目次へ戻る

 

出鱈目な経済評論家

2002年2月8日

宇佐美 保

 最近は、“景気対策が構造改革よりも優先されるべきだ”との声が高まっていますが、如何なものでしょうか?

 

特に、2月2日の朝日ニュースターの番組「パックインジャーナル」では、経済評論家の紺谷典子氏((財)日本証券経済研究所主任研究員)は、“小渕内閣時代、経済対策として20兆円程注ぎ込んだ効果により株や土地の値段が総額200〜300兆円程が値上がりした。この分の日本の資産が増大した。更に、このお金は経済が安定するまで注ぎ込まなくてはいけないのに、経済音痴の小泉首相が、この対策を打ち切ってしまった。それが為に、株や土地の値段が下落して、又日本は不景気になっているのだ。”とヒステリックに喚き散らしていました。

 経済音痴は、小泉首相でなくて、紺谷氏だと思います。

 国がお金を注ぎ込んで、株や土地が値上がりしたのは、投資家(というより投機家)が投機(利鞘確保)目的のため買い上げた結果であって、実体経済が上昇したのではないのです。

 

 バブル時期に比べて異常に下落してしまった現在の価格でも(紺谷氏に同席されていた田岡氏、川村氏が指摘されていたように)まだ実力以上に高値がついているのです。

 

 この点に関しては、文芸春秋2001年5月号に神谷秀樹氏(ロバーツ・ミタニLLC会長 フランス国立ボンゼジョセ大学客員教授)は「それでも日本の株価は高すぎる」の中で、“株式相場の見方がちがうのは唯一日本人だけ……”と書かれています。

その一部を抜粋させていただきます。

   株価をはかる世界基準がある

 株の世界には株価の値ごろ感をはかる、一つの基準があります。

 それが株価収益率(PER)です。

 PERは、株の時価総額がその企業の税引き後利益.の何倍であるかを示した数字です。……

 ちなみにPERの適正な値は、歴史的に見て15倍といわれます。それがアメリカをはじめとする世界の共通認識です。……

トヨタは世界で最も業績を伸ばしている素晴らしい自動車メーカーですが、PERが標準の3倍以上(51倍)ありますから、ウォール衝の常識からみれば、現在の株価はかなり高いといえます。……

 具体的な企業のPERを見てみましょう。

 まずは欧米企業からいきます。

 フォード=12倍、GM=8倍、ダイムラー・クライスラー=19倍、アメリカン航空=8倍、マイクロソフト=31、AT&T=24倍、ブリティッシュ・テレコム=19倍。……

 次に日本企業の例を見てみます。

 ホンダ=36倍、NEC=111倍、富士通=56倍、NTTドコモ=163倍。 このPERの値を見ると、トヨタ自動車に限らず、日本企業の株価が軒並み割高であることがわかると思います。私の投資感覚からすると、日本株が到底受け入れられないほど高いと考える根拠が、このPERの値です。トヨタやNTTドコモといった超優良企業だからこんなにPERが高いのだろうという方もいるかもしれませんが、日経平均株価を構成する225社の平均PERで見ても、連結で九十八倍、単独で211倍と極めて高い数字になっています。いずれも日経平均株価が1万3千円台のときの数字です。

 PER=15倍が適正であるという基準は、何もアメリカだけの尺度ではありません。ヨーロッパ企業の株もだいたい同じ水準で取り引きされています。いわば世界の常識で、長年、この尺度が通じないのが唯一日本企業の株価でした。

 ここで、神谷秀樹氏が論じられているのは、“日経平均株価が1万3千円台のときの数字です”から、日経平均株価が6千円近くに落ち込んだ時に、やっとホンダだけがPERの適正値の15に近づけるという按配なのです。

 

 なんと常識はずれな日本の株価なのでしょうか。

こんな株価を目安にして、景気対策の効果云々を語るのは馬鹿げています。

(何故、日本だけが、このような馬鹿げた株価となっているかについても神谷秀樹氏は解説されていますが、ここでは割愛いたします。このような馬鹿げた実態を改善してゆくのが構造改革ではないのですか?)

 

 私が、小学校で習った株価の評価は、

(配当+増資+(その企業の将来性))/株価

でした、この評価方法でも、小渕時代の対策で、配当があがったり、増資されたり、又、その企業の将来性が上がったといえるのでしょうか?

 

 更に、神谷氏は、“日本では株価が下がると、すぐに政府による株価対策が話題になりますが、アメリカでは政府が株価対策を行った例は建国以来ただの一度もありません。英語には「株価対策」という言葉さえ存在しない。それは株式市場が公共のものだと考えられており、それをミスリードしたり、需給関係を人工的に操作することは、たとえ政府であっても決して許されない行為だからです。”とも記述されています。

 

 土地に関しては、テレビ朝日のニュースステーションに出没する評論家の森永氏は“小泉首相が「土地はこれから値上がりする」と宣言すれば、すぐ値上がりする。”と出演のたびにほざいていました。

私は、23日のサンデープロジェクトでの田原総一朗氏の“バブル時は異常で、当時は日本全土の土地代で、アメリカ全土の3つ分が買えた。しかし、現在は土地が必要なら工賃も安い中国へ工場を建設すればよいのだから、土地神話はもう過去のもの”との発言が的を得ていると思います。

 

紺谷氏は、勤務先の(財)日本証券経済研究所で日頃何を研究されているのでしょうか?

まさか、人心をかく乱して、割高株をつかませる策略を考えたり、或いは抵抗勢力の巻き返し作戦でも考えているのでしょうか?

 

 私が小学校で習った事を書くまでもなく、銀行本来の役割は、本来は株や土地で収益をあげるのではなく、企業に融資して収益をあげることで、社会の大切な(お金に関しての)血管の役割を果たす事ではありませんか?

なのに、株や土地に手を染めた結果、膨大な赤字が出たからといって、誰も責任を取らずに、国民に尻拭いをさせていて良いのですか?

 

その上、ただ同然の金利で国民の預金1400兆円で、(自己資本比率の向上の為にも、)アメリカ債(金利、5%として)を買っていれば、何もしなくても、毎年丸々70兆円、たとえ日本国債(金利が1%だとして)でも、14兆円が転がり込むの美味しい商売なのですから、(今後公的資金を注ぎ込んでも、)瀕死の企業へなど金を回す危険など彼ら銀行が冒すはずはないのです。

10年物の国債など、今後日本がどうなるか判らないのだから、手を出さないほうが良い等と不安を感じる方もございましょうが、彼ら銀行幹部には10年後の銀行などどうでも良いのです。

彼らにとっては、銀行が彼等の任期中に潰れなければそれで良いのです。

そして、しこたま退職金をせしめてしまえば銀行が潰れようと関係なくドロンを決めてしまえば良いのです。

 

 何しろ、彼ら銀行幹部達は、「公的資金投入の際」、自ら投入を申請すれば自分達の責任が問われる心配から頬っ被りを決め込んだ輩達なのです。

そして、今もって、不良債権の実態を明らかにしないし、税金を投入されながらも、高給を貪っている銀行員達の給与も明示しないのですから。

なんと阿漕な銀行ではありませんか。

 

 紺谷氏は、小泉首相就任以来一貫して、小泉首相を非難していますが、

潰れなくても良い企業が倒産の憂き目に会っているのは、小泉首相のせいでなく、悪いのは銀行ではありませんか。

 

(追記)

 勿論、紺谷氏以外にも、抵抗勢力の提灯持ちかと思われる、同じような経済評論家が沢山いるようです。

 

それにしても、朝のテレビ朝日の番組に出演して、紺谷氏は、“3月からペイオフか解禁になると、個人は兎も角、中小企業などは大変な事になる。”と喚き散らしていました。

しかし、今年の4月に解禁になるのは定期預金の類で、普通預金、当座預金などは、来年の3月まで、凍結されているのです。

普通預金にしろ定期預金にしろどっちにしてもタダみたいな金利なのですから、全て普通預金に変えて、我慢すれば良いのです。

紺谷氏よ、事実を正確に伝えてください。いい加減にして下さい。

 

 

 そして、景気対策は、紺谷さん貴女御自身がどんどん消費して、テレビに出演した際には、その買った商品を公表して、視聴者にも(貯金を切り崩してさえの)消費を勧める事が大切なのです。

但し、貯金している方々は、将来に不安を抱いているからこそ貯金しているのですから、族議員達を一掃し、預金者から将来への不安を払拭する事が又必要なのです。

 

目次へ戻る