目次へ戻る

 

野依さん見識を欠いているのはどちらですか?

20091126

宇佐美 保

 ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏がお仲間を引き連れて、“見識を欠いている”とか、と、行政刷新会議の事業仕分けの方々を非難されている風景がテレビのニュース画面に映し出されたのにはびっくりしました。

 

 そのニュースの内容は次の東京新聞(20091125日)の記事をご参照下さい。

 

 ノーベル化学賞受賞者の野依良治・理化学研究所理事長が25日、民主党議員らが参加する文部科学省政策会議の先端科学技術調査会で、行政刷新会議の科学技術予算への厳しい判定について「科学技術はコストではなく将来への投資。一緒くたの仕分けは見識を欠いている」と批判した。

 

 野依氏は、近年の科学技術への政府投資が、中国や韓国など諸外国の伸びに比べると微増にとどまることを指摘。「格差は拡大する一方で、このままではとても戦えない」と訴えた。

 

 事実上凍結の判定を受けた理化学研究所次世代スーパーコンピューター開発にも触れ「科学技術の頭脳に当たる部分。とどまれば瞬く間に各国に追い抜かれ、影響は計り知れない。仕分け人は将来の歴史法廷に立つ覚悟があるのかと問いたい」と声を荒らげた。

 

 

 私は、“おやおや見識を書いているのはどちらなのでしょうか?”と思いました。

先ず、

今回削減対象となった「次世代スーパーコンピューター開発(予算:268億円)」、
「大型放射光施設(
SPring8)(予算:108億円)」と2つの大型事業は、
野依氏」が、「理事長」を務める「理化学研究所」が担当しているのです。

だったら、

ノーベル賞受賞者のお仲間を引き連れることなく、
先ず、「理化学研究所理事長」としての立場から、
この
2件の大型事業の必要性を訴えるべきです。

 

 若し、お仲間と一緒に訴えるのなら、「理化学研究所」の事業は引っ込めて、「先端研究」、「若手研究者育成」などの必要性を訴えるべきです。

 

 

 しかし、ノーベル賞受賞者との肩書きに弱い日本は、彼等の抗議を受け、次の共同通信(2009/11/22)のニュースを見ることになってしまいます。

 

 

菅直人副総理兼国家戦略担当相は22日、NHK番組で、行政刷新会議の事業仕分けで大幅削減とされた次世代スーパーコンピューター 開発予算に関し「政策判断は政治的に行う。科学技術分野は見直すことになるだろう」と述べ、 概算要求を維持させる考えを示した。 ……

 

 

 そこで早速、菅副総理に次の内容のメールを送りました。

 

今回の行政刷新会議の事業仕分けでの次世代スーパーコンピューター(2009年度概算要求で267億円)はご苦労なことと存じます。

本当に、このスパコンの経済効果に関しては私には判断が付きませんが、そんなに多額の金額を投ぜずとも、素晴らしい研究は存在します。

 

 手前味噌になりますが、私の電気の研究がそれに当たります。……

 

 

 とのメールで、私の従来の電気理論を、手作りの実験装置を用いた実験実測で、ことごとく覆し、且つ、新たな理論を築き上げた私の研究の成果(拙文《『コロンブスの電磁気学』の概略》をご参照下さい)の売り込みをかけましたが、肩書きのない私には、菅氏からの返事は今もってありません。

 

 

 しかし、この菅氏へのメールの概略を、コンピュータや多くの分野に優れた見解をお持ちであり、私が尊敬しております或るお方へメールさせて頂きましたら、次のようなご返事を頂きました。

 

 

仰せの通りです。宇佐美さんの意見が反映されることを願っています。

通信バンド幅が広がればスパコンの性能は通常のコンピュータで十分達成できます

この話がニュースに全く出てこないのが不思議ですね。

 

人工衛星やロケット開発は中国がやりたがっているため、アジア共同体のメインテーマで共同開発すればよいと思います
3分の1以下にすることが出来ます。
ECでは旅客機の共同開発が成功しています。

 

 

なるほどなるほどと感服しました。

 

 

 なのに、朝日新聞(20091125)には、次の記述も目にします。

 

理化学研究所理事長を務める野依氏は、この日午前も文科省の先端科学技術調査会で「(次世代スパコンは)外国から買ってくればいいという人がいるが、不見識。その国に隷属することになる」などと語気を強めた。

 

 

 何故、「理化学研究所理事長を務める野依氏」はこのような発言をして恥ずかしく思わないのでしょうか?

私達が日ごろ使っている(これなくしては研究も出来ないし、この文章もかけない!)
Windowsや、Macのパソコンは、どこの国が牛耳っているのでしょうか!?

 

 

 私は、テレビで放映された“何故、日本が2番ではいけないのですか?”に拍手を送りました。

 

 

 この件に関して、週刊文春(2009.12.3号)には「蓮舫に慶大医学部の気鋭の科学者がモノ申す」との、誤解を生むような表題をつけて、慶大医学部総合医科研究センター特別研究助教八代嘉美氏の見解を載せています。

 

 

 今回、科学技術費が仕分けの俎上に載せられたことは止むを得ないと思います

日本には科学技術立国に対する強い思い入れがあり、科学予算はある意味聖域″視されてきました。しかし、国家レベルで予算が削減されているなか、科学だけが聖域というのは無理な相談です。ムダがあるなら削減されてしかるべきです。

 ただ、今回、財務省がピックアップしてきた項目を見ると、世間一般から見て分かりにくいもの〃すぐに利益に結びつかないもの〃にターゲットを絞ったようです。そのほうが、削減に国民の合意が得られやすい。しかし、そのなかには、重要なものも含まれている。本当にムダなものと、ムダに見えてもそうではないものとが、一律に削減とされたところに、今回の仕分けの問題があります

 たとえば、スーパーコンビュータ(スパコン)の開発事業費。いったん凍結が決まったが、すぐに見直されるなど、象徴的な事業になりましたが、これは凍結されても仕方のないものであったと私は考えています

 蓮舫議員をはじめ、総じて仕分け人〃たちはよく勉強をしていて、「世界一を目指す理由は何か。二位ではダメか」というのも、的を射た発言でした

 たしかに今、開発しているスパコンをフルに稼動させれば、二〇一二年の段階で、一瞬だけ世界一位の処理速度を達成できるかもしれません。しかし、世界のトップ100にランクインしているスパコンを見ていくと、たとえば中国のスパコンの中心部などは、秋葉原で買えるレベルのパーツで構成されている。この類のスパコンは、そのくらいの汎用性がなければ有用性に欠けるとも言えます

日本のスパコンの開発には当初、民間から富士通と日立とNECの三社が参加していましたが、採算の目途が立たないことから日立とNECはすでに撤退しています。新たな技術の開発という点からも、これ以上国家予算をつぎ込む意味を見出しにくいのです。

 開発主体である理化学研究所の理事長で、ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏は、「(スパコンなしで)科学技術立国はありえない」と憤慨されていましたが、ここは止むを得ないところではないでしょうか

 

 

 このように、八代嘉美氏は“蓮舫議員をはじめ、総じて仕分け人〃たちはよく勉強をしていて、「世界一を目指す理由は何か。二位ではダメか」というのも、的を射た発言でした”との見解なのです。

(なのに、文春編集者は「蓮舫に慶大医学部の気鋭の科学者がモノ申す」との表題をつけています)

 

 1番を走るのは大変なことです。

2番手を走るのが日本の特技ではなかったのでしょうか?

自転車競技などは、出来るだけ1番を走らずに2番手をつけ最後に抜き去ります。

今は不況で、

日本中が苦しんでいる時に、
ご自分が理事長を務められる理化学研究所の大型事業が、
「世界で
1番でなくては成らない!」とゴネル方の見識を私は疑います。

そして、「仕分け人は将来の歴史法廷に立つ覚悟があるのかと問いたい」との野依氏の問いに対して、私は、「野依氏は将来の歴史法廷に立つ覚悟があるのかと問いたい」と思っているのです。

 

 

 更に、矢代氏は次のように続けておられます。

 

 

一方、同じ理化学研究所が運用する大型放射光施設(SPring8)の予算凍結には疑問符が付く。人工的に作り出した放射光を用いてタンパク質などの構造と機能を解明するこの施設は、民間の利用率も高く、非常に有効に稼動している。

 しかし、そのことを理化学研究所側が、会議の場できちんと説明できなかった

初めに仕分け人側から、『運用コストはどれくらいかかっているのか』と質問され、ランニングコストを出すのに三十分もかかってしまったのです。結果、有効利用されているにもかかわらず」予算は三分の一から二分の一程度まで削減されることになってしまった。

 

 

 この 理化学研究所側が、会議の場できちんと説明できなかった”との野依氏側の不備を棚にあげて、“見識を欠いている”と蓮舫氏側のみを非難するのはいかがなものでしょうか!?

 

 

 矢代氏は次のように続けられます。

 

 

……

 GXロケットのような目が出ない技術開発と、短期では結果が出ない若手の育成とを同じ狙上に載せて、一緒にカットしてしまったのも今回の仕分けのマイナスの面であったと思います。

 しかし、科学者の側も、「カットするな」の一本槍ではダメで、その研究にどうして予算が必要なのか、国民に対してきちんと説明する努力をしなくてはなりません。これまでは聖域のヴェールに隠れて、それを怠ってきた。世問一般の人からすると科学とは分かりにくいものです。研究を透明化することで、その違和感を取り除いていかなくては、税金を受け取ることはできないのは当たり前です。

……

 今回の仕分けは、一時のパフォーマンスに終わらせず、日本の科学行政を立て直すきっかけにすべきものです。その責任は、政府、科学者双方にあるのです

 

 

 菅副総理も、鳩山首相も、ノーベル賞受賞者の徒党を組んでの発言よりも、私にメールを下さった方、又、八代嘉美氏のご見解に耳を傾けて下さることを切望しております。

目次へ戻る