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ブッシュ氏とその政権の危険性(
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20031221

宇佐美

 

 マイケル・ムーア監督の最近の著作『おい、ブッシュ、世界を返せ!(訳:黒原敏行、発行:アーティストハウスパブリッシャーズ)』を読みますと、本当に“おい!ブッシュ!世界を返せ!”と怒鳴りたくなります。

 

 そこで、今回もマイケル・ムーア監督のこの著作を引用させて頂きたく存じます。

(そして、この著作に書かれている情報は全て出典が明らかにされております。)

 

 先ず私が驚愕したのは、ブッシュ氏の人間性の欠如でした。

 

ブッシュ氏の人間性の欠如を疑う記述

 

 九月十日の午後、あなたはフロリダに飛んだ。サラソタの高級リゾート・ホテルに投宿し、弟のジェブ・ブッシュ州知事と食事をしたあと、眠りについた。

 翌朝、あなたはゴルフ場でジョギングをしてから、ブッカー小学校に出かけた。子供たちに本を読み聞かせるためだった。あなたは午前八時三十分から四十分のあいだにホテルを出た。連邦航空局がハイジャックの事実を察知してから、たっぷり十分から二十分たっていた。なのに誰もそのことをあなたに知らせなかった

 あなたはニューヨークで一機目の旅客機が北クワーに激突したあとで学校に到着した。三カ月後、あなたはオーランドで開かれたタウンホール・ミーティングで、小学校三年生の質問にこう答えた。

「あのときは教室の外で椅子に坐って待っていたんだ。そのとき飛行機がビルに衝突するのを見た――たぶんテレビがついていたんだろうね。わたしも昔はパイロットだったから、ああ、なんて下手くそなパイロットだと思った。あれは事故だと思ったんだ。ただ、それからすぐ教室に入るよういわれたから、あまりそのことを考える時間がなかった……

 あなたはその一ヵ月後、カリフォルニア州で開かれたタウンホール・ミーティングでも同じ話をした。ひとつ問題なのは、911は一機目の旅客機が北クワーにぶつかるライブの映像を誰も見ていないという点です。翌日になって初めて録画映像がテレビで流れたんです。でも、それはいいとしましよう。あの朝は誰もが混乱していたわけですから。

 あなたは午前九時ごろ教室に入った。二機目の飛行機が南タワーに突入したのは九時三分。その数分後、あなたが子供たちの前に坐って、彼らが本を読むのを聞いていると、アンドリユー・カード首席補佐官が教室に入ってきて、あなたに耳打ちをした。首席補佐官は二機目の飛行機のことを報告し、アメリカが″攻撃されている″といったようだ。

 するとそのとき、あなたの顔はよそよそしい、生気のない表情になった。呆然とした、というのではなく、半分麻痺したような表情だった。感情がまるであらわれていない顔。それから……あなたはそのまま坐っていた。七分ほども、何もしないで、じつと坐っていた。なんというか、異様です。気味が悪いです。子供用の椅子に坐って、子供たちが本を読むのを聞きながら、少なくとも五分か六分、じっと静かにしていたんです。顔に不安をうかべることもせず、「失礼」といって、急いで教室を出て、側近やシークレット・サービス警護員のもとへ行くこともせず。

 ブッシュさん、あなたは何を考えていたんです? あなたの頭の中では何が起こっていたんです?

あの表情にはどんな意味があったんです? すべての疑問の中で、これがいちばんぼくの頭を悩ませてるんです。

 あなたは前の月にCIAから受けた報告をもっと真剣に受け止めているべきだったと考えていたんですか? あなたはアルカイダがアメリカ国内でのテロを計画している、そのテロには航空機が使われるかもしれないとの報告を受けていた。アルカイダが国防総省への攻撃に関心を抱いているとの情報もあった。……

 

 ここでムーア監督が提示している問題点は、次の3点だと私は思うのです。

 

1)             連邦航空局がハイジャックの事実を察知してから、たっぷり十分から二十分たっていた。なのに誰もそのことをあなたに知らせなかった。

2)             911は一機目の旅客機が北クワーにぶつかるライブの映像を誰も見ていないという点です。翌日になって初めて録画映像がテレビで流れたんです。

3)             あなたは前の月にCIAから受けた報告をもっと真剣に受け止めているべきだったと考えていたんですか? あなたはアルカイダがアメリカ国内でのテロを計画している、そのテロには航空機が使われるかもしれないとの報告を受けていた

 

でも、私が最も驚いたのは、ブッシュ氏の次の発言です。

(一度ならず二度までも)

 

「あのときは教室の外で椅子に坐って待っていたんだ。そのとき飛行機がビルに衝突するのを見た――たぶんテレビがついていたんだろうね。わたしも昔はパイロットだったから、ああ、なんて下手くそなパイロットだと思った。あれは事故だと思ったんだ。ただ、それからすぐ教室に入るよういわれたから、あまりそのことを考える時間がなかった……」

 

 国民の命を預かる大統領としては、「なんて下手くそなパイロットだと思った。あれは事故だと思ったんだ。ただ、それからすぐ教室に入るよういわれたから、あまりそのことを考える時間がなかった……」と言うのではなく、「飛行機の乗員乗客の命、そして、ビル内の人達の命を心配すべきではないでしょうか!?」

 

 しかし、ブッシュ氏は、他人の命には無頓着な方のようなのです。

と申しますのは、ブッシュ氏はテキサス州の州知事時代には、135人も死刑を執行しています(1221日放映のテレビ朝日「サンデープロジェクト」)。

何故このように、多くの人達に死刑を執行したかに関しては、マイケル・ムーア監督のDVD作品『アホでマヌケなアメリカ白人』の中で、ブッシュ氏のテキサス州に於いては、「公設弁護人制度も、まともな控訴手続きもない」と紹介していますし、更に、ブッシュ氏の“私は、えん罪など無いと信じています。死刑になった者は全員有罪の筈です。”との発言が画面から飛び出してくるのには、腰を抜かすほど驚きました。

 

 でも、驚いてはいけないのかもしれません。

なにしろブッシュ氏は、大統領就任後には、何万人(?)ものアフガニスタンやイラクの市民達を死に追いやって平然としておられるのですから。

 

 そして、この様なブッシュ氏を、同じ穴の狢でもある奥様が諫める事も絶対無いのでしょう。

なにしろ、

ブッシュ氏の奥様ご自身も、「17歳の時、自分でクルマを運転していて信号を無視した未に、級友のクルマに衝突して彼を殺している


と、(拙文《アホでマヌケなアメリカ白人とポチ》で引用させて頂きましたが)ムーア監督は『アホでマヌケなアメリカ白人』の中で暴露してくれているのですから。

 

 しかし、このブッシュ氏の“あれは事故だと思ったんだ”の発言が別な面でも気に掛かるのです。

ムーア監督が指摘するように「前の月にCIAから……アルカイダがアメリカ国内での(航空機が使われるかもしれない)テロを計画している……との報告を受けていた」のに、飛行機が以前にも爆破物を仕掛けられた因縁の貿易センタービルに衝突するのを見て、“あれは事故だと思ったんだ”と発言するに至っては、ブッシュ氏はよほど頭の回転が弱いお方なのかと思います。

否、それよりも、事故ではなくて、テロであることを前もって知っていたからこそ、その事を隠す為、故意に、二度も“あれは事故だと思ったんだ”と発言したのではないでしょうか?!

 

 何か匂ってきませんか?

ブッシュ政権は利権集団?


(拙文《
ブッシュ元大統領と国防関連企業》等も御参照下さい。)

ですから、マイケル・ムーア監督は次のように書かれています。

 

 複数の報道によれば、ブッシュさん、二〇〇一年の夏、あなたの政権の代表はタリバンの代表と会見したり、タリバンにメッセージを送ったりしたそうですね。それはどういう会見やメッセージだったんですか?……

 パイプラインの話はしましたか?あなたがたは、CIAの元局員が《ワシントン・ボスト》紙に広めかしたように、ビン・ラデイン引き渡しのチャンスを台無しにしたんですか? ともかく、話し合いは911の直前まで続いたでも、パイプラインの話はまとまらなかった。タリバンは交渉から手を引き、あなたの選挙資金提供者たちが金になるはずのパイプライン敷設の準備に使った数百万ドルはむだになったすると何が起こつたでしょうか?

 何が起こつたか、ぼくたちは知っています。二機の旅客機が世界貿易センタービルに激突し、もう一機が国防総省に突っこみ、四機目の旅客機がペンシルベニア州で墜落しました。あなたはぼくたちの自由を制限することでぼくたちの自由を護る決意をした。アフガニスタンに襲いかかってタリバンとアルカイダの上に爆弾を落とした――そのほうが捕まえるより簡単ですからね。大物はほとんど逃げてしまいました。

 こうしてアフガニスタンは〈ユノカル〉のものになったわけですアメリカ特使になったのは誰か? もと〈ユノカル〉の顧問だった国家安全保障会議のメンバー、ザルメイ・ハリルザド。アメリカが据えた新生アフガンの指導者は?もと〈ユノカル〉の顧問、ハミド・カルザイだ

 二〇〇二年十二月二十七日、トルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタンの三国はパイプラインの建設に関する合意書に調印した。これでカスピ海沿岸の天然ガスが手に入ることになり、ブッシュさん、あなたのお友達はみんな喜びました

 

 なんだか臭いです、ブッシュさん。でもガスの臭いじゃない。天然ガスは無臭ですからね。

 

 本当に臭いですよね。

カルザイ氏までもが、〈ユノカル〉の顧問だったとは私は不覚にも知りませんでした。

驚きました。

余りにも臭いです!

 

 更に、ムーア監督は、「テロの警戒報告書」を前もって受け取っていながら、何ら対策を取らなかった件で、

「ブッシュがやるべき仕事をやらなかったから三千人の命が失われたのかもしれないのだ。それだけで彼を弾劾裁判にかけて馘にする理由になる」


と以下のように記述されています。

 

 ジョージ・W・ブッシュはCIAから渡された報告書を読んでおくべきだったのだ。《ワシントン・ポスト》紙によれば、911の数週間前にあたる二〇〇一年八月六日、ブッシュは″緊急″と書かれた報告書を受けとっていた。アルカイダがアメリカへの大規模な攻撃を企てていると警告する報告書だ(この報告書の全体の内容は明らかになっていない。ブッシュが公開を拒否しているからだ。

コンドリーザ・ライスは具体的な情報は何もなかったとくりかえすが、それならなぜ公開しないんだろう?)。もっと悪いことに、一九九九年にはすでにアルカイダが航空機をミサイルがわりにして政府の建物に激突することを検討していると報告されているのだ。

 なぜブッシュは、攻撃が間近に迫っていると警告する情報部からの報告書を手にし、クリントン政権から申し送りを受けていたにもかかわらず、国民に警告を発しなかったのか? テキサス州クローフォードの農場での一カ月の休暇ってそんなに多忙な休暇だったのか? ブッシュがやるべき仕事をやらなかったから三千人の命が失われたのかもしれないのだ。それだけで彼を弾劾裁判にかけて馘にする理由になる。クリントンがセックス・スキャンダルで嘘をついたからといって、誰かが死んだわけじゃなかった。……

 

 テロはたいてい国内紛争の中で起こるもので、テロリストの大半は国産だ、ということをぼくたちはわきまえておくべきだ。得体の知れない外国人が危害を加えにくるという発想はもうやめよう。それはまれなケースだからだ。ぼくたちは現代社会でそういうことをたっぷり学んでいる。……

 

本当に、9.11のテロの犯人はアルカイダ(ビンラディン)なのでしょうか?

それともムーア監督の記述「テロリストの大半は国産だ」が該当するのでしょうか?

〈エンロン〉事件

 

 ぼくたちの現実は悲しいものだ。たとえば、ジョージ・W・ブッシュ(アメリカのCEO)とケネス・レイ(全米第七位の企業だった〈エンロン〉の元会長)の友情のこと。

テキサス州ヒューストンを本拠地としたエネルギー関連会社〈エンロン〉は、倒産する前は年商一千億ドルの巨大企業で、世界中の石油や天然ガスや電気を取引していた。規制が緩和されたエネルギー市場は、攻撃的な経営で知られる〈エンロン〉にとって金鉱と同じだったのだ。

 ブッシュが親しみをこめて″ケニー・ボーイ″と呼んだケネス・レイは、ブッシュとの友情を隠さなかった。〈エンロン〉は一九九三年以降、七十三万六千八百ドルをブッシュに献金してきた。一九九九年から二〇〇一年までは十万ドルの政治資金を集め、彼個人も共和党全国委員会に二十八万三千ドルを寄付した。大統領選のあいだはブッシュ候補に気前よく会社のジェット機を使わせ、ブッシュは一族そろってそれで全米を飛びまわり、″ホワイトハウスの威厳を回復する″計画について語ったのだった。

……

 大統領になつたブッシュは、レイをワシントンに招き、ブッシュ政権の高官たちとひきあわせた――とくに、〈エンロン〉 のようなエネルギー関連企業の主管庁であるエネルギー省の高官たちに。……

 またレイはワシントンで古い友達のディック・チェイニーとつるんでいた。二人はエネルギー問題研究会をつくって新しい〃エネルギー政策〃の策定に取り組んだが、その政策が〈エンロン〉の事業のほぼすべてに影響を与えるものだった。この時期に少なくとも六回、チェイニーとその側近たち――あるいは側近たちがチェイニーにかわって――〈エンロン〉の幹部と会っているが、会合の中身を知っている者は誰もいない。チェイニーが記録の公開を拒否しているからだ。……

 これでピンとこないだろうか?みなさんは忘れてしまったかもしれないが、一連の軍事行動で注意を逸らされてしまったこの〈エンロン〉問題は、アメリカ史上指折りの企業スキャンダルだった

その中心人物は″大統領″の親友のひとり。ブッシュは対テロ戦争ができることを毎晩神に感謝したに違いない! 911、アフガニスタン、イラク、〈悪の枢軸〉――すべてが〈エンロン〉スキャンダルをメディアや有権者の頭から消し去る役を果たした。このスキャンダルでブッシュは弾劾裁判にかけられてもおかしくなかったが、運はしばしばこの男の味方をして、責任を免れさせてしまうのだ。……

 それでもぼくは〈エンロン〉事件を忘れないし、みなさんも忘れるべきじやない。あれは単なる企業の不正行為を超えた事件だった。彼らはこの国の経済を破壊し、三流の政治屋どもを選挙でかついで自分たちの援護をさせ、アメリカを内側から攻撃する計画を遂行したのだ。……

 〈エンロン〉の利益の大半はペ−バー・カンパニーを使って生みだされ、そのカラクリはうろんな(おそらくは犯罪的な)会計操作によって隠蔽されていたのだ。その実態がどの程度まで明らかになるかはわからない。会社は捜査の手が伸びる前に記録をシユレッダーにかけていたからだ。

〈エンロン〉の詐欺商法は二〇〇一年の秋までに破綻していた。経営幹部は回中が911の衝撃に揺れているあいだにとっとと逃げだし、株を売り、記録を廃棄していた。

 国家が危機に陥っているときでさえ、彼らはブッシュ政権の友人たちに助けを求めた。幹部たちは商務長官ドン・エバンズや当時の財務長官ポール・オニールに電話をかけて、会社がつぶれかけていると訴えた

エバンズとオニールは〈エンロン〉のペーパー・カンパニーを使った詐欺のことも、破産寸前であることも知らなかったといった。ブッシュ政権は誇らしげに二人の証言を盾にとり、大統領の最有力支持者のひとりになんの便宜もはからなかったといった。

 そのとおり――彼らは何百万人ものアメリカ人が被害を受けた事件で、何もしなかったことを誇ったのだ。〈エンロン〉が人々から金を巻きあげることができたのは、主としてブッシュ政権が〈エンロン〉の暴走を許していたからだった。……

 だが〈エンロン〉の経営幹部にとって、″倒産″はほかの人たちとは違った意味を持っていた。破産申請のときに会社が提出した書類を見ると、百四十四人の幹部が合わせて三億一千万ドルの報酬と四億三千五百万ドル分の株を取得していたのだ。ひとり平均、報酬が二百万ドル、株が三百万ドルだ

……

 〈エンロン〉倒産は社員だけでなく、同社の株を所有していた公的年金基金の何千人もの加入者にも甚大な被害を与えた。《ニューヨーク・タイムズ》紙によれば、年金基金の損害額は少なくとも十五 億ドルという。

……

 それなのに、ぼくがいまこれを書いている二〇〇三年夏の時点で、(エンロン)関連の犯罪で起訴された人間は二十人しかいない。そのうち五人は司法取引をして判決を待ち、十五人は公判を待っているところだ。

 元会長のケン・レイと元CEOのジエフ・スキリングはどんな容疑でも起訴されていない

 

 私は、不覚にもムーア監督の著作に接するまでは、〈エンロン〉問題が頭の中からすっかり脱落していました。

 

今にして思いますと、「他人の命の重さを屁よりも軽い」と感じている人達が、〈エンロン〉問題隠蔽の為に、911テロ事件、アフガニスタン、イラク侵略を引き起こしたのかしらと思わずにいられません。

 

しかし、下種の私には、〈エンロン〉問題の隠蔽だけの理由で、ブッシュ政権がイラン戦争を始めたとは考えられません。

何故?

イラク戦争の目的は?


ムーア監督は、次のように続けられます。

 

 よその国に乗りこんでいく理由が″抑圧的体制から人々を解放するため″だというなら、アメリカは十人歳以上の男女を全員徴兵する制度を急いでつくったほうがいい!めちゃくちゃ忙しくなるんだから! ″イラクの人々を解放する”ためイラクに侵攻したのなら、ぼくたちがいままで支持してきた独裁国にも次々と侵攻すべきだ。またアフガニスタンに戻るのもいい。それからミャンマー、ペルー、コロンビア、シエラレオネ。そしてたまには象牙海岸なんてきれいな名前の国に出かけてみたらどうかな。

……

ブッシュ政権の国防副長官で筋金入りの戦争屋、ポール・ウォルフオウイツツなんかは、はっきり本音を語っていた。《バニティ・フェア》誌二〇〇三年五月号のインタビューを受けたときの、国防省側の筆記録にはこうあるのだ。

 

 実をいうと、政府には官僚主義的な面があるので、最終的にはみんなの意見が表する問題、つまり大量破壊兵器の問題を核心的な理由とすることで決着したのです……基本的には三つの問題がありました。ひとつ目は大量破壊兵器の問題、二つ目はテロ支援の問題、三つ目はイラク国民に対する犯罪的な扱い。しかし実際には四つ目があったといえるでしょう。それは最初の二つを合わせた問題です……

 三番日の問題は、さっきいったとおり、イラク国民を助けるというものですが、これはアメリカの若者の命を危険にさらす理由にはなりません。われわれが実際に冒したような大きな危険にさらす理由には。

 

若者の命を危険にさらす理由にならない? でも、いまはそれを理由に挙げてるじゃないか?

もちろん、ウォルフォウィッツはあのインタビュー以後、説明のしかたを変えたのだ。サダム・フセイン支配下のイラクで大量破壊兵器が見つからずアルカイダのメンバーがひとりもあらわれなくて、サダムがアメリカの安全にとって差し迫った脅威だったことが証明できなくなると、ブッシュ政権も、その操り人形になっているメディアも、急いでワッバーを注文し直した。「いや、われわれは核兵器を見つけるために戦争をしたんじゃない。イラクの人々を解放するためだ! ええっと、そう、あの国を爆撃して十五万人の兵士を送りこんだ理由はそれだったんだ!」

 

 

 そして、わが日本国もポチの旗振りで、「イラクの人々を助けよう!」との掛け声もろとも、平和憲法を踏みにじり、自衛隊をイラクへ派遣しようとしています。

でも本当に変ですよね。

アフガニスタンの人々を助けなくても良いのですか?

飢えに苦しむ隣国の北朝鮮の人々を助けなくて良いのですか?

 

 ムーア監督は、アフガニスタン、イラク戦争の謎を次のように説明してくれます。

″新たな永続的対テロ戟争″政策

 

″恐怖″という包装紙で包んで。ぼくたちを確実に恐がらせるためには、強大な敵が必要だ。ソ連が崩壊したとき、パパ・プッシュにはそれがわからなかった。あれ? と思う間にクリントンにしてやられた。野にくだった保守層は八年間、復権の準備を進めた。

 助っ人を買ってでたのが強力な影響力を持つ政策シンクタンク、アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)だ。彼らはこう説いた。アメリカがめざすべき目標はただひとつ。他の追随を許さない、軍事力で実現する、アメリカ主導の世界だ。

 彼らは一九九八年一月二十六日、クリントン大統領に公開状を出して第一歩を踏みだした。PNACのポール・ウォルフォウィッツやウィリアム・クリストル、それにドナルド・ラムズフェルド、リチャード・パールといった新保守主義者のグループが、クリントンのイラク封じ込め政策は″危険なまでに不適切″である、アメリカの外交政策は″サダム・フセインと彼の体制を権力の座から排除すること″を目的とすべきだと主張したのだ。

 二〇〇〇年に政権を握ると、息子ブッシュは国防総省をこのいかれた極右グループの手に渡した。

 911のあと、ラムズフェエルド国防長官とウォルフォウィッツ国防副長官を始めとする戦争屋集団が、″新たな永続的対テロ戟争″政策のひとつとしてイラク攻撃への道を押し進んだ。それから一気呵成に七百億ドルの新たな兵器の購入を含む四千億ドルの国防予算を計上した

 911のおかげで、ウォルフォウィッツと彼のタカ派の仲間は国民にアピールできる敵を見つけたのだ。クリントン政権のCIA長官ジエイムズ・ウールジーも一役買って、第四次世界大戦が始まったとはやした(冷戦が第三次だったんだってさ)。彼らの考えでは、″対テロ戦争″は一国主義にもとづく無制約の戦争となり、冷戦と同じくらいか(五十年)それ以上、もしかしたら永久に続くかもしれないという。嘘だと思うなら、ドナルド・ラムズフェエルドの言葉を聞いてみるといい。「それはおそらく熱い戦争ではなく冷たい戦争になるだろう。考えてみると、冷戦はおよそ五十年間続いた。大規模な戦闘はなく、対立関係が持続したのだ……いまわれわれが直面している状況もそのようにとらえたほうがいいだろうと、わたしは考えている」

 うわ――終わりのない戦争ですか。これが現実だと信じさせることができれば、国民はなんだってやらせてくれるわけだ。国民を護るという建前を掲げるかぎり。……

 

 

 そして、悲しい事にポチに支配されている日本国でも、ミサイル防衛(MD)システムを早速アメリカから購入することを正式に決めてしまいました

しかも、そのシステムは「弾丸を弾丸で迎え撃つようなもの」と言われ、技術的に開発途上にあって、膨大なコストに見合う効果があるのか?と疑われている代物です。

 

 そして、イラク国民を助ける心を持った日本人なら、当然助けなくてはならない北朝鮮を仮想敵国としているのもおかしな話です

何故、小泉さんも安倍さんも、北朝鮮へ飛んで行かないのですか?

何度も何度も、北朝鮮側と話し合うべきではありませんか!?

当たり前の国として、イラクへ自衛隊を派遣すると言うなら、当たり前の国として、「拉致問題」は、アメリカ任せではなく、日本独自で解決の道を開くべきではありませんか!?

何から何まで、アメリカにおんぶに抱っこで日本は独立国ですか!?

どうして、自衛隊を軍隊にしたら、「拉致問題」が、アメリカ抜きで日本だけで解決可能となるのですか?

 

日本は、ブッシュ政権のイラク政策に肩入れする事は、ラムズフェエルド国防長官とウォルフォウィッツ国防副長官を始めとする戦争屋集団の、″新たな永続的対テロ戟争″政策に賛同し、肩入れする事ではありませんか!?

 

フランスやドイツが、ブッシュ政権に協力しないのは、彼らが″新たな永続的対テロ戟争″政策に反対しているからではありませんか!?

 

更に、とんでもない事態が進展している事をムーア監督は警告してくれます。

愛国者法の制定

 

 ぼくたちはテロリストに殺されたりしない。そう客観的に見てとる視点を、ぼくたちは失くしてしまった。この状況を利用しているのはテロリストじゃない。ぼくたちに恐怖心を吹きこむこの国の指導者たちだ。

……

いまぼくたちが恐れるべきものはジョージ・W・ブッシュその人だけだ。ぼくは堅く信じているが、ブッシュと彼の仲間たち(とくにジョン・アシュクロフト司法長官)が抱いている目標はただひとつ――ぼくたちをうんと恐がらせて、自分たちの望む法案をなんでも通し、望む権限をなんでも議会に認めさせ、ぼくたちにそのことを喜んで承認させることだ。

 911の直後、ブッシュは愛国者法(正式な名称は”テロリズムを迎撃し阻止するための適切な手段を講じることによりアメリカを団結させ強化する二〇〇一年法”)を制定したこれは市民権やプライバシー権にほとんど配慮することなく情報を集める史上例のない大幅な権限を政府に認める法律だ。上院は九十人対の投票で法案を可決した。

……

 愛国者法という名前は実体とひどくかけ離れている。この法律に愛国的なところはまったくない。

ヒトラーの『わが闘争』と同じくらい非アメリカ的な法律だ。その名前自体が、フロリダの沼よりひどい悪臭をカモフラージュする計略の一部なのだ。

 

 そして、ムーア監督は警告を続けます。

 

 連邦機関の捜査員が関係していない出来事の中にも、911がぼくたちの社会に与えたぞっとするような効果を如実に示しているものがある。二つだけ例を挙げよう。

 

 ・〈CBS〉は《ヒトラー――悪の台頭》のプロデューサーを解雇した。作品の中で現在のアメリカの雰囲気をヒトラーが政権を獲得したころのドイツになぞらえたのが理由だ。

 ・マサチユーセッツ州リンのイングリッシュ高校で、十二年生のクラスを受け持つ教師は、授業で『ボウリング・フォー・コロンパイン』を見せることを断念せざるをえなかった。校長があの映画には″反戦メッセージ″が含まれていると判断したためだ。

 

というふうに、ブッシュの政策はテロ問題を超えていろいろな効果をもたらしている。言動に気をつけたほうがいいぞ、という空気が社会に満ちているのだ(実際、政権の中枢部にいるアリ・フライシヤー報道官がブッシュ政権批判者に対して――とくにコメディアンのビル・マーに対して――「言葉に気をつけてほしい。行動に気をつけてほしい」と警告した)。

 本当に頭にくるのは、あのペテン師集団が911をあらゆることの口実に使うことだ。彼らはもうあのテロ事件を〃テロリストの脅威″から国民を護るための法案を通す理由づけにするだけじゃない。

まるで正しい者が天から贈り物を授かったといわんばかりだ。新しい兵器システム? ぜひ配備すべきだ! なぜかって? それは……911だよ! 公害の規制をゆるめるべきか? もちろんだ!なぜかって? 911だ! 中絶? 当然非合法化だ! なぜか? 911だ! 911と中絶にどんな関係があるんです? おい、おまえはなぜ政府を疑う? 誰かFBIを呼べ!

 

 この様な状態の中、アメリカのマスコミはどうしたのでしょうか?!

 

マイケル・ムーア監督の記述は、次のようになっています。

 

 メディア監視グループFAIRが、アメリカの夕方のニュース番組六つを、イラク攻撃が始まった二〇〇三年三月二十日から三週間、チェックした。調査結果は意外なものではなかった。

 

 ・視聴者が接する主戦論的な情報は反戦論的な情報の二十五倍あった。

 ・軍からの情報は民間人からの情報の二倍とりあげられた。

 ・三週間で伝えられた情報のうち、発信源が大学、シンクタンク、非政府組織のものは全体のわずか四パーセントだった。

 ・登場した現在または過去の政府と軍の関係者八百四十人のうち、反戦論者と見られる人物はわずか四人だった。

・登場した数少ない反戦論者はみな短いコメントが流されただけであり、しかもその大半は街頭インタビューに答えた市民だった。六つの番組のどれも、反戦論者の対談式インタビューを一度も行なわなかった。

 

ジャーナリストが客観性の欠如を自発的に告白したこともあった。FAIRは〈CBS〉のアンカーマン、ダン・ラザーが(CNN)の《ラリー・キング・ライブ》でした発言を引用している。「わたしもアメリカ人です。国際人だとかなんだとか思ったことはありません。自分の国が戦争をしているときは、自分の国に勝ってもらいたい。″勝つ″というのがどういう意味であるにせよね。だから、あれが偏りのない報道だとはいえないし、いうつもりもない。そういうことでいえば、わたしには偏りがあります」

 FAIRによれば、あの三週間で、ダン・ラザーの《CBSイブニング・ニュース》が流した反戦論者の発言はひとつだけ。それは、ええつと、アカデミー賞授賞式でぼくが口にした、″虚構の大統領″による″虚構の戦争″のくだりだった。

〈フオツクス・ニュース〉のキャスター、ニール・カブートは、番組で評論家にこう主張した。「一方の側に肩入れすることは何も悪くないですよ……あなたには抑圧的な政府とそうでない政府の違いが見えないようだが、わたしには見えるんだ

MSNBC〉は″アメリカの勇者たち″という企画で愛国心を発揮した……イラク戦争に参加した兵士の写真を家族や友人から募集してスタジオの壁に貼りだしたのだ。〈NBC〉と〈MSNBC〉のキャスター、ブライアン・ウィリアムズは、イラクの民間人が殺されることについてこう語った。「かつての軍隊は意図的に民間人を標的にしました。第二次大戦中のドレスデンや東京の空襲は市民を殺して、生き残った者に恐怖を与えるために行なわれたのです。しかし、いまわたしたちが見ているのはそれとは反対のことです」……

 

私には、アメリカのジャーナリストが、錯乱状態に陥ってしまったと感じます。

第二次大戦中のドレスデンや東京の空襲は市民を殺して、生き残った者に恐怖を与えるために行なわれた」と言うのならば、「これらの行為は、非戦闘員を虐殺する目的で行なわれた」のですから、戦争犯罪です

 

 従来、アメリカは、この非難をかわす為に、「東京は、民家に於いても、兵器などを作成製造していたから、兵器製造所である民家をも攻撃した」と言い繕い続けて来たのではありませんか?!

 

 なのに、ブッシュ恐怖政権が登場するや、マスコミはガタガタと震えだし、錯乱してしまったようです。

本当に、たった一人のヒトラーの台頭によって、ドイツがそして、世界がガタガタになってしまった当時の社会状況そっくりではありませんか?!

本来なら、〈CBS〉は《ヒトラー――悪の台頭》のプロデューサーを解雇せずに、バックアップすべき筈です。

 

 そして、この状況の中、ブッシュ恐怖政権に果敢に一人で立ち向かうマイケル・ムーア監督に、私は感嘆し、敬意を表します。

ですから、先の拙文《アホでマヌケなアメリカ白人とポチ》の文末で書きました事を、ここでも記述したいと存じます。

 

 私は、マイケル・ムーア監督がとんでもない自動車事故に巻き込まれた……とのニュースが飛び込んでこないように祈っています。

そして、マイケル・ムーア監督の更なる活躍を期待しております。

そして、私がマイケル・ムーア監督に出来る応援の一つは、彼の作品(DVD,書籍など)を努めて購入する事だと思い、それらをレンタルではなく購入し続けております。

 

 ですから、どうか今回の私の引用文をお読みになって、マイケル・ムーア監督に共鳴され、彼の作品をまだ未購入である方々も、どうか彼の作品の購入を検討して頂ければ幸いと存じます。

更には、友人知人の方々にも、マイケル・ムーア監督の警告を、ご紹介頂けたら幸いと存じます。

 

 

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