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ノーブレス・オブリージとビル・ゲイツとウォーレン・バフェット

2008322

宇佐美 保

 先月(28日)テレビのチャンネルを回していましたら、マイクロソフトの会長のビル・ゲイツ氏と彼を抜いて世界一の金持ちとなった世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの最高経営責任者のウォーレン・バフェット氏が学生を前にとても示唆に富んだお話しをされていましたので、チャンネルをそこに固定しました。

(番組は「ゲイツとバフェット 後輩と語る」NHKの衛星第一放送 原題: Buffet and Gates Back to School 制作: NET(アメリカ) 2006年)

 

 そして、番組の途中からでしたが、録画し、お二人の発言内容を文字起こししました。

 

 先ずは、次のお話しにびっくりしたのです。

 

バフェット氏

 社会保障のための給与税は、現在12%以上ですが、所得の最初の8万ドルか9万ドルにだけ課税されています。

 だから、ビルや私は、ほとんど払ってないのも同然なのです。

 ですが、私達の会社の社員にとっては非常に大きな税額です。

私の秘書とか私の社員は最初の8万ドルか9万ドルに対して12%も払うんですよ。

それだけでなく、所得税もかかりますし、その税率も多くの場合同じではありません。

おそらく私の税率よりも高いでしょうねえ。

 キャピタル・ゲインにかかる税率は15%に軽減されています

配当も15%です。

 この国の近年の税制改革は非常に裕福な層だけを優遇するように変えられてきたのです。

 貧困層には、あまり救済にはなっていません。

税率に関して言えば12%以上もする給与税は手をつけないままです。

だから私に言わせればこの国の税率はあまりにもフラットです。

率直に言ってビルや私はもっと高い税率を課せられるべきなのです。

多額の税金は払っていますが、税率にすると非常に低い。

25年前はるかに所得が少なかった時代に支払っていた税率の半分以下ですよ。

政府は本当に金持ちを優遇しています。

 

ゲイツ氏

私もウォーレンの意見に賛成です。

財政の収支を合わせるためには、もっと累進的な課税が必要だと思っています。

いずれみんなその必要性を認識するでしょう。

 たくさん稼いでいる人が、より高い税金を負担するべきだと気付くはずです。

キャピタル・ゲインにかかる税金も見直すべきでしょうね。

相続の際の税金もさほど重いものではありません

私たちが言うのは、少々皮肉に聞こえるでしょうが、税率の一部はもっと累進的であるべきです

 

 お金持ちご自身達が、自分達にかかる税金は少ない、“もっと累進的な課税が必要だ・・・”と話されているのです。

日本では、「累進課税を強化すると、金持ちは税金の安い国に移るし、又、金持ちになろうとする意欲を奪うので、結果的に国の力が衰える・・・」等と言われています。

なんだか恥ずかしいですね?!

 

 

 更に、バフェット氏は次のようにも話されました。

 

バフェット氏

 やろうと思えば、私は所得税を全く払わずに済ますこともできるのです。

 持っている自社株を担保に金を借りて、毎年それで生活をすればいいのです。

 そして、私が死んだら、不動産でその借金を清算すれば、そうすれば私は所得税を全く払わずにこの先暮らしていけるのです。

 自分で言うのもなんですが、こういうのはとても不公平ですね。」

 

 このようなバフェット氏の発言の裏には、バフェット氏以外の米国の富豪の多く(?)は、「所得税を全く払わずに済ましている」のかもしれませんね?!

このような米国が日本の御手本なのでしょうか?

 

 

学生からの質問

おふたりの純資産の合計は910億ドルになります。その金額は世界の貧しい国、70ヶ国のGDPの合計を上回っています。莫大な財産は、世界の繁栄にどのように貢献できると思いますか?

 

バフェット氏

 「私の資産はいずれ社会にできるだけ役に立つような方法で使って貰うつもりでおります。

 地域規模ではなく、世界的な規模、できるだけ有効にねえ、世界中の人の暮らしを向上させるために使って欲しいと考えています。

 方法としては、慈善事業に寄付するのが一番いいでしょう。

 そこで効率よく使って貰えればと思っています。

ビルとメリンダは、世界最大の慈善団体を運営していて、しかも私が知る中では、最も効率的な団体です

二人は人々の暮らしを向上させる為に、資金をどう使おうかとずっと考えてきました。

より合理的な方法はないかと、二人のような成果は誰もあげていません。

私の寄付金も同じような成果が上がることを期待しています。

 

 

 この発言の前にも私はバフェット氏に驚かされました。

しかし、その際の発言は録画していなかったので、インターネットを検索して、この番組の内容を全て紹介して下さっている「mimi−fuku通信」のサイトを訪ねさせて頂き、一部を引用させて頂きます。

http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/c515054b2c36c262e3a5aa280d2fad47

 

mimi−fuku通信」から、

バフェット:

 「ウチの子供は、世間の基準に照らし合わせれば、金持ちの部類に入るでしょう。

 しかし、私の財産を子供達は相続しないことになっています

 私の財産の99%はいずれは慈善事業に寄付することになっているからです。

 だから、子供達は大金持ちにはなれないのです。

 私は、莫大な富を継承することには興味がないんです。

 だって、それはアメリカらしくありません。

 才能を持つもの全員に公平なチャンスがある。

 それがこの国の精神であるはずです。

 <裕福な家に生まれたから、無条件で社会の中の高い地位を手に入れられる。>と言った考え方は、アメリカ的ではないと私は思います。」

 

 更に、次も引用させて頂きます。

 

mimi−fuku通信」から、

バフェット:

 「私達の国(アメリカ)は幸運の切符を持っているのです。

 現代のアメリカで生まれたという事実。

 高い教育を受けたという事実。

 200年前の時代であれば、今と同じ能力や技術を持っていてもそれを生かせなかったでしょう。

 同じように、世界には、才能があってもそれを生かせない人達が多くいます。

 彼等は、私達のような幸運の切符を持っていないのです。

 10年前、ビルと一緒に中国に行きました。

 そこには賢い人達も大勢いましたが、彼らにはチャンスがなかったのです。

 少なくとも当事は。

 私達は、国内の恵まれない人達を助けるだけではダメだと思うのです。

 ビルとメリンダが取り組んだように、もっと世界をみて世界中の恵まれない人達に手を差し伸べるべきなのです。

 世界には、貧困の悲しい現実や残酷なことが、まだまだ沢山あります。

 あなたがたの世代はそういうことにもっと取り組んで欲しいですね。」

 

 

 なにしろ、今の日本は、「国益」と言えば全てが正当化されるという恥ずかしい今の日本が(日本の金持ちが)手本にするなら、米国ではなくて、“私の財産を子供達は相続せず、99%はいずれは慈善事業に寄付する 更には、その寄付を“「地域規模ではなく、世界的な規模」社会にできるだけ役に立つような方法で使って貰うつもり”と語るバフェット氏、そして又、ゲイツ氏のような方を手本にして頂きたいものです。

 

 又、バフェット氏は(私が録画する前の場面で)、

このゲイツ氏とメリンダさんの慈善団体が“世界のポリオワクチン投与費用の90%を負担している”

と語っておられました。

 

 尚、「地域規模ではなく、世界的な規模」な活躍に関しては、

元米国大統領のジミー・カーター氏も、アフリカなど多くの国や機関から見放されている地域の人々に対して、カーター・センターを基盤として人道支援や民主的な選挙の推進などの分野で精力的な活動をつづけて居られる

旨を、朝日ニュースターの番組「デモクラシー・ナウ!119日の放送)」が紹介していました。

 

 

 更に、録画内容を続けます。

 

ゲイツ氏

重要なのはこういうことです。

ウォーレンは自分の会社の大株主、私もまだ自社株をたくさん持っています。

恵まれない人達に富を使うのは消費ではありません。

いいですか、一寸考えてみて下さい。

例えば、5000万ドル稼いだ人がいたとして、それをただ家を建てたり、自分たちの為に使ったとしたら、それはただの消費です。

富を貧しい人に分配せず、自分たちの目的の為だけに使っているからです。

もしあなたが幸運にも、社会の富の一部を手にすることが出来たら、ぜひ世の中の恵まれない人の為にどんどんそれを使ってください

 一番上から富を循環させる。

 それは、義務なんです。

 地位が上がれば上がるほど、責任は大きくなります

もっといえばそのような慈善事業に富だけではなく、頭脳も活用して欲しいのです。

 

 

 このゲイツ氏の「地位が上がれば上がるほど、責任は大きくなります」は、とても大事な言葉です。

仏語では、有名な「noblesse oblige(ノーブレス・オブリージ)」と言われています。

日本の御金持ちで、バフェット氏、ゲイツ氏のような志(noblesse oblige(ノーブレス・オブリージ))を持ち行動されておられる方が居られるのでしょうか?!

 

 私はこの自分のホームページで常々「noblesse oblige(ノーブレス・オブリージ)」の重要性を訴え続けてきました。

しかし、「noblesse oblige(ノーブレス・オブリージ)」を実践されるような方は「聖人君子」であり、その存在は「絵に描いた餅」であるとのメールを私は頂いてきたりしました。

事実、今の日本のお金持ちの中に、バフェット氏、ゲイツ氏のようなお方の存在を私は知りませんでした。

そんな私に、バフェット氏、ゲイツ氏は、明るい光を与えて下さいました。

 

 しかし、お金持ちではなくても、1949年、日本人として初めてのノーベル賞を受賞(1981年に死去)された湯川秀樹博士は、核兵器廃絶を訴える平和運動にも積極的に携わっておられました。

そして、この「核兵器廃絶」に関しても、バフェット氏は次のように語っておられるのです。

 

mimi−fuku通信」から、

質問:何か「特別な力」を持てるとしたら何がいいですか?

・・・

バフェット:

・・・

 世界中の核兵器の削減ですね。

 人類の存亡にかかわることです。

 残念ながら、核の知識は世界に飛び出してしまった。

 悪魔を解き放ってしまったのです。

 世界の中には、悪いことを考えている人達もいます。

 核が悪い人達の手に渡り、使われてしまったら、どのような現実が待っているのか?

 難しいことですが、いずれは皆さんの手で、核の削減や廃絶をかなえて欲しいと思います。」

 

 

 なんのと素晴らしいバフェット氏なのでしょうか!

 

 更に録画内容の掲載を続けさせて頂きます。

 

学生の質問

10年後は何をされているとお思いですか?

 

バフェット氏

 医者に聞いてないんだね。

 充分に健康体だったら今と同じことをやってるでしょうね。

運動能力や知能を必要としないことなら、まあ大抵の事は出来るでしょう。

毎朝ベッドから跳び起きて会社に出勤します。それは変わらないでしょう。

自分の好きなことをしていますから。

まあ、いつまで続けられるかは健康しだいですね。

子供達に、言ってあるんです、私が妙なことを口走ったり、ヨーヨーを振り回し始めたら、私のとこへ来て“引退の潮時だ”と言ってくれってね、但し、一人で来たら、遺言状から外す、全員揃って来いと。

 

ゲイツ氏

 10年後、私は60歳になります。

 大台に乗るたびに10年後はもう年寄りだなといつも思っていました。

 40歳になった時は50歳なんて年寄りだと思いました。

 もうすぐ50歳ですが、まだ年寄りではありません。

私のライフワークは、ソフトウェアーの会社を作って運営してきたことで、それは勿論私にとって、一番大事なことです。

でも、今後の10年で本業と慈善事業にかけるバランスを、切り替えて行こうと思っています。

慈善事業に使う時間を増やすということです。

私の会社から優秀なものを一人選んで、私の担当していた経営の戦略を決める役割を担ってもらいます。

 

でも、仕事は大好きですから、一部は続けて行きますよ。

そして、慈善事業の方にはもっと力を注いでゆきます

 

 

学生:今までの人生でビジネス以外の最大の成功を教えてください

 

バフェット氏

2週間前女の子と卓球の試合をした。

全米ジュニアチャンピオンだとか言ってな。

こんなちっちゃい子だよ。

ビルは何点かとったな、やられたよ、たった9歳の子に。全くムカつく子だ。

結局ぼろ負けだったなあ。今思い出しても腹が立つ。

 

ゲイツ氏

私の場合、仕事以外で、成功したいと思っているのは、いい家庭を築くことです。それが、一番です。

親が、有名人だったり裕福だったりすると、又、いろいろ難しい点がありますけどね。

子供をちゃんとした人間に育てるのは、どんな家庭でも簡単ではありませんが、うまく行けばと願っています。

今までのところあまり悪い影響は出ていないんじゃないかと思いますが、素直に育っているようです。

 

バフェット氏

養子にしたいという希望が殺到していてねえ。

ビルは子供だが、私はひ孫に手をかけている。

成功について一つ話をしましょう。

私と同じ位の年で多くの人に愛されている人に尋ねると、

全員が例外なく「人生は成功だった」と言います。

年をとったとき、愛してくれる人が必ず傍にいる人たちです。

家族や仕事仲間などがねえ。

それはとても幸せな人生だと思います。

一方、大富豪で、自分の名前の付いた学校があり、晩餐会の主賓になるような人も知っています、ところが実際は誰も、その人のことを気に留めていないのです。

勿論、本人もそのことに気づいています

そうなると、人生のすべてが空しくなってしまいます

長者番付に載っていてもそういう仲間に入ってしまう人がいます。

誰とは言いませんが。

 ごく普通の仕事をしていたり、境遇は恵まれてなかったりしても、まわりから愛されている人は、大きな成功を感じているものです

そういう人を、私は沢山見てきたのです。

 

 

 かつては、「ホリエモン」なる人物が“金で全てが買える”と豪語されたそうですが、彼同様に「金と心を交換してしまった今の日本人」は、バフェット氏とゲイツ氏の心を少しでも、取り入れるように改心すべきと存じます。

私も、ゲイツ氏の会社の恩恵を蒙ったパソコンを愛用しつつ、御二人に、そして又、湯川秀樹博士に近づけるよう残り少ない命の中で奮闘して行きたいと思わずにはいられません。

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