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菅降ろしに原発推進派の影

201166

宇佐美 保

 

『東京新聞(2011.6.3):菅降ろしに原発の影』の記事を見て、“やっぱりな〜〜!”と、落胆しました。

又、朝日ニュースターの番組『ニュースに騙されるな』に於いても、金子勝氏(慶応大学教授)も、“民主自民の原発推進派が、発送電分離、浜岡原発停止等を打ち出してくる菅首相を引き降ろす為に、共同で不信任案を提出するといった茶番劇を演じた”と、東京新聞の記事同様に厳しく糾弾されておられました。

 

 

では、その東京新聞の記事は?

その記事を、次に引用させて頂きます。

 

 

与野党に「電力人脈」

「政権不手際」にすり替え?

 

 不信任決議や党分裂の最悪の事態こそ回避したものの、「辞意表明」へと追い込まれた菅直人首相。首相としての求心力は放棄したのも同然だ。それにしても「菅降ろし」の風は、なぜ今、急に、これほどの力を得たのか。背後に見え隠れするのは、やはり「原発」の影だ。初の市民運動出身宰相は、この国の禁忌に触れたのではなかったか。     (佐藤圭、小国智宏)

 

 

首相は何故追いつめられた

 

 今回の「不信任案政局」を振り返ると、菅首相が原子力政策の見直しに傾斜するのと呼応するように、自民、公明両党、民主党内の反菅勢力の動きが激化していったことが分かる。

 首相は五月六日、中部電力に浜岡原発(静岡県御前崎市)の原子炉をいったん停止するよう要請。十八日には、電力会社の発電、送電部門の分離を検討する考えを表明した

 さらに事故の原因を調べる政府の「事故調査・検証委員会」を二十四日に設置。二十五日には外遊先のパリで、太陽光や風力など自然エネルギーの総電力に占める割合を二〇二〇年代の早期に20%へと拡大する方針も打ち出した

 自民党の谷垣禎一総裁も十七日、不信任決議案を提出する意向を表明し、公明党の山口那津男代表も即座に同調した

表向きは「東日本淡震災の復旧・復興に向けた二〇一一年度第二次補正予算案の今国会提出を見送った場合」という条件を付けたが、原発をめぐる首相の言動が念頭にあったことは間違いない。

 実際、自民党の石原伸晃幹事長は六月二日、不信任案への賛成討論で「電力の安定供給の見通しもないまま、発送電の分離を検討」 「日本の電力の三割が原発によって賄われているのに、科学的検証もないままやみもに原発を止めた」と攻撃。菅降ろしの最大の理由の一つが原発問題にあることを告白″した

 民主党内でも、小沢一郎元代表周辺が五月の大型連休後、不信任案可決に向けた党内の署名集めなど多数派工作をスタートさせた。二十四日には、小沢氏と、菅首相を支持してきた渡部恒三最高顧問が「合同誕生会」開催。渡部氏は、自民党時代から地元福島で原発を推進してきた人物だ。

 

 日本経団連の米倉弘昌会長はこの間、首相の足を引っ張り続けた。浜岡停止要請は「思考の過程がブラックボックス」、発送電分離は「(原発事故の)賠償問題に絡んで出てきた議論で動機が不純」、自然エネルギーの拡大には「目的だけが独り歩きする」という具合だ。

 

金子勝慶大教授は福島第一原発の事故について「財界中枢の東電、これにべッタリの経済産業省、長年政権を担当してきた自公という旧態依然とした権力が引き起こした大惨事だ」と指摘する

 当然、自公両党にも大きな責任があるわけだが、「菅政権の不手際」に問題を矮小化しようとする意図が見える

 金子氏は、不信任案政局の背景をこう推測する。「菅首相は人気取りかもしれないが、自公や財界が一番手を突っ込まれたくないところに手を突っ込んだ。自公は事故の原因が自分たちにあることが明らかになってしまうと焦った。それを小沢氏があおったのではないか」

 

 なるほど自民党と原発の関係は深い。

一九五四年、当時若手衆院議員だった中曽根康弘元首相が、「原子力の平和利用」をうたい、原子力開発の関連予算を初めて提出、成立させた

保守合同で自民党が誕生した五五年には、原子力基本法が成立。その後の自民党の原発推進政策につながっていった。

 七四年には田中角栄内閣の下、原発などの立地を促す目的で自治体に交付金を支出する電源三法交付金制度がつくられ、全国の僻地に原子炉を建設する原動力となる。

 自民党と電力会社の蜜月時代は今も続く

 自民党の政治団体「国民政治協会」の二〇〇九年分の政治資金収支報告善を見てみると、九電力会社の会長、社長ら役員が個人献金をしている。

 東京電力の勝俣恒久会長と清水正孝社長は、それぞれ三十万円。東北電力の高橋宏明会長は二十万円、海輪誠社長は十五万円。中国電力の福田督会長と山下隆社長はそれぞれ三十八万円を献金している。

 会長、社長以外でも、東京電力では、六人の副社長の全員が十二万〜二十四万円を、九人の常務のうち七人が献金していた。

 九八年から昨年まで自民党参院議員を務めた加納時男氏は元東京電力副社長。党政調副会長などとしてエネルギー政策を担当し、原発推進の旗振り役を務めた

 民主党の小沢元代表も、東京電力とは縁が深い

 東京電力の社長、会長を務めた平岩外四氏は、九〇年から九四年まで財界トップの経団連会長

九〇年、当時自民党幹事長だった小沢氏は、日米の草の根交流を目的として「ジョン万次郎の会」を設立したが、この際、平岩氏の大きな支援があったとされる。

 「ジョン万次郎の会」は、財団法人「ジョン万次郎ホイツトフィールド九〇年、当時自民党幹事記念 国際草の根交流センター」に名を変えたが、今でも小沢氏が会長で、東京電力の勝俣会長は顧問に名を連ねている。「(原発事故は)神様の仕業としか説明できない」などと東京電力擁護の発言をしている与謝野馨経済財政相も、現在は大臣就任のため休職扱いだが、副会長に就いていた。与謝野氏は政界入り前に日本原子力発電の社員だった経緯もある。

一方、電力会社の労働組合である電力総連は、民主党を支援している。

労働組合とはいえ労使一体で、エネルギーの安定供給や地球温暖化対策などを理由に、原発推進を掲げてきた。原発で働いている組合員もいる。

 また電力総連は、連合加盟の有力労組であり、民主党の政康に大きな影響を及ぼしてきた。

組織内議員も出していて、小林正夫参院議員は東京電力労組の出身。藤原正司参院議員は関西電力労組の出身だ。

 つまり、エネルギー政策の見直しを打ちだした菅首相は、これだけの勢力を敵に回した可能性がある

 結局、菅首相は「死に体」となり、発送電分離や再生可能エネルギー拡大への道筋は不透明になった。「フタシマ」を招いた原子力政策の問題点もうやむやになってしまうのか。すべてを「菅政権の不手際」で収束″させるシナリオが進行している

 

 

デスクメモ

 脱原発の道は容易ではない。そんな思いでいるところへ、福島・阿武隈川のヤマメから規制値超えの放射性物質が検出されたニュースが飛び込んできた。

三十年来の釣り友だちが「おれの釣りの原点は子ども時代を過ごした阿武隈川だ」と話したのを思い出した。彼の顔が目に浮かんだ。悔しいな。(充)

 

 

  この東京新聞の記事の末尾が、「結局、菅首相は「死に体」となり、発送電分離や再生可能エネルギー拡大への道筋は不透明になった。「フタシマ」を招いた原子力政策の問題点もうやむやになってしまうのか。すべてを「菅政権の不手際」で収束″させるシナリオが進行している。」で終わってしまう事が残念で残念で堪りません。


更に、悲しい事に現実は「青森県知事選が5日投開票され、原発推進派の現職候補が3選を果たした」なのです。  

 

 このような記事を載せる東京新聞ですら、コラム「筆洗(201165日)」では、次のように書いているのですから

 

 

 引き際に関して、ドイツ文学者の池内紀さんがエッセーでこう書いていた。<引き際を誤るもとは二つあるような気がする。一つは未練、もう一つはうぬぼれ。未練のために決断しかね、うぬぼれのために最悪の引き際を演じてしまう>▼この指摘が見事に合致するここ数日の菅直人首相の退陣騒動だった。鳩山由紀夫前首相から「ペテン師まがい」とまで罵(ののし)られ、身内の閣僚からも六月退陣論が相次いでは万事休すか▼菅首相が、遅くても今年八月には退陣する意向を固めたらしい。示唆していた「原発の冷温停止をめどに」という来年一月の退陣は断念することになりそうだ▼「(首相は)居座るつもりはない」と今になって周辺は言うが、国会などでの首相の答弁は誰がどう見ても「居座り」だった。国民からも愛想を尽かされている事実を、ようやく受け入れる気になったのだろうか▼未練やうぬぼれは、人間だったら誰だって持っている感情である。すべて否定する必要もない。時に人を大きく奮起させる材料にもなる。しかし、首相の場合、少々度が過ぎていたようだ▼「菅退陣」とパソコンで入力しようとしたら「歓待人」と出てきた。妙な符合に苦笑いしてしまった。東日本大震災の発生から間もなく三カ月になるが、復興は遅々として進んでいない。被災地を無視した茶番劇は、もう終わらせてもらいたい。


”「救世主」と讃えられてしかるべき菅さん”(拙文≪菅直人氏は私達の恩人では≫等をご参照ください)が何故このように悪し様に言われなくてはならないのでしょうか!?

この件は次に続けさせて頂きましょう。


(補足:201167日)

 

原発推進派による菅さん無視が案の定始まっている事が、『東京新聞(2011.6.7):経産省仕切り 原発死守』の記事からも分かりますので、以下に転載させて頂きます。

更には、電力自由化(自然エネルギー推進)には欠かせない「菅首相が検討を指示した電力会社の発電と送電部門を分ける「発送電分離」」も無視されているとの事です。

 

 私達(特に、マスコミ)が、菅首相を「福島原発の格納容器爆発を阻止した救世主」と祭り上げていれば、こんな事態とはならなかった筈です。

従って、今回の、菅首相を「蛇蝎視」続けるマスコミも、推進派の動きに加担していると思わざるを得ません。

 

 福島第一原発の事故を受け、エネルギー政策を「白紙から見直す」とした菅直人首相。見直し議論は、国家戦略室が事務局の「新成長戦略実現会議」で始まるが、早くも雲行きが怪しい。国家戦略室がまとめた素案では、原子力を「重要戦略」と位置付け、原発推進の堅持をうたう。一体どういうことなのか。

  (秦淳哉)

 

 七日に開かれる新成長戦略実現会議の下に、新たに「エネルギー・環境会議」を設置し、今後のエネルギー戦略の見直しを議論する。議長には玄葉光一郎国家戦略担当相が就く予定だ。

 だが国家戦略室の素案では、「原発死守」の構図が明確だ。自然エネルギー推進団体からは疑問の声が上がっている。

 「『まだ分からないのですか』というのが率直な感想です」と憤るのは、NPO法人「太陽光発電所ネットワーク」の都筑建事務局長だ。

 「福島の原発事故が収束していないのを見ても、原発の安全性を維持できないのははっきりしている。想定外の出来事が起きないとの前提なら、福島の経験を生かしたことにならない」

 政府は総発電量に占める原発の割合を、二〇三〇年に50%まで増やすエネルギ一基本計画を昨年閣議決定したしかし、福島原発の事故で菅首相が「白紙に戻して議論する」と表明。見直しの場は、エネルギー政策を所管する経済産業省ではなく、官邸主導を強調するため国家戦略室とした

 ところが、会議には民主党から党成長戦略・経済対策プロジェクトチーム座長の直嶋正行元経産相や近藤洋介元経産政務官が参加。外堀は「経産シフト」で固められた。

 実際に事務局を仕切るのも経産省官僚で、「経産省審議官をリーダーとする同省の別動隊が中心。今後のエネルギー政策を経産省が主導する資格は絶対にないはずだ」と、政府内からも反発する声が上がる。

 素案も白紙どころか経産省の思惑が色濃い。原発については「世界最高水準の原子力安全を実現」とする一方で、電力自由化を促すため、菅首相が検討を指示した電力会社の発電と送電部門を分ける「発送電分離」は明記されていない

 NPO法人「環境自治体会議 環境政策研究所」の上岡直見主任研究員は「コストが安いとの理由で導入が進んだ原発の前提が福島の事故で崩れたにもかかわらず、原発推進を維持するのはおかしい。事故調査・検証委員会も同じだが、原発を使い続けることを前提に議論している」と批判し、こう主張する。

 「電力需要のピークはすでに過ぎていて、今後の人口減少でさらに低下する。節電効果もあり、これ以上の電力は必要ない。原発の新設は不要で、古い原発から順次やめるべきだ」

 

 原発不要論に 耳傾けるべき

 

 前出の都筑氏も「周囲から『原子力村』と言われるように、原発には特別な利権体質がある。ここ最近、市場原理の重要性が盛んに主張されてきたが、電力業界だけが競争から無縁でアンタッチャブルな存在だったのもそのためだ」と指摘。

 そして「最近は原発不要との世論も強まっている。政府は予定調和の議論をやめて、今後のエネルギー政策をどうするか多くの人の意見に耳を傾けるべきだ。それが本当の民主主義だろう」と話した。



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