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戦争の亡者と人間の盾

2003420

宇佐美 保

 417日付けの朝日新聞には「米軍を支えるマイノリティー」との示唆に富む記事が掲載されていました。

この記事の出だしは次のように始まります。

 イラク戦争の米軍戦死者の中に、黒人やヒスパニックなどマイノリティー(人種的少数者)が目立つ。73年に徴兵制が廃止されて以来、米軍は主として、マイノリティーと白人の低所得者層出身の志願兵によって構成されてきた。その結果、中産階級以上の多くが実際の戦場とは無縁の存在になり、戦争のリアリティーを米社会から失わせているとの指摘がある。(ニューヨーク=福島申二)

 成る程このような背景では、米国で戦争を声高に叫ぶ白人の若者達のグループ(テレ(TBS)で紹介されていました)が存在する理由がわかります。

何しろ、彼等はさんざん戦争を煽ったあげくに、いざ戦争となっても、ブッシュ大統領、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官達のように姑息な手段を用いて“ベトナム戦争への参戦回避”をせずとも(注:1)、安全な米国国内に留まっていられるのですから。

 

 そして、マイノリティーを軍隊に志願させる為、除隊後の学資の特典などの恩典を支給する仕組みになっているというのです。

戦死した海兵隊の黒人兵ウィリアム・ホワイト上等兵(24)……

海兵隊に入ったのは大学へ進む学資がほしかったからだ。一定期間、軍務についに者には、除隊後の学資が特典として与えられる。……

 「こんな戦争をだれが始めたのでしょう」

米メディアの取材に母親は嘆いた。これからの息子の人生に期待をふくらませていたという。

 徴兵制を廃止した後、兵力を確保するために米政府は様々な特典を用意してきた。ホワイト上等兵と同様の動機で軍に志願した大勢の若者が、今度の戦争にも駆り出されている。入隊すれば家族の医療費や歯科治療費も大幅に軽減されるため、家計を助けようと軍服を着る者も少なくない

 

 これでは当然の如く次の結果(イラク戦争に「反対」する人の比率)が出てきましょう。

ニューヨークの地元テレビ局が開戦後に世論調査をしたところ、こんな数字が浮かび上がった。

 ▽白人39%  ▽ヒスパニック48%  ▽黒人72% 

 このような事情を踏まえて、

「徴兵制の廃止から30年間、米国は兵役の負担を貧乏人とマイノリティーに押しっけてきた。政権を担う者がイラク攻撃にかくも熱心なのは、息子や身内が戦場に行く心配がないためだ

 そんな主張とともに今年1月、黒人居住者の多いニューヨークのハーレムを地盤とするチャールズ・ランゲル連邦下院議員(民主党)らは「徴兵制復活法案」を議会に提出した。

 更に、

昨年秋、下院がイラク攻撃容認決議を可決した際、ランゲル議員は反対票を投じている。議員はいま、「もし徴兵制があって、人的犠牲を国民各層が引き受ける状況だったら、この戦争に対する、より正しい認識を米議会と米社会にもたらしたはずだ」と語る。

 

このような背景で、戦死の知らせを受けたマイノリティーの遺族が大変お気の毒です。

 南部のジョージア州出身の黒人、ジャマル・アデイリン工兵(22)の母親は「ブッシュは他人の息子たちを戦争に送っている。ブッシュは、戦死者は栄誉に包まれていると説くけれど、私は息子がブッシュの英雄になるより、憶病者でいいから、この腕の中にいてほしかった」と言って泣いたという。

 

 従って、私は“戦争を声高に叫ぶ方々は(政権を担うものに限らず、世のオピニオン・リーダー達は)ご自身並びに息子や身内共々戦場に赴くべき”と常々思っているのです。

 

 特に、今回、ブッシュ大統領は“この戦争はイラク国民に民主主義を提供する為”との名目で、イラク国民の承諾もなく、多くのイラク国民(何の罪もない子供達)を勝手に惨殺したのですから、殺戮行為がほぼすんだ今、自らの身をイラク国民(死傷者のご家族)の前にさらけだし、己の行為が真に彼等の為であったか否かをイラクの遺族達(又、負傷者達)に問うべきと存じます。

(若し彼等が、「NO!」と言ったら死を覚悟すべきと存じます。勿論、彼等が「YES!」と言ったらブッシュ大統領は当然彼等の救世主として感謝されるでしょう。)

 

 そして、小泉首相はじめ日本のオピニオン・リーダー達も、イラクのご遺族の前に進み出て、“私共は、近隣の北朝鮮が怖いのです、この脅威から守って貰う為に、今回はなんとしても米国の貴国への攻撃を支持しなくてはなりませんでした。

今後は、私共の行動を束縛する「平和憲法」を廃棄し、英国同様に、自ら今回のような戦闘に参加することが出来るように致しますから、今回の件は何卒お許し下さい”とでも釈明するのですか?

 

 「戦争」と言えば何をしても許されるというのはどういう事なのですか?

一方、「反戦」の声を上げると迫害されてしまうのです。

米国元司法長官ラムゼー・クラーク氏著「湾岸戦争」(地湧社発行)には、次の記述があります。

最も勇敢な行動が、軍隊の内部で行われた。動員令が米国全土に行きわたると、数百人の現役または予備役の兵士が召集を拒否した。メディアは湾岸危機を善と悪の対決として伝え、米国自慢の兵器が戦争へと向かう様を報じた。そして、反対者の行動はほとんど無視し、自らの危険をかえりみず戦争に反対した人々の孤独な英雄的行為について、言及することはまずなかった。

 メディアが反応し始めるのは、戦争が終ってからだ。

国防総省が良心的兵役拒否者のほとんどの訴訟に対し苛烈に対応すると、メディアは兵役拒否者の記事を掲げ、虐殺を祝う国民に対し、権威に従わないことは非常に真面目な行為だと説いた。しかし、戦争にまっしぐらに突き進んでいた時には、米国民には何も知らせなかった。

 

 更に、[ロサンゼルス3月4日 ロイター]には、

 米国の対イラク攻撃に反対を表明したハリウッド俳優らに嫌がらせが相次いでいる事態を受け、全米俳優組合(SAG)は声明を発表、業界の暗黒時代ともいうべき冷戦下のマッカーシズムを再燃させてはならないと強く訴えた。

 

 そして、我が国日本の週刊文春(2003.4.10)には、「反戦」を訴える芸能人に対して、以下のように嫌みを書きます。

アメリカの映画事情に詳しいジャーナリストが語る。

「今回のイラク攻撃を機に、『反戦、平和』を訴えている芸能人たちは、国際的な“反戦ブーム”に乗じて気分でやっているとしか思えません。

 ドキュメンタリー映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』で、アカデミー賞を受けたマイケル・ムーア監督は、授賞式の席上で『ブッシュよ、恥を知れ』と自国の大統領を名指しで批判。嵐のようなブーイングを浴びましたが、日本の『にわか反戦芸能人』たちに果たして、彼ほどの覚悟があるのでしょうか」

 (でも、不思議ではありませんか?何故このジャーナリストは名前をあかさないのでしょうか?)

日本の芸能人を非難するこのジャーナリスト自身はマイケル・ムーア監督の心境をどれほど理解しているのでしょうか?

ムーア監督ですら、記者会見では、「……米国はなんて自由にものが言えるのかを示したつもりだ」と語っているのです。

アメリカの映画事情に詳しいジャーナリスト氏よ、又、週間文春の方々よ、ムーア監督のこの発言の本当の意味がわかりますか?

皆さんは、ムーア監督が本当に“米国はなんて自由にものが言える”と実感していると思っているのですか?

逆なのです、米国の発言の自由が危機に曝されて居り、彼の授賞式の席上で『ブッシュよ、恥を知れ』発言により監督自身が迫害されることを恐れているのです。

(彼だって怖いはずです。)

ですから彼は、迫害者の逆手を取って「米国はなんて自由にものが言えるのかを示したつもりだ」と先回りして語ったのです。

このような手を打っておけば、万一、迫害者たちが、こう語る彼を迫害したら「米国は自由にものが言えない」ことを実証してしまう結果になりますから、そう簡単にムーア監督を迫害出来なくなるのです。

 

 でも、無知な週間文春の記者は未だ次のような非難を続けます。

……

 最後はこの方に締めていただこう。シャープな毒舌で知られる”東の師匠”立川談志氏だ。

『戦争反対』って言って、戦争が起きなきゃ世話ないよ

今の芸能人のやってることは、なんで戦争になるんだか、どうして戦争が始まったのかというのを分析しないで『ケンカは良くない』って言ってるだけ。何にもしないで『平和だ』って言っておけば、戦争が無くなるなんてよく言うよ!飛行機でもなんでもチャーターして、あそこに行って『戦争反対』ってやってこい!

 “どうして戦争が始まったのか”との立川談志氏の回答は、先のムーア監督が簡単明瞭に説明されているではありませんか!?(3月25日毎日新聞より

受賞後の会見で、「作り物の理由」の意味を問われた同監督は「フセインが今晩、あなた方を殺すだろうというのが『作りごと』。原油があるからイラクを攻撃していることが『真実』なのだ」と答え、「大多数の米国人は、娘や息子が戦争で死なず、兵士が無事に帰ってくることを願っている。これらの大多数は、ブッシュ大統領には投票しなかった」と述べた。

 

 そして、立川談志氏は、反戦者へ「戦場へでも出かけて『戦争反対』を叫べ」と言うなら、逆に、戦争支持の談志氏は自ら戦場へ志願して出かけるべきです。

 

 更に、週刊文春は“呆れた「人間の盾」礼賛報道”とも書いています。

そして、日刊ゲンダイ2003年3月7日)では、俵孝太郎氏は、次のように人間の盾の方々を非難されています。

 アメリカによるイラク攻撃の可能性が高まる中で、「人間の盾」になろうとする動きが出ている。イラクに乗り込んでアメリカの攻撃目標になり得る軍事施設やその周辺に立てこもり、空爆や攻撃を妨害しようというのだ。イスラム諸国はもちろん、EU諸国やアメリカからも「盾」の志願者が現地に集まっているという。日本人もいるらしい。

 こうした行為をいかにも体を張って平和を守る立派なことのようにとらえたがるマスコミや政党があるが、とんでもない。これはフセイン・イラクに加担する義勇兵の戦闘行為の一形態にすぎない

 ハーグ陸戦条約の付帯条約である陸戦中立条約は、戦闘地域での「中立人」の資格を定めている。その17条に、交戦国でない第三国人であっても、交戦者に対して敵対するもの、あるいは交戦者の一方の利益となる行為をするものは、中立を主張できない、という規定がある。よくて敵兵並み、行動によっては敵味方を識別するための軍服や記章をつけないで交戦者の一方のために戦う非正規の便衣兵、つまりゲリラとして扱われ、捕虜となったとき陸戦条約に定める将校・兵士の権利を認められずに犯罪者として処断されても仕方がない。それが90年も前から国際的に確立されている戦場のルールだ。

「人間の盾」というと聞こえはいいが、「盾」に自国民を動員したり、敵兵や第三国人を拉致して強制したりすれば、残虐行為として戦争犯罪に問われ得る。クウェートを侵略したイラクは湾岸戦争当時この手を使った。今回も繰り返せばフセインは戦犯指名を免れまい。そこで義勇兵を集める手を考えたのだろう。フセインの義勇兵を志願するのは志願者の勝手だ。しかし相応のリスクは覚悟せねばならぬ。その覚悟はあるか

 俵孝太郎氏は、頭脳明晰な方とお見受けしますが、9.11以降、“これは新しい戦争だ!”と勝手に新しい戦争を定義付け、アフガニスタンに攻撃を仕掛け多くの国民を殺傷した上、今度は、全く意味不明の理由付けでイラクに戦争だと言って侵攻する「ブッシュ・アメリカの戦争(?)」をどう解釈するのですか?

「人間の盾」の方々を“フセインの義勇兵”と解釈するのは(残念ながら)俵氏の勝手ではありますが、俵氏の“しかし相応のリスクは覚悟せねばならぬ。その覚悟はあるか”は随分失礼な発言だと存じます。

 

 「人間の盾」のお一人のダンサー村岸由季子さんが、以前、テレビ画面で“自分のちっぽけな命が少しでも役に立てばと思って「人間の盾」に参加している”と発言されていたと私は思います。

しかし、どうも私の記憶が当てにならないので、その村岸さんの発言を正確にここに記述したいと思い、インターネットを探していましたら、ダンサー村岸由季子さんのご関係の方のマリカさん(ジャパン・ダンス・アート学院長)のホームページに到達出来ました。(http://www.japandanceart.com/iraq.htm

そして、そこには、多くの方々の「人間の盾」への非難のメールが溢れていました。

私は驚き悲しくなりました。

そして、この非難の渦から「世論」というものを垣間見ることが出来ました。

そこで、そのホームページに掲げられた御意見なるものを以下に抜粋させて頂きます。

 

「人間の盾」は昔日本がしていた「特攻隊」と同じだ

自分が世の中をかえるのだというのは、傲慢な考え

今回の人間の盾は効果があるでしょうか。

実際、人間の盾の人たちは、負傷者の手当てができるわけでもない。

イラクの子供たちに食料救援物資を届けられるわけでもない。

インターネットで募った「集団自殺」っぽく感じる

そこで無意味なことをして死ぬより、政治家になって、この戦争の意義を問いただすほうがより、現実的だと思います。

 先ほどの立川談志氏同様に、「人間の盾」が戦争を阻止する効果が無いことを理由に、村岸由季子さんの行動を非難されているメールが、上に抜粋しましたように沢山ありました。

しかしながら、「反戦運動」「平和運動」において効果的な行動があるのでしょうか?

そんな行動があったらもうとっくの昔に戦争は無くなっている筈です。

ですから、「反戦」「平和」に近付けるように、各自少しでも各自なりに行動をしているのではありませんか!?

 

 更には、次のようなメールもありました。

初めまして。私は主婦です。子供が二人います。

……戦場はあなたの自己表現の場所ではありません。そこは、人間が人間を殺しあう場所であって、舞台ではありません

……あなたには想像力が欠如していると思います。全くの他人である、イラクの子供達が傷つく姿に同情することが出来ながら、子供を失うかもしれない恐怖におびえ、日々を送らなくてはならないご両親に思いが至らないのはなぜですか?
あなたが命を賭けて誰かを守りたいと、イラクまでいかれた思いより、さらに強く、強く、親は子供を思うものです。それこそ、自分の命と引き換えにしてもです。わかりますか?

そして、親は子供のために必要とされる限りは必死で生きて、子供を守ります。守りたいと思うからこそ、命を大事にするのです。守るってそう言うことではないのですか?……自分の命は自分だけのものであるなんていう考え方は傲慢そのものです。

傲慢な人間に、誰かを救うなんてできるはずありません。

あなたを見ていると本当に腹立たしいです。×××マユミ

 この方は、村岸さんに対して“あなたを見ていると本当に腹立たしいです”と書いていますが、逆に私は、この方に対して“本当に腹立たしい”思いを抱いてしまう位です。

 

この方は、“戦場はあなたの自己表現の場所ではありません。そこは、人間が人間を殺しあう場所であって、舞台ではありません”と書き“人間が人間を殺しあう場所”である“戦場”と言うとんでもない場所の存在を肯定されています。

それに、村岸さんが“自己表現”の為、「人間の盾」となっているのと解釈するのは“想像力の欠陥”としか私には思えません。

親は子供を思うものです。それこそ、自分の命と引き換えにしてもです……自分の命は自分だけのものであるなんていう考え方は傲慢そのものです” と書かれ、村岸さんを“傲慢そのもの”とまで非難されていますが、逆な立場で考えると、酷いことには、アメリカのテロに対する戦争とやらの大義は「自らを守る、自らの家族を守る、自らの子供達を守る」ではありませんか?!

そして、この拙文の冒頭に抜粋しました朝日新聞の記事にある「家計を助ける為に志願兵となり戦場で命を落とした若者」そして、「理不尽なブッシュによる攻撃、空爆で命を落としたイラクの子供達」のアメリカの母親達でさえも当然“自分の命と引き換えにしても”自分の子供達の命を守りたかった筈です。

でもお気の毒なことに、彼女たちは出来なかったのです。

過去の悲しい日本の戦争の際に喜んで戦場へと自分の子供を送り込んだ母親が居ましたでしょうか?

当時の日本の母親も然りではありませんか!?

米軍の広島長崎への原爆投下、そして、東京空襲などの無差別な爆弾投下などによって、多くの方々が犠牲になった際、全ての母親達は“自分の命と引き換えにしても”自分の子供達の命を守りたいと思った筈です。

ひとたび戦争が起これば、母親の願いも空しく、子供達は命を失って行くのです。

 

ですから、お釈迦様は、これら母親達の子供への愛を至高のものと見なされ、それと同様の愛情を全ての人に注ぎなさいと諭されておられるのです。

自分の子供へと同様な思いやりを他人(の子供達)に対しても持てるなら、「戦争」は存在しないはずです。

 

しかし、残念なことに、愛情を自らの子供のみに捧げ、他人の子供達への思いやりに欠けた人間が存在していたり、世界が“人間が人間を殺しあう場所”である“戦場”と言うとんでもない場所の存在を肯定している限り、この世に「戦争」が存在し、世の母親達の子供への愛情圧殺されて行くのです。

 

 従って、村岸さんは、日々「子供を失うかもしれない恐怖におびえ、日々を送らなくてはならないご両親」の愛情を感じればこそ、尚のこと、自ら行動したのではありませんか?!

村岸さんは、この「戦争」を無くしたい、いや、せめてその「戦場」の範囲を狭めたいと思い立ち「人間の盾」となられたのではありませんか?

 松井昌雄氏(大リーグのヤンキースの強打者に成長した松井選手のお父さん)は、昌雄氏のお母さんの『子供というのは、あなたのものだけど、あなたのものではない。神様から預かったもの』との言葉は衝撃でしたと述べているのです。

ご両親も辛いでしょうが、村岸さんの身の振り方を神様のご意志に委ねても良いのではありませんか?

(村岸さんは既に31才です。)

 

 この「×××マユミ」さん同様な次のメールもありました。

私はあえて言いたい。一刻も早く日本に帰ってくるようにと……。

その理由は三つある。ひとつはあなたは日本で生きる使命があること、ふたつには親を安心させてあげること。三つ目は命の尊さを大事にするためです。当たり前のようであるが、深い意味でとらえて頂きたい。

命が大切だから戦争に反対するのに、自分の命を粗末にするという矛盾した行動をとっていると、反戦運動に水をさすことになります。

 「人間の盾」の行動が“自分の命を粗末にする”と言う行動ですか?

自らに与えられた命を、その命の力を最大限に発揮させようと、自らの判断で、行動することが“自分の命を粗末にする”と言うのですか?

命の尊さを大事にする”とは、何も行動せずに安穏と長寿を全うすることですか?

“反戦運動に水をさすことになります”とおっしゃるのでは、反戦運動には小笠原流の如き作法があるのかしらと思ってしまいます。

 

すいません、言わせていただきたい。人間の盾として日本からわざわざ出て行く人は、現在の国際関係を鑑みた上で、日本国籍を持っていることの幸せを理解していない無責任な人々だと思うのです。

しかも、その恩恵は人間の盾と称する人々の大嫌いなアメリカの軍事力なしには現在、成立しないものだと思うのですが。

乃木猫姫さんもそこまでするなら、国籍をイラクに変更したほうが良いのでは。

失礼ですが日本の日常生活から逃げたかっただけなのではないですか?

これは一人の日本国民としての意見です。日本国籍を与えられた事による恩恵に甘えて、責任を蔑ろにしていると思います。別に戻ってきてもらわなくても良いと私は考えます

匿名は失礼なので、×××アラヤチトオル

 このメールの無視の認識する“日本国籍を持っていることの幸せ”は何によって築かれて居るのでしょうか?

「エコノミック・アニマル」と言われて家庭を顧みずに一心不乱に働いた上、今では、「粗大ゴミ」と厭われている日本の多くのお父さん方のお陰でもありましょう。

それに、エネルギー源たる石油無くしては日本の繁栄はないのです。

その石油は、イラクをはじめとするアラブの国々の恩恵を得ているのです。

(「お金を払っているのだから、石油でも何でも買えるのだ」というのは「お客様は神様」を誤って解釈された日本人の傲慢さです。

お金を払うという行為の代償で、アラブの方々から彼等の貴重な財産である石油を譲って頂いているのです。

「アラブの方々、石油を譲って下さって有り難うございます。その石油のお陰で、日本はここまで繁栄する事が出来ました」の思いを持つべきです。)

 

 それに、“恩恵は人間の盾と称する人々の大嫌いなアメリカの軍事力なしには現在、成立しないものだと思う”と書かれていますが、いざという時、日本をアメリカが守りますか?

お気の毒な拉致家族の方々は、今回の拉致事件をテロ行為として認識し、アメリカにその解決を懇願されましたが、9.11のテロを戦争と見なしアフガニスタンを攻撃したアメリカは北朝鮮に攻撃でも仕掛けましたか?

(物騒な石原都知事は「拉致事件解決の為には、北朝鮮へ軍艦を差し向ける」とまで息巻きました。)

 

 万一、北朝鮮が日本に攻め込んだ時にアメリカはどうしますか?

(アメリカはベトナム戦争の教訓から地上戦は避けます)

アメリカは、イラク攻撃に用いたと同様な戦法を取るでしょう。

日本全土にクラスター爆弾をばら撒き、劣化ウラン砲を打ち込み、バンカークラスターを投下し、多くの日本人を殺害し、その後多年にわたって、多くの日本人は、クラスター爆弾の地雷原によって手足をもぎ取られ命も奪われ、又、劣化ウラン砲の残留放射能で癌の悲劇に悩まされるでしょう。

 

 アメリカが守るのは、米軍基地であって、日本国民ではないのです。

 

HPを拝見しました。人間の盾...この戦争で一番腹が立ったのは、その盾とやらになった人です。はっきり言って迷惑極まりない行為だと、お気づきになりませんか?

もうすでに戦争は始まり、あなた方の存在に関係なくアメリカ軍は攻撃しています。

村岸さんが盾になっていないということにまだお気づきになりませんか?

ご自分のお金を使って即刻、帰国するべきです。あなた方はご自分の命を軽視し、危険地区に入る、その結果、多大な迷惑がかかるのか考えないらっしゃらない。

村岸さんたちは平和なバカな日本人としか見られていないのですよ。

日本政府は日本人の消息を確認し、生命を守る義務があるのです。

その為に日本の税金が使われるのです。盾という無駄な行為より、終戦後の復興に力を注いでいただきたい!

本当に大切なことが何なのか、今一度お考えになり、賢く行動していただきたいものです。ヤッピ 山×純子 

何も役に立ってない事をする人を尊敬するのはやめなさい!

役に立ってないどころか、逆に迷惑をかけている人の集まりなのですよ!山×純子

 このメールのように「役に立たないから意味がない」という発想では、「今地球上に生を受けている大多数の方々の人生は役に立たないから意味がない」と言っているようなものです。

人間のやることは殆ど役に立たないでしょう。(注:2

人間が生きることで多くの生物の命を奪い、公害をまき散らし、地球を破壊にさえ導きかねません。

でもそんな人間の我々でも、未来に希望を持ち、その千里の道のりを自らの力で一歩でも前に進めようと努力することに、我々に人生の意味意義があるのではないでしょうか!?

「平和運動」に、これが効果的という方法手段がありますか?

「人間の盾」は、確かに非効率的な運動かもしれませんが、それに携わる方々は千里の道の一歩でも、否、半歩でも進めようと努力されているのではありませんか?

 

 そして、次のようなメールもありました。

このままあなたがたの勝手な自己満足で活動をされるようでしたら、ただちに日本国籍を取り消し、イラク国籍を取得してイラク人として御活動ください

「人間の盾」の方々が皆イラン国籍になってしまったら、全く「人間の盾」の役割を果たさないではありませんか。

若しも、イラクではなく、日本がアメリカ(或いは他国から)からの理不尽な(核ミサイル等の)攻撃を受けようとしている時、世界各国の方々が我々の身近に「人間の盾」として来て下さり、そしてその方の本国の方も、その盾の方々に理解を示し、その行為を応援しているとしたら、(「人間の盾」がどんなに非効果的であろうとも、)我々は、その「人間の盾」の方々に最大限の感謝の意を捧げると思います。

 

悲しいことに、先の山×純子さんのメールと同様な内容のメールが何件かありました。

次のような類です。

外務省の担当者や赤十字やユニセフの救援活動をしている人たちが、どんな大変な思いをして説得や戦火の中を救援活動を行っているかわかっているのだろうか?

日本政府があなたがたを窮地に追いやっているといった趣旨のご意見をお持ちのようですが、日本政府と現地の出先機関の大使館などの退避勧告をまったく無視して滞在されるあなたがたに、日本政府に責任を転嫁する軽薄な意見を持つ自由が本当にあるのでしょうか?

あんた達を救出しようとしてる日本政府、みんなに迷惑かけてんだ。ましてや日本政府が救出に動くとすればそれの元を正せば税金であって、しいては日本国民みんなにも迷惑かけてるんだぞ。常識で物事を考えなさい。恥を知りなさい、恥を。

 この方々は“あんた達を救出しようとしてる日本政府、みんなに迷惑かけてんだ。ましてや日本政府が救出に動くとすればそれの元を正せば税金であって、しいては日本国民みんなにも迷惑かけてるんだぞ”怒っていますが、“日本国民みんなにも迷惑かけてる”のは、「人間の盾」の方々ではなくて、日本政府自体だと思いますよ。

日本国は、(今の時点では世界中何処を探してもない)「平和憲法」を有している国ではありませんか!?

なのに、現政権は早速とアメリカのイラクへの武力行使を支持し、その支持を世界に訴えもし、今まで「平和憲法の日本」を世界中に認知して貰わんと努力してきた方々の努力に水を差し、又、これから「平和憲法」を世界に押し進めんとされる方々の、前途をより険しいものとしてしまったのですから。

 

 

 更に、この方は“常識で物事を考えなさい。恥を知りなさい、恥を”と「人間の盾」の方々に怒りをぶつけられていますが「アインシュタイン150の言葉」(褐徳社発行)の中に、「常識とは、十八歳までに身につけた偏見のコレクション」との含蓄ある言葉が載っています。

(そして、アインシュタインご自身は常識を打破し「相対性理論」を確立されたのです。)

 

ですから、我々人生では、この「偏見まみれの常識」を日々幾らかなりともブラシアップして行く義務を負っているのだと思います。

そして、私の常識で判断するなら「平和憲法を有する日本国大使、大使館員」こそが、アメリカの攻撃に反対し、イラクに留まり可能な限りの平和工作するべきだったと思います。

少なくとも、アメリカの攻撃前に、いち早く帰国すべきではないのです。

 

 

 

(注:1)「戦争」を声高に叫ぶ人間達がいかなる人間かが判る記事を掲げます。

2002年9月20日付けの「しんぶん赤旗」から)

 【ワシントンで坂口明】対イラク先制攻撃を主張するブッシュ米政権内の超タカ派はベトナム侵略戦争などで兵役を逃れたか兵役経験のない者ばかり――対イラク戦争熱があおられる米国で今、この事実が議論になっています。

 この部類に入るのはブッシュ大統領、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ウルフォウィッツ国防副長官、パール国防政策局長、戦争戦略担当のファイス国防次官ら、対イラク主戦論の中心人物です。

 ブッシュ氏はベトナム侵略戦争当時、テキサス州の州兵となることによりベトナム行きを逃れました。チェイニー氏はさまざまな口実で徴兵猶予を繰り返しました。後に「六〇年代には軍務以外に優先課題があった」と弁明しています。ラムズフェルド氏は朝鮮戦争休戦後の一九五四年に海軍入りしたものの、同世代が同戦争に駆り出された時期には兵役を逃れました。

 共和党の議会指導者でも、ロット上院院内総務、ハスタート下院議長、ディレイ下院副院内総務らのイラク主戦論者のいずれもが、軍隊未経験者です。

 一方で、パウエル国務長官、スコウクロフト元大統領補佐官、シュワルツコフ将軍ら軍隊経験者が共通して対イラク戦争に慎重論をとっています。これらの人々からは、戦争未経験者のタカ派が、戦争の現実を知らずに戦争をあおっていると批判する声も出ています。

 パウエル氏は九五年刊の自伝『マイ・アメリカン・ジャーニー』で、レーガン、ブッシュ(父)政権時代に外国への強硬路線を辞さなかった「鼻っ柱の強い人々」のほとんどが、徴兵義務を果たす年齢にありながらベトナム戦争中に兵役を免れていたことに言及。「それは階級意識と結び付いており、非民主的で公正を欠く」と批判しています。

 米国の秘密情報機関、国家安全保障局(NSA)の活動を暴いた『秘密の組織――超秘密のNSA』の著者、ジェームズ・バムフォード氏は、USAトゥデー紙十七日付論評で、この問題に言及。「政府高官職は軍経験者で埋めるべきだとは言わない。しかし現政権で驚くべきことは、いま戦争遂行を最も声高に叫んでいる人々が、自分たちの世代の戦争を回避し、軍服を着ることさえ回避した人々だという点だ」と述べています。

 

(注:2)「人間の盾」の方々の中には、確かに“自分が行けば戦争は止まるかもしれない。何か奇跡が起きるんじゃないか”と期待された方も居られたようです。

次に、この件に関する記事を抜粋致します。

「何のためにいるのか」 人間の盾、揺れる心境

 「何のためにここにいるのか分からなくなってきた」。戦争を止めようと、日本からイラクに向かった「人間の盾」。しかし現実に戦争は始まり、米英軍の攻撃は衰える様子もない。共同通信の電話取材に対し、メンバーの1人が23日、揺れる心境を語った。

 「自分が行けば戦争は止まるかもしれない。何か奇跡が起きるんじゃないか

 バグダッド北部の浄水場にとどまる日本人男性(27)は、そう信じて今月中旬、イラク入りした。しかし数日後には開戦。当初配置されていた通信センターで空爆を見て「心からがっくりきた」と話す。

 23日は、ほかのメンバーが米軍の動向や使用した兵器の種類など新たな情報を得るため外出するのを横目に、読書をして過ごした。

 「正直言って何のためにここにいるんだか分からなくなっている部分がある。今になってみると、自分の思い上がりだったのかも」(共同)(共同通信) [3月24日3時18分更新]

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