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911の同時多発テロを今思うと

2003929

宇佐美 保

 つい最近、次の記事を目にしました。

 [ニューヨーク 10日 ロイター] 米調査会社ローパーASWは10日、過去75年間の重大事件を発表し、2001年9月11日の同時多発テロがトップに立った

 同社は5日―9日に、18歳以上の米国人1037人を対象に世論調査を実施。その結果、同時テロを最も重大な事件に挙げた回答者は全体の65%で、真珠湾攻撃の61%を上回った。

 ……

 3位は広島、長崎への原爆投下(46%)。4位以下にマーチン・ルーサー・キング師のワシントン大行進(26%)、アポロ11号の月面着陸(24%)、1929年の株価大暴落(24%)、ケネディ大統領暗殺(23%)、ノルマンジー上陸作戦(21%)、キューバ危機(7%)、ウォーターゲート事件(5%)が続いた。

 そして、この調査結果を裏付ける次のような記事(9月4日付け朝日新聞)を見ました。

 ねじれて、穴の開いた鉄くずが、アメリカ各地で「聖なる遺物」としてあがめられている。一昨年9月の同時多発テロで崩壊した世界貿易センタービルの鉄骨だ。惨事の現場から回収された鉄骨で作られた記念碑は、全米で200を超すと見られている。多くの人々によって、さらなる建立計画も進む。純粋な気持ちから悲劇を記憶し、愛国心を養おうとする「小さな聖地」だ。その広がりは一方で、悲劇を純化してテロの起きた様々な背景を捨象し、結果として善悪二元論の世界観を下支えする危うさもはらむ。……

 何故、原爆投下よりも、又、真珠湾攻撃よりも9・11のテロが米国人にとって重大事件なのかを読み解く記述(ブルース・カミング:シカゴ大学教授9月テロと真珠湾の違」)を2001年12月07日のasani.com に見ました。

 米国同時多発テロ以来、シカゴの高速道路を北上するドライバーたちは巨大な掲示板の歓迎を受ける。「アメリカは決して忘れない。2001年9月11日と1941年12月7日を」。テロ攻撃を受けて、米国人がまず思い浮かべたのは日本軍による真珠湾奇襲(日本では12月8日)だったのは驚くに当たらないだろう。

……

 真珠湾攻撃は軍事的侵略であり、……1909年に米海軍は真珠湾を太平洋の主要基地に選び、その後、対日戦を体系的に検討し始めた。真珠湾攻撃直前にスチムソン陸軍長官は日記にこう書いている。「ルーズベルト大統領と会い、戦争の可能性について話し合った。問題なのは、米国にとって大きな脅威にならない程度で、日本に戦争の口火を切らせるにはどう操ったらいいかだ」

 これに比べて、今回のテロはまったく予期せず、いわれなきもので、合理的な軍事的狙いもなかった。そして、実に多くの無実な人々の命を奪った。容疑者たちは飛行機で自爆し、死んだ。彼らの破局的な行為は1941年12月7日の出来事以上に衝撃的だ。

 パールハーバーと今回のテロを結びつけるのは不適切だ。テロは卑劣すぎ、大日本帝国やナチスドイツと比較することさえ出来ない。しかし、今年は真珠湾攻撃から60年の節目だ。12月になると、2つを結びつけるメディアの大々的なショーが展開されるのだろう。

 (「合理的な軍事的狙いもなかった。そして、実に多くの無実な人々の命を奪った」と言うならば、私達は、「広島長崎への原爆投下は!」と訴えたいのです。そして、又、カミング教授の問題発言はもう一点、真珠湾攻撃前の「米国にとって大きな脅威にならない程度で、日本に戦争の口火を切らせるにはどう操ったらいいか」とのルーズベルト大統領との会話です。

 

 確かに、世界貿易センタービル内の人々の救出に向かった消防士343人を含めて2792人の多くの方々が犠牲になられたのですから。

そして、その悲惨な状況がテレビでも放映されたのですから、このような米国人の気持ちを理解出来ないわけではありません。

 

 しかし、2001年12月13日米国防総省によって公開されたビンラディンが関与したことを示すというビデオテープ(アフガニスタン東部の町ジャララバードにある民家で発見されたという)の中では、ビンラディンは次のように語っているのです。

我々は事前に、タワー(ニューヨークの世界貿易センター)の位置に基づいて、殺される敵の死傷者数を計算した。(飛行機が)ぶつかるのは3階分か4階分だと計算した。私の計算が一番楽観的だったが、この分野の私の経験に照らして、航空機燃料から発生する火災がビルの鉄の枠組みを溶かし、飛行機がぶつかったところとそのその階だけが崩壊するだろうと思っていた。我々が望むのは最大限でこのくらいだった

 

 事実、ビンラディンならずとも、2棟の世界貿易センタービルに突っ込んだ飛行機衝突状況を、現場で、そしてテレビ画面を通して目撃した世界中の方々の中で、あの悲惨なビルの崩壊を予測出来た人がいたでしょうか?

(崩壊した後なら、その崩壊原因を推測する事は、さほど困難ではありませんが。)

従いまして、あの2棟の世界貿易センタービルの崩壊は、テロが原因で発生した事故と解釈すべきではないでしょうか?

(勿論、犠牲者の方々、又、その後関係者の方々へは、このような発言は不謹慎とも思われますが、事実認識としては、「テロが原因で発生した事故」として解釈すべきと存じます。)

 

 更に、ビンラディン発言を裏付けるような記事が、3月3日付けの毎日新聞に掲げられていました。

……3日付米紙ワシントン・タイムズが米情報当局者の話として伝えたところによると、テロ組織アルカイダが最近、ハワイ・真珠湾の海軍基地を標的としたテロを計画していた。

 同紙によると、アルカイダは、民間機をホノルル国際空港でハイジャックし、真珠湾の基地にいる米海軍の原子力潜水艦や軍艦に突入する計画を立てていた。

 アルカイダが真珠湾に目を付けた理由について当局者らは(1)第二次世界大戦で日本軍の奇襲攻撃により大きな被害を受けた「象徴的な場所」(2)基地周辺に障害がなく上空からの攻撃がしやすい――とみている。……

 即ち、テロ組織が世界貿易ビルに飛行機を衝突させた目的は、大量虐殺よりも、アメリカの象徴的な存在にダメージを与える事で、アメリカの威信を傷つける事だったと思われるのです。

(そして、誰しも予期しなかったビル崩壊という不幸が発生してしまったのです。)

ですから、ハイジャックされピッツバーグで撃墜された旅客機は、原子力発電所ではなく、ホワイトハウスを狙っていたはずです。

 

従って、次のブッシュ声明は、或る意味では異常です。

ブッシュ米大統領は12日午前(日本時間同日深夜)、主要閣僚との会議後に声明を発表、11日の同時多発テロを「戦争行為」と非難し、敵対組織との戦いに全力を挙げる決意を表明した。

(毎日新聞2001913日)

 

 しかし、「戦争もテロも同罪」との観点からは、このブッシュ声明は或る意味では正当でしょう。(拙文《戦争とテロ》を御参照下さい)

 

 そして、不思議な事には、2001922日付けの毎日新聞の以下の記事に見ますように、アメリカはタリバン側にビンラディン犯人説の「証拠」を提示していません。

フライシャー米大統領報道官は21日、アフガニスタンのタリバン政権がウサマ・ビンラディン氏を同時多発テロの容疑者と断定する「証拠」の提示を求めたことに関連し、「捜査情報の開示はテロ組織を利する結果になる」と述べ、タリバン側の要求を拒否した

一方で、報道官は、タリバン側の見解はマスコミ報道によるもので「米国は公式な返答を受け取っていない」と述べ、暗にタリバン側の再考を求める態度を見せたが、一切、交渉はしない方針を明確にした。また、軍事報復の方針に変わりないことを強調した。

 

そして、産経新聞社2001年10月30日に見ますように、一方的にアフガニスタンを攻撃しました。

……ラムズフェルド米国防長官は二十九日の記者会見で、これまでに三千発以上の爆弾やミサイルがアフガニスタンのタリバン政権に向けて落とされ、タリバン政権とテロ組織「アルカーイダ」の幹部が死亡したと述べた。また、ロイター通信は国防総省筋の話として米軍がアフガニスタン内に攻撃拠点設置を考慮していると報じた。

 同長官は空爆続行でアフガニスタンの民間人死者が増えていることについて「戦争に犠牲はやむを得ない」としたうえで、「何千人という米国民を殺害したテロリストを放置するわけにはいかない。米国民を守るのがわれわれの義務だからだ」と述べた……

 ラムズフェルド長官は、「何千人という米国民を殺害した」と語っていますが、先に述べましたように、何千人の内訳は、誰もが予想できなかった事故(ビル崩壊)によって亡くなられた人数が圧倒的に多く、テロリスト達が直接殺害に及んだ人数は数百人では?

 

 そして、タリバンを壊滅させた今、アメリカは問題の証拠を世界にそしてアメリカ国民にさえ提示していません。

以下は、2003726日付けの朝日新聞記事の抜粋です。

……01年9月の同時多発テロをめぐる米議会の報告書は、情報公開を拒む政府の強い横やりで、あちこちが空白のまま公表された。……

 外交配慮から発表を伏せられたサウジアラビアとの関係と並んで、「大統領は何を知っていたのか」も機密解除とならなかった。ホワイトハウスは、議会側の再三の要請にもかかわらず、事件前の8月6日のCIAによる大統領ブリーフィング資料の提供をかたくなに拒んだ

 このブリーフィングは、ハイジャック機を使った対米テロの可能性にまで踏み込んでいたとされる。「現政権特有の過剰なまでの秘密主義」(共和党のマケイン上院議員)の表れだけではなく、政治的に極めて微妙な問題をはらむだけに大統領を守らなければならない、という意向が、強硬な姿勢の背景にあったとみられる。……

サウジ疑惑

 米政府関係者によると、96年ごろからサウジアラビア政府がビンラディンに関して協力しないことがはっきりしていた。米政府高官〈非開示〉は、どうすれば9・11を防げたかを問われた時、もっとサウジの協力があれば、と述べた。

 2人のハイジャック犯を支援したアルバユミは学生だったが、サウジから無限に資金調達できたと思われる。FBIの有力な情報源は、アルバユミはサウジか他の外国の秘密情報員にちがいないとFBIに告げている。……

 以上からは、テロリスト達のつながりは、タリバンよりもサウジアラビアの方が強い事が伺われます。

そして、ブッシュ大統領が何かを知っていた事を、そしてその事実を隠蔽している事が匂っています。

 

 更に、記事は次のように続いています。

政府高官にも

 01年夏、情報機関は、広範囲の連邦政府機関や軍司令部の幹部に差し迫ったテロ攻撃の可能性についての情報を提供していた。7月9日、情報機関はビンラディンのメンバーが引き続き米国の国益を攻撃する差し迫った可能性があるとの情報を政府幹部〈非開示〉に伝えた。脅威の程度が明示された警告を大統領が受け取っていたかどうかに関する情報開示は、ホワイトハウスに拒まれた。しかし、01年8月の政府高官〈非開示〉への報告書の中に、ビンラディンが97年以来、米国攻撃を準備しているとの情報が含まれていたと聞いている。

ハイジャック

 98年夏、○○〈非開示〉が、ビンラディンが米国攻撃を計画していると示唆。○○〈非開示〉は、ニューヨークとワシントンを狙っていると述べている。ビンラディンは米国攻撃に重点をおいているが、CIAは計画についてほとんど情報がない。98年12月、○○〈非開示〉はビンラディンのメンバーが米国を狙った作戦を立案中であると報告。米国航空機をハイジャックする計画が進行中で、2人〈非開示〉がニューヨーク空港での訓練に向け、巧みに監視をくぐり抜けていた。

 この様に、「ビンラディンのメンバー米国航空機をハイジャックして「ニューヨークとワシントン狙っている」との情報を得ていながら、その情報通りに惨劇を国民に負わせてしまったブッシュ大統領は、テロリスト達を非難する前に、大統領の否を国民に謝罪すべきだったと思います。

なのに、これらの情報を隠し、声高にテロを攻撃したのは、何か裏が思えてなりません。

 

 そして、「これは真珠湾攻撃だ!」との思いに駆られるのです。

それは、先に引用しましたブルース・カミング:シカゴ大学教授のご見解をもう一度見て下さい。

以下にその抜粋の抜粋を掲げます。

……真珠湾攻撃直前にスチムソン陸軍長官は日記にこう書いている。「ルーズベルト大統領と会い、戦争の可能性について話し合った。問題なのは、米国にとって大きな脅威にならない程度で、日本に戦争の口火を切らせるにはどう操ったらいいかだ」

 これに比べて、今回のテロはまったく予期せず、いわれなきもので、……

 以上のように、カミング教授は、9・11テロと真珠湾攻撃は、全く別と唱えていますが、逆に、上記引用の真珠湾攻撃部分での「日本」を「テロリスト」または「ビンラディン」に置き換えて考えると、9・11テロは真珠湾攻撃と全く同種の悲劇と見なせるのでは?

そして、又、「米国にとって大きな脅威にならない程度で」との大統領の思いが、日本軍の軍事的にあまりに見事な攻撃によって米軍に予期せぬ被害を負わせてしまい、又、全く予期しなかったビル崩壊の事故により市民に多大の被害を負わせてしまった事までそっくりです。

 

 更には、又、それらの被害が予想以上であった為に、米国民の結束が両大統領の予期していた以上の効果を上げた事もそっくりです。

 

 そして、その被害の余りの大きさに、両大統領とも、相手側の攻撃を事前に予知していた事は、絶対的な秘密としなくてはならなくなったのだと考えられるのです。

 

 この真珠湾との類似性については、褐カ冬社発行《ぬりつぶされた真実(ジャン=シャルル・ブリザール ギヨーム・ダスキエ 共著 山本知子訳)》を読むとその思いを強くします。

先ずは、訳者のあとがきを引用させて頂きます。

 十月、ブッシュは、「テロへの報復」「オサマ・ビンラデインの捕獲」を名目にアフガニスタンに空爆を開始する。その一方で、ブッシュはテロ発生を事前に察知していたのではないか、テロ自体がアフガニスタン空爆を正当化するためにブッシュが仕組んだ陰謀ではないか、という声がささやかれ始めた。本書第一部に描かれている、水面下で続けられていたブッシュとタリバンとの交渉の経緯を見れば、そうした説もあながち的はずれではないことがわかるだろう。

 しかし、真実はそれほど単純ではない。……

 それにしても、イラクには莫大な石油資源が埋蔵されていますが、アフガニスタンの場合も同じく石油、そして天然ガス資源問題が存在しているのです。

この件でも《ぬりつぶされた真実》から引用させて頂きます。

 その理由は、アフガニスタンの山岳地帯の北方に位置するトルクメニスタン、ウズベキスタン、そして特にカザフスタンの豊富な地下資源、石油と天然ガスにある。地理的な問題さえ克服できれば、莫大な利益を生む資源だ。つまり、アフガニスタンを利用して、これらの国にあふれている石油と天然ガスを輸送することで、計り知れない利権が手に入るのだ。

具体的に見てみよう。石油や天然ガスを採掘し売りさばくために考えられるルートは、まず西ルートだ。

 ロシアまたはアゼルパイジャンを通って、トルコと地中海の石油ターミナルにいたる経路である。イランを通る南西ルートが次に考えられる。最後にアフガンを経由する経路である。……

 西洋の数多くの石油会社と、そうした企業を抱える国、特にアメリカ政府にとって、アフガニスタン・ルートには大きな政治的メリットがあった。他の二つの経路は、ロシアと接近するかイランに侵入するしかないが、アフガニスタンを経由できれば、理想的な代案ルートとなるからだ

 アメリカ政府はこれまで、中央アジアにおけるロシアとイランの影響力をできるだけ阻止しようとさまぎまな策を弄してきた。それなのに、石油を輸送するためとはいえ、「頼みごと」をする立場で、モスクワやテヘランと直接交渉しなければならないとすれば、ワシントンにとっては悪夢としかいいようがないだろう。

 (この件に関しては、北沢洋子氏のホームページ「アフガニスタン戦争と石油利権」に実に的確に記述されています。是非ともそのホームページを訪問される事をお勧めします。

http://www.angel.ne.jp/~p2aid/kitazawa_afganandoil.htm))

 

 そして、《ぬりつぶされた真実》を読んでいきますと、クリントン政権の最後の時期(200010月頃)には、アフガニスタン周辺の六ヶ国とアメリカ、ロシアからなる「6+2」グループと、タリバン側との交渉が煮詰まり、アフガニスタンの安定と、タリバンによるビンラディン引き渡しが成立しようとしていたとの事です。

ところが、11月末、大統領選で、集計トラブルの後、ブッシュが勝利宣言した後の記述を又引用させて頂きます。

……難航作業の末に、共和党のテキサス州知事、ジョージ・W・ブッシュが、民主党のゴアに対して勝利宣言をした。

 やがてこの騒動も過ぎ去り、改めてアフガニスタン問題に目を向けると、知らぬ間に根本的な変化が起きていた。わずか一カ月足らずで、タリバンと西洋諸国との間の外交バランスが崩れてしまったのだ

62」グループが率先して交渉や話し合いの場を持つということも、もうできなかった。双方から乱暴なことばが投げかけられ、話し合いというより、猫疑心、ときには怒りに満ちた言い争いしか残されていなかった。……

そして十二月十九日、ついに行き着くところまで行った。

 国連の安全保障理事会は、タリバンに対する経済制裁の強化と、彼らの資産の一部の凍結を採択したのだ。この採択は、クリントン政権がとった外交的な最終決定の一つとなった

 どうしてこのような事態に陥ったのだろうか? アフガニスタンの根本的な方向転換を引き起こしたのはどんな出来事なのだろうか? タリバンが突然、それまでの交渉相手と話し合う気をなくしてしまったように見えるのはなぜだろうか?

 誰もがタリバンのこの急変した態度を理解できず、不満と怒りを抱えていた。

この時点では、こうした疑問への答えは見つからないままだった。

 しかし反対に、この突然の変化の動機が何であったとしても、その状態は短期間しか続かなかった。その後、ジョージ・W・ブッシュの大統領就任によって、事態は再び変わろうとしていたのだ

 どうして、タリバンの態度が急変したのでしょうか?

それも、クリントン政権からブッシュ政権に変わる直前に。

その裏には何があったのでしょうか?

 

 何故、ブッシュ政権にとなったら、直ぐ交渉が再開されたのでしょうか?

更に引用させて頂きます。

ブッシュ政権と石油業界の絆

 二〇〇一年の初め、タリバンとの公的交渉の専門家といわれているライラ・ヘルムズが、こうした状況に介入してこないはずがなかった。

 新しい政府にアフガニスタンとの交渉を再開することを促すタリバンの驚くべき声明が日刊紙『ザ・タイムズ』に掲載された二月五日の後、彼女は、ムッラー・オマルの代理人である移動大使、サイイド・ラフマトッラー・ハシミのアメリカ訪問をお膳立てした。

 なぜ、こんなに短い期間に――タリバンとの関係が崩れてからせいぜい三カ月しか経っていないのに――これほど大きな路線変更が起きたのだろうか?

 その理由は、新しいブッシュ政権の重要ポストにエネルギー業界出身の者が数多くいることにある。彼らには、中央アジアが安定するかどうかによって経済の問題がどのような影響を受けるか、完全に予測がついていた。

 そして誰もが、アフガニスタンでつい最近動き出した天然ガス・プロジェクトを忘れてはいなかった。というのも、よく考えてみると、テキサスの石油及び天然ガス会社こそが、ブッシュ・ジュニアの選挙戦の最初の協力者グループだったからだ。

 政権の座に就いたブッシュの新チームは、そのことを嫌でも思い出すことになった。

 たとえば、石油の調査で、環境問題を無視してアラスカの天然資源の採掘を決め(二〇〇一年三月二十九日)、エネルギー業界には不評の汚染排気物質に関する京都議定書を拒絶する陰には、石油と天然ガス企業の存在があった。その理由はすべて、W・ブッシュに仕える新しいリーダーたちの履歴から説明がつくだろう。

 副大統領ディック・チェイニーからして、石油産業関連のサービス会社では世界第二位のハリバートン社を長い間経営していた。チェイニーは大統領選を機に同社を離れた。

 すべての諜報機関を統括する安全保障の最高機関、国家安全保障会議の責任者であるコンドリーザ・ライスは、シェブロン社で九年間を過ごした。この巨大石油企業で、一九九一年から二〇〇一年一月まで社外重役を務めていたのだ。

 彼女は、有能な旧ソビエト研究家としても、中央アジア、中でもシェブロン社が重要な拠点を置いているカザフスタンの問題に取り組んできた(彼女は、かつて、ブッシュ(父)の下で、国家安全保障会議のソ連・東欧担当上席部長だった)。

 W・ブッシュの親友でもある商務長官ドナルド・エバンスは、エネルギー長官のスペンサー・エイブラハムと同様に、天然ガス及び石油を扱うトム・ブラウン社の社長として、それまでの経歴のほとんどを石油業界に捧げてきた。経済問題担当の商務副長官キヤサリン・クーバーは、世界的企業エクソン社のチーフエコノミストであった。

 さらに大臣官房にも似たような経歴の者たちがたくさん見られる。このように目立って政治的な人事は、エネルギー政策を思うがままに動かそうという野心に基づくものであることがしだいに明らかになっていく。……

 そして、更に事態はおかしな方向に展開して行くのです。

先ず訳者の注には次のような記述があります。

訳注2 ベルリンで開かれた国連主催の会合で、アメリカの代表はタリバンの代表に、「オサマ・ビンラデインを引き渡さなければ、ラマダンに入る前の十月半ばまでに、戦争を覚悟するように脅かした」と、ナイタ元外相(パキスタン)が二〇〇一年九月十八日のBBC放送で証言。このアメリカの強圧的な態度にタリバン側が反発して、交渉が打ち切りになったともいわれている。

 

訳注3 同じ六月にベルリンで、アメリカの政府高官がロシアとドイツの諜報関係者同席のもと、タリバンの代表と会い、米軍が十月にはアフガニスタンへの攻撃を始める準備をしていると伝えたともいわれている


 このアメリカのアフガン攻撃への脅しの背景には、次の記述が認められます。

「ユベール・ヴェドリン氏(欧州統合委員会委員長)が、今朝、アフガニスタンにおける特別ミッションの責任者であり、国連の安全保障理事会の個人的な代理人であるフランセスク・ヴェンドレル氏に会ったところ、ヴェンドレル氏は、アフガニスタンの政治的状況が膠着状態にあることを伝えた。

 両氏は短期的に見て、どうしたら事態を改善できるかということについて話し合いを持ったが、国王を中心にしてアフガニスタンの代表者たちを結集させるためには、とりわけ、国際機関の応援が必要であるということで合意した」

国王とは誰のことか?

 当然のことながら、その時点ではほとんど誰にもわからなかった。ところがその後に起きる出来事によって、それが、アフガニスタンの元国王ザヒル・シャーを指すのだと誰もが知るようになった。

 イタリア亡命中のシヤーは、数カ月前からカブールでタリバンの後任として祭り上げられつつあった。場合によっては、彼の全国統一政府にタリバンを取り込もうという目論見もあった。

 実際に二〇〇一年五月十六日以降、フランセスク・ヴェンドレルは、ローマでザヒル・シヤー元国王と話し合い、この元国王がカブールに戻る条件を検討していた。

 同じころ、二〇〇一年七月、タリバンは、西洋諸国から二つのメッセージを受け取る。

一つは、「オサマ・ビンラデインを逮捕するために、タリバンに対して軍事的選択をするかどうかを検討中である」というものだった。

 二つ目は「カブールで権力を再び奪取するために、元国王と話し合いが始められる」というメッセージであった。

 こうして、西洋諸国はタリバンを認知しないということを示す、すべての条件がそろった。すでに、あちらこちらでタリバンの後継者についての話がささやかれ始めていた

 平和的に話し合うそぶりを見せながら、相手をどうにもならない境地に追い込んでゆく手段は、「タリバン」を「大日本帝国」と置き換えてみれば、直ぐに実感されるでしょう。

 

 「9・11のテロ」はまるで、「真珠湾攻撃」そのものではありませんか!?

只、異なるのは、タリバン(或いは、ビンラディン)側には、直接アメリカを攻撃するに足る航空母艦も飛行機もなかっただけではありませんか?

 

ここで、拙文《戦争とテロ》にも引用させえて頂いた、次の抜粋記事をごらん頂きたく存じます。

 アルジェリアの独立戦争を描いた『アルジェの戦い』という映画に忘れ難いシーンがある。一人のゲリラが買い物カゴに爆弾を仕込みフランス人が集まる店で爆発させ、捕えられる。卑怯だと罵られたゲリラは「君たちは飛行機で我々を攻撃する。我々は飛行機を持っていない。君たちが我々に飛行機をくれるなら我々は君たちに買い物カゴをあげよう」と言って処刑されるのである。

(岸田秀氏:文芸春秋200110月緊急増刊号)

パレスチナの自爆テロが悪で、イスラエルのミサイルは善なのですか?

 

 今の日本は、盛んに「国益」「国益」と言って、「国益最優先」が罷り通り、小泉首相は、アフガン攻撃、イラク攻撃に対して、アメリカを全面的に支持しました。

そして、又、イラクへ復興支援という名目で自衛隊を送ろうとしています。

先日のテレビ朝日の番組「朝まで生テレビ」でも、「国益こそが正義」との言葉が罷り通っていました。

更に、其の番組では、今、イラクで苦戦しているアメリカが撤退したら、イラクはテロの集結地となり大変な事になるから、ロシアもフランスもドイツも軍隊を送り、そして、日本もイラクに自衛隊を送るべきだとの意見が大勢を占めていました。

 

 こんな事で良いのですか?

 

 大国が圧倒的な戦力で、圧政からの解放とか、民主化とかの旗を掲げて、他国民の真意も問わずに、他国を破壊し、その地に傀儡政権を打ち立ててしまい、其の結果、他国の天然資源を国益の名の下に欲しいままにする事が許されるのですか?

これでは、まるで植民地時代への逆行ではありませんか?!

 

 若し将来、日本海溝などに、世界に無い貴重な天然資源が発見されたら、大国は何やらの因縁を付けて、其の問題の資源以外には、何ら資源のない日本を徹底的に経済した上に、(××条約などは無視して)、ミサイル(若しかしたら、核も搭載した)を多数日本に打ち込み、多国籍軍なるものが日本を占拠、蹂躙しないと誰が言えるのですか?!


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