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アメリカを見ずに、世界や日本を語るマスコミ(1

2008328

宇佐美 保

 朝日ニュースターの番組「デモクラシーNOW!」(毎週土曜日の夜9時〜955分)は、ナビゲーターの堤未果氏の“アメリカを見ると世界が見える”の言葉で終わっています。

そして、毎週この番組を見るたびに、アメリカ(即ち、世界)の実情に驚かされます。

 

と申しましても、日本のマスコミ(アメリカのマスメディアも含めて)を見ていては、「アメリカが見えない!」と存じます。

なにしろ、この放送のホームページを訪ねますと、次のように紹介されているのです。

http://asahi-newstar.com/program/democracy/detail/

 

北米の500局以上で放送されている超人気ニュース番組です。

独立系ニュース番組「デモクラシーNOW!」は、大資本による「マスメディア」とは異なり、各種コミュニティ・ラジオ局や衛星放送、ケーブルのパブリック・アクセスTVチャンネル、インターネットなど、さまざまな形態の非営利の公共放送が協力した全国配信ネットワークのさきがけであり最大のものです。

 

番組の司会を務めるのは、ジャーナリストとして数々の賞を受賞している

エイミー・グッドマン(Amy Goodman)とフアン・ゴンザレス(Juan Gonzalez)です。

・・・

「デモクラシー・ナウ!」の最大の特徴は「ウォー&ピース・レポート(戦争と平和レポート)」と題した「反戦ニュース」です。米国政府の外交政策の影響を直接的にこうむる世界各地の人々の声や、フリーランス国際ジャーナリストの報告、草の根運動のリーダーや平和活動家、アーティスト、学術関係者や評論家など、企業のスポンサリングを受ける米国メディアではほとんど報道されることのない人々の主張や視点を視聴者に紹介しています。

・・・

 

 そして、この番組(日本語版)のナビゲーターの堤未果氏の著作『報道が教えてくれない アメリカ弱者革命 海鳴社発行』を購読してアメリカの実情に愕然としました。

 

 この著作は「電子式投票機械の導入の阻止!」を断食しつつ訴えるニューヨーク出身の白人男性ジョン・B・ケニー氏(以下、ジョン氏と記述)と共に、大統領選挙の直前の20041030日から、フロリダ、ニューヨーク、オハイオなどの激戦区を一緒に回った体験から語り起こされています。

 

 ジョン氏は、「公平な国民選挙は民主主義の基本中の基本」であるべきなのに、その選挙に次のような疑惑のある「電子式投票機械の導入」を断固として阻止すべきと思い至ったり、又、堤氏を日本から自費で呼び寄せ次のように語ったのです。

 

 「大統領選まで僕を密着取材してくれよ」

 ジョンは言った。

 「知ってると思うけど、この国はメディアがコントロールされている。だったら頼りになるのは外国の報道機関だよ。僕の国の政府がやっていることを、日本の人たちに少しでも多く伝えてほしいんだ」

 

 

 このアメリカでメディアがコントロールされている「メディアの危機」を、2007128日放送の「デモクラシーNOW!」で、映画監督およびジャーナリストのジョン・ピルジャー氏が暴露されておりました。

http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/messages/748?expand=1

(その一部を私は、拙文《賞味期限切れの日本人(1》に引用させて頂きました)

 

 ジョン氏が「電子式投票機械」に対しての危機感を抱いたのは次の点です。

 

 それは、2004四年の大統領選挙で、全米の投票所の3割が電子式投票機械を導入するという記事だった。

 タッチスクリーン式のこの投票機械は、今までも全米各地で使われていたが、2000年の大統領選のときにも、ゴアにマイナス16000票、ブッシュにプラス4000票入ってしまうという間違いが起きている。

 ワシントンDCにあるジョンズ・ホプキンス大学が、2004年の7月に、この機械の信頼性に大きな問題があるという検証結果を発表しており、ペンシルバニアやメリーランド、フロリダ、ワシントン、カリフォルニアなどの州で、機械導入に対する訴訟がすでに始まっていた。

 紙に投票結果を印字して横からレシートのように出せばあとで票を人間が数えなおせるが、機械のメーカー元であるディーボルト社は「紙の記録を出すことは意味なし」と強調し、ほとんどの州で実施されていない。そして選挙委員会の人間たちでさえも、この電子式投票機械の内部を見ることはできなかった

 全米の投票所の3割ということは、5000万票分だ。ジョンはすばやく頭を回転させた。

 ディーボルト社のCEO(最高経営責任者)が熱心な共和党の支持者である事実を差し引いたとしても、何かあったときに票の数えなおしができない選挙なんて絶対におかしい

 2003年の3月から始まったイラク侵攻。

 戦闘は今も続いている。

 あれもおかしな戦争だ。大義名分がころころ変わる。

 政府は、はじめはサダム・フセインとかいう残忍な独裁者からイラク国民を救い出すためだと言い、今度は大量破壊兵器が隠されているから探さなければと言う。最近では無法地帯となったイラクに健全な民主主義を樹立するまで駐屯する責任があるだのなんだのと言い出した。

 2001年にニューヨークで起きた同時多発テロの犯人がサダム・フセインとつながっているという噂も飛び交っている。

 そして大統領が好んで繰り返し使い、今や海の向こうにいるジョンの頭にまで刻みこまれたフレーズ、「アメリカはテロとの戦いに屈しはしない」。

 出張で数か月に一度東京に行くと、渋谷の駅前でイラク戦争反対のプラカードをもった団体が声を張りあげているのを見かけることがあった。

一度若い男子学生の一人が、通りすぎようとするジョンに向かって片言の英語で話しかけてきたことがある。

 「アメリカは石油のためにこの戦争をしているんです。知っていますか?」

知らなかった。いや、正確にはさまざまな情報がありすぎて、彼自身どれを信じたらいいかわからないというのが本音だった。

だが、戦争が泥沼化した今、今回の大統領選がアメリカのこれからの運命を分ける力をもっていることはよくわかる。

 公平な国民選挙は民主主義の基本中の基本

 だとすると、アメリカ国民はなめられているのか?

 

 

 ここに書かれた、「紙に投票結果を印字して横からレシートのように出せばあとで票を人間が数えなおせるが、機械のメーカー元であるディーボルト社は「紙の記録を出すことは意味なし」と強調し、ほとんどの州で実施されていない。そして選挙委員会の人間たちでさえも、この電子式投票機械の内部を見ることはできなかった。」は、堤氏の次の記述に裏打ちされます。

 

 私は昔どこかで読んだ、ロシアの独裁者スターリンの言葉をふと思い出してぞっとした。

投票した人間が決定できることなど何もない。票を数える人間がすべてを決定するのだ

「この国はファシスト国家になったのよ」

 

 「ディーボルト社は「紙の記録を出すことは意味なし」と強調」するからには、この「電子式投票機械」が全く誤動作しないと認識しているのでしょうか!?

機械が誤動作しないなんて誰だって信じられません。

(この文章を書くために、愛用している私のパソコンも頻繁に誤動作しています。そして、このように書いた暫く後に、マウスがうまく機能しなくなりました)

 

そして、実際、「電子式投票機械」が誤った動作をした例を後に堤氏は紹介してくれますが、ジョン氏の行動、又、平和活動家に対する妨害活動に関する次の記述にも驚かされます。

 

 

 先ずは、堤氏がジョン氏に出会った時点(ホテルのカウンター)でも、驚くべき事態が発生しているのです。

 

 受付の男がにやりと笑ったかと思うと、私たちの後ろで回転扉が開き、三人の警官がどやどやと入ってきた。

 雲つくような巨体の男と、二人の婦人警官だった。

 男は、黒い短髪にもじやもじやのひげを生やし、紺の制服の半袖から筋肉隆々の腕をのぞかせていた。腕には真っ赤なハートに剣の刺さった刺青がされている。

 婦人警官は、どちらも金髪を後ろにきつくひっつめて、とがった鼻と薄い唇をもっていた。

その青い瞳には表情というものがまったくなく、氷のように冷たい雰囲気を漂わせている。

 三人の腰ベルトにつけられたリボルバーを見たとき、なぜだろう? 訳もなく不吉な予感が

した。

 ジョンは三人に向かって苦笑いしながら事情を説明した。

 「今、ちょうど呼ぼうかと思っていたんですよ。この受付の男性が、僕が部屋に鍵を忘れたのに入れてくれないんです。前金の支払いはとっくにすませてあるんですが……」

 信じられないことが起こつた。

 ジョンの言葉が終わらないうちに、巨体の警官は腰につけた棍棒を抜き、「黙れ、このクソ野郎! 身分証明書を見せろ!」とどなりつけたのだ。

 それから警官は、ジョンの髪をわしづかみにすると、彼の顔をロビーの床に下向きにこすりつけながら、今度は耳元で叫んだ。

 「おまえは怪しい活動をしているな……

 「なんなんだ、いったいなんの権利があってこんな……」

 ジョンがうめくと、警官はジョンの頭を床に打ちつけてさらにどなった。

 「黙れ、こっちはすべて知ってるんだ。それ以上しゃべると、ブタ箱にぶち込むぞ!

 

 かつて私がアムネスティ・インターナショナルのニューヨーク支局員をしていたころ、アメリカの警察が市民に対して行う不当な暴力について調査したことがある。

 無実のマイノリティたちが白人の警官によって不当に撃ち殺される事件記録の膨大なレポートを夜通し読みながら、あまりの怒りに吐き気がした。

 そこにあるのは正義などではなく、国家レベルの弱い者いじめだった。

・・・

 

 そして、二人はホテルから放り出されてしまったのです。

更には、次の話しです。

 

 

 ・・・この活動を始めてから、ありとあらゆる妨害にあってきたという。

「やつら、僕をメディアに出したくないんだ。電子式投票機械の危険性なんて、まだ一般市民の話題にはのぼっていないからね。いろんな人間が近づいてきたよ、新聞記者、平和活動家たちのグループ、テレビのディレクターだと名乗るやつ……。どうやって調べたのか、実家にいやがらせの電話がかかってきたり、ホームページは勝手に消されるし、やつら、やるとなったら徹底的にやる気なんだ」

 「やつらって?」

 「決まってるじゃないか、正当な選挙をされると困る連中だよ」

私の頭の中に、アメリカ国内で平和活動をしている友人たちの顔が浮かんだ。劣化ウランについて告発している放射能科学者、アメリカ軍の第三国侵略についてのマンガ本を広めている退役軍人、CIAと麻薬の関係を調査しているジャーナリスト……。

 みなFBIに家を荒らされたり銀行の口座から預金を勝手に下ろされたりと、恐ろしい目にあっている。

一度、放射能科学者の女性と国際ファックスをやりとりしようとして、何度やっても真っ黒になってしまうという事件があった。

 これじゃ、まるでスパイ映画だわ、と私がため息をつくと、彼女は別段驚いた様子もなく言っていたっけ。「まったく同じよ。ただし、こっちは特撮じゃなく現実なだけ」。

 

 

 このようなアメリカに加え、ジョン氏の訴えに耳を貸さず、「アメリカイズナンバーワン!」と叫ぶ、次のようなアメリカも、堤氏は紹介してくれます。

 

 「畜生、あいつら聖書と牧師の言葉しか信じない。僕(注:ジョン氏)の言うことなんか全然聞いてないんだよ。で、ブッシュを崇拝してる」

 そう、彼らは崇拝しているのだ。

 ブッシュ政権成立から4年。

 その間に国内の貧困者の数は590万人増加し、医療保険に入っていない国民は2003年の時点で過去最悪の4500万人となった

 国内にある化学兵器の廃棄費用は七〇パーセント削減され、フード・スタンプの受給者は三九パーセント増加し、

一方で富裕層の税金は1兆ドル以上減らされている

 20046月の時点でブッシュ政権はイラク戦争に1194億ドル(約13兆円)投入しているが、これをイラクの国民全員に分配すると、イラク人たちは最新兵器にあたって死ぬかわりに、向こう八年間まったく働かなくても人並みの生活ができたことになる。

 それでも、聖書の教えに従って保守的なアメリカの伝統を取り戻そうというメッセージを掲げたブッシュが、この国を正しい方向に導くのだと熱狂的に信じている人々がいる。

 ああいった超保守的なクリスチャンは福音派」と呼ばれ、80年代後半にはアメリカ人口の33パーセント程度だったが、2000年には46パーセントまで増加した。

 中でもとりわけファナティックで原理主義だと言われているのは「ボーン・アゲイン派」と呼ばれる、途中から急に宗教に目覚めキリスト教によって自らが生まれ変わったと信じる人々だ。

 ちなみにブッシュ大統領もこの「ボーン・アゲイン派」に入っている。

 ギャロップ社の世論調査では、アメリカ国民の80パーセント以上が自分はクリスチャンだと答えており、国会議員は上下院の合計五三五人のうち91.6パーセントをクリスチャンが占めている。

 クリスチャンの政治家のほうが信用度が高く、選挙に勝つ確率もぐんと高くなるという。

 

 ここでの、「一方で富裕層の税金は1兆ドル以上減らされている」に関しては、世界一の御金持ちのウォーレン・バフェット氏も、

率直に言ってビルや私はもっと高い税率を課せられるべきなのです。

多額の税金は払っていますが、税率にすると非常に低い。

25年前はるかに所得が少なかった時代に支払っていた税率の半分以下ですよ。

政府は本当に金持ちを優遇しています。

と、マイクロソフト社の会長であるビル・ゲイツ氏と語っていました。(この件は、拙文《ノーブレス・オブリージとビル・ゲイツとウォーレン・バフェット》をご参照下さい)

そして、このアメリカの富裕層に対する恩恵に関しては、『超・格差社会アメリカの真実 小林由美著:日経BP社発行』には次のように書かれています。

(但し、表を用いて説明されていますが、表が細かくコピーが困難なので、表などをカットして引用させて頂きます)

国民99%の犠牲で、トップ1%だけに恩恵を与える税

 

 しかしアメリカのトップクラスの所得水準を細かく見ると、また違う姿が見えてくる。・・・

ニューヨークタイムズが行ったこの調査によると、・・・

 つまり、14500万人の納税者の全所得のうち14500人が5を、そして13万人が6%を取り残り89%を14485万人が分け合っている。単純平均すれば、トップ001%と納税者9999%の差は、562倍になる。アメリカの1人当たり平均所得は25万ドル(288万円)、世帯あたりの平均所得は45万ドル(540万円)だから、1人当たり平均所得を単純に562倍すれば、トップ001%の平均所得は1350万ドル(16億円)になる。

・・・

選挙資金には、団体や特定の活動に対する寄付と、個人の候補者に対する寄付の2種類がある。寄付総額でのランキングは・・・

1位のゴールドマンサックス600万ドル(72000万円)を筆頭に、金融機関が18社(GEを加えれば19社)と群を抜いている。2位が法律事務所(ロビイスト)で7社。3位がメディア企業で4社、これに通信2社と関連テクノロジー2社を合わせると33社、全体の3分の2を占める。鶏か卵かは不明だが、最大の寄付者が、インターネット・バブルで最も恩恵を蒙った企業群であることは間違いない。

 ちなみに20065月、ブッシュ大統領はゴールドマンサックスのCEO、ヘンリー・ポールソンを財務長官に指名した。そして国務省ナンバー2だったロバート・ゼリック国務次官は、入れ替わりにゴールドマンサックスのマネージング・ディレクタ一に就任した

 この人事が何を意味するかは、ここまでお読みいただいた読者の方々には明らかだろう。アメリカの富の多くは、政府と一部企業の所有者やトップマネジメント(経営者)問で、巧みに誘導されていると言わざるを得ないのである (注‥企業で働く従業員は無関係である)。


 又、「ブッシュ政権成立から
4年。その間に国内の貧困者の数は590万人増加し、医療保険に入っていない国民は2003年の時点で過去最悪の4500万人となった」の記述に対して、堤氏は次のような事実を紹介してくれます。

 

(ジョン氏)「アメリカには国民保険なんてない。民間の保険料は高すぎて、ほとんどの人が入れないんだ。自己被産の原因ナンバーワンはなんだと思う?」

・・・

 「クレジットカードの使いすぎ?」

 私が言うと、ジョンは首をふった。

「それはメディアに刷りこまれたイメージだろう?実際はカード破産なんて1パーセント以下だよ。

アメリカの自己破産申告の理由は二つ。医療費と離婚費用だ」

現在アメリカでは、医療費が原因による自己破産により、債務者や、約七〇万人の児童を含む扶養家族など、毎年約二〇〇万人の国民が影響を受けている。

 そして、

国民の5人に1人、4500万人が医療保険に入っていない

 「被産するのは貧乏人だけじゃないよ。その多くはごく普通の市民なんだ。想像できるかい?

まっとうに働いている中流階級の一家が、ある日家族の一人が病気にかかったってだけで、高すぎる医療請求書につぶされて破産、社会的に抹殺されるんだぜ」

 生まれたときから当たり前のように保険があった日本人の私には、ぴんと来ない話だった。

 

 堤氏は“日本人の私には、ぴんと来ない話だった”と書かれていますが、このジョン氏により紹介されたアメリカの現状は、日本の近未来ではありませんか?!(というより、そのアメリカの地獄へ日本も転がり落ち始めているではありませんか!?)

 

 なにしろ、堤氏は、次の点も紹介しているのです。

 

 クリントン元大統領の妻であるヒラリーが、長いこと必死になって進めている国民保険政策は製薬会社の圧力によってことごとくつぶされている

 製薬会社、と聞いてジョンは顔をしかめた。

 「あいつらはボロ儲けさ。国民はなるべく不健康なほうがいい、医者はなるべくたくさんの処方箋を書いてくれたほうが都合がいいってわけだ。で、国の医療システムヘの疑問を口にした僕は、会社(注:ジョン氏はハーバード卒業が数年間、保険会社に勤務)で変わり者扱いされるようになった」

 

 更に、堤氏は「超保守的なクリスチャンは「福音派」と呼ばれ、80年代後半にはアメリカ人口の33パーセント程度だったが、2000年には46パーセントまで増加した」に加えて、次の点も紹介しています。

 

「子どもは、教会か家の中で教育するのが一番です。牧師さまの言うとおり、アメリカ社会はすっかり荒廃していますからね。実は、うちの妹は、ニューヨークなんかに引っ越してひどいことになったんですよ、」

小太りで品のいい身なりをした、三〇代後半の白人の女性が、頼に片手をあてておびえた様子で話し出した。

 「姪のリディアが、地元の公立中学校でダーウィンの進化論を教えられてるって言うんです。

純粋な子どもたちが、創造説との間で混乱してしまったら、どう責任をとってくれるって言うんでしょう?」

 私は、学校の授業で、先生がアダムとイブの図を黒板に書いているところを想像した。イヴが悪い蛇にそそのかされて禁断のりんごをかじり、知恵を手に入れた代わりに下界に追放され……。

 アメリカではいまだにたくさんの州で、学校で創造説が教えられている

 

国民の41パーセントがダーウィンの進化論より創造説を信じている


とは聞いていたが、実際に信じている人間の口から聞くのは不気味な迫力があった。

 

 

 私の身近に、日本のある宗教を熱心に信奉されておられます。

 そして、ご自身の成功は、その宗教のおかげと固く信じて、今までに、自ら得た財産のほとんど全て(多分全て)を献じてしまわれたようです

更には、ご自身一代で築き上げた、広大な屋敷も土地もその宗教団体に寄贈するとまで言っています。

私が何を言っても、耳を傾けてくれません。

なにしろ、“自分が得た屋敷土地も、世の中では(多分その宗教の御仲間からと存じますが)「○○教御殿」と言われているくらいなのだから、○○教に奉納するのも当然だろう!?”

 そして、“その後は、妻(10年位前に亡くなられた)の為に建てた別棟の茶室にでも住まわせてもらう予定だ。”とまで語るのです。

私は、とても恐ろしい事だと存じます。

 

 ただ、その方は、その「○○教」を私に強制はしませんでした。

やはり御互いに、「信教の自由」を尊重すべきです。

このように強大な力を有する宗教が政治にかかわるべきではありません。

 

 あくまでも「政教分離」を貫くべきです。

「政教分離」が貫けない政治は「民主主義」とは程遠い政治と存じます。

 

 

 ジョン氏が反対し、ディーボルト社が「紙の記録を出すことは意味なし」と強調する「電子式投票機械」による大統領選の結果を堤氏は次のように教えてくれます。

 

 

ドアが開き、目の下にクマをつくったジョンが顔を出した。どうやら一晩中、テレビで選挙の動きを迫っていたらしい。

彼の後ろで、ブッシュの勝利を告げるニュースが流れていた。

 「こんな選挙はインチキだ」やつれた顔でジョンは言った。

 「出口調査の結果と選挙の結果があまりにも違う。国民が黙ってるはずがないよ」

 出口調査とは投票所から出てきた有権者に誰に投票したかを聞く調査で、オハイオ州の出口調査の結果はケリーの勝利だった

 2000年の大統領選挙のときも、フロリダ州では出口調査でゴア候補が5万票以上は上回っていたはずなのに、公式の集計はそれとは逆の結果だった。

 後の合衆国市民権委員会の報告によると、フロリダでは約18万票分の投票用紙が破棄されていたという

 私たちはふたたび車に乗ると、4時間かけてオハイオ州のコロンバスに行った。

 コロンバスの州ビル前で住民数百人がデモをしているという情報が入ったからだ。

 行きの車の中、カーラジオからブッシュ大統領の演説が流れてきた。

 「……今日私たちは、希望のステージに入ったのです。イラクとアフガニスタンの人々は、私たちがもたらす民主主義を手に入れて、幸福をかみしめるのです。

 兵士たちは誇りに満ちた表情で、本国にいる家族のもとへ帰ってくることでしょう。アメリカに神の祝福あれ……」

・・・

 私たちを待っていたのは、州ビルの前で号泣する市民だった。

 彼らは、ケリーがあっという間にあきらめてしまったことで、もう自分たちにチャンスはないことを知ったのだった。

 「投票待ち時間が異常に長かったんですよ!」

 中年の黒人男性は怒りをにじませた声で私に言った。

「私と妻は投票所の前で6時間も待たされました。午後から行ったから、そのうち辺りが暗くなってきて、列に並んでいた有権者の中にはあきらめて家に帰る人たちも出てきました。私の居住区は治安があまりよくないから、外に突っ立ってるのは安全じゃないんです。

やっと建物の中に入れたと思ったら、私たちの名前を調べた係が妻には犯罪歴があるから投票権がないって言うんです。私はもう少しでその係に殴りかかるところでしたよ」

 「犯罪歴?」

 私が聞くと、彼は信じられないといった顔で言った。

 「それが、聞いてあきれるような話なんです。半年前の、スピード違反切符を切られたことだって言うんですよ」

 8時間待たされた挙句に結局、投票させてもらえなかったという人もいた。やっと中に入れたと思ったら、機械に何か不具合が起きたから投票は無理だと言われて家に帰されたという。

 3時間待って投票機械の前に進もうとしたある老婦人は、係員に呼び止められ、選挙登録者のリストに載っていないから暫定投票扱いになると言われて投票ができなかった。

 後に地元の弁護士が報告したレポートによると、オハイオ州の黒人居住区での投票待ち時間は平均56時間で、通常は184人の住民につき1台あるはずの投票機械の数は、貧困地区では1000人以上に1台という少なさだった

 ヤングスタウンという地区では、電子式投票機械のタッチスクリーンでケリーのボタンを押しても、「ブッシュ候補に投票でよろしいですね?」という表示が出るという事態が続出したにもかかわらず、機械は一日そのままの状態で放っておかれたという。

 また、ロサンジェルスタイムズ紙の記事に載っていたスタンフォード大学の情報処理専門家のデイビッド・デル氏の調査によると、オハイオ州の電子式投票機械の集計で、マイナス2500万票と記録されていたというミスまで報告された。

選挙の直後、アメリカ国内で電子式投票機械の不具合についての苦情報告は1000件以上にものぼった。

 

 

 以上を纏めますと


民主主義の基本中の基本であるべき公平な国民選挙」が次のような有様であったのです
1 半年前の、スピード違反切符を切られた」を犯罪歴として、投票権を奪われたり
2 オハイオ州の黒人居住区での投票待ち時間は平均56時間で、
通常は
184人の住民につき1台あるはずの投票機械の数は、
貧困地区では
1000人以上に1台という少なさだった」と、
投票の機会が不平等であったり
3 ディーボルト社が「紙の記録を出すことは意味なし」と強調する「電子式投票機械」に於いて、
3-1 機械に何か不具合が起きたから投票は無理だと言われて家に帰されたり、
3-2 電子式投票機械のタッチスクリーンで
ケリーのボタンを押しても
ブッシュ候補に投票でよろしいですね?」という表示が出るという事態が続出したにもかかわらず、
機械は一日そのままの状態で放っておかれたり、
3-3

オハイオ州の電子式投票機械の集計で、
マイナス
2500万票と記録されていたというミスまで報告されたり、

その結果、選挙の直後、
アメリカ国内で電子式投票機械の不具合についての苦情報告は
1000件以上にものぼった


 

このように、民主主義の基本中の基本の公平な国民選挙をないがしろにして成立したブッシュ政権は、民主主義を云々する資格はないはずです。

「イラクに民主主義を!」などと口にすることさえ恥ずかしい政権ではありませんか!?

 

 なのに、このブッシュ政権にべったり服従する日本政府も日本のマスコミ、アメリカ信奉者達なども「民主主義」を口にする資格などないはずです。

 

 

 そして、堤氏が、本の表題にも掲げた「報道が教えてくれない・・・」の思いは、日本のマスメディアもアメリカ同様に大きな力に支配されている証拠なのでしょうか?!

 

 ところが悲しい事に、堤氏が教えてくれた事実を、全く教えてくれない日本の新聞を日本人の大多数は信用しているのです。

 

 朝日新聞による郵送による「政治・社会意識基本調査」(2008321日朝刊)では、次のような結果(一部を抜粋)が紹介されています。

合計 信用していない あまり信用していない ある程度信用している 信用している 合計
1 0 1 家族 23 74 97
8 1 7 新聞 74 17 91
28 2 26 テレビ 64 5 69
35 6 29 警察 54 9 63
68 35 33 宗教 22 8 30
80 30 50 政治家 17 1 18
83 50 45 官僚 17 1 18


 

 新聞に加えてテレビまで、多くの方々に信用されているのですから驚きです。

その上、信頼する事が出来ない「政治家、官僚」に支配される日本人は悲惨です。

 

(但し、同じテレビでも、「デモクラシーNOW!」等を放送してくれる、朝日ニュースターなどに、期待したいものですし、又、「超保守的なクリスチャンは「福音派」と呼ばれ、80年代後半にはアメリカ人口の33パーセント程度だったが、2000年には46パーセントまで増加した」アメリカに比べて、宗教を信用されている方々が30%であるという事は、救いでもあるのかもしれません。

でも、いつの日か、とんでもない方向に振れないとも限りません)

 

 堤氏は、まだまだ他に多くの事実を私達に突きつけておられますので、それらは次の《アメリカを見ずに、世界や日本を語るマスコミ(2》に紹介させて頂きたいと存じます。

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