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曽我ひとみさんをご家族のもとへ帰して(2)

2003年10月16日

宇佐美 保

 

曾我ひとみさんのお姿をテレビにて拝見するたびに、曾我さん一家を襲っているご不幸を思い大変お気の毒に感じ、以前《曽我ひとみさんをご家族のもとへ帰して》なる拙文を書きました。

 

 そして、今回(10月15日)の曾我ひとみさんのこの1年は、(拉致され結婚してからの)23年間よりももっと長く感じました……」のご発言に胸を痛めていた私は、次なるメールを戴きました。

 

 曽我さんを家族に会わせてあげたい。みんな心の中では思っていますよね。ほんの数時間で行ける隣国なのに、曽我さんは家族に会いに行く事が出来ない。どうしたらいいのか。なんとか出来ないのか。そんな思いでパソコンに向かっていたら。貴方が5月に書いた文章に出会いました。私も同じ思いです。曽我さんが望むなら、北朝鮮に帰して?あげてもいいとさえ思うのですがおかしいでしょうか?そんな声を日本人の中からあげることは出来ないですよね?!

貴方はこういうホームページをたちあげて勇気のある方ですね。私は彼女に何もしてあげられない自分が悲しいです。

 

 そこで、エールを送って下さった方に、私のホームページをお友達に紹介して下さいとお願いして、もう一度、この文を書こうと思いました。

 

先ずは、曾我ひとみさんの発言の一部を毎日新聞記事から引用させて頂きます。

 

大変複雑な1年だった。日本に帰れたのはうれしかったが、母の姿が見えないのが悲しい。……

1人で暮らすことになり、夫や2人の娘への深い愛を感じる

 

 この「母の姿が見えないのが悲しい。」との曾我ひとみさんの思いを逆撫でするように、9月25日の都議会本会議で石原都知事は「まさに誘拐。袋詰めにされ、十文字にしばられて、さらってみたら片方は年寄りだから、曽我さんのお母さんなんか殺されたんでしょ。その場で」と発言します。

こんな人が政治家ですか!?

否、政治家というのは、このような類の人なのでしょうか?

 

 更には、

 

 3、4カ月で一緒になれると思った家族と別れてもう1年。私は日本人。故郷でみんな一緒に自由に暮らしたい。(政府には)問題解決に全力で取り組んでほしい。(私も)問題が早く解決するまで自分なりに精いっぱいやりたい。

 

 そして、

 

 日本政府の取り組みについては、やや表情を硬くした。「何かあったときだけ電話がくるが、何もないからこそ毎日の生活に関心を持ってほしい」。そして、その不信感を「一番信頼しなければならないのに、だれを信じていいか分からず、見捨てられた気持ちになったこともある」と表現した。

 

 これらの曾我ひとみさんのご発言から、私は次のように感じるのです。

1)                      曾我さんは、愛する家族との別れは短い日時(又、お母さんに会えるかもしれない)と思ったからこそ、単身日本に戻ってこられたので、こんなにも長く家族と別れると知っていたら、日本へは来られなかったでしょう。

2)                      曾我さんの「故郷でみんな一緒に自由に暮らしたい」とのご発言では、「日本」ではなく敢えて「故郷」との言葉を用いておられます。

それは、“「みんな一緒に自由に暮らしたい」との望みがかなえるならば、「日本」でなくても、「北朝鮮」(「アメリカ」)でも良いのだ”との思いが込められているのではないでしょうか?

なにしろ、曾我さんの娘さんの「故郷」は、「北朝鮮」なのですから。

 

 このように、私は、曾我ひとみさんのご発言には、表面的は「私の家族を早く日本に戻して下さい」であっても、「私の家族と一緒になれるのならば、私を早く北朝鮮に行かせて下さい」との思いが込められていると思うのです。

 

 私に届きましたメールの「曽我さんが望むなら、北朝鮮に帰して?あげてもいいとさえ思うのですがおかしいでしょうか?そんな声を日本人の中からあげることは出来ないですよね?!」の言葉は大変重いと存じます。

 

 先の文にも引用させて頂きましたが、3月11日付の朝日新聞の次のような記事に見られるように、「救う会」との別の見解を表明しようなら直ちに抗議されてしまうのです。

「救う会」が田中知事発言に反論 横田さん両親訪朝で

 北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの両親の訪朝をめぐり、田中康夫長野県知事が「救う会側が制約している」などと発言し、「救う会長野」は11日、記者会見して「事実誤認だ」と反論した。「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」「救う会全国協議会」と連名で抗議文を送っている。……

 

 ですから、拉致被害者のご本人である曾我ひとみさんご自身さえも心の内をストレートに表現できないのだと思います。

(勿論、「救う会」の存在だけでなく、他の拉致被害者の方々へのお気遣いの為とは存じますが。

ですから、蓮池さん、地村さんのご家族もお気の毒です。

御自分達だけの問題が解決してしまったら、他の行方不明の拉致被害者の問題が風化してしまうと危惧され、ご自分達の要求を世の中に、そして、政府にぶっつけられないのでしょうから。)

 

 このような事情をふまえても、女性である中山恭子内閣官房参与(政府の拉致問題担当者)が被害者の方々の御本心を温かく汲上げて差し上げる事が大切なのではありませんか?

 

 そこで、先の拙文曽我ひとみさんをご家族のもとへ帰してから引用します。

 

何故、家族会の方々や、その取り巻きの北朝鮮拉致議連の方々は、曽我さんの心持を理解してあげないのでしょうか?

この曽我さんの心を理解してあげる方が、女性の中から出てこないのでしょうか?

しかし、新拉致議連の副会長でもある小池百合子議員は、2002111衆議院外務委員会「北朝鮮拉致問題」で、次のような発言をしているのです。(小池氏ホームページより)

 

┄┄私は、いろいろと家族の方々との接点を持たせていただいて感じるところは、この御家族の方々、そしてある意味では御本人も含めてだと思いますけれども、基本的に微動だにしていない。そしてまた、時間がかかるということ、これについてももうおなかの中にすとんと落ちているというような状態にありますので、余り日本側から一生懸命努力をして、何月何日にしましょうよというような誘いかけをする必要もないんではないか。むしろ今は、北朝鮮側が日本が要求した回答を寄せてくるという、そういったものを見ないと、日本側から次の交渉を呼びかけることも、その必然性もないのではないか。┄┄

 小池氏は本当に女性なのでしょうか?

 

 今回の曾我ひとみさんの「この1年は、(拉致され結婚してからの)23年間よりももっと長く感じました……」のご発言を、小池百合子議員は、どのようにお感じになるのでしょうか?

そして、驚く事には、この小池百合子議員は、今回の小泉内閣の環境大臣にちゃっかりと収まってしまったのです。

 

 そこで、小池氏のホームページを見てみましたら、又又驚いてしまいました。

以下一部を抜粋させて頂きます。

 

……総理からの直接の電話は、大臣か、官房副長官の就任要請以外には考えられません。しかし、どの役所の大臣職か、尋ねるのを忘れたことに気付きました。あらためて官邸に連絡を入れようかとも考えましたが、みっともないと断念しました。……

 

 可笑しくはありませんか?

小池氏はテレビなどでは「自分の第一の政治課題は、拉致事件の解決」如き発言を繰り返しておられたし、ご自身は新拉致議連の副会長にも就任されたのではありませんか?

 

 だとしたら、「環境大臣」に収まるべきではないと思うのです。

ですから、総理からの直接の電話があった際は、「どの役所の大臣職か、尋ねる」べきだったのです。

そして、「外務大臣」以外だったら断るべきだったのです。

「環境大臣」を断り、せめて、「外務副大臣」就任でも依頼すべきだったのです。

それなのに、「あらためて官邸に連絡を入れようかとも考えましたが、みっともないと断念しました」とホームページに書かれる小池氏の無神経ぶりに呆れます。

みっともない」で済む話ではないのです。

 

 そして、更に、次のように、ルンルンした気持ちも書かれているのです。

 あれこれ考えるうちに、ドレスがないことに気付きました。夜中の三時に手配できるわけもなく、翌朝、東京に着いてからの作業となりました。結局、午後四時の時点で、ぎりぎり滑り込みセーフで間に合いました。……

 

 こんな小池氏のホームページの記述を曾我ひとみさんがご覧になったらどのように感じられるでしょうか?

 

 そして、環境大臣就任後挨拶には、次のような文面が見られます。

 

……環境行政のトップとして、国益と地球益を求める議員として、これまでの積み重ねと多くの皆様のご指導を仰ぎつつ、地道に、大胆に、取り組んでまいりたいと存じます。

 

 小池氏は環境大臣に就任した為に「地球益」等を取って付けたように持ち出していますが、最近は国会議員や官僚もマスコミも「国益」を錦の御旗として掲げています。

可笑しくありませんか?

国益」を煎じ詰めて行けば、結局は「個人益」に行き着きます。

(その端的な例が、北朝鮮との交渉に向かう官僚に対して「命がけで交渉に立ち向かうように」と言い含めた等と、拉致問題において強硬発言を繰り返していた小池氏は、「個人益」を重視してさっさと「環境大臣」に収まってしまいました。)

 

 「国連決議なしの対イラク攻撃は何があっても阻止すべきである」等を小泉首相、川口外務大臣に具申して免職された元レバノン大使の天木直人氏は、この「国益偏重」に対して、氏の著作『さらば外務省!』(講談社発行)に次のように書かれておられます。

 

……「外交は感情や正義感で行うものではなく、利害得失を考えて行うものだ」となんのためらいもなく言い放つ竹内の姿勢に、私は違和感を抱き続けてきた。目先の利益ばかりを追い、正義を無視した外交など、国際社会で信任を得られるはずがないと私は信じている。

 その竹内は次官となり、小泉純一郎首相と組んで米国の対イラク攻撃の支持表明を高らかに世界に向けて宣言した。「日米同盟ほど重要なものほない」と胸を張る姿勢こそ、私が最後まで納得できなかった外交姿勢だ。私はそれに異を唱え、そして竹内から「お前は外務省にとってもはや無用の職員だ」と引導を渡された。……

 

 このような竹内次官に代表される外務官僚達では、曾我ひとみさんのお気持ちを汲んであげる事は全く期待できません。

 

 そして、北朝鮮に関して強硬意見を吐き続けてきた自民党の安倍晋三氏、そして、「拉致議連」の方々は、如何なる実行動を取ったのでしょうか?

何故、北朝鮮へ単身ででも乗り込んで問題解決への努力をされないのでしょうか?

安倍氏は何故幹事長に収まってしまったのでしょうか?

安倍氏も小池氏同様に「外務大臣」或いは「外務副大臣」への就任に拘るべきではありませんか?

皆、「目先の利益ばかりを追い」ご自分の立身出世だけが眼中にないように思われます。

 

 可笑しいではありませんか。

政治家達は「自己愛」を貫き、拉致されたご家族の方々には「他人愛」を強要するのは人の道を逸脱していませんか!?

  

 曾我ひとみさんの「この1年は、23年間よりももっと長く感じました」の嘆きの声に、何故政治家は耳を傾けないのでしょうか?


 官僚、政治家達は「国益」等を口にせず、「正義」の外交、即ち、心ある外交を貫いて欲しいものです。

 

 

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