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安全神話を崩壊させた責任は誰に?

2002年3月8日

宇佐美 保

 神戸の大学院生浦中さんを死に到らせてしまった、暴力団拉致・暴行死事件に於ける驚くべき数々の兵庫県警の職務怠慢ぶりは、悲しい事に、日本の安全神話を担っていた警察の堕落を、そして、日本の安全神話の崩壊を如実に私達に突きつけました。

 

 そして昨夜、TBSの番組NEWS23の「多事争論」なるコラムにおいて、キャスターの筑紫氏は、この件に関して“これら警察の堕落によって世界に誇った日本の安全神話の崩壊した、(警察は)早急に何とかして欲しい。”と語っていました。

 

 私は、不思議に思いました。

確かに、警察の建て直しは急務です。

しかしながらこのような警察にしてしまった責任は一体誰にあるのでしょうか?

警察だけですか?

 

 一昨年の2月に、9年2カ月にわたり監禁された新潟県三条市の女性が、無事保護された際に、数々の嘘の発表をした新潟県警、そして、その当日、県警に対する特別監察に訪れた関東管区警察局長の言語道断な行動、更には、これらの不祥事を繰り返す警察をチェックすべき国家公安委員会の体たらく等が判明しました。

しかしこの高給を貪り取る公安員会の方々は、その後どうしたのでしょうか?

高給を返上してボランティアで奉仕する事になったのでしょうか?

それとも、斯くも警察の不祥事が続くのは、国家公安委員会が既に解散してしまっている(?)為なのでしょうか?

若しも、いまだに高給を貪ったまま存続しているとしたら、彼等の厚顔無恥こそが、警察不祥事の温床ではないでしょうか?

 

 しかし、この税金泥棒達だけが警察の堕落の原因ではありません。

それは、私達の責任なのです。

私達の周りの安全や、最近頓に騒がれている景気対策にしろ、政府等に頼る前に私達の行動が大切なのです。

(なにしろ、国民の消費はGDPの約6割を占めているのですから景気回復の為には、先ず私達がその稼ぎに応じてどんどん買い物をするのです。

マスコミはもう買う物は無いと言っていますが、

お店には行けば魅力的な商品を沢山見つける事が出来ます。

それでも無いと言うならばアフガンとか世界中物が無くて困っている人が沢山居られます。そういう方々に送って上げる物を買われては如何ですか?)

 

 何しろ警察官とて、私達と同じ人間なのです。

警察官のお粗末振りは、即ち最近の私達のお粗末振りを代表しているのです。

 

 (一寸私だけが良い子ぶって済みませんが)2年前に、私の近所に空き巣泥棒が侵入した際、“泥棒!泥棒!”とその空き巣を追いかけても、通りを歩いている人は誰一人協力せず無反応に通り過ぎて行きました。

 やっと、私一人で泥棒を取り押さえました。

(泥棒は“こんなに長く追いかけられたのは初めてだ”と汗だくの体で、息を切らしながら私に言いました)

その後、何人もの人達が私達を取り巻きました。

そこで私は、“泥棒を捕まえたので、警察に電話してください!”と叫びました。

一人の方が、近くの家へと飛び込んで行ってくれました。

そして、暫くして帰って来て“事情がわからないので警察へは電話できないと断られました。”と言われました。

吃驚し、悲しくなりました。

そこで、近くの知人宅の呼び鈴を押して事情を説明して、やっとパトカーに来て貰えたのです。

 

 今回のお気の毒な神戸の大学院生の事件に於いては、何本も警察への電話だけはあったそうですが、勿論、止めに入ったり取り巻いたりした方々は無かったのでしょう?

 

 何しろ最近では、日中街中で起こる暴力事件などでも、周囲の人達は、まるでテレビを見ているように無関心で、且つ、折角の名場面を警察などに邪魔されたくないと言った風情です。

 こういう私達の何人かが、警察官になるのですから、どうして警察官だけを非難できますか?

私達が先ず目を覚まし、自己改革して行かなくてはいけないのです。

筑紫氏のように、他人任せではいけないのです。

 

そして、今、鈴木事件(私は疑惑ではなく事件と思います)に関連して、利権をあさる政治家の姿が浮き彫りにされてきました。

こんな政治家を一掃する「政治改革」こそが、「景気対策」以上に急務である事は、田中前大臣の言を待つまでもないでしょう。

なのに、自民党の江藤隆美議員は今日もテレビ画面で“政治家が地元への便宜を図って何が悪いか!”と鈴木議員を庇う発言をしていました。

地元優先を唱える政治家達が、50年以上も日本の政治を牛耳ってきた結果、日本はどうなってしまったのか?

田原総一朗氏は“今の日本では、公共事業こそが地場産業なのだ。”とテレビで言い切っていました。

地元のために働く事を訴えてきた政治家は、何故真の地場産業を育成できなかったのですか。

彼等は地元優先と口先で言いつつ、結局は業界に癒着して甘い汁を吸ってきただけなのです。

彼等の仲間の農水族が、日本の畜産業界を滅茶苦茶にしてしまったのです。

しかし、これら責任は、彼等、地元への利益誘導型の政治家の責任であると共に、その政治家に投票し続けた選挙民、即ち、私達の責任ではありませんか。

 私達こそが目覚めなくてはいけないのです。

 

 政治家や政府に、いつまでも頼っていては、この国は、そして、世界は、決して良くならないのです。

(政治家、政府を信用しているお方が居られますか?)

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