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エコノミック・ヒットマンそして日本(1

2008113

宇佐美 保

 朝日ニュースターの番組『デモクラシーNOW!』を見るたびに、大きな衝撃を受けます。

元旦の「デモクラシーNOW!スペシャル 〜アメリカの現在(いま)を読み解く〜」も驚きの連続でした。

そのうちの一つ「エコノミック・ヒットマンが語るアメリカ帝国の秘史」に関しては、ゲストのジョン・パーキンス氏の回想録『エコノミック・ヒットマン』(2004年に米国で出版され、驚異的なベストセラーとなった)が日本語に翻訳されている(古草秀子訳 東洋経済新報社刊)とのことでしたので、早速購読し驚きを新たにしました。

そこで、記述されている驚愕すべき内容の一部をここに紹介させて頂きたいと存じます。

 

 それにしましても、「エコノミック・ヒットマン」とは、今まで聞いた事もありませんでした、いかなることか?何者なのか?

この件に関しては、訳者の古草秀子氏が「訳者あとがき」の中で、実に端的に紹介されていますので次に引用させて頂きます。

 

(尚、パーキンス氏の著作の中では、「エコノミック・ヒットマン」を単に「EHM」とだけ記述している箇所がほとんどですが、当然ながら「EHM」とは「エコノミック・ヒットマン」のことです)

 

訳者あとがき

 本書は、世界経済の裏面で暗躍しつつ良心の呵責に苦しんだ、ひとりの男の告白の書だ。男の名前はジョン・パーキンス。彼は一九七一年から一九八〇年までアメリカの国際的なコンサルティング会社で有能なエコノミストとして働いたが、実際には、エコノミック・ヒットマンEHMと呼ばれる秘密の仕事に携わっていたのだ。

 「エコノミック・ヒットマンとは、世界中の国々を騙して莫大な金をかすめとる、きわめて高収入の職業だ」と彼はいう。その手口はじつに巧妙だ。典型的な方法として、彼らはまず、石油をはじめ豊富な資源を持つ途上国の指導者に対して世界銀行の融資を受けて国家を近代化すれば飛躍的な経済成長を達成できると言葉巧みにもちかけ、その国に巨額の債務を負わせる。じつのところ、融資された金は巨大なインフラ建設を受注するベクテルやハリバートンなどの米企業と、現地の利権を握っているほんの一部の富裕なエリート層の懐へと流れる。庶民の暮らしはまったく良くならない。それどころか、債務はとうてい返済できず、貧しい者はさらに貧しくなる。さらに、債務国の政府は負債の罠に絡めとられて、天然資源や国連の議決権を奪われたり、米軍基地の設置を強いられたりすることになる。グローバル化が進む現代では、エコノミック・ヒットマンの活動は質量ともに驚くべき次元に到達しているという。まったく恐ろしいからくりだ。

 もっと恐ろしいことに、もしエコノミック・ヒットマンが途上国の指導者の取りこみに失敗すれば、さらに邪悪なヒットマンである「ジャッカル」の出番となり、それも失敗すれば軍隊が出動するのだと、パーキンスはいう。インドネシア、サウジアラビア、パナマ、エクアドル、イラクなどの例をあげて実体験を語る彼の告白は、説得力にあふれている。

 パーキンスの告白は、映画のストーリーを思わせるような人間ドラマだ。彼はニューハンプシャー州の田舎町に生まれ、厳格な両親のもとに育った。ボストン大学を卒業してまもなく、成功を目指す野心を抱いた若者だったパーキンスは偶然に導かれて、思いもよらぬ人生を歩むことになる。国家安全保障局(NSA)に適性を認められてスカウトされ、その手配によって国際的なコンサルティング会社であるメイン社に雇われ、グローバリズムの闇の部分を担うエコノミック・ヒットマンに仕立てあげられるのだ

 彼の教師役を務めたのは、メイン社の特別コンサルタントの肩書きを持つクローディンという名前の知的な美女だった。……

 

 この「あとがき」の一部を目にし、「エコノミック・ヒットマン」の存在と、その役割を突きつけられた方は、どなたも背筋が寒くなられると存じます。

 

そして、次のような事実からもジョン・パーキンス氏の告発に耳を傾けざるをえません。

 

歴代の世界銀行の総裁はすべて米国出身者で、1968年から1981年まではロバート・マクナマラ(アメリカ国防長官:1961年〜1968年)が、2005年から2007年まではポール・ウォルフォウィッツ(代表的なネオコンの論客の一人であり、ブッシュ大統領(ジュニア)の国防副長官を務めた)が、2007年から現在までは多くの民間と公的組織での役員として役目を果たしているロバート・ゼーリック(前国務副長官)が務めています。

 

 

 

 そして、マクナマラ等に関して、パーキンス氏の回想録『エコノミック・ヒットマン』では、次のように記述されています。

 

マクナマラがフォード・モーター社に入社後、一九四九年には経営計画および経済分析の責任者となり、一九六〇年にはフォード一族以外から初めての社長に就任した。そのすぐ後、ケネディは彼を国防長官に指名した

 マクナマラは政府に対してケインズ的アプローチを提唱し、ベトナム戦争における軍事力投入や資金配分などの戦略決定に数理モデルや統計的アプローチを利用した。彼が提唱した「攻撃的リーダーシップ」は、政府上層部ばかりでなく企業幹部たちのモットーとされるようになった。さらにそれは、一流ビジネススクールでマネジメントを教える際のあらたな精神的アプローチの基本を形づくり、結果として、世界帝国推進の先頭に立つ新しいタイプのCEOたちを生んだ

 テーブルを囲んで世界情勢について議論するとき、国防長官を辞職して世界銀行総裁に就任したマクナマラの話が、頻繁に話題にのぼった。友人たちの大半は、彼がいわゆる軍産複合体を象徴する存在であるという事実に注目した。彼は大企業のトップから政府閣僚へ、そして世界でもっとも有力な銀行の総裁の地位に就いたのだ。そうした権力分離の原則に対する違反は、彼らの多くに衝撃を与えていた。その事実にまったく驚かなかったのは、私ひとりだったのかもしれない。

 今思えば、ロバート・マクナマラの最大かつ最悪の功績は、世界銀行がかつてないほど大規模な世界帝国のエージェントと化すための舵取りをしたことだろう。彼はまた、後につづく人々のための前例をつくった。コーポレートクラシーの主要な構成者のあいだにある溝を橋渡しする彼の能力は、後継者たちによってさらに微調整された。たとえば、ジョージ・シュルツはニクソン政権で財務長官や経済諮問委員会委員長を務め、ベクテル社の社長になり、そしてレーガン政権の国務長官になったベクテル社の副社長で理事だったキャスパー・ワインバーガーは、レーガン政権の国防長官になったリチャード・ヘルムズはジョンソン政権でCIA長官となり、その後、ニクソン政権では駐イラン大使になった。リチャード・チェイニーはジョージ・HW・ブッシュ大統領の国防長官を務め、ハリバートン社の社長となり、その後ジョージ・W・ブッシュが大統領になると副大統領になった大統領でさえ、ジョージ・HW・ブッシュはザパタ石油の創業者であり、ニクソン、

フォードの両政権で国連大使を務め、フォード政権ではCIA長官も務めた経歴の持ち主だ

 

 

 このようにブッシュ政権周辺の政治面での中心的人物の多くが、又会社経営での中心的人物となっています。
一人の人間が、政治の中心的役割と会社経営での中心的役割とを使い分ける事が出来るのでしょうか?
(私には不可能です。どちらかの役割を捻じ曲げてしまうでしょう。多分、政治を自分の都合の良い会社経営に捻じ曲げてしまうと存じます)


 では、「エコノミック・ヒットマン(
EHM)」の具体的な仕事の内容をより深く知る為に、更に、パーキンス氏の著作から引用させて頂きます。

先ず、この美しいクローディンの教えを受けたパーキンス氏は、エコノミック・ヒットマン(EHM)としての最初の仕事で、インドネシアに赴きます。

 

私は数カ月のうちに、当時地球上でもっとも人口過密な土地と呼ばれていたインドネシアのジャワ島へ出発する予定だった。インドネシアはまた、石油資源が豊富なイスラム国家であり、共産主義の活動拠点でもあった。

 「ベトナムのつぎはインドネシアよ。インドネシアの人々をうまく味方につけなくては。もしこの国が共産圏にとりこまれてしまったら、それこそ……」クローディンは人差し指で喉を掻き切るしぐさをして、魅力的な笑顔を浮かべた。「とにかく、楽観的な経済予測を立てること、発電プラントや配電線路ができれば経済がいかに活気づくかを力説しなきゃいけないわ。そうすれば、米国国際開発庁(USAID)も世界銀行などの国際開発金融機関もローンに正当性をつけられる。もちろん、あなたも報われて、またどこか魅力的な国へ派遣される。世界中で、なんでも手に入る」ただし、この仕事はとてもむずかしいのだと、彼女は警告した。「金融機関の専門家たちがなんだかんだいってくるわ。あなたが立てる経済予測のあら探しをするのが、彼らの仕事だから──それで報酬をもらっている人たちなのよ。──あなたを悪く見せれば、彼ら自身は良く見える、つてことよ」

 ある日、クローディンに聞いてみた。インドネシアヘ送られるメイン社のチームは全部で二人だが、私以外にもこんな教育を受けている者がいるのか、と。いない、と彼女は答えた。

 「彼らはエンジニアよ。発電プラントや送電線や配電線路、港湾設備、燃料を運びこむ道路なんかを設計する。あなたの役目は未来を予測すること。あなたの予測が、彼らが設計するシステムの規模を決める──そして貸付額もね。わかるでしょ、あなたは重要な役目を担ってるのよ

 

 そして、パーキンス氏は、このインドネシアの仕事に貢献して昇進を果たします。

それにしても、不思議です。

インドネシアにとって返済不可能な多額の融資をすれば、その融資は返済されないのですから、いわばこの融資行為は、「インドネシアと言うドブにドル紙幣を捨てた」事と同じことになります。

何故、ドルをドブに捨てても米国は繁栄できるのでしょうか?!

この件に関しては、次のような記述を目にします。

 

 結局のところ、世界帝国はドルが世界の基準通貨として機能している事実と、米造幣局がそのドルを印刷する権利を有しているという事実とに、大幅に依存している。だからこそ私たちは、エクアドルのような国々に、返済不能に陥ることを承知のうえで資金を貸す。それどころか、不払いこそが私たちに権力をもたらし、債務国に無理難題をふっかける根拠になるのだから、相手が債務を履行することを望んでいない。通常の状況なら、それでは自分の資金をしだいに失っていく危険を犯すことになるし、あまりに多くの債務不履行には耐えられなくなる。だが、私たちが置かれている状況は普通ではない。アメリカは金で保証されているのではない紙幣を印刷する。じつのところ、通貨価値を支えているのは、世界に誇る経済力ヘの自信と軍事力、そして私たちのために築き上げた帝国の資源以外にはないのだ。

 紙幣を印刷する能力は、絶大な力を与える。それはさまざまな意味合いを持っているが、なかでも、決して返済されない借金を生み出しつづけうるということは重要だ。その一方で、自身が巨額の借金をすることが可能だということも意味している。二〇〇三年の初頭までに、アメリカの国家債務は六兆ドルという信じがたい金額を超え、その年が終わる前に七兆ドルに達すると算出された国民ひとり当たり、ざっと二万四〇〇〇ドルになる勘定だ。この債務の多くは、アジアの国々、とくに日本と中国に負っている。電子機器や、コンピューター、自動車、家電、衣料などの消費財をアメリカや世界の市場で売って蓄財した資金を使って、米国債(つまりは借用書)を購入した国々だ。

 世界がドルを基準通貨として受け入れているかぎり、この巨額な負債は、コーポレートクラシーにとって深刻な障害とはならない。だが、もし別の通貨がドル伝って代わるようなことがあれば、そして、もしアメリカの債権国のどこか(たとえば日本や中国)が、債務返済を求める決定をしたら、状況は劇的に変化する。アメリカは一瞬にして、きわめて危うい状況にいることに気づくだろう

 

 ここに記された「コーポレートクラシー」に関して、パーキンス氏は次のように記述されています。

 

 世界帝国建設を推進する動きのなかで、企業や銀行や政府(これらの集合体を「コーポレートクラシー」と呼ぶ)は経済的・政治的な力を利用して、教育や産業界やメディアがこの誤った認識と必然的結果の両方を支持するよう努める。その結果として、現代人の文化は際限なくどん欲に燃料を消費する巨大機械と化したかのごとき状態にまで陥ってしまい、行き着く先はといえば、目につくものはすべて消費して、最後には自分自身を呑みこむしかなくなってしまうだろう。

 コーポレートクラシーは陰謀団ではないが、そのメンバーたちは共通の価値観と目標を持っている。コーポレートクラシーのもっとも重要な機能のひとつは、現状のシステムを永続させ、つねに拡大し強化することである。「成功者」の暮らしや、豪華なマンションやヨットや自家用ジェット機といった彼らを飾る品々は「消費、消費、消費」と私たちを駆りたてるためのモデルとして示されている。物を買うのは私たち市民の義務であり、地球の自然を略奪することは経済にとって良いことであり自分たちの利益になるのだと、なにかにつけて私たちは思いこまされている。かつての私のように、EHMは法外な給料を与えられて、システムの思いのままに操られている。EHMが失敗すれば、さらに邪悪なヒットマンであるジャッカルの出番となる。そして、ジャッカルも失敗すれば、軍隊が出動する

 

 このようにパーキンス氏は、陰謀団ではないが、そのメンバーたちは共通の価値観と目標を持っている」「集合体」である「コーポレートクラシー」が「世界帝国建設を推進する動きのなかで」重要な働きをしている(どちらかと言えば、互いの結び付きは緩やかでありつつも目的を同じくする集団)と捉えていますが、ジャーナリスト(米経済紙「フォーブス」元アジア太平洋支局長)のベンジャミン・フルフォード氏は『暴かれた[闇の支配者]の正体(発行:扶桑社)』の中で、次のように闇の権力(強い結びつきの集団:秘密結社)を紹介しています。

 

闇の権力はアメリカの世界支配を狙う石油産業、軍事産業、国際金融資本と、それと利害問係を持つ政治家、官僚、学者、メディア人の秘密結社である」

 この中核にいるのが、互いに姻戚関係で結ばれ、あるいは相互に自社の取締役を務める華麗なる一族≠スち、つまり、ロックフェラー一族、ブッシュ一族、ハリマン一族、ウォーカー一族など政官財すべてに強力な力を持つ名族である。

・・・

 アメリカを支配している闇の権力″とは、支配グループの頂点に位置する人間たちだけで結成されているグループのことだ。「スカル・アンド・ボーンズ」はそのグループの中のサブ・グループにすぎない。闇の権力″全体はイルミナティ″またあるときはニュー・ワールド・オーダー″と呼ばれている。

 彼らの目的は、アメリカ中心の世界支配を完成させ、永続させること。具体的には、中近東の石油を奪い取り、中国・ロシアを制することである。

 例えば、イラク戦争。ブッシュ政権が大量破壊兵器疑惑をでっち上げて侵略戦争に突入し、劣化ウラン弾をバラ撒いたことで得をしたのは誰か。メディアがイラク戦争の真実を追究せず、アラブの言い分を伝えず、戦争を止めようとはせず、逆にイラク戦争の大義″を喧伝することで得をしたのは誰か。

 それはほかでもない石油産業、軍事産業の支配者たちである。軍事産業のほうはあまり説明を要しないだろう。イラクでパンパン銃弾や砲弾を撃ち込み、戦闘機や戦車を大量投入することで生産ラインが拡大して喜ぶのは彼らしかいないからである。アメリカの軍事費は増大の一途をたどり、今や66兆円。戦争があればあるほど儲かる連中である

 石油産業については、彼ら闇の権力″は政府に対して中東侵略を長年命令してきたという事実がある。石油泥棒″のためだ。アメリカの言うことを聞かない政権を壊して、その復興≠フ過程で彼らが持っている石油とそれに関係する利権を奪う。このことは、アフガニスタンとイラクの復興″の過程を見れば一目瞭然である。

 

 このように、フルフォード氏が紹介する闇の権力(イルミナティ″、ニュー・ワールド・オーダー″)に関しては、今まで半信半疑(否!七信三疑?)でしたが、パーキンス氏に「コーポレートクラシー」の実存を教えられた今では、フルフォード氏の指摘する闇の権力の存在が、私には、八信二疑(或いは、九信一疑)程度に思えてなりません。

日本の一般会計収入(公債等を除く)が、50兆円ほどなのに、「アメリカの軍事費は増大の一途をたどり、今や66兆円」というのは何故なのでしょうか?!

冷戦が終わった途端に「テロとの戦い」を打ち上げた米国(闇の権力?)の真意は何処にあるのでしょうか?!

フルフォード氏の「戦争があればあるほど儲かる連中である」の思惑を無視できません。

例えば、チェイニー副大統領等が関連する、ハリバートンは今回のイラク戦争でどれだけの利益を上げたことでしょうか?!

 

 更に、フルフォード氏は、なんと「FRBはただの民間企業にすぎない」と、次のように記述しています。

 

闇の権力はアメリカのドル発行の権利すら握っている。これまでもたびたび出てきたアメリカ連邦準備制度理事会(FRBを掌握しているからだ。

 FRBはよくアメリカ中央銀行≠ニ紹介され、日本銀行と同じ公的な性格を持つ組織のように思われている。しかし、事実はまったく違う。FRB、昔も今も単なる一民間企業にすぎない

 日本銀行は株式上場しているとはいえ、総裁は内閣が任命し、政府の厳しい監督を受けている。しかし、FRBJPモルガン・チエース銀行やシティ・バンクなどの大資本が半数以上の株を所有する私的な法人である。つまり、アメリカの通貨政策は民意とまったく関係のない巨大資本の代表者たちの私的会合で決められているのである。

 彼らはカネを勝手に作る権限を持っている。あまり刷りすぎるとインフレになるから簡単にはできないが、その気になれば今すぐボタンを押して1兆ドルを作れる連中である。私的な集団が公的な機関を装って自分たちの利益になるように紙幣を刷り、金利を設定し、市場を操作している。このことを知らない人が意外と多い。

 このシステムは、ウィルソン政権下の1913年に成立した連邦準備法によってでき上がった。連邦準備法は、12月下旬のクリスマスを狙ってこつそり準備、可決されたことで知られている。クリスマスは日本における正月のようなもので、この期間に議会で重要法案を審議し、成立させるなどというのはアメリカ政治の常識ではありえない。この点からも歴史家から厳しい批判を浴びている。

 これを主導したのはスタンダード・オイルのロックフェラー、モルガン、ワーバーグ兄弟、ハリマン、ロスチャイルドの代理人ヤコブ・シフといった財界トップたちである。

彼らは、1907年の金融恐慌を見て、アメリカにも金融政策を統制する中央銀行が必要だと考えた。それを自分たちで経営できる法律を作ろうというのだから、大胆といえば大胆である。

 この瞬間、アメリカの民主主義は終わったといっていい。海賊たちに乗っ取られてしまったのだ。ロックフェラー1世は法案成立後、「このお金の出る蛇口があつたら、大統領の席も議会もいらない」と言い放ったという。それはそうだろう。一国の通貨発行、金融政策がすべて自分たちによって決められるのだから。そして、ドル紙幣という紙を刷るだけで世界中の資源をタダで奪うことができるのだから。

 事態の深刻さに気づいた政府は、それから何度も中央銀行を公的な機関に作り替えようと働きかけてきた。しかし、その試みは、闇の権力″の妨害に遭ってことごとく挫折した。例えば、ケネディ大統領は連邦準備制度を廃止し、政府に通貨発行権を取り戻そうとしたために暗殺されたといわれている。暗殺の半年前、ケネディは財務省に銀行証券を発行する行政命令を出しているが、これはFRBの通貨の番人″としての立場を奪うものであった。結局、この銀行証券は暗殺によって頓挫、発行した42億ドル分は市場から回収されてしまった。大統領といえども、カネが出る蛇口を持っている連中に勝つことはできなかったのだ。……

 

 このような「偽札もどきドル」の信頼性を維持する為に、健気にも日本は「米国債」を買い続け(売ることもなく)、そして、資源のない日本は〈対米国〉輸出産業こそが命綱!「ドル」の価値が下がると対米輸出が困難!とのことで、日銀までも動員して「ドル」を買い支えてきました。

その結果、

「ドルと円」の価値の変動は殆どありませんが、
「ドルと円」共々、その価値は「他国通貨」に対しては、
その価値を大幅に下げています。

どこの国の方々が、日本の舵取りを行っているのでしょうか?!

 

EHM」のパーキンス氏は、又、インドネシアへの任務に赴く前に、美しい教師クローディンから次のようにも教えられています。

 

 その午後、田園風にインテリアされたクローディンのアパートで、雪が舞う窓辺のソファでくつろぎながら、私は自分がこれから手を染めようとしている職業の歴史を学んだ。クローディンは、歴史において、実際の軍事力あるいは軍事力を行使するぞという威嚇によっていかに多くの帝国が築かれてきたかについて語った。だが、第二次世界大戦後、ソ連の台頭や原子力戦争による世界滅亡への恐怖から、軍事力による紛争解決は危険すぎるとされるようになった。

一九五一年、決定的な出来事が起きた。イランが自国の天然資源や人的資源を搾取する英国の石油会社に反旗を翻したのだ。この会社は、現在の正式名称BP、かつて英国石油(ブリティッシュ・ペトロリアム)と呼ばれていた企業の前身だ。民主的な選挙で選ばれ国民から広く支持されていたモハンマド・モサデク首相(『タイム』で一九五一年度の「マン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた)は、イランの石油産業を国有化した

これに怒った英国は、第二次世界大戦の連合国アメリカに助けを求めた。だが両国は、軍事力で対抗すればソ連がイランの味方をして介入してくるだろうと恐れた。

 そこで、米政府は海兵隊を派遣するかわりに、CIA職員のカーミット・ルーズベルト(セオドァ・ルーズベルトの孫を送りこんだ。彼はみごとな働きをして、報酬と脅しで人々を説き伏せた

そして、暴動や過激なデモを起こさせ、モサデク首相は不人気で無能だというイメージをつくり出した。結局、政権は転覆し、モサデクは自宅に軟禁された状態で余生を過ごした。そして、アメリカの支援を受けたモハンマド・レザ・シャーが独裁政治を行うこととなった。カーミット・ルーズベルトは、私が仲間入りしようとしていた職業のための舞台を整えたのだ。

 ルーズベルトの策略は帝国を築くための昔ながらの手法を応用したものだったが、それは中東の歴史をつくりかえた。ちょうど同時期に、「核抜きの限定された軍事行動」という試みが開始され、これは結局のところ、韓国やベトナムでのアメリカの敗北をもたらした。私がNSAの面接を受けた一九六八年までには、もしアメリカが世界帝国の夢(ジョンソン元大統領やニクソン元大統領が夢見たような)を実現したいのなら、イランでのルーズベルトにならった戦略をとる必要があることがはっきりしていた。それこそが、核戦争の脅威なしにソ連を打ち負かす唯一の戦略だった。

 だが、問題がひとつあった。カーミット・ルーズベルトはCIA職員だった。もし彼が捕まっていたなら、悲惨な結果になっていたろう。彼が指揮したのは他国の政府を転覆させるアメリカの最初の作戦であり、そうした作戦はさらにつづくと考えられたが、そこで重要なのは、米政府と直接に結びつかないアプローチをとることだった。

 戦略家たちにとって幸運にも、一九六〇年代は変革の時期だった。国際的企業や、世界銀行やIMFなどの国際金融機関が強大な力を発揮するようになったのだ。後者は主にアメリカやヨーロッパの大国によって資金提供されていた。政府と企業と多国籍機関という象徴的な関係が生み出された。

 私がボストン大学のビジネススクールに入学したころには、「ルーズベルトはCIA職員」問題はすでに解決されていた。アメリカの情報機関は──NSAも含めて──EHMとして有望な人材を国際的企業の社員として雇うという手法を編み出していた。EHMは政府からは絶対に報酬をもらわない。そのかわり、民間から給料をもらうのだ。結果として、彼らの汚い仕事は、もし発覚しても、政府の方針とは関係なく、民間企業の強欲さのせいにされる。そのうえ、彼らを雇った企業は、政府機関や国際金融機関から(税金を使って)報酬を得ているにもかかわらず、連邦議会や民間の人々の監視の目から逃れ、商標や、国際貿易や、情報の自由に関する法律といった、成長しつつある法的な枠組みによって守られていた。

 「だからね、私たちは、あなたが小学校一年生だったころにはじまった、誇るべき伝統を受け継ぐ新世代なのよ」とクローディンはいった。

 

 そして、この「誇るべき伝統を受け継ぐ新世代」の仕事振りは、ベネズエラの石油国営化を推進したチャベスに向けられたのです。

 

 

少し長くなりましたので、以下は次の《エコノミック・ヒットマンそして日本(2》に続けさせて頂きます。

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