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資本主義崩壊の首謀者達(輸出企業の背信)

200961

宇佐美 保

 

 先日、朝日ニュースターの武田鉄也氏が仕切る「週刊鉄学」に出演された広瀬隆(作家)の解説に感動して、氏の著作『資本主義崩壊の首謀者達 集英社新書』を購読しました。

 

 そして、多くの事を教えて下さいましたので、その著作の一部を抜粋させて頂きたく存じます。

 

 先の拙文《お陰様を忘れた日本人(2)(お金様の大企業)》にても、「輸出企業の背信的行為」(彼らは、「背信」ではなく「正当と」思っているのかもしれませんが)を記述しましたが、広瀬氏は更に驚く事実を解説してくださいます。

 

 

 日本は輸出だけにすがっていてよいのか

 こうして、為替レートの激変が大きく注目される時代になりました。日本政府(財務省)は、ドル買いによって円高を阻止しょうと、必死になって資金を為替相場に投入し、トヨタやソニーのような輸出企業を保護してきました。アメリカの金融崩壊で、その直撃を受けたこれらの輸出企業が、大量の従業員解雇を発表した今、これらの企業で働いてきた人たちにとっては、本当に深刻な事態が進行しています。

 ここで、輸出企業が本当に日本人を豊かにしているのかどうかを、再び考え直す必要があります。トヨタの年間販売台数の七割以上、ソニーの売上高の八割が、国際市場によるものでした。「だからグローバリズムがなければ日本は生きてゆけない」と結論するのは、あまりに短絡的ではないでしょうか

 

 

 このような「日本政府(財務省)のドル買いによって円高を阻止による、トヨタやソニーのような輸出企業を保護」に関しては、多くの方が説かれています。

しかし、次の点は、私は広瀬氏によって初めて教えて頂きました。

 

 

 実際には、トヨタやソニーが、たとえばアメリカ人に一〇〇万円の自動車やエレクトロニクス製品を売って得た代金で、労働者の賃金と、部品メーカーに代金を支払い、さらに残った利益で設備投資ができなければ、これらの大企業も成り立ちません。ところがこれらの輸出企業は、一〇〇万円のモノを売っても、すぐにその輸出代金一〇〇万円を手にすることはできないのです。

 なぜそれが簡単にできないかと言えば、トヨタやソニーがアメリカ人に一〇〇万円のモノを売って手にできるのは、一万ドルというアメリカの紙幣だからです。一万ドルの紙幣を手にした輸出企業が、これを日本で使える円紙幣にしようと、外国為替相場で換金すれば、円高ドル安が進んでしまい、自分の首を絞めることになります。そのためここに、日本の銀行のアメリカ支店が登場してきます。

 

 

 この「日本の銀行のアメリカ支店が登場してきます」の記述によって、「自己資本比率が8%を超えない銀行は、国際業務を禁じるというBIS基準」をめぐって日本の銀行が右往左往した際、私は、日本の銀行(自己資本比率が8%以下で)は、国内業務に専念すれば良いのに!と思わずに入られませんでした。

しかし、広瀬氏の記述で、そうだったのかと得心しました。

(とんでもない事だったのだ!)

日本の銀行の国際業務は、輸出企業のために「円高ドル安」を阻止するために必要だったのです。


 

 

 更に次のようです。


 トヨタの現地法人である北米トヨタは、たとえば、某邦銀のニューヨーク支店に行って、一万ドルを一〇〇万円に換金します。これでトヨタは万々歳です。ところがこの銀行のニユーヨーク支店は、日本から送った一〇〇万円を元手に、トヨタから一万ドルの資金を手にしても、それを日本に持ち帰りたくありません。景気の悪い、金利ゼロの国・日本で投資しても利益を生み出さないという理由から、利率の高いアメリカで運用したくなるのは当然です。

 投資するため一万ドルの金をウォール街に投げこみます。こうして、トヨタがかせいだ金は結局、アメリカ人の生活のために、再びサブプライム・ローンとクレジットカードなどに流れてきたのです。この例で、邦銀のニューヨーク支店に日本から送金された金は、もともと日本人の預金です。トヨタ工場や部品メーカーの労働者が銀行に預金した生活資金であるとすれば、その金がどんどんアメリカに流出していることになります。この日本

資金の海外流出こそが、日本の経済をますます弱くしてきた元凶なのです。

 これでは、大半の輸出代金が、金利の高いアメリカの金融市場に流れているだけです。

 

 

 この状態では、当然ながら、輸出企業が稼いだお金は実質的には日本に帰ってこないのです。

私達の日本での円貯金が、
日本の銀行によって米国に持ち出され将来紙屑にもなりかねないドルに交換されていたのです。

それも、輸出企業のバックアップのために!

そして、その行為が可能となるようにと、私達の税金が銀行救済へと投入されたのでした。

 

 

 更には、次のようです


アメリカに大金を流しこんできたのは、大手都市銀行だけではないのです。保険会社、地方銀行、信用金庫、労働金庫、農協など、国民の金を集めてきたところは、みなそれをどこかに融資して増やさなければならない。ところが、日本の国内が不況であるため、収入源となる融資先がない。その上、日本の金利がほとんどゼロとなっているため、ウォール街にあふれかえっている怪しげな金融商品に手を出す。高金利の誘惑に惹きつけられます。

その最も大きな原因をつくったのが、バブル崩壊後の銀行の不良債権を処理するために、銀行が負うべき負担を国民に支払わせた日銀のゼロ金利政策です

 

 

 このように、アメリカの「ウォール街にあふれかえっている怪しげな金融商品に手を出す」前に、日本の企業に融資し育てる手立てを何故取らなかったのでしょうか?

その上、「銀行が負うべき負担を国民に支払わせた日銀のゼロ金利政策」が延々と続けられているのでしょうか?

この「ゼロ金利政策」によって、私達が莫大な被害をこうむっていることを計算してくれています。

 

 

 これで国民が失った資産が、莫大なものになることを忘れてはいけません。複利計算では、四%の利率で定期預金すると、十年後には元金の大体一・五倍にもなります。つまり過去には、たった十年で元金の半分がもらえるほど、利息は日本人の生活を支えてきました。一体どれほどの国民の金が、今この愚策のために失われているでしょう。ゼロ金利政策が始まった一九九九年には、日本人の個人金融資産のうち、預金がほぼ七〇〇兆円でしたから、この無利子政策のために、ここ十年で国民が盗まれた資産は、三〇〇〜四〇〇兆円というとてつもない金額になるのです。複利計算をしてみてください。一〇〇〇万円の預金を持っていた人は、五〇〇万円増えていたはずです。それがすべて銀行に盗まれて、銀行が空前の利益をあげて笑ってきたのです。日本政府の誰が、この白昼強盗を実行させたか、思い出してください。そのため、本来は市中に出回って産業界と日本人の生活を潤すはずの金が消えてしまい、しかもアメリカにどんどん流れてスーパーバブルを生み出し、私たち日本人を疲弊の底に沈ませました。これが、地方都市の経済をぼろぼろに崩壌させた小泉純一郎と竹中平蔵の構造改革路線です

 

 

このいわば銀行 (又、日本政府) に「ここ十年で国民が盗まれた資産は、三〇〇〜四〇〇兆円」は、訳の分からない景気振興のための「給付金の2兆円」どころの騒ぎではないのです。

でも、この「国民が盗まれた資産は、三〇〇〜四〇〇兆円」が何処に消えたかと言いますと、先の拙文《お陰様を忘れた日本人(2)(お金様の大企業)》に記述しましたが、私の推論では「大企業の内部留保」として吸収されてしまったのです。

 

 

 それでも、大企業は日本人の雇用を確保してくれると一般的には認識していますが、広瀬氏は次のように教えて下さいます。

 

 しかもアメリカに進出した日本企業を見ると、たとえばトヨタ自動車がカリフォルニア州フリーモント市にゼネラル・モーターズと合弁で設立した会社NUMMIは、現地のアメリか人労働者数千人を雇って、トヨタカローラの現地生産をおこなっています。そのカローラの輸出台数のどこに意味があるのでしょうか。二〇〇八年にトヨタが海外で販売した自動車のうち、海外で生産されたものが六四%を占めていました。このようにして、大企業はグローバリズムだ、グローバリズムだと言いながら、日本国内の工場を空洞化して、加速度的に失業者・臨時工・期間工・派遣労働者を増やすエンジンになってきたわけです。

これでは、日本人(日本経済)にとって、どれほど輸出に意味があるのかまったく分らないということになります。

 

 

 先の「トヨタの年間販売台数の七割以上」が「国際市場による」との記述と、ここでの「トヨタが海外で販売した自動車のうち、海外で生産されたものが六四%」とを掛け合わせますと、

トヨタの年間販売台数」の約45%は、「海外で生産されたもの」となります。

 ところが、

麻生氏が
“安い賃金を求めて国外に移行する企業が少なかったのは労働者派遣法のおかげでもあるのだから、
この法律を改める事は如何なものでしょうか?”

とかテレビ画面で話しているのを見ました。

なんだか変ですよね!

 

 広瀬氏は「日本人(日本経済)にとって、どれほど輸出に意味があるのかまったく分らない」と書かれていますが、麻生氏(日本政府)は、今回の景気対策も言う迄もなく、輸出産業(即ち、大企業)重視です。

朝日ニュースターの番組「パックインジャーナル」にて、荻原博子氏(経済ジャーナリスト)は、“福祉関係に重点的に使うといって導入した「消費税」は、大企業優遇の減税分を埋め合わせるのに使われている!”旨を発言されておられましたので、インターネットを検索し、「全国労働組合連合会」のホームページに行き着く事が出来ました。

 

 そして、荻原氏の発言通りの記述(「これまでも消費税収は大企業減税の穴埋めに使われてきました。消費税は導入後、174兆円8000億円が徴収されましたが、それに匹敵する水準の大企業向け減税が行われてきました。」)を目にしました。

 

 

消費税は大企業減税の穴埋めに
〈法人税減収の穴埋めに消えた消費税〉

資料:財務省「財政金融統計月報」より作成

さらに大企業優遇税制で、法人税の実質的な実効税率は引き下げられています。

 

 

 更には、次のようにも記述されています。

 

 

 財界は、自らの望む政治を実行させるために企業献金を行っています。昨年の通常国会では、これまで禁止されていた外資系企業の献金を解禁する法律が、自民、公明、民主の賛成で成立。「株式の50%以上を外国人や外資が保有する株式会社」さえも、企業献金が可能になりました

 日本経団連会長の御手洗氏が所属するキヤノンは、外資比率51.01%。日産、オリックス、富士フイルム、武富士なども株式の50%以上が外資です。

 

 

 ここで、植草一秀氏のブログを訪ねますと、次のように書かれています。

 

本ブログで何度も紹介しているが、自民党と民主党の政治献金の現状は以下の通りである。

 

2007年の政党献金を自民と民主で比較すると、

自民:総額224億円

民主:総額 40億円

 

企業献金と個人献金の内訳は、

自民:企業168億円、個人56億円

民主:企業 18億円、個人22億円

 

経団連加盟企業の経団連を通じる企業献金は、

自民:29億1000万円

民主:8000万円

 

 

 先の「全国労働組合連合会」のホームページに戻りますと次のようにも書かれています。

 

 

 

日本経団連の御手洗会長は、法人実効税率(法人税、法人事業税、法人住民税)の10%削減を、ことあるごとに求めています。これは、現在の水準では5兆円規模にあたります。

 政府はこの要求に応えて、法人税減税の検討をすすめています。

 一方で、「御手洗ビジョン」(「希望の国、日本」日本経団連)では、「2011年までに消費税率2%引き上げ」を主張。これも5兆円規模です。

 「大企業向けの減税分の穴埋めに消費税の増税を」というのが、日本経団連の要求なのです。

 

 

 このようなとんでもない主張は、外資比率51.01%キャノン会長でもある御手洗冨士夫氏としたら当然なのでしょう。

 

 

広瀬氏は、著作のいたるところで「外資の脅威」を書かれていますが、最後で次のように記されておられます。

 

 

 解決策はどこにあるか

 最後にひと言、ここまでに述べたメカニズムを言い当てた、すぐれた過去の名言を紹介したいと思います。

 今を去ること半世紀、一九五五年四月十八〜二十四日、アジア・アフリカ会議が、インドネシアのジャワ島バンドンで開催されました。バンドン会議と呼ばれるこの歴史的な会合は、インドネシアのスカルノ大統領の呼びかけに応えて、中国の周恩来、インドのネール首相、エジプトのナセル首相、ベトナム指導者のホー・チミンたち、アジア・アフリカ29の発展途上国が集まって、結束を誓いました。貧しかった日本もそこに参加しました。これがもとになって、一九六一年には、アメリカにもソ連にも与しない「非同盟諸国」が結成されました。バンドン会議で、主催国のスカルノ大統領が開会演説をおこない、次のように語ったのです。

「植民地主義は死んでいない。アジアとアフリカの広大な面積で自由が奪われているといぅのに、どうして植民地がなくなったなどと言えるのか」

「植民地主義を、インドネシアやアジア・アフリカで味わってきた昔のようなものと考えてはいけない。植民地主義は今や、近代的な衣装をまとっている。それは経済的な支配だ

知的な支配だ。国家の内部にいるどく少数の異邦人が事実上、物理的な支配をしているのだ。それは巧妙にして明白な敵であり、さまざまな姿をとって現われる。彼らがそう簡単に利権を捨てることはない」

 半世紀前に語られたスカルノの言葉は、リーマン・ショックに襲われた地球と人類の経済原理を早くから予言し、鋭く警告した、哲学的な名言です。この言葉の真意を理解できるかどうかに、人類の未来がかかっているのです。

 現在は、全世界にまともな政治家が一人もいないために、どこの国もグローバリゼーションの波に乗り遅れまいと、無知が無知を加速しています。しかしこのままでは、地球の暴走は、おそろしい最後のカタストロフィーに突入するでしょう。その被害に遭うのは、タイタニック号の三等船客である私たちです。そしてその母親の胸に抱かれた、いとけない赤児たちです。せめてその子供たちを助けるために、私たちは、どうあっても腐敗に立ち向かってゆかなければならないのです

 

 

 ですからこそ、次の広瀬氏の記述を真摯に受け止めなくてはなりません。

 

 

日本人は、今まで通り黙々と勤勉に働いて、必要なものはできるだけ日本国内でつくり、安全な食べ物と製品を買うように心がけ、その上でゆとりがあれば、決してアメリカではなく、アジア・アフリカ・中南米・東ヨーロッパなどの苦しい国々に援助をしてゆくよう

に、羅針盤の針を大きく切り換えるべき時代が到来したのです。

 

 

 ところがどういう弾みか?麻生太郎氏は「第15回国際交流会議「アジアの未来」」に於いて(521日)次のように演説しました。

 

 

資金面を含め、アジア各国が協力して実施していく必要があります。日本は先頭を切って、これらの取組みをリードしていきたいと考えます。

 具体的には、経済・金融危機への対応を含め、(1)ODAを最大200億ドル相当、(2)インフラ整備のための貿易保険枠を同じく200億ドル相当、(3)JBICの環境投資支援イニシアティブを2年間で50億ドル相当、(4)貿易信用の補完のための追加的な貿易金融支援を2年間で220億ドル相当などを用意しました。

 

 

 更にこの演説のは、次のように締めくくっておられます。

 

 

 光は東方より」、「Light comes from the East.

 これは古代ローマの人々がオリエント文明を指して語った言葉です。この「東方」は、今日、世界の経済成長センターでありますアジアと置き換えられてもよろしいのではないでしょうか。「Light comes from Asia」、アジアがまず元気を取り戻し、そして、世界に広げていく。

 この言葉で、私の話を締めくくらせていただきたいと存じます。

 

 

 おかしいですよね、

このグローバル時代(地球は丸いと分かっている時代)、
「アジアが東」とは限らないではありませんか!?

 

麻生氏がアジアに用意するという資金を合計しますと、670億ドルとなります。

 

 

 ところが広瀬氏は、次のように記述されています。

 

 

 この金融サミット(注:200811月に開催された)で、日本の総理大臣・麻生太郎は、こともあろうに、世界で最も問題になっているIMF1000億ドル10兆円)を融資すると約束したのです。しかも日本だけが!日本の国民には、定額給付金二兆円だけ!消費税増税の確約ずみで!

 

 

 即ち、アジア向けの「670億ドル」よりも、「IMF」への「1000億ドル」は高額です。

さして、この「IMF」に関して、広瀬氏は次のように書かれています。

 

 グローバリズムの金融元締めとして、世界銀行と共に、貧困国に融資するべきIMFがその機能を果たしていないことはたびたび批判され、二〇〇八年の金融サミットではその改革が各国から求められました。IMFがウォール街の守護神″とまで陰口をたたかれてきたのは、議事を決定する投票権が出資比率に基づいているため、アメリカが重要な議事に対して拒否できる票数を握って、独裁的な支配力を発揮してきたからです。

 

 

 この記述から分かりますように、「IMF=米国」となります。

ですから、麻生氏は、アジアよりも米国を今以って重視している事が分かります。

即ち、「日本」(麻生太郎氏)にとっての東は「米国」と言うことになります。

 

 

 更に、広瀬氏は「IMF」に関して次のように書かれています。

 

 

 

しかも過去一九九〇年代後半に、ジョージ・ソロスたちのヘッジファンドが集団で引き起こしたアジアの通貨危機では、インドネシアと韓国、タイを救済すると言いながら、融資と引き換えにハゲタカたちが入り込めるような制度改革を強要するき、IMFの傍若無人な態度がアジアの民衆から激しい怒りを買いました。二〇〇九年現在、このIMFナンバーワンの専務理事であるドミニク・ストロス=カーンは、フランス人ですが、富裕なユダヤ人カーン一族の出で、奇怪なことに左翼主義者を装いながら、その主義に反して世界的に金融規制を緩和して、新自由主義経済の牽引車として動いてきたのですから、問題にするべき人物です。IMFは、ウォール街の代理人であると同時に、このようなヨーロッパの特殊な人脈に通じてもいるのです。

 

 

 

麻生太郎氏の光は東方よりは、
東南アジアの方々にとっては、東は「日本」となり、
又、日本を経由した「米国=
IMF」を想起されるのではないでしょうか?


(広瀬氏の著作からの引用は、又、別分で続けさせて頂きます。)


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