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石原都知事にさらわれたレスキュー隊の栄誉

201164

宇佐美 保

福島第1原子力発電所への東京消防庁の放水作業に対して私達は感謝していた時に、石原都知事が菅首相に抗議があった件に関して、私は、先の拙文≪復興は平和の礎(民主党とマスコミ)≫に於いて次のように書きました。

 

 

 ……次のような記事(産経新聞322日:政府から消防隊員に「処分」と恫喝 石原知事が首相に抗議)もあります。

 

 東京都の石原慎太郎知事は21日、首相官邸を訪ね、菅直人首相に対し、東京電力福島第1原子力発電所への東京消防庁の放水作業をめぐり、政府側から消防隊員に恫喝(どうかつ)まがいの発言があったと強く抗議した。

……

 石原氏は、首相に「みんな命がけで行い、許容以上の放射能を浴びた。そういう事情も知らずに、離れたところにいる指揮官か誰か知らないが、そんなばかなことを言うのがいたら戦(いくさ)にならない。絶対そんなこと言わさないでくれ」と注文、首相は「大変申し訳ない」と陳謝した。

 

 石原氏は記者団に「処分するという言葉が出て、隊員は皆、愕然(がくぜん)とした。(現場の)指揮官は、それが一番不本意だったと言っていた」と述べた。真相は不明だが、都関係者によると、「処分」と発言したのは海江田万里経済産業相だという。

 

……

 

 

 それに海外からは「50人のサムライ」(海外ですからサムライの表現を使用するのでしょうが)と讃えられている方々が、“処分するという言葉が出て、隊員は皆、愕然(がくぜん)とした。(現場の)指揮官は、それが一番不本意だったと言っていた”なんて本当でしょうか?

 

「佐藤総隊長も妻にメールで出動を伝えた。「日本の救世主になってください」が返事だった。」との事ですから、“処分するという言葉”の有無にかかわらず、彼らは誇りを持って遂行して下さったのだと存じます。

そして、「日本の救世主になってください」とのメールを受けて、立派に使命を達成して方々が、“処分するという言葉が出て、……それが一番不本意だった”と思っているとは私は信じたくありません。

 

石原氏は、現場指揮官がうっかり漏らしてしまったかもしれない、
この言葉は、菅首相に伝えるだけに留めて、石原氏(隊員たち)の胸の中にしまい込むべきです。

 

それでこそ、世界中から、彼らが「50人のサムライ」と讃えられるのだと存じます。

 

石原氏は、先の「天罰発言」以降は蟄居していて然るべきです。

(なのに、何かとリカバリー・ショットを打とうとしている事が見え見えです。

石原氏の背丈は随分大きいようですが、人物としては小物(チンケ)に思えてなりません

 

 

 どうも石原慎太郎氏の「人物としては小物(チンケ)」ぶりは、次の記事(『東京新聞(2011.5.22)メンツ争いの先陣』)からも拡大されてきます。

何しろ、「石原は「車は出せるが人は出せない」とにべもなく断る」と書かれているのですから!

 私達が讃えたのは消防隊員の活躍でありました。

なのに、石原氏は当初消防隊員の派遣を断っていたのです。

この石原氏の言動を知ったら、隊員たちは「処分するという言葉が出て、隊員は皆、愕然(がくぜん)とした……」以上に、愕然とされるのではないでしょうか!?

 

 

 では東京新聞の記事を抜粋させて頂きます。

 

 福島第一原発3号機の使用済み核燃料プール。建屋は爆発で壊れており、プールが干上がって燃料棒が溶ければ、放射性物質が直接外に放出される。

プールの高さは三十b。地上からの連続放水が必要だった。

 「地上からの放水はまず警察がやる」

 内閣危機管理監の伊藤哲朗(六二)は、そう主張した。空からは自衛隊が先陣を切った。伊藤は警察庁出身。組織のメンツがかかる。

 

 三月十七日午後七時すぎ、警視庁第一機動隊が高圧放水車で四十四トンを地上から放水する。だが、放水できたのはわずか十分。線量計の警報が鳴り、早々に撤収を余儀なくされる。放水車の本来の目的は「暴徒の制圧」。

高い所に大量放水する能力はなかった。

 その後に自衛隊が入り、十八日昼すぎまでに七十トンを放水する。

だが、プールの容量は千四百四十トン。まったく足りない。

      ■

 大量に連続放水するには、最新鋭の装備があり、訓練を積んでいる東京消防庁の力が欠かせなかった。

 経済産業相の海江田万里(六二)と総務相の片山善博(五九)は、東京知事の石原慎太郎(七八)に協力を打診する。だが、石原は「車は出せるが人は出せない」とにべもなく断る。

 自民党の元首相、安倍普三(五六)が間に立った。安倍は石原の長男で党幹事長の伸晃(五四)を通じ、派遣を要請。石原は受け入れ、十七日午後十時前、東京消防庁消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)に出動を命じる。

      ■

 ハイパーレスキューは十七日昼、出動を見越して棄京都足立区の荒川河川敷で訓練していた。高さ二十二bから放水できる屈折放水塔車と、遠距離大量送水車を組み合わせ、無人で海水を放水するシステムを構築する。

 第一陣約四十人は十九日午前零時前、第一陣約四十人は十九日午前零時前、第一原発の正門をくぐり、3号機に向かった。

 消防隊服の上に防護服を二重に来て、さらに防火服を着込む。毎時九ミリシーベルトにセットした防火服の線量計がいきなり「ピーピー」と鳴り響く。

 周囲は暗闇。ホースの設置を指揮する渡辺豊(四八)は、ライトを片手に走る。「真ん中より左、マンホール。ぽっかり穴!」。大声を出し、遠距離に大量送水できるポンプ車を海岸まで先導する。

その先は、津波で流された重油タンクが道をふさいでいた。線量計は鳴りっぱなし。迷っている時間はない。

車は進めない。『手広め』行くぞ」。三百五十b先の海岸まで、重さ百`のホース七本を手作業でつなぐ。渡辺はそう即断した

 「(放射線の)線量率は高くない。心配するな」 「どこが一番高いですか」 隊員は拡声器で声を上げ作業を続ける。午前零時二十五分、無人放水システムは完成する。

 海水が通り、ホースが膨らむ。毎分三千八百gを放水できる。隊員は最大二七ミリシーベルを被ばくする過酷な環境で作業を遂げ、当面の危機は回避された。

……

 

 

 石原氏の当初の回答通りに消防車だけが東電(或いは警察、自衛隊?)に提供されても、「車は進めない。『手広め』行くぞ」。三百五十b先の海岸まで、重さ百`のホース七本を手作業でつなぐ……」といった作業は日頃からこの作業の訓練が施されている消防隊員でしか出来なかった筈です。

 

 その結果、「福島第一原発3号機の使用済み核燃料プール」は、冷却されることなく爆発して、多量の放射性物質(プルトニウムも含む)が放出されていたかもしれません。

 

 このような事情を石原氏はおくびにも出さず菅首相に抗議して、消防隊員(レスキュー隊員)の栄誉の恩恵を浴びて都知事選に勝利してしまったようです。

 

 東京新聞は今回の記事のような点までも報道してくれますが、他の大手の新聞はいかがなのでしょうか?

大手新聞の拡販員の方が何度も訪ねてきますが、“私は東京新聞で十分満足しています”と言って、大手新聞の購読を断っています。

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