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株価を経済の指標と思い込み続ける愚かなマスコミ

2003712

宇佐美 保

 日経平均が、一時は7000円台まで落ち込んでいた際には、“これはペーパー・ドライバーたる竹中大臣の経済政策の失敗に起因するのであって、竹中氏の早期辞任を求める”と、族議員達が喚き、マスコミもその尻馬に乗って、竹中ひいては小泉バッシングを盛んに行っていました。

ところが、日経平均が、最近では1万円近くまで上がって来た最近では、その声はトーンダウンしてきました

 

 この状勢を受けて、テレビ朝日(ニュースステーション)の久米氏は“このまま株価が上昇する事を期待します”等と寝言発言していました。

又、朝日ニュースターの「パックイン・ジャーナル」では、今もって、未だ、“小泉内閣発足当時の株価(15千円)に戻るのはいつだろうか?又、戻るのだろうか?”等と、討論していました。

更に、先週のテレビ朝日の番組(サンデープロジェクト)では、司会の田原総一朗氏は、“罪な経済学者評論家達が「景気が悪い悪い」と言い続けたから株価が下がっただけであって、最近の経済は上向きであるので(我々の番組だけは、既に経済は上向きだと認識してその旨放送していた)、今回の株価上昇は当然だ。”と誇らしげに語っていました。

そして、ゲストの大和総研の東英治氏は、“統計を取ってみると株価は名目GDPと連動して動いていることが判ります。そして、秋には、1万2千円にはなるでしょう。”と語っていました。

それに日本の株価上昇の原因は、りそな銀行への公的資金導入によって、「大手銀行は潰さない、株主責任は問われない」の認識が行き渡った為と解説していました。

 

 本当にマスコミはいつまで愚者であり続けるのでしょうか?

日本の株価の7000円台までの下落も、今回の上昇も、すべて外国の株価の動向と連動しての結果である事は、両者の株価推移にグラフを見れば一目瞭然ではありませんか?

竹中大臣もりそな銀行も関係ないのです。

(よせば良いのに、松原聡氏(東洋大学教授)は“阪神が優勝する頃には株価は1万円を超えているのではないでしょうか?”と余計な事を言っていました。)

 

 今回の株価動向に対して、経済音痴の小泉首相は一点だけ真っ当な事を言いました。

7月12日付の朝日新聞には、次の記事が載っています。

「評論家は『まだ下がる』と言っていたが、経済学者で(株で)もうけた人はケインズを除くといないんだよな」。小泉首相は11日の月例経済報告関係閣僚会議で、冗談をまじえて「株価底打ち宣言」をした。

 事務方によると、首相は「いまから考えると7000円が底だったのだろう。その時に外国人は買っている。20年前の水準に下がれば、底だと思うのが常識だ。リスクをとるのが大事で、外国人の方がうまい」と上機嫌で持論を展開した。

 この小泉認識「経済学者で(株で)もうけた人はケインズを除くといないんだよな」は正論そのものなのです。

もしも、株価が経済を正当に反映していれば、経済学者も、大和総研の東氏も億万長者になれるのです。

(なにしろ、今回の株価変動は、7000円台から1万円へと急上昇ですから、短期の間に5割近くも儲ける事が出来たのです。)

ところが株価が経済を反映していないから、誰もすんなりとは大儲け出来ないのです。

 東氏は、“株価は、名目GDPと連動している”と語っていました。

しかしその理由は何なのでしょうか?

考えられる事は一点。

GDPの上昇と共に、企業を(トータル的に見て)成長する。

その成長した企業が、株主へ株分割(株の無償贈与)し、且つ、配当金もアップする。

かくして、株主の財産も増加する。

という、正当な循環作用が行われれば、東氏の説は正しく評価されるべきなのです。

 

 この点を確かめに、東氏のお膝元の大和証券のカウンターに赴き質問してみました。

“株分割(無償、或いはそれに近い増資)は期待出来ますか?”との私の質問に対して、“そのような例は先ず希です”の答えが返ってきました。

“では、株のメリットは?”と質問しますと、“値上がり益です”との答えです。

 

 株の本来の楽しみである配当金も増資も期待出来ない日本の株は異常なのです。

7000円台の時でも、平均利回りは1%程度だったのですから)

それなのに、小泉首相は“いまから考えると7000円が底だったのだろう”と発言しているのです。

こんな馬鹿な発言をするより、小泉首相は株の構造改革に取り組むべきなのです。

 

7千円だろうが、8千円だろうが、株価は未だ高いのです。

何度も書いてきましたように、今の株価はまだまだ「古切手」とか「骨董品」とかの値段と同類なのです。

「古切手」がその額面以上の価格で取引されているのと同じなのです。

誰もその「古切手」の興味を持たなければ、その価値はその切手本来の額面でしかないのです。

(株に於ける額面は、その配当等に見合った価格となるのです。)

しかし、「古切手」市場がある程度活性化していれば、投機家が、この切手の価格を上下操作する事によって、売り買いを繰り返して、利益を得る手口と同じなのです。

投機家にとっては、額面は問題ではないのです。

投機家にとって嬉しいのは、株価(「古切手」価格)が頻繁に上下する事なのです。

 

 そして、小泉首相認識(……リスクをとるのが大事で、外国人の方がうまい))通りに、と言うより、外国人投機家達の策略通りに、今回も彼等が膨大な利益を上げたのでしょう。

 

どんなに経済音痴で無能な集団であるマスコミでも、最近竹中大臣が、殊更、経済政策を採っていないのに、アメリカ等外国の株価に連動して株価が上昇してきた今回の事態を直視すれば、株価の上下の原因は経済政策に無関係で、単なる機関投資家の思惑である事に気が付きそうなものです。

 

 このように投機家によって操作されている株価で、経済政策の正否を判断してはいけないのです。

小泉首相、政府、国会議員、企業一体となって、株価の構造改革を行うべきなのです。

(株価は、7000円が底ではないのです、配当で利益が出る価格まで下落すべきなのです。)

 

そして、こんな分かり切った事が今もって判らないマスコミこそが(国会議員は言わずもがな)「ペーパードライバー」だと私は思います。

 

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