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復興は平和の礎(税金と大企業)

2011320

宇佐美 保

 

 先ずは、東京電力福島第一原発への「連続放水」を実行された東京消防庁の派遣隊員の皆様方、更には、消防車、ヘリコプターを用いての放水を行われた自衛隊員の皆様、又、各原発への仮設ケーブルの接続などと、放射線を浴びつつの危険な作業に従事されておられる方々へ感謝いたします。

((補足:1)に、この件に関する朝日新聞(2011320日)の記事を掲げます)

 

 しかし、これからの復興の為には、巨額な費用が必要である事は言うまでもありません。

産経新聞( 315日)には次の記述を見ます。

 

 

 自民党の谷垣禎一総裁は15日昼の記者会見で、東日本大震災の被災者支援と復興に向けた5兆円規模の緊急対策と、防災担当相や各党幹事長らによる地震対策与野党協議会の設置を政府に求める考えを明らかにした。緊急対策の財源は子ども手当や高速道路無料化など民主党のマニフェスト(政権公約)施策を廃止して捻出するとしている。

……

 また谷垣氏は、平成23年度予算案の関連法案の対応について、赤字国債の発行を認める特例公債法案も含めた主な関連法案を来週までに衆議院で議決し、参議院へ送るよう提案する方針も明らかにした。子ども手当に関しては「緊急時は凍結すべきだ」としている

 

 

 なんだかおかしくありませんか?!

これでは谷垣氏の復興対策は,単なる「民主党のマニフェスト」潰しではありませんか?!

 

 復興に必要な、物資の輸送を「高速道路無料化」で円滑に行くかもしれません。

何も、「子ども手当を凍結」せずとも、他に財源はあるでしょう。

 

 でも不思議です、何故、法人税の引き下げ反対の声をあげないのでしょうか?!

 

 

 《菅直人首相は(20109月)9日午前に開かれた新成長戦略実現会議(議長、菅直人首相)の初会合で、企業の競争力強化などを目的に、法人税実効税率の引き下げについて2011年度税制改正で結論を得ることなどを指示した。11年度の税制改正 要望では、経済産業省が5%の法人税引き下げを要望している》(ロイター)

 

 今の窮状で、日本の税率が高いからと言って外国へ逃げ出す企業があるのでしょうか?!

そんな企業はこの際、早々と日本から出て行って貰いたく存じます。

それに、日本経団連の阿部泰久・経済基盤本部長は“私は昔から日本の法人税は、……欧米の普通の国に比べて高いという実証データはありません。日本の法人税負担は、税率は高いけれども税率を補う部分できちんと調整されていると思います”と語っておられます。

(この件、並びに次の件は(補足:2)をご参照ください)

 

 

 更には、「三大メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)グループ傘下の6銀行は、10年以上、法人税をまったく納めていない」との各銀行から、それ相応の特別法人税を新たに設定すべきではありませんか!?

 

 

 そして、こんな状態なのに、円高になるという不思議な現象が生じて居ります。

(朝日新聞2011317日)

 

 ロンドン外国為替市場の17日の円相場は、朝方から1ドル=79円をはさんで推移していたが、午前10時すぎに一時1ドル=78円63銭まで円高ドル安が進み、その後も78円台の取引が続いている。「為替介入への警戒感が強いなか、復興で円の需要が増えるとの見方が引き続き影響している」(市場関係者)とみられている。(ロンドン)

.

 

 この記事に於ける「復興で円の需要が増える」に絡んで、テレビである方は、次のように解説されました。

 

 

 日本の企業や、銀行は多額な自己資金を、金利の高い外国預金で増やしていたが、今回は復興資金としての円の買い戻しが不可欠と予測されている。

 

 

 私達の低金利預金を、又、多くの派遣労働者を切り捨ててあげた利益を、外国の高金利預金でうまい汁を吸っていたとはとんでもないことです。

 

 その上、今回も円高となると、私達のお金を使って「為替介入」して、円高を阻止しようとします。

これではまるで、私達の褌で、「日本の企業や、銀行」は相撲を取っているようです。

(日本相撲協会の八百長相撲以上の「八百長」でしょう)

 

 

 石原慎太郎氏はこのような「我欲」に対してこそ非難の声をあげるべきです。

 

 

 それでも、次のような記述を見ました。

 

 「東北地方太平洋沖地震、企業各社が続々と支援を表明」に記載した一覧にある企業による義援金等の金額を集計したところ、合計で約100億円に上ることが分かった。

 

 

 でも無いよりは益しですが、少額ではありませんか!?

スポーツ報知( 315日)には、次のような記事が載っています。

 

ユニクロの柳井正代表取締役会長兼社長が個人で10億円を寄付すると発表……柳井氏の個人寄付だけでなく、グループ5社で3億円、全世界のグループ従業員約4万7000人の有志から1億円を募り、合計14億円を贈る。さらに支援物資として防寒衣料ヒートテック30万点を始め、肌着、ジーンズ、タオルなど7億円相当の寄贈をすることも決めた。

 

 

 更には、イチロー選手は1億円、松井秀喜選手は5000万円、久米宏氏は2億円他にも外国の映画スターなどからも多額の寄付が寄せられているようです。

 

 

 ですから、この際、法人税の減額ではなく、増額を申し出たらいかがなものでしょうか?!

 

こんな非常時に日本の法人税が高いから外国へ出て行く企業があったら、あったで良いではありませんか!?

そして、今の日本に外国の企業が、法人税が安かろうと高かろうと進出して来ますか!?

 

 

 更には、未だ不思議な事があります。

私達、素人感覚では、この不況期に菅首相に「消費税の増額」されたら、消費意欲も萎え、その結果、商品の売れ行きも減少して財界は困ると思うのですが、財界が歓迎しているというのです。

 

 

 この件に関しては、『消費増税で日本崩壊:斎藤貴男著(2010115日 KKベストセラーズ発行)』を参照させて頂きますと、

 

 

 輸出企業は輸出する商品や商品を製造するための部品等を仕入れた際、その対価とともに消費税分の金額を支払った形になっている。商品が国内で販売されれば仕入れ税額控除が適用されことになるのだが、輸出先の顧客からは消費税を預かることができない。だから仕入れの際に支払った形になっている消費税分の全額が還付されてくるという考え方には、一応の筋道が通っているからだ。

 

 

ここに書かれた、「商品が国内で販売されれば仕入れ税額控除が適用されるを、私なりに解釈しますと、例えば、自動車メーカーに部品を、部品メーカーABCDE社が納入すると、各部品メーカーは、それぞれそれらの部品の価格に応じて、消費税を国に納付します。

ところが、自動車メーカーがそれらの(消費税分が価格に付加された)部品を使用して自動車を製造して、自動車会社の付加価値分に消費税を上乗せして、消費者から代金を受け取ります。

その結果、消費者は、自動車メーカー、部品メーカーABCDE社が納入する消費税込みでの自動車を買う事になります。

 

そして、消費者から受け取ったその消費税分を自動車メーカーが国に納めるのなら話は簡単ですが、このままだと、部品メーカーが国に納付した(納付する)消費税を再度、自動車メーカーが納税することとなりますので、自動車メーカーは部品メーカーが払った分の消費税を差し引いて、自社の付加価値分に関しての消費税を納入する仕組みだそうです。

 

 

更に、斎藤氏は

“輸出取引とは、売上に対して消費税が課税されないとともに、仕入で負担した消費税も還付されますので、まったく消費税を負担しないことになります。”

と記述されておられます。

 

この処置は、輸出に対する競争力を高める為の優遇処置だそうです。
(それだけ輸出企業は保護されているのでしょう)

ここで、斎藤氏が問題としているのは「仕入で負担した消費税も還付されます」との件だそうです。

この文面通りだと大手輸出企業(例えば自動車メーカー)にとっては、消費税分安く輸出できその分競争力がアップするだけであって、消費税率が上がろうと下がろうと大手輸出企業のメリットは大差ないわけです。

 

 ところが、消費税率が5%の時代に、下請けメーカーが100円の部品価格に5%上乗せして、105円で大手輸出企業に卸していて、税率が10%にアップすれば、110円で卸せれば下請けメーカーの苦労はありません。(大手輸出企業もメリットはありません)

しかし、現実は、違うのです。

斎藤氏は、大手輸出企業と下請けメーカーの力関係に大差があるので、下請けメーカーは注文を確保する為に、110円に値上げせず、従来通り105円で卸し、(大まかな計算ですが)部品メーカーは血の出るようなコストダウンを図り、部品価格を従来の100円から95円に落とし、消費税として10円上乗せして、従来通りの価格(105円)で大手輸出企業に納めなくてはならないそうです。

 

 その結果、大手輸出企業は、“「仕入で負担した消費税も還付されます」との件”で、この従来通り105円下請けメーカーに払った部品分の輸出還付金は、消費税率5%時代は5円だったのが、10円にアップするのですから、ホクホクしてしまいます。

 

 勿論、いまの5%時代でも、下請けメーカーはその消費税分は製品価格に上乗せ出来ずに、自腹を切っているそうです。

 

大手輸出企業には支払ってもいない消費税分の金額が「輸出戻し税」として還付″されていくことになる。

 

 還付金の総額は半端な額ではない。

 関東学院大学の元教授で税理士の湖東京至氏が政府の予算書をもとに概算した数字がある。それによると、たとえば2010年度における消費税の還付総額は約33762億円。同年度の消費税収12475億円の約28%に相当する(いずれも国税+地方税)。主な輸出企業の有価証券報告書に基づいた試算では、2009年度に最も多額の還付金を得たのはトヨタ自動車で、約2106億円だった。表110社が得た還付金の総額は8014億円で、消費税の全還付金の24%に相当していた。これでもリーマン・ショック以来の世界同時不況のせいでずいぶん減った。わずか2年前、2008年度の消費税の環付総額は7兆円にも迫ろうかというボリュームで、消費税収全体に占める割合も、約40%ほどに達しでいたのだ。

 

 



 とのとんでもない話なのだそうです。

何故、この点に対して石原慎太郎氏は怒りの声をあげないのでしょうか!?


 

 朝日ニュースターの番組「闘え!山里ジャーナル」(3/20の再放送)を途中から見ましたら、中林一樹氏(首都大学東京大学院教授)が、次のような発言をされておられました。

 

 首都を東北に移しても大量雇用は期待できないが、日本企業が、生産拠点を東北地方に移すべきである。

その事によって、被災された方々などの雇用と共に、企業の安定生産体制も確保される。

 

何しろ、今後の東北地方での地震発生の確率は、今回大地震が来たので、東海地方などよりも、地震の確率は減っている筈だ。

 

この中林氏の御見解に企業の方々は耳を方抜けて頂きたいものです。 

 

 

  それから、誰一人として、「累進課税」を口にしないのが不思議でたまりません。

多分、テレビに出たり、マスコミで活躍されている方々は高額所得者だから?

と、貧乏人の私は勘繰ってしまいます。

 

 私は、昨年の11月に、拙文≪景気対策とノーブレス・オブリージ≫の中で、「「ノーブレス・オブリージ税」との名称の、累進課税とエコポイント制度」を混用した税制度書き記し、民主党の方々に提案しましたが反応は皆無でした。

 

 しかし、今回は多くの方々が被災者の為に力を貸し、又、貸そうとされています。

こんな時に、「累進課税」を実施すると働く意欲(仕事への向上心)が減じてしまうとの理屈は影をひそめるでしょう。

万一、この非常事態に於いて、「累進課税」によって税金が高くなるから働く意欲が無くなられると思われる方が居られたとしたら、その方は、もともと高録を食む資格が無かった方なのだと存じます。
ですから、今こそ、期間限定でも結構ですが、「災害復興累進課税」を検討されてはいかがでしょうか?

 

 

(補足:1朝日新聞(2011320日)

 

消防放水「命中を確信」 涙の隊長、家族に陳謝

 

 「非常に難しく危険な任務だった。国民の期待をある程度達成でき、充実感でほっとしている」――。東京電力福島第一原発の冷却作戦で、10時間以上の「連続放水」を成功させた東京消防庁の派遣隊員の一部が19日夜、帰京した。佐藤康雄総隊長(58)ら3人が東京都内で記者会見し、心境を語った。

 会見したのは、災害救助のスペシャリストである「ハイパーレスキュー」の冨岡豊彦隊長(47)と高山幸夫隊長(54)。

 冨岡隊長は「大変だったことは」と問われると、「隊員です」と言って10秒ほど沈黙。涙を浮かべ、声を震わせながら、「隊員は非常に士気が高く、みんな一生懸命やってくれた。残された家族ですね。本当に申し訳ない。この場を借りておわびとお礼を申し上げたい」と言った。

 高山隊長は18日、職場から直接現地に向かった。妻に「安心して待っていて」とメールで伝えると、「信じて待っています」と返信があったという。

 佐藤総隊長も妻にメールで出動を伝えた。「日本の救世主になってください」が返事だった。

 高山隊長は今回の任務を「目に見えない敵との闘い」と振り返った。注意したのは放射線量。「隊員たちが常に測定しながら安全を確認し、アピールしてくれた。仲間のバックアップがあったから任務を達成できた」と話した。

 会見では、作戦の具体的な中身も明かされた。

 佐藤総隊長によると、派遣隊は本人が承諾した隊員から選抜された。

 原発に入ったのは18日午後5時5分。作戦は当初、車から出ずに車両でホースを延ばす予定だった。8分で設置できる計算だった。だが、海岸付近はがれきだらけ。車が走れそうなルートだと2.6キロあり、ホースが足りない。

 一度本部に戻り、安全な方法を再検討した上で午後11時半に原発に戻った。最終的には、途中まで車で延ばし、最後の約350メートルは隊員が車外に出て、巻いたホースを手で延ばし、取水のために海まで届かせた。

 ポンプで吸い上げた海水を放つ「屈折放水塔車」を止めたのは、2号機と3号機の真ん中で建物まで約2メートルの至近距離。目標とした、使用済み核燃料が貯蔵された3号機のプールまでは50メートルだった。いつでも退避できるようにマイクロバスを用意し、「特殊災害対策車」も待機した。

 翌19日の午前0時半、「白煙の方に向かって」3号機への放水が始まった。

 放水現場の放射線量は毎時60ミリシーベルトだったが、放水後はゼロ近くに。「命中している」と確信したという。

 

(補足:2

日本経団連の阿部泰久・経済基盤本部長の発言

 

《「私は昔から日本の法人税は、みかけほどは高くないと言っています。表面税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、実はそんなに高くない。今でも断言できますが、特に製造業であれば欧米並みではある。もちろんアジア諸国よりはずっと高いのですが。欧米の普通の国に比べて高いという実証データはありません。日本の法人税負担は、税率は高いけれども税率を補う部分できちんと調整されていると思います」》

 

注:阿部氏は、1980年に東大法学部を卒業して経団連に入り、税制、企業会計制度、経済法制等を担当してきた人物だ。この分野での財界最高のスペシャリストとして知られる。

 

……

 

阿部部長の言う通り、日本の法人税は高くない。それどころか、大企業の間では、およそ非常識としか言いようのない横暴がまかり通ってもいる。たとえば三大メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)グループ傘下の6銀行は、10年以上、法人税をまったく納めていないのである。日本共産党の志位和夫委員長が2010628日、千葉県内での街頭演説で明らかにした。

 企業は法人税納付に際し、過去の損失を7年間繰り越して黒字と相殺できる仕組みがある。財界の強い要求で2004年度の税制改正で繰り越し期間が5年から7年に延長されたのだ。大手銀行は、不良債権処理で発生した巨額の損失を繰り越すことで、課税所得が相殺され、法人税納付ゼロが続いていたという。志位氏の指摘にはうなずくしかない。

 

 《「大銀行は、『不良債権処理』の名で国民の税金を何十兆円も入れてもらいながら、この間、中小企業へのひどい貸し渋り、貸しはがしをつづけてきました。その大銀行 が、税逃れのしくみによって、法人税ゼロとなっている。大銀行は、消費税を1円も負担していないだけでなく、法人税も1円も払っていない。この不公平税制こそただすべきではありませんか」》           (『しんぶん赤旗』2010629日)

 

 

 20103月期決算での当期利益は、三菱UFl3887億円、三井住友が2716億円、みずほが2394億円。それでも法人税も消費税も納めない。金融システム維持の大義名分を全否定する必要もないけれど、いくらなんでもひどすぎる。

 大企業の法人税逃れ、消費税逃れについて、商業マスコミはまず報じない。


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