらが騒がれると困るから』と念を押して帰したんです。彼も『わかりました』と言っていたから、一安心していたんです」

 ところが午後になって、事態は急展開する。……

 渡辺さんたち巨人の首脳陣が辞めるのは勝手ですが、将来のある若者まで巻き添えにする必要はないじゃないですか! 巨人のやり方には非常に憤りを感じました。一場本人も、幼少時から巨人に憧れて野球を続けてきたのに、ショックだと思いますよ。……

 

 なんだかおかしくありませんか?!

 

「プロ野球関係者と学生の事前接触は、日本学生野球憲章で禁止されている


と、書かれているのです。

 

だとしたら、明大野球部監督が“『もし責任問題にするんならそちら側の問題で収めてくれ。こちらが騒がれると困るから』と念を押して帰した”と発言したことは大問題ではありませんか?

 

 「裏ガネ」を貰うだけ貰っておいて、ばれたら「裏ガネ」を提供した方だけに罪を押し付けるの事こそ問題ではありませんか!?

そして、自分が預かってきた選手に「裏ガネ」を貰うなと教育できていなかった事も問題ではありませんか!?

 

 勿論、お気の毒ではありますが、貰った本人も。

目次へ戻る