国債を発行しても景気対策にはならない
2003年9月11日
宇佐美 保
朝日新聞(9月11日(木)付)に、【利回りアップ/関心高まる 個人向け国債、出足は】との記事が掲載されていました。
そこには、右に引用致しました「国債の保有者の割合」と次の図が掲げてあります。
それなのに、その記事には、次のような事しか記述されていません。
個人向け国債の第4回分(10月発行)の販売が10日、始まった。このところの長期金利の上昇で利回りは前回の年0・05%から大幅に上昇し、年0・77%。過去2回は多額の売れ残りを出したが、今回は個人投資家の関心も高まり、郵便局での初日の売れ行きは前回を大きく上回った。民間金融機関での販売予定も前回の2倍以上。一方、厳しい財政事情で受け皿を増やしたい財務省も、売れ行きを注目している。…… |
この様に貴重な図を掲げておきながら、
私が日頃(先報の拙文《国債音痴の政治家と田原総一朗氏》等で)力説している事実を指摘出来ていませんでした。
なにしろ一番誰でも驚くのは、政府部門(郵貯、公的年金など)が40%強と、私達の郵貯、年金基金が国債に姿を変えているのです。
そして、(この表では、銀行と証券が分離されていないのが残念ですが)国債がBIS定義の総資産へのウエート付けが0%を銀行は悪用し私達の預金をどんどん国債へと(私達に無断で)変えているのです。
なのに(先報にも書きましたが)、6月22日のテレビ朝日の番組「サンデープロジェクト」で、麻生太郎自民党政調会長は、“民間の預貯金が1400兆円あるのだから、国債発行高が700兆円だろうが問題はない”と嘯いていました。
そして、更に驚く事は、小泉氏の対立候補の3名とも“国債発行による景気対策”を公約しているのです。
こんな事では(先報の繰り返しですが)「国債を発行する事は、私達の郵貯や銀行預金が企業活動に有効活用されずに、癒着汚職の危険性の高い公共投資に向けられてしまうのです」これでは絶対に景気対策にはなりません。
少なくとも、米国やドイツのように国債を外国資金に依存するなら、それなりの効果はありましょうが?
となると、その国債の返還の問題が生じてきます。
なにしろ、現状の私達の郵貯や預金をこっそりと国債に回していたら、国債の返還の問題を,預金封鎖やなんやかやとで、うやむやにする事も可能なのですから。
(追記:9月12日)
今朝の朝日新聞には、次のような記事(サンリット産業・小池俊二社長の談話)も載っていました。
「中小企業全般を見ても、金融機関の融資態度は厳しいままだ。倒産、廃業する中小企業を見ると、まだ生き残る余地があるのに、資金繰りの悪化などで追い込まれるケースが多い。大手銀行のリストラのあおりで、つぶれる会社が多い、という実感がある」 |
おかしくはありませんか?
以前の拙文《金貸し業の銀行が貸し渋っても儲けるのは何故?》にも書いたのですが、銀行は、国際BIS規格の8%を死守するが為、私達の預金などを国債購入に向けず、本来なら、国内BIS規格の中で、日本国内の業務に励むべきと思います。
そして、国は、私達の預金を無駄食いしてしまう国債などを乱発してはいけないのです。