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銀行、郵貯、国債の悪

2003226

宇佐美 保

 今月の22日放映のパックイン・ジャーナル(朝日ニュースター)番組中で、経済評論家と名乗る紺谷典子氏は、“銀行には今迄問題は無く、まともに不良債権などを処理してきており、問題は無かったのに、竹中大臣の失政によって不安を掻き立てられ、日本は不況に陥っている”又、“小泉首相は経済をまるで知らないのだ”旨を放言していました。

紺谷典子氏は、本当に経済評論家と名乗る資格があるのでしょうか?

私は、常々彼女は「インチキ経済評論家」と認識しています。

 

 彼女は次の表を見た事が無いのでしょうか?

この表を見たら誰でも「日本の金融構造は大問題だ!いまこそ構造改革が最優先!」と小泉首相ならずとも叫ぶでしょう。

そして、この表は「日本興業銀行調査部作成」によるもので、2000年末の結果ですから、小泉首相、竹中大臣の登場前の状況を表しているのです。

 

 

(注:この表は『銀行と株(吉田春樹:東洋経済新報社)』に記載されていました。)

 この表を一遍に見るのは大変でしょうから、私なりに感じる問題点を以下に抜き出して見ます。

 

1)銀行に関する問題点

先ずは、「民間金融資産(1390兆円)が銀行を通じてどのような企業企業に貸し出されているか」を次の表(表:1)に抜粋しました。

表:1 民間金融資産(1390兆円)の

銀行を通じての企業向け貸し出し

民間金融資産

銀行等民間企業向け貸出206兆の内訳

 

兆円

 

兆円

企業向け貸出

206

45.3

不良業種

建設

17

8.2

個人向け貸出

61

13.4

不動産

34

16.5

公共部門貸出

187

41.2

卸・小売

41

19.9

 

 

 

金融保険

23

11.2

 

 

 

(不良業種合計)

115

55.8%)

合計

454

 

その他

91

44.2

 

 この表を見れば誰でも驚きます。

なにしろ、銀行等民間から企業に貸し出されている金額206兆の内、なんとその半分以上の金額である55.8%もが、現在不良業種といわれる「建設、不動産、卸・小売、金融保険」業種に貸し出されているのです。

 

更に銀行は、私たちから預かったお金のなんと41.2%(187兆円)も、公共部門への貸出、即ち、国債、地方債等の公共の債務に向けられてしまっているのです。

 

 その結果、更に問題なのは、個人資産の1300兆円の内、不良業種以外の「一般企業」に貸し出されている金額は、44.2兆円しかないのです。

パーセンテージで言いますと、44.2÷130020.0%です。

 

これでは、政府は、こんないい加減な銀行に税金を投入せず、そのお金を直接中小企業に融資した方が効果的ではなかろうか?とも思ってしまいます。

 

 何故、銀行は、私たちの預金の半分近くを国債や地方債に向けてしまうのでしょうか?

 

この23日(日)のサンデープロジェクト(テレビ朝日放映)で、麻生太郎自民党政調会長は、この表に類似した「日本経済新聞に掲載された次の表(日本経済の主な資金の流れ《130日の経済財政諮問会議》に民間議員によって提出された資料)」を掲げながら次のような発言をしていました。


“不景気のため、今までは絶対的に安心できる担保であった土地の価格が下がり、銀行は企業に安心して金が貸せなくなったので、銀行預金が仕方なく国債へと流れているのだ。

この異常事態を糺す為には、もっと公共投資をして景気を引き上げる対策実行すべきだ”旨の発言でした。

こんな認識をしている麻生氏が次の総理候補だとしたら、日本は奈落の底へと向かってしまうでしょう。

 

 麻生氏は、「自己資本比率に関する国際的な統一基準(1988):BIS規制」の内容を御存じないのでしょうか?

 

自己資本比率をあらためて次に掲げます。

BIS自己資本比率=(BIS定義の自己資本)/(BIS定義の総資産)

 

 そして、この分母の「BIS定義の総資産」の中に、銀行が私たちの預金をドンドン国債等に変えてしまっている元凶があるのです。

BIS定義の総資産は、リスクの大きいものほど大きなウエート(次の表:2に表示)を乗じて合計しているのです。

:2  BIS定義の資産に対するウエート

現金、国債、金など

地方債など

国際機関向け債権等

抵当権付住宅ローン等

民間向け貸出等

0

10

20

50

100

 

 この資産に対してのウエートの相違こそが、私たちの預金を、そして中小企業から貸し剥しをしてまでも、銀行が国債を買いまくっている元凶なのです。

 

なにしろ、100%のウエートを有する民間向け貸出金を、ウエート0%の国債に変換してしまえば、「BIS自己資本比率」は、劇的にアップするのです。

 

(その上、0%金利の私たちの財産を、国債に変換すれば、何の苦労も危険も無く、1%金利を稼げるのですからこんなおいしい話があるでしょうか?)

 

こんな事、麻生氏は知らないのですか?

インチキ経済評論家の紺谷典子氏は、“政治家の殆んどは竹中大臣を信用していない”と笑い飛ばしていましたが、この事実を知らない(或いは、知っていても国民に明確に説明しない)政治家が竹中大臣をどこまで理解評価できるのでしょうか?!

 

2)郵貯の問題

 初めに掲げた、「興銀の資料の表」から、2000年末に於いて、郵便貯金の総額:255兆円の98%の251兆円が、国・地方等公共の債務に振り向けられているのです。

 

こんな銀行と郵貯のテイタラクによって、私達の預金(1300兆円)の内の0.07%(91兆円)しか民間企業で活用されていないのです。

 

 だからこそ、小泉首相は“なんと言っても「構造改革」が必要!”と訴え、銀行改革、郵便事業の民営化を実行しようと、格闘しているのではありませんか?

 

そして、公共投資を少しでも増やそうと暗躍する抵抗勢力との戦いに苦戦し、「国債発行枠を30兆円」と宣言しながらも、マスコミなどの支援も少なくなり、宣言枠を守り切れなかった小泉首相は、自らの個人国債の購入に対しては、敢えて、否定的な発言をしたのだと、私は思います。

 

 なのに、“自ら発行を決めた個人国債の購入に対して、自らは購入しないのは問題だと”喚く、3流評論家(常々小泉首相を批判している)もいるとは嘆かわしい事です。

 

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