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電力
30%を担う原発を廃止すると電力不足になるとの欺瞞

2011423

宇佐美 保

 

 四十年間、原発の危険性を訴えて来られた。京都大原子炉実験所の小出裕章助教(61)へのジャーナリスト岩上安身氏のインタビュー動画

の中で、小出氏は、私達日本人のほぼ全員が信じ込んでいる「電力30%を担う原発を廃止すると電力不足になる」との説を覆して居られます。

 

 そして、そのインタビュー中で小出氏が示して下さった資料(一部)を、「原子力安全研究グループ」のホームページ内で見る事が出来ます。

 

 その一つの資料「過剰な電源設備−1」

には、次の小出氏の記述と「過剰な電源設備−1」の説明図が載っております。

 

多くの人たちの思い込みに反して、原子力は貧弱な資源であり、未来のエネルギー源にはなりえません。それでも日本では現在、電力の30%を超える部分が原子力で供給されています。そのため、原子力を廃止すれば電力不足になると思っている日本人は多いと思います。また、今後も必要悪として受け入れざるを得ないと思っている人も沢山います。そして、原子力利用に反対すると「それなら電気を使うな」といわれます。
しかし、発電所の設備量で見ると、原子力は全体の18%しかありません。その原子力が発電量では3割を超えているのは、原子力発電所の稼働率だけを上げ、火力発電所のほとんどを停止させているためです。原子力発電が生み出したという電力をすべて火力発電でまかなったとしても、なお火力発電所の設備利用率は7割にも達しません。それほど日本では発電所は余ってしまっていて、年間の平均設備利用率は5割にもなりません。つまり、発電所の半分以上を停止させねばならないほど余っているのです。

過剰な電源設備−1

 

 

 この資料を補う意味で、インタビュー内容から次のような補足をさせて頂きます。

先ずは、「過剰な電源設備−1」の説明図の右端の「自家発」は、企業等での自家発電量です。

そして、設備利用率に於いて「原子力」が82%と、他の「水力」(23%)、「火力」(82%)と極端に大きいのは、夜中等電力が余剰になっても、「原子力発電」は簡単にストップできないので、他の発電の稼働をストップして発電量を調整している為です。

即ち、「原子力発電」だけがフル稼働(定期検査等を除外して)しているので、結果的に、発電総量の30%を担っていると言われるのです。

 

 ですから、この図に於ける「原子力発電量」を全て、「火力発電量」に含ませても、その稼働率は70%になるだけであって、「原発」の必要性はない。

 

 

 更に、次の「過剰な電源設備−2

では、次のように説明されておられます。

 

原子力を進めてきた人たちは、電気は貯めておけないので、一番たくさん使う時にあわせて発電所を準備しておく必要があると言います。しかし実際には、右の図に示すように、ごく少数の例外的な年を除けば、最大電力需要量が火力・水力発電所の合計でまかなえなかったことはありません。そうすると今度は、水力は渇水の場合には使えないとか、定期検査で使えない発電所があるなどと言って、原発を廃止すれば電気の供給が足りなくなると国や電力会社は主張します。しかし、極端な電力使用のピークが生じるのは一年のうち真夏の数日、そのまた数時間でしかありません。かりにその時にわずかの不足が生じるというのであれば、そのようなことはささいな問題です。工場の操業時間の調整、エアコンの温度設定の調整で充分に乗りきれます。今であれば、原子力を即刻廃絶しても、困ることは何もありませんただし、今後も電力使用を拡大しようとするならば、現在の発電所で足りなくなるのは当然です。原子力発電が最悪の選択肢だとしても、火力、水力にしても環境に多様な悪影響を与えます。

 

過剰な電源設備−2

 

 又、補足させて頂きますと、「過剰な電源設備−2」に於ける「黒線」は「最大需要電気量」であり、これが「発電設備量」を上回るのが、「真夏の数日、そのまた数時間でしかありません」と言うのですから、これは、「夏の甲子園高校野球大会」のテレビ中継をクーラーで部屋を冷やしつつ、見る人が多い為でしょう。

(私は(そのテレビを中継を見ませんので)、中継を中止すればよいと思っていますが、中継が必要なら、余りクーラーが必要でない時に高校野球大会を開催した方が球児たちの体の為にも良いのではないかと思います)

 

 

 そして、以上の件を補足する為に、「鳩山由紀夫前首相主催勉強会 講師:上杉隆 上杉隆氏ら自由報道協会による「原発事故」取材の報告」の動画

に於ける上杉氏の発言を引用させて頂きます。

 

 

東電ピーク時の需要が4000KWで、400KW足りない為、「計画停電」を実施した点に関して、3週間前、藤本さん(筆者注:東京電力の藤本孝副社長?)に次の質問をしました。

福島原発が止まっても、その補足は火力発電で十分ではないかとの思いで、火力発電の稼働状況は?

 

答:火力発電は、地震で11基壊れ、2基直りました。9基が止まっています。今週末(明日か明後日)に、鹿島の火力(380KW)が直ります。

 

上杉:それで十分ではないですか?

 

ところが、藤本氏に次々とメモが手渡され、藤本氏はその都度発言を訂正しました。

修理完了日に関しては、今週末が「来週」→「4月」→「夏になるかも」

そして、発電能力に関しては、380KW320KW

 

そこで、この件は打ち切り、「柏崎原発事故」の際には、17基の原発を全て停めましたが、停電になりましたか?

 

この間、大勢いる記者クラブメディアは追及しない!

 

 

 この上杉氏の追求が功を奏したのか?

「東電:夏の供給、5500万キロワット確保 藤本副社長」との 毎日新聞(2011/04/22)の記事を見る事が出来ます。

 

 東京電力の藤本孝副社長は21日、毎日新聞のインタビューに対し、夏の電力供給力について、従来見通しの5200万キロワットから約300万キロワット積み増し、通常の夏のピーク需要である5500万キロワット分を確保する方針を明らかにした。東西で電気の周波数が異なる問題では、周波数変換所の処理能力を強化し、長期的には東電へ融通してもらう電力規模を1.5倍に引き上げたい考えを示した。

 

 又、科学立国を唱える日本として、世界に顔向けの出来ない「東西で電気の周波数が異なる問題(東:50ヘルツと西:60ヘルツ)」による問題に関しては、『週刊文春:2011.4.28号』で、早稲田大学の理工学術院・横山隆一教授は次のように語っておられます。

 

家電製品はどちらの周波数にも対応できるし、工場も変換装置を付ければ対応が可能となる。そこで静岡県東部や山梨県、神奈川県など中部電力と隣接するエリアは、中部電力から電力を直接融通してもらう。一時的にエリア委譲すれば、東電は一千万kW以上の電力を減らせる。つまり夏の電力不足を解消することが可能なのです」

 

 更には、このような「原子力発電」を維持する為に、日本の「日本の電気料金を世界一高いものにしてしまい……」と解説されておられます。

 

アルミ精錬の悲劇

 

 日本の原子力は三菱、日立、東芝という巨大企業が群がって支えてきた。1970年に敦賀(BWR)、美浜(PWR)両原子力発電所が運転開始して以降、ラフに言えば1年に2基ずつ原発が建設されてきた。うち1基は米国のWH社と提携した三菱が加圧水型炉(PWR)を作り、もう1基を米国のGE社と提携した日立、東芝が隔年交代で沸騰水型炉(BWR)を作ってきた。次第に肥大化してきた原子力産業は、現在全体で3兆円産業と呼ばれるまでになってきて、すでに設置してしまった生産ライン、配置してしまった人的資産などがあり、どうにも止まれなくなっている。しかし、電気事業法に守られた電力会社の放漫経営は、日本の電気料金を世界一高いものにしてしまい、たとえば、世界一優秀な技術を持つと言われていた日本のアルミ精錬産業は、電力多消費産業の故にすべてつぶれてしまった一、自家水力発電所を持つ日本軽金属の蒲原工場だけが生き残っている)。結局、産業界全体から見ても、原発をこのまま放置していては自らが生き残れなくなってきており、原子力産業も国内的には縮小せざるを得ない。その代償としてねらわれているのがアジアの国々である。

 もっとも、日本国内のパチンコ産業は20兆円産業とも言われているから、それに比べれば原子力産業など些細な産業でしかなく、それを潰したとしても産業活動全体から見れば、充分に調整がきく範囲であろう。

 

 

 

 この日本の電気料金の高さは、先に引用しました『週刊文春:2011.4.28号』には、次の記述も併せて掲載されております。

 

 

「今でも電気代は高いですよ。うちでも海外店舗と比べると二倍から三倍も電気代が高い」それが産業の足かせになっていることは事実です」

 東電が引き起こした電力不足問題で経済界が揺れるなか、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長はこう激白した。

 

鈴木氏と電力自由化の間には長くて深い因縁がある。

九〇年代後半に電気事業審議会の委員を務めた鈴木氏は、公の場でたびたび「米国と比較すると、日本の電気代は約三倍高い」と主張し、電気料金の引き下げを迫った。一方の電力A社はその度に「停電が少なく、世界長高品質の電力を供給してきた」と反論。鈴木氏は、政官財界とガッチリスクラムを組む電力業界の厚い壁に跳ね返されてきた。……

 

 

 原子力発電は安価≠ニ私達は、教え込まれてきたのに!何故、日本の電気料金は高いのでしょうか?!

 

 この原子力発電は安価≠フ欺瞞を、今回同様のジャーナリスト岩上安身氏のインタビュー動画(大島堅一立命館大教授 2011411日)中で、大島氏が解説されておられますので、次の拙文≪原子力発電は安価≠フ欺瞞≫に移らせて頂きます。

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