「911」事件に対する元外務省国際情報局長&前防衛大学校教授のご見解(2)
2009年9月28日
宇佐美 保
先の拙文《「911」事件に対する元外務省国際情報局長&前防衛大学校教授のご見解》に続き、雑誌『週刊金曜日(2009.9.11号)』の記述を引用させて頂きます。
PNAC | |
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成澤 | PNACは、ブッシュ第一期政権に軍事の中枢を握りました。 |
孫崎 | さらに彼らは、この政権が発足前の二〇〇〇年に『米国防衛の再構築』という長文の論文を発表しますが、そこには米国の一極支配を実現するため、「真珠湾攻撃のような破局的、かつ何かを誘発するような事件」が必要であると主張している。ブッシュ前大統領自身、「9・11」直後に「第二の真珠湾攻撃」が起きたと述べていますが、それが必要だとした勢力が政権の中枢を占めたという重要な事実があるのです。 |
成澤 | 真珠湾攻撃は、西欧を制覇したナチスドイツによって存亡の危機に立たされた英国を救うための参戦口実に最大限使われました。ルーズベルトが、日本軍の攻撃を事前に知っていたという説も依然根強い。 |
孫崎 | この点からまさに「第二の真珠湾攻撃」と言えるのは、前政権の無作為です。二〇〇一年八月の段階で、CIAが前大統領に「オサマ・ビンラディンは米国を攻撃する」というブリーフィングメモを渡している。FBIもハイジャックを利用した攻撃を予測していましたが、前大統領がこれに対処しようとした形跡がなぜか一切ない。他国の諜報機関からも、同じような情報が多数寄せられていたのですが。 |
知っていながら攻撃放置 | |
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成澤 | つまり「第二の真珠湾攻撃」を期待する側が、それを可能にするような状況を作ったと。 |
孫崎 |
そこまでは、言い切ってよいのではないか。事前に予測できた攻撃を、放置したという事実は間違いない。 ただ、「ハイジャック犯」だという「一九人のテロリスト」のバックグラウンドや、世界貿易センターの崩壊原因、国防稔省に激突したとされる飛行物体の正体──といった問題は、一〇〇%答えを出すのは困難でしょうが。 |
ここで述べられている「第二の真珠湾攻撃」に関して、又、孫崎氏の著作を引用させて頂きます。
「二ー世紀の真珠湾攻撃」という言葉が意味するもの 二〇〇二年一月二七日、ワシントン・ポスト統一面は、9・11同時多発テロが生じた日のブッシュ大統領の行動を詳細に報道した。その中で
と報じた。では、ブッシュが口述させた「二一世紀の真珠湾攻撃」という言葉が意味するものは何か。 その際には、まず、真珠湾攻撃の意味を理解する必要がある。じつは真珠湾攻撃は、第二次大戦の英国の状況と深く関連している。当時英国はドイツの攻撃にさらされ、瀕死の状況であった。これを打開するには米国が参戦し、ドイツと戦ってくれる必要がある。しかし、米国国民は第二次大戦に参戦するつもりはなく、中立の立場を貫いていた。ここで真珠湾攻撃が生じた。…… |
更には、次のようです。
「新たな真珠湾攻撃」を望んだPNACグループ 一九九七年六月、米国の有力な保守主義者たちは、「二〇世紀の歴史は危機が生ずる前に状況を整える必要があり、危機が差し迫る前に対応する必要があることを教えた。われわれは地球規模の責務を追求するため国防費を大幅に増強すべきである」(筆者訳)等を主張点とする「アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)」というグループを立ち上げた。 この文書は、米国は新たな世紀において、安全保障面で世界の指導的立場を維持するために変革に取り組むべきであると主張した後、
(筆者訳)と述べた。 つまり、軍事力強化には議会の反対などがあって容易ではないが、新たな真珠湾攻撃があればその壁も破れ、米国の軍事優位が確保できる体制が作れると主張している。したがって新たな真珠湾攻撃の発生を歓迎している。米国は新たな真珠湾攻撃を受ける危険があるので避けなければならないと述べているのではない。歓迎するとしている。 おそろしい話であるが、同時多発テロ事件が生じたとき、国防省、国務省の幹部は第二の真珠湾攻撃を歓迎する立場の人々が占めていた。勿論ブッシュ大統領も承知していたであろう。 |
ここで、孫崎氏以外に、田中宇氏の著作『仕組まれた9・11 PHP研究所 2002年4月9日』からも引用させて頂きましょう。
あたかもテロを事前に知っていたかのような大統領の行動 九月十一日、米軍の最高司令官でもあるブッシュ大統領はフロリダ州にいた。朝九時前にホテルから出てきたとき、待っていた報道陣から「ニューヨークで起きた事件をご存知ですか」と聞かれ、「知っている。そのことについては後でコメントする」という趣旨の返事をした。その日の大統領の最初の日程は、ホテルの近くの小学校で授業参観をして教育問題について話すことになっていた。大統領は予定を変更せず、専用車で小学校に向かった(ABCテレビによる)。 大統領が小学校に着き、テレビ局のカメラも入っている教室内で小学二年生の授業を参観している間に、補佐官が大統領に耳打ちした。時刻は九時五分で、二機目のハイジャック機が貿易センタービルに激突した二分後だった。 この日の予定が始まる前に事件の発生を知っていた以上、大統領は小学校での予定をキャンセルし、対策を検討すべきだったはずだ。 小学校に入ってからの大統領の行動は、マイヤー司令官と同様、一機目が突っ込んだときは大した事件ではないと思ってしまい、二機目が突っ込んだのを聞いて問題の重大さに気づいた、という風にも読み取れる。 小学校の教室に入った後、事件に関してブッシュ大統領が得た情報は、補佐官からの報告だけである。 ブッシュ大統領の行動からは、テロ事件が起きることを事前に知っていたのではないか、という疑惑を感じざるを得ない。 |
田中宇氏のご指摘の通りと存じます。
特に、次の点です。
授業が終わった後、九時三十分から大統領が予定どおりスピーチを始めたが、その冒頭で「世界貿易センタービルがテロリストによると見られる攻撃を受けた」と言い、……と言うことですが、テロリストの犯行とどこで認識したのでしょうか? 「朝九時前にホテルから出てきたとき、待っていた報道陣から「ニューヨークで起きた事件をご存知ですか」と聞かれ、「知っている。そのことについては後でコメントする」という趣旨の返事をした。」の記述にあるように、8時45分に1機目のハイジャック機が貿易センタービルに衝突した後の、10数分間で、「テロリストの犯行」と認識したのでしょうか? だとしたら、小学校の訪問を中止して、対応策に向かうべきです。 小学校に向かうまでは、テロと認識できなかったら、これまた、田中氏の疑問:補佐官が耳打ちしたことだけを聞き「テロリストの犯行」と断言……に到達します。 |
ブッシュ氏の行動は田中氏の指摘のように「ブッシュ大統領はテロ攻撃を事前に知っていた」と言うことになるでしょう。
そこで、週刊金曜日の記述に戻りますと次のようです。
空前のレベルの軍備拡大 | |
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成澤 | ではその場合、何が目的だったのでしょう。 |
孫崎 | 冷戦後、PNACに代表されるような勢力が世界随一の強大な軍備を維持しようとし、そのための名目として新たに「テロリストの脅威」を必要とした。クリントン政権は一時、「もう脅威は存在しない」と軍備を縮小しましたし、誰が見てもまったく国力に劣る北朝鮮やイラク、イランを「脅威」と見なそうとする試みも、長続きしませんでした。結局、「真珠湾攻撃のような破局的、かつ何かを誘発するような事件」でなければ、第二次世界大戦後における「対テロ戦争」を掲げての空前のレベルの軍備拡大が不可能だったのは間違いありません。また「9・11」がなければ、いくら米国でもアフガニスタンやイラクヘの侵攻はできませんでした。そこにこそ、事件の意味があったと思われます。 |
孫崎氏の著作は若干重複しますが、次のようです。
9・11同時多発テロ前の米国の安全保障政策はどういうものであったか。
米国は、せっかく築いた最強の軍事組織が弱体化する危険を孕み始めた。 |
更には次の記述もあります。
ビン・ラディンの首をとれば戦争は終わるか そもそも、米国政府はビン・ラディンをどの程度危険視したか。テロとの戦いの実質的推進者はチエイニー副大統領である。このチエイニーは、同時多発テロ事件直後の九月一六日、NBCのティム・ルサート記者と単独インタビューを行っている。
われわれの戦略の重要部分は、かつてテロ活動に支援した国々が支援を止めたかを見極めることにある」(筆者訳) 多くのアメリカ人にとり、ビン・ラディンの首がとれれば一件落着である。しかし、チェィニーはそう考えない。さらにアルカイダについて次のように答えている。 「アルカイダはインターネットのチャット・ルームのようなものだ。彼らは異なった動機とイデオロギーを持ち、われわれが去るまで、テロ行為を行う」(筆者訳) アルカイダを特定の動機を持ったグループと位置づけていない。 アル・ゴアは『理性の奪還』(前掲)の中で、9・11同時多発テロ事件の翌日のリチャード・クラーク・テロ対策大統領補佐官の話を、次のように引用している。
9・11同時多発テロ事件以降、国際政治の最重要課題であるテロとの戦いは、ビン・ラディンやアルカイダとの戦いと見られた。実際、そのために同時多発テロの翌月から米英を中心とするNATO軍は、アフガニスタンを攻撃した。敵は明確である。しかし、今日、テロとの戦いの性格は、多くの人々が抱いている像とは異なったものとなっている。 じつはブッシュ大統領はテロとの戦いで誰と戦うかを明確に述べている。多くの人は見逃したが、二〇〇二年一月二九日の一般教書でテロとの戦いを詳細に説明した。
この一般教書の導入部分はアルカイダ関連である。しかし、よく見るとハマスやヒズボラ、イスラム聖戦、ジャイシエ・ムハマドなどが対象になっている。また、それらのテロ組織を匿う国が戦う対象になっている。このグループは9・11同時多発テロと全く関係がない。テロとの戦いの出発点は、9・11同時多発テロ事件である。しかしテロとの戦いはアルカイダだけが相手ではない。ハマスやヒズボラ等が相手である。その支援国が相手である。テロとの戦いはその性質を大きく変化させた。なぜなのか。 |
何故このような事実を、日本のマスコミは報じてこなかったのでしょうか!?
では又、週刊金曜日の記述に戻ります。
米国政府発表信仰 | |
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成澤 | それでも、「米国政府発表信仰」は健在のようです。 |
孫崎 | イラク戦争中、ある席でフランスの学者が「『大量破壊兵器』や『テロリストとのつながり』といった米国のイラク批判はおかしい」と発言したら、著名な元大使が「大統領がウソをついているとでも言うのか」と反論しました。こうしたメンタリティは、わが国では強いのでは。しかし繰り返すように、米国の外交政策における「陰謀・謀略」の度合いの高さをまず知る必要があるでしょうね。歴史を学ぶのは、現実に役立たせるためですから。 |
そして、この「米国の外交政策における「陰謀・謀略」の度合いの高さ」に関して、孫崎氏の著作は次のようです。
いくつかの陰謀論を見た。筆者には陰謀を仕掛ける国が悪いと主張する意図はない。まして真珠湾攻撃など、誘導されて国際的に犯罪と見なされる行動を起こした者が免責されると主張するつもりは毛頭ない。 戦争は人命の損失を前提とする。人命のやりとりを是認する現在の国際関係において、陰謀、謀が存在するのは自然なことだろう。各国は自己の国益に基づいて陰謀・謀を行っている。しかし、陰謀・謀をされる国にとつては、武力を使われるより、厳しいものがある。
春名幹男氏は『秘密のファイル』(上・下、新潮文庫、二〇〇三年)で、CIAの対日工作を記している。この対日工作を見れば、戦後、米国がいかに日本の政界等に深く食い込み、日本の政治を動かしてきたかがわかる。 古今の戦略関係の本には謀への警告を行っている本は多い。 |
ここに記述されている「CIAの対日工作……日本の政界等に……」の 「等」の文字が示すように、 政界だけでなく「マスコミ界」にも深く食い込んでいるのでしょう。 |
だからこそ、
孫崎氏が、 “おそろしい話であるが、同時多発テロ事件が生じたとき、国防省、国務省の幹部は第二の真珠湾攻撃を歓迎する立場の人々が占めていた。 勿論ブッシュ大統領も承知していたであろう”と、 はっきりした見解を披露しているのに、 日本のマスコミ界は、そのような見解を 先の拙文《「911」事件に対する元外務省国際情報局長&前防衛大学校教授のご見解》に掲げましたように、 『週刊文春(2008.1.24号)』などは、「いわゆる『トンデモ話』の一つ」の態度を取っています。 |
更には、孫崎氏の著作から「リチャード・ニクソン元大統領」の言葉を引用させて頂きます。
− 権謀術数などは一般的に悪とされるが、指導者にはそれはなくてはならない。(中略) 権謀術数を用いなければ、大事に当たって目的を達成できない場合が多いのである。(中略)ドゴールも「真の政治家は、権謀の時と誠実の時を使い分けねばならない。……千回繰り返すことによって、全権掌握ははじめて可能となる」と言った。(中略) (第二次大戦のときに) われわれは何千万という人間を殺し、傷つけ、不具にしたが、目的は立派に手段を正当化した。(中略) |
このように「権謀術数を用いなければ、大事に当たって目的を達成できない場合が多い」と公言する指導者を戴く米国と、日本はどのように協調して行くのでしょうか?!
孫崎氏は又次のようにも書かれています。
日米の共通の戦略とは日本が米国の戦略に従うこと以外に何があるのか。 「共通は共通、お互いが話し合って、譲るべき点は譲り、妥協点を見出す。まあ具体的案件ごとに協議するんでしょうな」と優等生っぼく答える官僚がいたら聞いてみたい。 「あなたは、ラムズフエルド・ドクトリンを知っているでしょうね。
戦争の目的に応じて連合は進められるべきで、連合の総意で戦争目的を決めるべきではない』と言っている。
オバマ新大統領は従来以上に同盟を重視すると発言している。 過去、専守防衛のときは、他の国がいかなる戦略を持っているか、それは知らなくてもすんだ。 |
。
更には、
筆者は一九八五年から約一年間、ハーバード大学国際問題研究所研究員となり、「オホーツク海におけるソ連戦略潜水艦の意義」を研究テーマにして、米国学者の書く日米関係の文献を漁っていた。 ある米国学者は「日本人と安全保障の議論をするのは止めよう。
という議論を堂々と展開していた。…… |
このような状況下で、日本は今後どのような道を拓いて行くのでしょうか?!
この件は、次の拙文《戦争よりもエコが良い》にて考えてみたいと存じます。